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1999


振り返ってみて


 
この1年間、自分がどんな音楽を聴いていたか、先ずは勝手なジャンル分けに従って、振り返ってみたいと思います。そのあとに私にとって印象に残った5枚を発表。

<ソフト・ロック>

 私にとって今年のソフト・ロックは、年初のアソシエイションのCDリイシュー4枚まとめ買いで始まった訳ですが。1枚目と3枚目はまあ、割と聴けたほうですが、だからといって特に感動があった訳でもなく、名盤とされる4枚目の『バースデー』も、矢鱈動き回るリズム・セクションと、ホーンやヴォーカルの上モノとの調和のなさ、違和感を感じ、これならプロデューサーのボーンズ・ハウの線で聴くのならフィフス・ディメンションの方が全然いいし、フォーク・ロックの線で聴くなら、バーズの初期の方がいいと思ったりして今一つ。このことでソフト・ロックを聴く意欲が年初で萎えた感が強く、他のジャンルの音楽でも聴いてみようかという気持ちが強くなり、近年では最もソフト・ロックを聴かなかった年でした。
(追記)『バースデー』はボーンズ・ハウがプロデュースしていることが売りになっていたりもするわけですが、実際はセルフ・プロデュースに近かったことが、レココレ12月号のボーンズ・ハウへのインタヴュー記事から明らかで、彼にしては詰めの甘いプロデュースだなあ、という印象の理由が確認出来、今年の頭からの疑問が解消されてスッキリしました。ありがとう、レココレ。

 そうした中では、ジェリー・ロス関連の盤だけはヘヴィー・ローテーションで、特にキースのベスト盤の収録曲「タイム・ゴーン・バイ」ケニー・ギャンブル&ジェリー・ロス作)は、あらゆるジャンルを通じて、今年最も多く聴いた曲になりました。寒々としたコーラスのイントロに、パシャパシャしたドラムが入ってくる瞬間から、別世界。歌とピアノの掛け合いが格好イイAメロ、たたみかけるメロディにもたりながらも何とか着いていく歌がスリルを感じさせるBメロ、それを乗り越えたという達成感が聴き手にも伝わってくるようなサビ、何処をとっても完璧なソフト・ロック。シミル系ソフト・ロックの最高峰とすら今は思っています。

 汚染地帯からの発掘ものでは、TINA MASON や、バート・バカラックの日本でのライヴ盤、やはりジェリー・ロス関連のモブジェイ&ザ・テクニークスが収穫でした。しかし、TINA MASONは未だに何者なのか不明です。

<歌謡曲>

 年明けは御多分に洩れず、宇多田ヒカル「オートマチック」「ムービング・オン・ウィズアウト・ユー」を聴き捲っていました。歌謡曲っぽいところと、その歌唱力が魅力で、すごい人がでてきたなあ、という印象で、再生YMOのミキサーであるゴー・ホトダがミックスしている、ということに対しても、誰がミックスしても一緒(な位、元がイイ)と思ったりもしてました。しかし、最初のシングルを聴き過ぎてアルバムが出る頃には飽きてしまい、結局日本一売れたアルバムは購入せず終い。その後、ミュージック・ステーションに出演し、「ファースト・ラブ」を生で歌っているのを聴いた時、声がかすれてたり、音程が不安定だったりして、レコードのサウンド・プロダクションの凄さを認識させらたりして。結局、彼女自身の魅力は当然として、取り巻きの人達の凄さが、ここまでのヒットを生み出したんだなあと思ったりもしました。何がともあれ、それまでのソウル系シンガーには、いい悪いは別にして何処か敢えてメインストリームを避けてるような、分かる人に聴いてもらえればそれでいい、というようなスノッブな印象がありしたが、宇多田ヒカルの場合、そのようなところがないストレートに自分をさらけ出している素直なところが私にとっての魅力です。やっぱり育ちの違いなのかなあ。

 同じ頃から聴きはじめたのが双児ガールデュオ=フリップ・フラップ「ハプニング」で、この陽性のテクノポップな曲、アレンジ、歌声と何処をとってもわたし好みで、随分聴きました。リアルタイムで聴いていた80年代中ごろに活躍したスコットランドの女性デュオ、ストロベリー・スウィッチブレイドを思い出させてくれたりして。その後のミニ・アルバムや、シングル「夏休み」も買って聴いてみましたが、段々、曲調が暗くなっていく感じで今一つの印象。ザ・ピーナッツの現代版ということを無理してイメージ作りして売っていこう、という感じがして残念。これは好みの問題で曲のクオリティーは落ちていないと思いますが。ザ・ピーナッツの暗さが苦手な私としてはちょっと、、。

 そう言えば、土曜夜のテレビ番組「夜もヒッパレ」に元レベッカののっこが、4ー9月にレギュラー出演していて、彼女の歌が聴けるのが楽しみな時期もありました。中では少年隊とのデュエット(というかのっこが歌で、少年隊はダンス専門といったかんじでしたが)でテンプテーションズ「ゲット・レディー」を歌っていた時などは、カンペ見ながら歌っているのがバレバレという、準備不足が素人が観ていても分かるパフォーマンスでしたが、それを緊張感に繋げて、そのドスを効かせたり、ファルセットになりかけたりスリル満点で、鳥肌ものでした。余談ですが、3年くらい前同じくモータウン勢のシュープリームス「恋はあせらず」をカヴァーしてましたが、これなどは本家より好きだったりします。

 汚染地帯からの発掘モノでは布施明「バラは君より美しい」がそのドラマチックな曲展開と布施明の歌唱力、A.O.R.的アレンジ全てに渡って好印象で、50円という購入価格も含めて拾い物でした。

 そして「LOVE マシーン」。何処をとってもこんなにかっこいいと思える歌謡曲は久々で、「真夏の光線」「ふるさと」で半分見限っていた私は猛省したものでした。それまでは「サマーナイト・タウン」が最高でその後の曲はそれ並みであっても決してそれ以上の印象はもてなかったのですが(特に福田明日香の引退後はヴォーカル・パートのバランスを失った感じがした)、この曲はイントロのこれ以上のものは聴いたことがないという位、えげつないシンセのリフで先ず唸らされ、彼女達の歌のコンビネイション、個々の歌唱力というかキャラクターの凄さにも改めて凄いと感じ、そんな彼女達の魅力を引き出したつんくの凄さを再認識させられました。


<日本のロック>

 6月頃、何の音楽も聴きたくない時期がありましたが、そんな時敢えて聴くとしたら、とレコード棚を覗いて聴いてみたのが、カジ・ヒデキ、大橋伸行、清水弘貴が在籍していたことで知られるグループ=ブリッジ『プレッピー・キックス』。このネオアコ&ソフトな心地よいサウンドとおおともまみ(漢字表記不明)の泣きのヴォーカルに癒される感じで、リアルタイムで聴いた時より全然よく聴こえてきました。その後、年末まで絶えることなく取り出しては聴いていました。メンバー全員がソングライティングし、作者がその曲に関してはイニシアティヴをとって録音しているみたいですが、それぞれの作った曲が恐ろしい程クオリティが高く、カジ・ヒデキの曲も光り輝くといった感じはなく、あくまでその中の一つに過ぎない、と言えばこのアルバムの凄さがお分かりいただけるでしょうか? また、曲によって作者が違う事から想像される散漫な印象も少ないのは、やはりおおともまみの歌の力に因るところが大きいと思ったりもします。

 そんな訳で新譜の方もカジ・ヒデキ関連が多くなり彼の『15人の怒れる男たち』、カジ・ヒデキと堀江博久(=ドッツ&ボーダーズ)のプロデュースによるヒロミックス『ヒロミックス’99』ドッツ&ボーダーズのミニ・アルバムなどを買っては聴いていました。中ではヒロミックスのアルバムは、本当何十回も通して聴き捲りました。ネオアコ、ギター・ポップ、ニュー・ウェイヴを通過してきた身としてはたまらないサウンドで、しかもヒロミックス自身による歌詞が、そのエコーの少ない聞き取りやすいヴォーカル処理と相俟って突き刺さって来る感じで、本当聴いていてジーンとくることもしばしば。これほど買ってよかったと感じたアルバムも久々でした。『15人の怒れる男たち』は彼のポップスの素養を吐き出した様な、大滝詠一の『ロング・バケーション』を彷佛とさせる、90年代を締めくくる素晴らしいポップ・アルバムだと思っています。

 そのほか、キリンジの2枚目のアルバム、スーパーカーの1枚目、コイルブリグリ『愛の愛の星』なども聴いてみましたが、キリンジ、スーパーカーは趣向は違いますがち密なサウンドで個人的には好みのものでした。

<80年代ロック>
 このジャンルに入るものはよく聴いた、というよりよく買った、といったところです。「塩化ビニール汚染地帯を往く」をみて頂ければ御理解頂けるかと思いますが、他のジャンルの盤に比べ、とにかくよく「買った」。まあ、近年、ソフト・ロックとかフリー・ソウルとかの流れで、発掘される音楽ばかりきいていて、ややその辺に食傷気味になっていて、少し毛色の違う音楽を聴いてみたいということもありました。聴いてみると実際、新鮮に聴こえましたし。そんな理由もありますが、一番大きな「買う」理由は、当然、この時代のアナログ盤は全体的に安い、とこと。

 新鮮に聞こえると同時に懐かしさもあり、カーズなんかを聴いてると昔と同じように格好いいと思ったり、案外、好みはリアルタイムで聴いていた昔と変わっていない事を確認した年でした。

<SSW>
 特に新しい発見があった訳でもありませんが、アル・クーパーローラ・ニーロトッド・ラングレンスティーヴ・ウィンウッドあたりを前年までと同じように聴いていました。

<ソウル全般>
 このジャンルもSSWと同じで、それまでの気に入った盤を取り出しては聴いていた、といったところでした。その中では70年代サザンソウルのO.V.ライトがそれまで以上にヘヴィー・ローテイションでした。ハイのバックと彼の歌声は何度聴いても格好いいし、シミてきます。あとは、ヴォイシーズ・オブ・イースト・ハーレムのリロイ・ハトソンプロデュースの2枚とか、やはり個人的定番ものが多かったような気がします。

 汚染地帯地帯からの発掘品では、年末のデルフォニックスのフィリーグルーヴ盤が、中身、盤質、値段、と三拍子揃ったもので非常にラッキーでした。

<ブラジル音楽>
 カルロス・リラジョニー・アルフバーデン・パウエルエリス・レジーナなどの手持ちの盤は、わたしのリスナー生活にはなくてはならないもので、ロック圏の音楽とは違ったツボを押してくれる感じ。それは、2000年になっても変わらないと思います。このジャンルは汚染地帯の価格もベラボーなものが多いことが、今年の発掘調査でわかったので、CDのリイシューもの専門に聴き進んでいきたいとも思った1999年でした。

 と、いうような1999年のリスナーズ・ライフだった訳ですが、前年に比べると邦楽や80年代ロックなどを多く聴くようになったなあと、書き終わっての感想です。

 そして私が選んだ1999年の5枚ですが、ただ単に私がよく聴いたというだけで、発売年などは全く無視しています。後何年か経ってこのレコード達を聴くと1999年のことを思い出すんじゃないかと思ったり、そうでもないかと思ったり。そんなレコード達です。

                            ヨ

 

Artist
ヒロミックス

Title
ヒロミックス'99

Label/No.
トラットリア ポリスター/PSCR 5753=CD
 1枚を選べ、となればこれになります。新譜アルバム・オブ・ザ・イヤーといったところ。とにかく回数多く聴きました。

Artist
ブリッジ

Title
プレッピー・キックス

Label/No.
トラットリア ポリスター/PSCR 5312=CD
 94年発売。もう5年も経っていたなんて。SALT WATER TAFFYさんという方のHPの掲示板にブリッジのことで書き込みしたら、このアルバムに収録されている「プールサイド・ミュージック」の元ネタがTHE INNOCENSE「ALL I ASK」であることを教えて頂きました(感謝)。5年目の新事実発見。同じ頃(94年)、この元ネタ曲が収録されたアンダース&ポンシア・ポップ・ワークスというCDを買って聴いていたのに、気が着かなかった私。一体何処を聴いていたのやら、、、。

Artist
KEITH

Title
98.6 BEST OF KEITH

Label/No.
マーキュリー/PHCR-1431=CD
 「TIME GONE BY」収録。この曲聴くだけでも購入する価値あると思います。私にとっては、もはや必須アイテム。このベスト盤に使われているジャケットのアルバム、『98.6/AIN'T GONNA LIE』のアナログ、モノラル盤を名古屋のバナレコ本店でゲットしたのも99年の思い出のひとつ。

Artist
THE RASCALS

Title
THE ISLAND OF THE REAL

Label/No.
SUNDAZED/SC 6132=CD
 今年発売されたリイシューCDの買った中では、一番よく聴いた盤。買った時にこんなこと書いてたりします。リイシュー・ベスト。72年作。

Artist
モーニング娘。

Title
LOVEマシーン

Label/No.
ZETIMA/EPDE-1052=CD 
 この曲については当HPで「レコ大とるかも」とか「レコ大間違いなし」とかさんざん書きましたが、大晦日のレコ大でグレイがとったと知ったときは「何故?」。まったくショックでした。あまりにもショックでHPにその落胆、怒り、その他諸々をかくのを忘れていました。せめて言わせて貰えば、レコ大に未来ナシ。メンバー中この曲で一番ハマっていたと思うのは、石黒綾だけれども彼女も引退。この先どうなっていくのやら、結果的にリスナーに文字通り余談を許さない、彼女達ではあります。

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