歌謡曲、日本のポップス


99/11/9
椎名林檎/本能

 歌詞カードをわざわざ見るという行為に行き着くのは、最近ではカラオケのレパートリーにしようとか、そういう時しかないけれど、この椎名林檎の「本能」は、歌詞カード読みながら、何回もリピート再生して、その意味を考えてしまう、そんな曲。日頃から歌詞の意味なんてどうでもいい、サウンドが格好良ければ、とか思ったりしてますが、こういった曲に出会うとやはり気になると言うか、歌詞が気になってバックなんかどうでもよくなって来ます。しかし、聴いていてこれ程、目の前に雑罰とした風景が浮かんでくる歌も、そうないんじゃないかと思ったりもして。
 3曲入りで他にボサ・タッチの「あおぞら」、ジャズ・ヴォーカルスタイルの「輪廻ハイライト」などではその歌唱力をまざまざと見せつけられます。なにやっても今の日本じゃ「無敵」の歌手じゃないでしょうか?

 朝日美穂あたりの先を行っていた、女性SSW達も、こんな凄い人が出て来て心底困ってるんじゃないかと思います。


99/11/8
 高橋幸宏/サラヴァ!(78年)
 最近はもっぱらコレ。YMO結成以前のソロ・アルバムで、リズムアレンジは高橋幸宏本人が担当していますが、ストリングス、ブラス、鍵盤のアレンジは坂本龍一が担当しており、二人のYMO以前のコラボケーションと言える内容。
 それにしても、最近、AORとかのシティー・ポップスと呼ばれている音楽ばかりを聴いていますが、これは所謂AORと呼ばれている音楽のよい所取りに聴こえます。兎に角格好イイ。幸宏のオカズの少ないジャストなドラムプレイと、坂本龍一の無駄を感じさせない洗練された上もののアレンジが、何処までも心地よく響いてきます。ドナルド・フェイゲンの「ナイト・フライ」とブライアン・フェリーの「ボーイズ&ガールズ」の魅力を合わせ持つ、と言っても過言ではない、日本の誇るAORだと思います。
 パヤパヤもの(?)の最高峰「エラスティック・ダミー」、叙情ディスコ・サウンド「ミッドナイト・クイーン」。「ボラーレ」のカヴァーもイントロのストリングスからやられてしまいますし、「サンセット」もピコピコ・シンセとドラムのリズムの絡みが面白い、シミるバラード。どの曲も聞き所があり、正にアルバム・オリエンティドなアルバムです。秋から冬にかけて丁度よいサウンド。


99/9/21
 モーニング娘「ラブ・マシーン」
 聴いてみての感想は「今年のレコ大、この曲かも」。本当は「レコ大間違いなし」と思ってるのですが(これ歌謡曲に対する私の思い付く最高の褒め言葉)。子供は踊りをマネして、女子中高生はカラオケで歌い踊り、野郎どもは部屋にポスター貼って、プレイボーイみながらシングルCDリピート再生、オヤジども(含自分)は鼻の下伸ばしながら視姦する、といった光景が自然に目に浮かんできて、レコードは当然バカ売れといったことになるんじゃないかと思ってます。これまでの曲ってコドモたちにはあんまり受けそうに思えなかったんですけど、ちょっとコミカルなアレンジと彼女達の踊りでその辺も見事にカヴァーしてるような気がします。
 ディスコものということでは、ウルフルズの「ガッツだぜ」あたりを思い出させたりもしますが、ウルフルズのその演奏のショボさ(これもウリですが)と比べるとこっちは本物、というか本気でディスコ歌謡に取り組んでいる印象です。あと、これまでの曲って良くも悪くもつんく色が出過ぎていたという気がするんですけど、そこら辺はしつこいくらいの「ウォウ、ウォウ」、「フー、フー」などの間の手が見事につんく色をかき消して、彼女達の曲になっちゃてるなあ、と思ったりもしてます。ジャクソン・シスターズも真っ青。


99/9/15
 カジ・ヒデキ『THE FIREWORKS CANDY & PUPPYDOG STONE』
 
を2週間ほど遅れて、購入、聴いてみました。つい、2ヶ月位前に出した『15人の怒れる男たち』に比べるとジャケットの作りも含めて、作り込みが足りないような気もしますが、逆に彼の「素」の部分が前作よりも表れているような気がして、個人的には好意的に聴くことができました。前作が大滝詠一の『ロング・バケーション』を連想させたのに対し、今作はカジ・ヒデキ、としか言い様のないサウンドを展開。きょうはバンド・サウンドしている彼としては割と男っぽい7曲目「PLEASE,PLEASE,PLEASE,PLEASE」が格好よく聴けました。


99/8/13
 キリンジ『47'45"』には聴くごとにハマっていってしまう状況に陥っています。聴けば聴く程、そのサウンドのち密さに唸らされます。やっつけ仕事的な所が全くないというか、手抜きがないというか、文句の付けようがないです。

 一度聴き始めると、結局アルバム1枚聴いてしまう、ということになるのですが私にとってそのようなアルバムは中々ないので、ヒロミックスに続いてこのようなアルバムに巡り合えて、しかもリアル・タイムの作品ということで嬉しい限りです。



99/8/5
 
再び、キリンジの新譜『47'45"』を聴いてみる。一度聴いて免疫ができた為か、前回聴いた時程、歌詞は気にならなくなりました。そうなると、ここ数年、SSW、はっぴいえんど〜ティン・パン・アレイ系のジャパニーズ・ポップスを好んで聴いて来た身としては、非常に魅力的に聴こえて来ます。ただ、それだけでなく、前にも書きましたが非常にスッキリとした洗練されたサウンドで、今の音として十分通用すると思います。曲もただただ気持ちよく響いてきますが、本当は凄く難しいことをやっていそうな感じも受けます。

 カジ・ヒデキの新譜を聴いた時も感じたのですが、このアルバムも大滝詠一のサウンドに似ているなあ、と感じます。キリンジの場合は大滝詠一のソロ時代の初期の方のサウンドに似ていると感じたのですが。ヴォーカルがそう感じさせる要因の高いウェイトを占めています。そう考えると本来、このアルバムは歌ものとして聴くのが正しい聴き方で、私のようにバックを中心に聴いているのは邪道と言えるかもしれません。それにしても曲、バックのサウンドの完璧さはある意味スティーリー・ダンすら連想させるものです。


99/8/2
 で、昨日聴いていたカジ・ヒデキは車のチェンジャーに入れっぱなしにしたままの状態で、再びヒロミックス『ヒロミックス'99』を聴いていたりします。

 このアルバム、9曲入りなのですが、下手に曲数増やしたアルバムよりこのくらいの方が、一度に聴きやすくて、良いんじゃないかと思います。

 あと、キリンジの新譜『47'45"』を早速聴いてみたのですが、なんかこれも今までに体験したことのないサウンドです。バックは60、70年代の内省的な肌触りを持ったロック、ソウルを手本にしながら、90年代的なすっきりとしたサウンドを聴かせている、と思うのですが。歌詞、歌共に非常に古臭い(70年代ニューミュージック的とでもいうのか)印象を受けます。歌詞なんか普段聴く人間じゃない私があまりにも気になるので、歌詞カードを読むくらいです。頭の時間軸がおかしくなりそうなアルバム。もうちょっと、ちゃんと聴いてみます。


99/8/1
 車で片瀬海岸へ海水浴へ行ってきました。遠出する場合、CDチェンジャーに普段聴こうと思って聴けなかったCDをセットし、同乗者にお構いなく(野郎の場合特に)、運転しながら聴く、というのが定番になっていますが、今回は迷わずカジ・ヒデキ『15人の怒れる男』。しかし、ちゃんとチェンジャーをセットしなかった為、途中まで聴くことが出来ず。その間、ラジオを耳にしていましたが、ボブ・マーリィの「アイ・ショット・ザ・シェリフ」が流れているのを聴いて、ボー・ディドリーのリズムに合うなあとか思ったり。やっぱりカリブ海文化には似たところがあるなあとか勝手に納得したり。それなりに楽しむ。

 で、話をカジ・ヒデキに戻すと。目薬のCMに使われているオープニングから、カジ・ヒデキのポップス魂炸裂っ、といった感じで好印象。このアルバム、彼の憧れのポップスを上手く消化して、独自のものに再構築しているという点、クリアーなサウンド面から、大滝詠一の『ロング・ヴァケーション』を聴いた時と非常に近い印象を持ちました。相当、レベル高い音楽だと個人的には大絶賛。この夏、万人に自信を持ってお薦めできる好盤です。

 湘南モノレールの下の、海へと近づく片瀬の山道を運転しながら、というシチュエーションにもバッチリ合っていました。


99/7/31
 
昨日、聴いていたスーパーカーと音のこだわりという点では共通すると思われるCOILという、二人組みのユニットがあります。

 彼等の6月に発売された『ROPELAND MUSIC』(彼等は横浜の東部、綱島に住んでいるらしく、タイトルも「綱島音楽」を英訳したと思われる)は、ふたりの自宅で録音したものをそのまま使っているトラックが多い、ということで宅録派と言えます。で、独自の音へのこだわりはスーパーカーと比較すると、かなりローファイ思考が強いというか、そういう音になっています。したがって、音量が小さかろうが、大きかろうが、車のラジオで聴こうが、聴く機械的な環境では変わらないんじゃないかと思います。実際、今夜遅いので、かなり音量を絞って聴いていますが、スーパーカーと違って、音を大きくしたいとかのストレスは全く感じません。

 で、曲自体(サウンドも含めて)は後期ビートルズの感じかなあと。あと、ヴォーカルの声質や節回しのせいか、ミスター・チルドレンも連想したりします。今のところは、カーズの1枚目のみたいなヘボイ音に味のある「トントン拍子」が気に入っています。


99/7/30
 
去年の今頃は、キンキ・キッズの「ジェット・コースター・ロマンス」(って曲名だったっけ?)があちこちでガンガンかかっていたけど、スーパー(・マーケット)で聴いた時、場にハマってるなあ、としみじみ感じたのを何故か今思い出した。

 ところでスーパーカー『ジャンプ・アップ』を聴いていたのですが、このバンドのレコードの聴き応えというのは、その昔、ピンク・フロイドの『ザ・ウォール』、『アニマルズ』、ロキシー・ミュージックの『アヴァロン』を聴いた時の印象に似ています。最近のものを引き合いに出せば、XTCの今年出た新譜といったところでしょうか。音質へのこだわりというのが、前掲のバンド達に似ているような気がします。演奏、歌とも非常に繊細に聴こえるけど、一音一音は鋼のような強さを持ってリスナーを刺激し続けるといった感じです。

 で、一つ一つの音を楽しんで聴いている自分を発見するのですが(曲をそっちのけで)、テクノのシンセの音を楽しんで聴いているのに近い聴き方だと思ったり。実は昔からオーディオに基本的に興味のある(具体的事例=1、高校生の頃は長岡鉄生は知っていても中村とうようは知らなかった、2、いつかはマーク・レヴィンソンとかのアンプで聴いてみたいと思っている)自分を再認識したり。私にとってはそんなアルバム。最初にも書いたけど聴き応えあります。

 そして、いつの間にかヴォリュームのつまみをあげて聴いていたりするのです。

 


99/7/29
 しかし、やはり何と言っても『ヒロミックス'99』。本当、どの曲も格好イイ。声がもう麻薬的にキてます。ここのところ、心のナンバー1はずっとこのアルバム。

 4曲目の「TUNE UP」なんて、ただのニュー・ウェイヴ風ポップと言えばそれまでなのに。カン高いスネア、うねうね動くベース、歪んだギター、オン・マイクのヴォーカル、すべての音が渾然一体となって「突き刺さ」って来る感じです。一体このスピード感というか勢いは何なんだ?としばし呆然と考え込んでしまいます。

 実はこのアルバムのプロデューサー、カジ・ヒデキの新譜を先に買っていたのに。そっちを聴く暇をこのアルバムは与えてくれません。


99/7/26
 
女性デュオ、フリップ・フラップの新曲「夏休み」は、「ハプニング」の様な陽性のテクノ・ポップを期待していた私としては、ちょっと肩透かしを食らったような曲でした。どこかが悪い、と言う訳じゃない。今週の文春の近田春夫の連載「考えるヒット」でも優れたダンスもの、ベースがいい、と評価していました。私もその通りだと思う。

 何処かが気に食わない、と言う訳じゃなく、あまりにも本格的なダンス・サウンドと彼女達のパブリック・イメージが合わないんじゃないかと。そんな風に考えさせられてしまうのです。この曲のプロデューサーは彼女達の歌唱力を使い、アイドルの部分などお構い無しで自分の作りたいものを作った結果がこの曲のように思えてなりません。これと似たような経験を以前したことがある、と思って考えてみると、荻野目洋子の「ヴァージ・オブ・ラヴ」(ナラダ・マイケルウォルデン=プロデュース&アレンジ)でした。

 余談ですがサビの後のキメのフレーズはABCの「ルック・オブ・ラヴ」のそれと全く一緒です。


99/7/24
 昨日、買った真心ブラザーズ「SUMMER NUDE 999 REMIX」は「サマー・ヌード」と「エンドレス・サマー・ヌード」のオリジナルに、前者のリミックスが1曲、後者のリミックスが2曲とライブが1曲という、この曲が好きな私にはたまらないレコードです。「エンドレス・サマー・ヌード」と「サマー・ヌード」を改めて 聞き比べると、後者がデモに聴こえる位、「エンドレス〜」は完璧に聴こえます。

 同じく、昨日買ったSILVAのマキシ・シングルはジャケットほどは良いとは思えませんでした。どうにも歌い方が一本調子に聴こえてしまいます。サウンドは80年代前半のダンス系のAORに聴こえました。藤原ヒロシとエリィのマキシ・シングルは彼女の歌の魅力を最大限引き出す為か、バックトラックは想像していたよりシンプルでしたが、歌ものとしてこれからも聴いて行けそうです。エリィは本当に歌が上手いと思います。と、同時になんでブレイクしないのか不思議に思ったりもします。


99/7/22
 今日もヒロミックス『ヒロミックス'99』
 どの曲もいいのだけれど、今一番気に入っているのは「ロマンチック・テレパシー」。タイトルからして格好いいのですが。前奏、間奏のアナログ・シンセのリフのフレーズと歪み具合が何ともキャッチーで、他にも別のシンセでピコピコ音を散りばめていたりして、コスミックな印象を受けます。ギターの歪み具合も格好いいとしか言い様がないです。
 
 歌(歌詞&ヴォーカル)がそれにも増してまた好いんだから、たまりません。必聴。


99/7/21
 最近はヒロミックス『ヒロミックス'99』ばっかり聴いてます。1回目聴いた時は、今一つ、引っ掛かりがなかったのですが2回目から少し格好イイと思い始めてその後ズブズブはまっていった、という感じです。取り敢えず今のところ無敵。これより他に聴きたいと思うレコードも無し。

 で、一体どんなんなんだと言われると、素人臭いながらも浮遊感漂う、妙に存在感のあるヴォーカルと初期ロキシー・ミュージックみたいな、なんちゃって〜的なバックの音が合わさって近未来の風景が目の前に現われるようなサウンド。


99/7/05頃
 先月は諸事情から殆ど音楽を聴くことは無かったです。しかし、聴かなきゃ聴かないで、過ごせるもんですね。私は音楽が無きゃ生きていけない人間だと自分で思っていたのですが案外、そうでも無いみたいです。

 で、ふと久々に何か聴いてみるか、と思ってレコード(CD、アナログ)棚を見果たして選んでいましたが、それまで頻繁に聴いていたアメリカを中心とした60、70年代のロック、ソウルは聴く気にならず、結局選んだのが、ブリッジ『プレッピー・キックス』。これ、カジ・ヒデキや大橋伸行が在籍していたバンドの94年作です。軽いものが聴きたくて選んだのですが、前に聴いた時よりも全然良く聴こえてきました。メンバーそれぞれが作曲出来て、それぞれの曲でその作者がイニシアチヴをとっている様です。それぞれのメンバーのポップスへの造詣も深いようで、そんな訳で他に例えるとはっぴいえんどのラスト辺りになるんじゃ無いかと思います。例えると言っても中身じゃなくてサウンド・プロダクションの方ですが。そんな作りにも関わらず、全体的には緩いながらも統一感があり、大友真実の切ないヴォーカルと明るいながらも何処か憂いを含んだサウンドは魅力的です。

 「プール・サイド・ミュージック」、「日曜日はダメよ」など曲名もらしい、ものが揃っています。

 

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