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 (99年11月30日の)教育テレビで、映画「パリの恋人」(スタンリー・ドーネン監督)('57)を放送していて、観ていましたが1カット、1カットが、レコード・ジャケットのように格好よくて、筋はそっちのけでその映像を楽しんでいました。

 あと、印象としては、主演のオードリー・ヘプバーンは、どんな服を着ても似合うなあ、とも思ったり。フレッド・アステアは、さすがにこの年代の映画では歳取って見えるなあ、とか。本当、絵ばかり観ていました。 で、絵(映像)だけを観る楽しみ方のある映画というのもありますが。わたしにとって、理想的な映画は

 1 筋(シナリオ)が、面白くて
 2 映像に面白味あるいは凄みを感じ
 3 役者に魅力がある(或いは魅力があるように撮られている)

 映画ということになります。まあ、当たり前のことなんですが、案外、この3つの条件をバランスよく満たしている映画というのは少ないものです。

 例えば、黒沢明の映画の場合、1、2の条件は文句なく満たしている、というかこれ以上のシナリオ、映像はないだろう、と思えるくらいの出来だと思いますが、じゃあ、三船敏郎や志村喬に役者の魅力を感じるかと言えば、全くそんなことはなく、何となく筋書き通りに動かされているなあ、と感じずにはいられません。あくまでも、黒沢明の作り出す映像の一部でしかないような。そんな気がします。唐突ですが「筋」を「曲」に置き換え、「映像」を「サウンド」に置き換え、「役者」を「歌い手」に置き換えると、黒沢明の映画というのは、フィル・スペクターの作り出したサウンドに何処か共通するものを感じます。

 そんな黒沢映画の中では、三船敏郎扮する若手刑事が、兎に角動き回り、その青臭い演技がプラスに出ている「野良犬」が一番好き。

 このタイプと私が思うのはスティーヴン・スピルバーグ。第1作の「激突」「ジョーズ」なんて、単純だけど、もうしつこい位のサービス満点のシナリオに、恐怖感をトラックの佇まいとか、サメの背びれで、客に見せつける映像のしつこさとか、もう最高。だけど役者なんかは後回しで「とにかく背ビレ」(「ジョーズ」)「とにかく月に自転車」(「E.T」).と思わせるのは黒沢明の「とにかく煙突から立ち上るピンク色の煙り」(「天国と地獄」)、「とにかく雨の中の決闘シーン」(「七人の侍」)と一緒。

 先頃、亡くなったスタンリー・キューブリックなんかは、2だけが(作品によっては3も)、もう異常に突出していて、筋とかもうどうでもよい、といった具合のものが多いと思います。「2001年宇宙の旅」なんか、もう映画館で観た時は、その圧倒的な映像の迫力に驚きはしたけれど、一部では「制作費がなくなった」ため急に映像がショボくなった、と言われる、モノリスに吸い込まれていく時のサイケな映像になるといきなり、いびきをかいて寝てしまった私。「ロリータ」なんかもスー・リオン(壁紙に使用→)をこれでもか、と妖艶に撮って(フラフープをまわして遊んでいるスー・リオンは最高(笑)ですが、それを、スケベ丸出しで眺めているジェームス゛・メイソンも最高にオカシイ)は、それだけで2時間近くを持たせているような気がしますし。「シャイニング」なんて兎に角恐そうな映像をただただ繋いだだけ、で観る者を圧倒しているといった感じがします。
 そんな中では、イギリスのコメディアン=ピーター・セラーズが怪演し、その緩いシーンと、核兵器を積んだ飛行機が凄みを感じさせる映像のギャップが面白い「博士の異常な愛情」が好き。

 「ロッキー」とか「がんばれベアーズ」とか「男はつらいよ」とか。この辺は1と3の魅力が突出していると思います。

 で、1、2、3の魅力を合わせ持つ映画を作った人と私が思うのは、古くはアルフレッド・ヒッチコックハワード・ホークスエルンスト・ルビッチフレッド・ジンネマンジョージ・ロイ・ヒル。最近では、ジョージ・ルーカスジェームス・キャメロンロバート・ゼメキス

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