PROLOGUE ? EPILOGUE ?


 ここ1週間くらい、映画のことばかり書いてきました。そのきっかけは意外かと思われるかもしれませんが、ミュージック・マガジン99年12月号の広告に載っていた「WAVE 六本木店閉店セール」の広告でした。ここ何年かフリー・ソウルやソフト・ロックを中心とした、隠れた名盤の発掘が盛んで、そういったジャンルのCDリイシューもそれに合わせて次々と行われていった訳ですが、そういった盤をセレクトして客に情報を発信するのが相対的に一番早かった大型CDショップが、WAVE(だった)。個々のジャンルに強いセレクトショップというのはありますが、あらゆるジャンルをバランスよく、一つの店で俯瞰できるのはここしか無かったと思います。そのWAVEも3年前くらいに渋谷クワトロ店が閉店、渋谷店、池袋店も場所を移転、同じ西武系のテナントの最上階の方へ追いやられ、なんとも味気ない雰囲気の店に変わってしまったりして、その度に落胆していましたが、六本木にはまだあるんだ、ということで何となく安心感というか、安レコを漁っていても行き詰まればまたここに帰ってくりゃいいや、という心の支えがありました。「六本木店閉店」はその最後の砦かつ総本山が無くなるという訳で、こういった店が無くなってしまうのは、ひとつの文化がなくなってしまう気がして非常に残念でなりません。

 (閉店移転する前の)クアトロ店の何処か知的な雰囲気のある商品展示、渋谷店の何とも猥雑だけども、同時に店内の独特の熱気、池袋店の地下1階の売り場の怪し気な雰囲気、六本木店にはそれら全てが内包されていた感じでした。そんな、店が無くなるバブル崩壊から8年目の年末です。

 で、これと同じような感情を持った事があったなあと思い返してみると、銀座文化劇場並木座という所謂名画座の閉館でした。並木座はかなり狭かったので、ここで観れなくなっても別にビデオでもいいや、という気もありましたが(ここは、平日に行くと、50代くらいの暇つぶしの営業マンと思しき人が多かった記憶あり)。我々の世代には「ニュー・シネマ・パラダイス」の単館上映のヒットが懐かしい(バブルの頃は皆、この映画で涙していたのだ。「一杯のかけそば」もこの頃でしたっけ?)、シネ・スイッチ銀座の上にあった、銀座文化劇場では、ヒッチコックやキューブリック、ホークス、キャロル・リード、ウッディ・アレンの映画を「大画面」で観させて貰っていたので、その閉館は結構ショックでした。同じく銀座シャンセリゼでも「風とともに去りぬ」とか「アラビアのロレンス」とか観させて貰ったけれども、時を同じくしてそういったのをやらなくなった様な気がします。

 そんなことを思い出したので、ついつい、映画についてあれこれ書いた次第です。バブルの恩恵なんて何も受けていないと思っていたけれど、WAVEの閉店とか、銀座文化劇場の閉館(今ではシネスイッチ銀座2に衣替え)という事態が実際に起こると、こういったCDショップ、名画座もバブルの上に成り立っていて、多少なりともその恩恵を受けていたんだなあ、と感じたりします。

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