リラックスとクール

我々は意識と身体を連動させる「意識的活動」を重視する時代に生きてきた。意識と身体が連動していると、「活発な時は興奮していて、不活発な時は消沈している」ということになる。ところが、リラックスというのは「じっとしていて、気分がいい」というようなものなので、意識と身体が連動している状態ではどうしてもリラックスできないのである。したがって、我々がリラックスするためには意識と身体の連動を解く必要がある。リラックスしている時には解放感があるが、その解放感は身体が意識から解放されるのと同時に意識が「身体を連動させる仕事」から解放されることによって生まれるものなのだ。

「意識と身体を連動させる」というのは「意識と身体が矛盾しないようにする」ということだ。しかし、意識と身体というのは関係はあるけれど別のものだから、そこには矛盾もあって当然だ。例えば、「意識的にはこうやりたいのだが、身体が言うことをきかない」とか「意識していないのに身体が勝手に動いてしまう」とか。そういうことを押さえ込んでしまって意識的な行動だけをやるのが「意識と身体の連動」である。我々はそういうことばかり重視してきたのだが、これは結構大変な作業である。だから、「意識と身体の連動」をやめると解放感がある。

意識と身体の連動を解いた状態の一つが「じっとしていて気分がいい」だとすると、もう一つは「気分は沈んだままでも活発に動く」だ。要するに「どう動いたらいいかを身体で判っているので、意識しなくてもうまく動ける」という状態である。これはなかなか難しいが、それができれば、緊張したり焦ったりするような場面でも精神状態に左右されずに活動できることになる。リラックスをマスターすれば、意識と身体の連動を解くこともマスターしたことになるので、「落ち着いたままで活発に動く」ようなことも可能になるはずだ。つまり、クールになれるわけである。

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意識と身体の連動を解くと「意識と身体が矛盾している」状態になる。そうなると、「矛盾の中にこそ自由というものがある」という意味での自由が生まれる。我々のやりたいことというのも、そういう自由の中にある。だから、自分のやりたいことを探したり実行したりするためにも、意識と身体の連動を解く必要がある。やりたいことを探すためにはリラックスしている方がよく、やりたいことをうまくやるにはクールな方がいいのだ。