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銅の谷の女神

銅の谷の女神総集編表紙画像

序 章
第一章 銅の谷の戦士

一 夜宴
二 真紅と褐色の女
三 赤銅の戦士
四 ベルスン炎上
五 二つの結末
幕 間

 


序 章


世界の中央に生まれた砂漠は、緩やかに時を掛けながらも、確実に広がりつつある。
かつて、その世界を皇帝の名のもとに一つに治めていた血統は、その出生と同様、謎めいた終わりを迎え、唐突に途絶えた。
今では、伝説と、迷信に埋もれ省みられることもない。
最後の皇帝の治世の後は、皇帝の両の腕に例えられたカーディーン大公一族とアーメルド公爵一族とが、残された地と人を二つに分けて治めた。
彼らの間には、元々些細な競争心と言ったものがあったが、皇帝空位の長い時に、それは、猜疑と憎しみへと、やがては戦へと育っていった。
人々が記録を逆上れる限り、すべてが戦いのなかに始まり終わる。
この果てし無い戦いは、人々にとって、発端も定かではなく、また、不本意ながら日常でもあった。
時は、ハンナム・カーディーン大公の治世十五年の事である。
後々、この年を振り返るとき、ある一人は、憮然とした長身痩躯の戦士を思い起こし、また、ある一人は、人の悪い微笑をたたえた痩せぎすの少女を、思い浮かべた。

 


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