4月14日

※無断転載を一切禁じます


Jリーグ ディビジョン1
1stステージ第5節

ヴィッセル神戸×コンサドーレ札幌

(神戸総合運動公園ユニバー記念競技場)
天候:晴、気温:17.6度、湿度:46%、
キックオフ:17:04、観衆:11,742人

神戸 札幌
0 前半 0 前半 0 0
後半 0 後半 0
 
 

お知らせ

増島みどり著
ゴールキーパー論
発売中
詳細はこちら

 昇格組ながらここまで3位につけている札幌と、8位の神戸との対戦は両者無得点のまま終了、勝ち点1ずつを手にする痛み分けとなった。

 札幌は、現在得点ランキングトップのFWウィルを軸に播戸竜二のスピード、また平均年齢24歳と若い選手の勢いを十分に生かしたカウンターで神戸守備陣を揺さぶる。ボール占有率では圧倒的に神戸に主導権を握らせながらも、ピンチを野々村芳和、名塚善寛らベテランの早い判断から凌いで後半へ。後半は岡田武史監督が先に選手交代に動き、和波智広、山瀬功治、今野泰幸といった若手を交代。FWには深川友貴を投入して攻撃的な布陣で延長に臨んだが、結局無得点のまま、勝ち点を1つ伸ばす10とし、代表遠征に伴う休止期間に入った。

 一方神戸は、清水戦での敗戦から立ち直るきっかけを得なければならず、前後半合わせて24本ものシュートを放つ積極性を見せた。エース三浦知良も7本のシュートでゴールを狙うなど、前節からの悪い波を断ち切るかのような猛攻を見せ勝ち点を6とした。後半終了間際には、突風と激しい雨に見舞われるハプニングもあったが、これで開幕以来5試合で3試合延長の厳しい戦いで「負けないサッカー」を示して見せた形となった。

神戸・三浦知良「できれば3ポイントとりたかった。でも負けなかったことは大きい。120分やって、疲れたけど、何とか1ポイントはとったからね。(前節の)清水戦のシュート0本に比べれば、今日は前向きに出来たし、シュートまで持っていくことができた。岡田さんとは、去年の天皇杯の時も話さなかったから、あの時(98年6月2日、岡田監督に部屋に呼ばれてフランスW杯代表メンバーから外れたことを告げられた日)以来だね。頑張っているなとか、そんなことを言われたけど、詳しいことは岡田さんに聞いてください。次の柏戦は当然、厳しい戦いになる。その間にナビスコ杯もあるから、いい準備をして次につなげていきたい」

神戸・川勝良一監督「0−0と、120分やって最終的には点がとれなかったが、前節に比べるとDFから攻撃に参加していくという厚みが出てきた。ボールを奪った選手が起点になって、攻撃をするという意識で出来たと思う。ただ、3分の2まで入り込んでからの崩し、攻め手がなかったことを修正していく必要がある。今日は相手が3バックでこちらの2トップについていたので、(2列目の)ダニエルがフリーになる場面が多かった。そこで一度、外にふって、外から中にいけばよかったのだが、センターがあいていたので、そのまま中にいってしまった。今日のダニエルは運動量はいつも通り多かったが、ラストパスの精度が低かった」

札幌・岡田武史監督「特に後半は、相手に押されて厳しい中で、選手が集中を切らさずよくやった。山瀬を代えれば(84分に伊藤優津樹と交代)攻撃力が落ちることはわかっていたが、アウェイだったこともあって、守備を優先した。アウェイので勝ち点1は大きいし、もしかす るとこの勝ち点1が、あとあと効いてくるかもしれない。(試合後カズと話していたが、という質問に対し)元気そうだね、お互い頑張ろうと話した。今日は内容的にはそれほどよくなかったが、1試合ですべてを判断できるわけではない。アウェイだったし、これでだめだというわけでもない。来週はカップ戦もあって、今日の120分で疲れている選手もいると思うので、コンディションを見ながらメンバーを決めていきたい。(3勝1敗1分けという)成績については、まさに勝ち点をもぎとっているという感じ。まだ5試合だから何とも言えないが、とにかくホームでは勝ち点3をとるつもりでやる。このリーグは、混戦になりそうなので、1つ落とすとガクッと順位を落とす可能性がある から、1試合1試合大切に戦っていきたい」


「そんなヤツではない」

 無得点での引き分けでに終わったこともあり、試合後は98年6月、フランスW杯を前にしたメンバー登録で当時の岡田・代表監督に外された三浦と、岡田監督の「ニアミス」に注目が集まった。
 2人が話すのは、スイス・ニヨンでの発表の日以来約3年ぶりとあって「対決ムード」がメディアによって煽られていたが、岡田監督は神戸入りする以前からこのことについて、「カズは、そんな(恨みがましい)ことを言うような選手ではない。彼はそんな小さなヤツじゃないし、メディアに対決なんて面白がられる話でもない」と強い口調で話していた。
 実際には、この日試合前、ほんのわずかな時間だけ監督とカズが挨拶を交わすことがあったという。

「話をしたのは、あのとき部屋に呼ばれて以来だね。内容? 岡田さんに聞いてよ。でもがんばっているな、と言う話をしていたね」
 三浦もサラリとしたものであった。
 三浦はこれまで、ブラジル時代から通算してプロとしてもっとも多くの監督と仕事をしてきた選手ではないか。3年前の話を遺恨、因縁などと取り上げることは、メディアの自己満足であり、どこか時代錯誤な、そんな雰囲気にさえなるような、両者のドライさがむしろ印象的だった。


「アイロンのかかったシャツ」

お知らせ

増島みどり著
シドニーへ
彼女たちの
42.195km

発売中
詳細はこちら

 前半24分まで、神戸・三浦は一度もボールを触ることがなかった。正確に言えば、触ることができないのではなく、ボールが足元に入ってこない状態にあった。
 神戸は現在、チームが少しずつではあるが安定度を増している状態にある。守備から崩れることがないよう、先制点を奪われることがないよう、サントス、また望月重良が中盤を固めることから作るために、どうしても前線へのボールが入りにくい状態になるわけだ。

 そんな中で、望月も「今はチームが安定感を覚えていくときだし、攻撃では難しい面もあるが、まずは守備でしっかりした流れを作らないと」と役割を認識し、声で選手全員を見事にコントロールするサントスもまた「1試合ずつ、良くはなっている」と話す。
 こうしたチームの状況下にあって三浦のFWとしての円熟味がむしろクローズアップされているのではないか。
 彼の円熟味がどこに表現されているかといえば、このボールを持てない時間帯の姿勢と、来た瞬間の姿勢、両方にある。

「我慢強くやらないといけないということだね。チーム全体の今の状態を考えれば、今ボールが来ない時間帯があったとしても覚悟の上だから」
 以前ならば、ズルズルと中盤に下がることもあったかもしれない。しかし、この日も一度もそうした動きをしなかったことが、後半の攻撃につながり個人として7本のシュートにつながった。

 同時にさらに精度が増したのは、触らない時間が長いにも関わらず、ミスというものを全くしない点だ。この試合でも1本だけ、後ろからボールを取られたが、タッチも含めて、ボールを奪われるミスをすることがない、極めて正確なポストプレーをさり気なく続けていた。こうしたプレーは同時に味方に対して「安心感」、三浦自身の表現ならば「味方への丁寧さ」を携えている。

 おそらくコンディションの良さ、自信、余裕、すべて整っているのだろう。得点は奪えないが、奪うための準備は常にできている。正確で、丁寧で、まるで、パリっとアイロンのかかったシャツのような、「折り目正しさ」というものが存在したように思う。



読者のみなさまへ
スポーツライブラリー建設へのご協力のお願い


BEFORE LATEST NEXT