2月25日

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サッカー Jリーグプレシーズンマッチ

浦和レッドダイヤモンズ×ロサンゼルス・ギャラクシー
天候:雨、気温:12度
観衆:3000人、12時10分キックフ
(日立柏サッカー場 )

浦和 L.A. G
2 前半 0 前半 0 1
後半 2 後半 1
52分:トゥット
81分:トゥット
ブライアン・モラン:54分

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  今季J1昇格を果たした浦和が、チッタ監督新体制のもと、初めての公式戦としてプレシーズンマッチに臨んだ。
 DFには井原正巳(磐田から)、FWにはトゥット(東京から、前期までは「ツウット」で登録)、アドリアーノ(ブラジルから)らを新戦力に加えた布陣だったが、前半はピッチ上の強い向かい風にボール回しがうまくコントロールできずに、連携もなくミスを連発。結局無得点のまま終わった。
 後半に入って、ルーキーの渡辺隆正をMFに入れ、速いテンポでのボール回しが随所に見られるようになった。後半7分には、アドリアーノのコーナーキックにトウットが合わせて先制。2分後には、西野 努の甘い詰めからシュートを打たれて同点とされてしまったが、攻撃のテンポは少しずつ改善された。田中達也が交代で入った後、中盤の積極性で前線が突破され、36分にはトウットがまたも持ち込んで左脚でゴールを奪って勝ち越した。
 この試合には、故障で日本代表合宿から途中で戻った小野伸二や、ドニゼッチらが欠場しており、ベストの布陣は組んでいない。また、後半の詰めには、チッタ監督が室井市衛を投入して4バックを5バックにし、「逃げ切り」をはかるシステムを初めて試すなど、まだ最終的な形は固まっていない。
 浦和は今後、練習試合3つを行い、3月10日の開幕で名古屋と対戦する。

■出場メンバー
浦和
GK 西部洋平
DF 山田暢久
井原正巳
西野 努
土橋正樹
MF 石井俊也
阿部敏之
早川知伸
アドリアーノ
FW 岡野雅行
トゥット
交代 45分:渡辺隆正(早川知伸)
78分:田中達也(アドリアーノ)

85分:室井市衛(岡野雅行)
浦和・チッタ監督
「全体的には良かった。前半は風が強くて非常に難しかったが、後半は主導権を握ることもできたし、チャンスも作ったので良かった。選手は非常によくやった。これから開幕まで2試合で万全にしたい。これでドニゼッチや福田(正博)が帰ってきて加わればいいと思う。悪い点はいくつかあるが、秘密で行こう。途中交代で田中、渡辺はよくやった。今後は守備を中心にしてまた修正をはかる」

トウット「前半は風のために非常に苦しい試合になった。コンビネーションはよくなってきている。1点目はタイミングで風で流れたボールをつかまえることができた。2点目は、DFの前に出られたので決めることができた。2点をこの試合で取れたことはうれしいし、2001年にはJリーグのタイトルをひとつ必ず取りたいと思う」

井原「自分にとって初めての試合なので、非常にいい緊張感があった。勝ったことには満足しているが、まだまだDFの課題と同時に、自分自身のプレーには満足できない。1点目をすぐに取られたのは、メンタルの問題もあるし、室井が入ってから5バックになったのには、監督がああいうこと(逃げ切り)を考えるとああいうオプションを取るとわかった点で収穫があった。開幕までに、いろいろな点で修正していきたい」

試合データ
浦和   L.A. G
13 シュート 11
13 GK 10
9 CK 5
14 直接FK 15
10 間接FK 2
8 オフサイド 1
0 PK 0


「J1昇格はこれから」

 物理的なポジションにおいてJ1昇格を果たしたレッズにとって、精神的な意味での後遺症を払拭して、いわば「精神のJ1昇格」を果たすのは、本当の意味でこれからである。
 それを強く感じさせる試合だった。
 9000人が入ったプレシーズンマッチで、前半は静まりかえった。静まるだけではなく「声を出せ」「前をみろ」といったファンの声がスタジアムにこだまするような状況だった。

 2つの点における「変化」に今、浦和は懸命に合わせているかのようだ。
 1点目は、J2で1年もの期間を過ごしてプレーをした「2部慣れ」からの脱却である。口では「チャレンジャーだ」「失うものは何もない」などと言うことは容易だ。しかし実際にそれができるかというと、これは難しく、J2で体中に染み付いてしまった格下相手とのプレーや、その中でもしかすると普通になっていた「見下した」プレーを、体が忘れるには時間がかかる。

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 この日、試合を見ていた小野と福田はこんな話をした。2人とも「あんな風の中でやることはとても難しいし、見ているほど簡単ではない。勝ったことは非常にすばらしい」と口を揃え、かなり否定的な質問をした記者に言った。
 「J1になるんだ、と心身ともに徹底するのは簡単じゃないと思う。J2での意識を捨てて上でやることは、そんなに甘いもんじゃない」(小野)、「体の慣れは、思った以上に怖いもの」(福田)と、ともに、試合を見ながら、もちろん自分を含めてチームとして、こうした変化への対応に難しさを感じていたようだ。

 もう1つの変化は、戦術である。
 昨年までは、長いボールを蹴って、時に中盤を省略する格好で勝ち上がる結果を追わねばならなかった。しかしチッタ監督は、これを「つなぐサッカー」に変えようとしている。
 「私たちはボールをしっかりと回すチームだ。今はこの形をやることがどんどんと良くなってきていることを私は感じている」
 試合後監督はそう話していた。この日で紅白戦3試合、対外試合4試合目で、監督の目にはどうにか、薄くにでも青写真というものが透けてきたのであろうか。

 プロでは「戦う集団」という言葉をよく使う。しかし、本当の意味での戦う集団とは、練習から日常生活からすべてを指すのであって、それが徹底できるチームとできないチームに、結果が反比例することは決してない。温まるには良かったかもしれない「湯船」から上がり、熱く、時には冷たい大海で戦う1年がどんなもので、何をしなければならないのか。浦和の選手たちはもう思い出しているはずであるし、本当の「昇格」がそこから始まることもまた明白なのだ。

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