2月24日

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サッカー Jリーグ 練習試合

柏レイソル×FC東京
天候:雨、気温:12度
観衆:3000人、12時10分キックフ
(日立柏サッカー場 )

FC東京
1 前半 1 前半 0 1
後半 0 後半 1
15分:渡辺光輝
呂比須ワグナー:71分

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 昨年のJリーグでは年間総合勝ち点で最多の58点をあげながらも、悲願の初優勝には届かなかった柏が、強力な新戦力・柳 想鐵(横浜F・マリノスから移籍)を加えて初の対外試合に臨んだ。
 この試合で、チームの鹿児島・熊本合宿には韓国代表遠征のため参加できなかった主将の洪 明甫、柳が初めて合流。また、23日まで日本代表合宿に参加していた明神智和、北嶋秀朗らも加わり、今季の柏の布陣が初めて組まれた状況の中で、前半16分には、柳からの折り返しを北嶋が左脚で思い切りよくシュート。こぼれ球を渡辺光輝が拾って先制した。
 その後も速い攻守の切り替えと、全員が雨の中でも果敢にスライディングで守備をし、ボールを奪いに行くなどアグレッシブな姿勢を徹底。
 後半にはファールから東京の呂比須にPKを決められ1−1となったが、日本選手、韓国選手ともに少ない練習時間でしか合わせていない悪条件をまったく気にさせないコンビネーションを見せるとともに、中盤に柳が加わったことによって明神との「ダブルボランチ」のほかに、明神のワンボランチ、柳のトップ下という攻撃的なオプションも増え、攻撃での幅も広がったことを印象づけた。
 FWの黄はまだ肩の手術から万全ではないとしていたが、近いうちにチームに合流する予定で、韓国代表をセンターラインとする今季のニュー柏の可能性を、十分に示す練習試合となった。
 柏はこの後、山形と練習試合を、また千葉銀行カップで市原とプレシーズンマッチを行って、3月10日の清水との開幕戦に備える。

柏・西野 朗監督の話「代表組も昨日戻り、韓国の2人も今週合流したばかりという初めての試合にしては、やろうとしていた狙いがきちんとできていた試合だった。全員のフィジカルにばらつきがあるものの、柳については、後半から明神をワンボランチにして、前(トップ下)で起用してみたが、体もあって制空権も取れるし、非常にいい手応えだった。開幕までに、彼がもっとも力を発揮し、チームの機能に効果的なポジションを早く定めたい。北嶋も代表がいい刺激になったようだ。時間が少ない割には、本当にいい内容だったと思う」

北嶋の話「自分としては普通にやれたと思う。体が疲れている割には、意外に動けたのではないか。柳選手の加入で、中盤にためもできるし攻撃の幅も広がる。大きな武器になると思う。自分はここまで悩んだりしたが、頭が重くなった分だけ動きが重くなっていたようなもの。頭がすっきりして、このオフでは一番ふっきれたいいプレーができた」

明神の話「チームとしてよくまとまったし、柳選手とのボランチにははっきり言って何の問題もない。試合前に、右、左、残れと上がれという4つの日本語を(柳と)確認して臨んだ。守備だけではなくて、いろいろな点で去年とはまた違ったプラスがあると思った。きょうは1−1だったが、残る2試合では結果にこだわって、開幕を迎えたい。うちもレベルアップするということは、ほかもレベルアップしているわけだから、気持ちを引き締めてがんばりたい」

洪の話「私たちはこれまでチームに合流できなかったが、今日はよく機能をしていた。前半こそ柳の動きには戸惑いがあったが、時間を重ねると本当によくなり、得点力不足の分も解消されるだろう。開幕までにいい体調を戻して、恐ろしいチバギンカップ(注=昨年退場。プレシーズンマッチのため、洪は開幕戦に出られなかった)を経て、必ず(笑)開幕戦には出たいと思う」

出場メンバー
FC東京
佐藤 大
GK 土肥洋一
渡辺 毅
洪 明甫
薩川了洋
DF 内藤就行
小峯隆幸
サンドロ
藤山竜仁
渡辺光輝
明神智和
柳 想鐵
大野敏隆
平山智規
MF 下平隆宏
三浦文丈
佐藤由紀彦
増田忠俊
北嶋秀朗
酒井直樹
FW アマラオ
呂比須ワグナー
(柳 想鐵)加藤 望:80分 交代 45分:梅山 修(サンドロ)


「まったく問題ない」

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 違和感がないといえば、これほど違和感のない新加入戦力の「デビュー」と、既存の選手が一体となった初戦も珍しいのではないか。
 横浜F・マリノスから移籍した柳と、14日に遠征を終え来日した洪は、韓国代表の中東遠征(3試合)と香港の国際大会(2試合)を行なったために、鹿児島からの合宿にも参加できなかった。チームとの練習もままならず体の疲労を抜くなど別メニューだっただけに、この日も「まあ45分くらいだろう」(洪)「やっても半分かな」(柳)と、あくまでも「顔見せ」程度に捉えていた練習試合だったという。
 ところが、西野監督からの指示と意図が伝わることで、練習は真剣なテストに変る。明神とはわずかな日本語のコミニケーションを確認しただけで試合に臨んだというが、柳は「まったく問題ない」と断言した。実際のところ、これまでは、明神と下平(FC東京へ移籍)のコンビが2人とも拾ってつなげるというプレースタイルだったため、守備的色合いが濃かった柏のボランチに、柳は「これまでと違った色合い」(洪)をプラスすることになった。

 得点も柳からのパスに北嶋がシュートを放ったもので、後半も動き出しの速い柏の攻撃陣へのパスに加え、空中戦で競っても良し、ためを作っても良し、と北嶋も「動きにメリハリができる」と話した。
 柏の課題でもある攻撃に、これほど効果的な補強はなかった、と、少なくとも現時点では思わせる不思議な存在感を、柳は放った。
 もちろん横浜F・マリノスでの2年が、こうしてJリーグの別のチームにスムーズに溶け込むことを可能にした第一の理由だろう。第二に、洪、大学の先輩でもある黄の、選手のプレースタイルなどに関する細かなアドバイスも、柳は聞き流していなかったようだ。
「私が私のやりたいプレーをするのではなくて、チームが必要とするプレーをしていくことだと思う。それが優勝につながる」
 当たり前の抱負に、自信が溢れる。
 ピッチでの日韓「共催」もまた、楽しみなチャレンジである。

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