日本期待の室伏広治(ミズノ)が予選に出場し、1投目で78メートル49と予選通過ラインの77メートル50を余裕を持って越え、24日の決勝への進出を決めた。
男子ハンマー投げでは、1976年のモントリオール五輪で父でもある室伏重信氏(中京大教授)が決勝に進出して以来となる快挙。コップス(ドイツ)ら強豪が予選落ちする中、室伏の安定した技が十分に発揮された格好となった。
なお、男子100メートルで初の決勝進出に挑んだ伊東浩司(富士通)は10秒39で準決勝1組目7位に終わり、決勝進出は果たせなかった。
伊東の話「緊張しちゃいましたね。スタートのとき、鳥肌が立ちました。60メートル以降、あれ以上早い動きでハムストリング(膝の後ろの腱のこと)を動かすことは今の僕にはできませんでした。言い訳ではなくて、あれが目一杯です。10秒00をフロックと思われたくなかったなかったので、ここまでやってきた。周りを見たら黒人ばかりだった。でもこうやって土台を作れば、次の世代もやってくれると思います。筋肉の細かいところまで張っている感じでしたが、久しぶりに競技会に出ているという感じがした。怪我なく走れたら……、決勝がどれだけすごいかと思うと、ちょっと残念。正直もう一本走りたかったけれども、明日から気持ちを切り替えて、自分にも成長したところがあると信じて、200メートルとリレーでがんばる」
22日の会見を見ていて、3人ともその日のコンディションや状況に合わせて臨機応変に走れるだけの余裕を持った仕上がりできたことが印象的でした。日本の女子マラソンのレベルの高さを物語るようなシーンですね。
楽しみなのは、これだけのレベルの選手が揃ったレースがどんな展開を見せるのかという点です。これまでは2時間30分が女子マラソンのタイトルを争そう際のひとつのラインでした。つまり、30分を切ったタイムを持つか持たないかで、実力にかなりの差が出る。30分を切っていない選手からメダリストが誕生することはありませんでした。
けれども今回は、そのラインが限りなく引き上げられたと思います。2時間25から26分、この辺の持ちタイムでなければ、到底メダルには勝ち残れないのではないかと思っています。これまでにないハイレベルでのレース展開がどうなるのか、これが見所の一番です。
頭の5キロで、誰かが飛び出して、それにつながる格好で先頭が推移するのか、それともある程度のハイペースの中でサバイバルレースが行なわれるのか。飛び出してレースを作るとすれば、高橋さん、山口さんの展開です。2人はキャリアも実力も金メダルに十分な選手です。恐らく、2人ともに先頭がペースを上げればついて行くでしょうし、チャンスがあったら自分から積極果敢に攻めていくことになるんじゃないでしょうか。2人には最後まで金を狙ったレースでのメダル獲得を期待しています。
サバイバルの場合は、市橋に大きなチャンスが回ってきます。彼女は「流れに乗る」ことにかけては十分な智恵を持っています。終わってみれば市橋が一番安定してレースを運んだ、というような格好になれば、彼女もメダルに手が届いているはずです。今回のレースでは、金を狙った結果の入賞になるんではないかと思います。一歩でも後ろに下がったらもうレースは諦めないとならないのではないでしょうか。その点でも、最初からリアクションがらリアクションが良くないと一瞬で置いて行かれてしまう。
オリンピックを走った者として(92年バルセロナ五輪4位)とにかく悔いを残さないで欲しいと思っています。(91年東京世界陸上銀メダリスト、バルセロナ五輪4位、現在第一生命陸上部監督)