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恐 怖 の 体 験
〜走行中にオルタネータが故障した場合〜

走行中にオルタネータが故障したトラブル事例の紹介と、その交換顛末記。
 
●2003-01-19:新製、 ●2003-02-11:校正&公開、 ●2003-04-01:文中ハイパーリンクURL更新(TOTO社)Δ1
●2004-10-08:文中 Defi BF メータのオープニング&エンディングセレモニー・ムービーのリンク切れを更新(NS社)Δ2

 <このページの構成>
 
    1.まえがき
    2.変調の巻
    3.救援の巻
    4.バッテリー交換の巻
    5.「恐怖の体験・その1」 の巻
    6.「人事を尽くして天命を待て」 の巻  
    7.「恐怖の体験・その2」 の巻
    8.オルタネータ交換の巻
    9.あとがき
 
   (注1) : 「オルタネータが故障する」 こと自体は過走行車などで
         見受けられますが、故障のタイミングによっては、こんな
         怖い状況にも遭遇する・・・という実例の紹介です。
 
   (注2) : かなりの長文です。ダイヤルアップの方は、このページの
         取り込み後、オフラインにしてから ゆっくりと見ていただく
         ことをお勧めいたします。

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1.まえがき
 

2002年12月末―――。

新年の正月を実家の札幌で迎えるべく、私は帰省出発前に最後の車輌チェックを行っていた。毎年3回、正月と5月連休(GW)とお盆休みは、愛車BGレガシィで 「調布(東京都)〜札幌(北海道)」 を往復するのが、ここ数年来の恒例行事になっているのだ。もちろんペットのプードル2匹(室内犬、名前はサスケとヤマト)もレガシィで連れていく。

今回の帰省から、車輌に新装備したアイテムは多い。

まずは冬用ホイールだ。私のBGレガシィには、ブレーキシステムとしてフロントに対向4POTキャリパ、リヤにも対向2POTキャリパを流用装着しているため、従来のBG純正17インチホイールは干渉して使えない。そこでスタッドレス用としてホイールをインプレッサ純正17インチに履き替えた。

次に装着のNewアイテムは、何と言ってもルーフBOXとスライダーだろう。ルーフBOXはTERZOのローライダーフレックスで、積載荷物に応じて上下の高さ(容量)が可変となるタイプである。スライダーは、ベースキャリアとルーフBOXとの間に取り付けるアタッチメントで、ルーフBOX全体をキャリアに装着したまま左右方向にスライドさせることが可能となる。また、斜め積みタイプのスキーキャリアアタッチメント(RV-INNOのスイッチスタンス)も同時に装着した。

次の装着アイテムはマーシャルのドライビングランプである。絶版モノのブランド品であるため、マニアがキープして手放さないか、あるいは売りに出されてもすぐに買い取られてしまうもので、なかなか市場ではお目にかかれない。が、今回縁あって純正カバー付きの新品を入手できた。実は、昨年の冬の帰省時には夜間に前方10m先(!)も見えないような猛吹雪に見舞われ、視界確保の成否がまさに生死をわけるようなシビアな運転状況に遭遇したことから、単なるファッションではなく事故防止の意味から後付フォグの必要性を痛感していたのだ。そのような状況下では、純正装備のフォグランプではまったくと言って良いほど役不足だったためである。

【図1】 主な新装備アイテム
ローライダーフレックス+スイッチスタンス ルーフBOX用スライダー SEVマーシャル(ドライビング)
ルーフBOX(TERZO)とスキーキャリアアタッチメント(RV-INNO) スライダーでルーフBOX全体を助手席側に引き寄せたところ SEVマーシャル889・ドライビングカット(純正カバー付き)

主な新装着アイテムは上記の通り。マーシャルを始め、これらのアイテムについてはいずれ別ページで詳しく紹介してみたいと思う。その他、車輌の点検項目としてはオイル類やスタッドレスタイヤの空気圧確認、そしてこれから先は電気負荷が増えるであろうからバッテリーのFULL充電などを行なった。また、今回の帰省に合わせ、知り合いから携帯ナビ(サンヨーの"ゴリラ")を借り、見知らぬ土地でも一応の走行ガイド情報が得られるようにした。もちろん旅費も余分に銀行から引き下ろしておいた。これで来るべき帰省走行に向けて、考えられる十分の準備ができたつもりであった。
 

2.変調の巻
 

今回の北上ルートには中距離フェリーを使った。
「新潟(本州)→苫小牧(北海道)」 という日本海側の航路である。

まず調布(東京)を出発して所沢ICから関越自動車道に入る。長い関越トンネルを越えても懸念していた雪の心配はまったく無く、順調に新潟入りした。携帯ナビも、高速道路を走り続けているのに関わらず、時々 「ルートを外れました」 という変な案内をする以外は、おおむね順当にガイドしてくれている。ちなみに、この携帯ナビはGPSアンテナ付きのCD-ROMモデルであり、車載時はシガーライター(DC12V)から電源を取るようになっている。

乗船手続きを無事に終え、フェリーの車輌甲板にレガシィを載せる。
帰省客を乗せたフェリーは、約17時間半後に定刻通り北海道・苫小牧東港に着岸した。

北海道の日暮れは早い。レガシィを北の大地に降ろした時刻は夕方17:30過ぎであったが、あたりはもうすでに真っ暗になっていた。しかしながら今回は苫小牧でも天候は良好で、ちょうど一年前、同じようにして苫小牧入りしたときには視界極悪の猛吹雪の中、まさに死ぬ思いで札幌に向かったことがウソのように感じられてしまうくらいに、この日は星空がキレイな夜であった。

携帯ナビを参考にしながら、バイパス(日高自動車道)から道央自動車道を経て札幌に向かう。ここでマーシャルに灯をともす。路面の状況も手に取るようにわかる。外気温度は約−13℃。雪道走行では、常に路面の状況を把握しておくことが重要だ。苫小牧東ICから伏古ICを経由して一般道に降り、札幌入りする。実家まで、あと2〜3km程の距離となったところで、交差点での赤信号待ちのため車輌をゆっくりと一時停止させる。すべてが順調に進んでいた。

ところが、それは突然起こった。
走行中のバッテリー上がりである。

状況はこうだ。
まず最初、赤信号待ちで一時停止しているときに、突然エンジン回転速度が一瞬だけ "ブォン" と2000rpm程度まで上昇、すぐにアイドリング回転速度に戻った。ISCバルブのデューティ値でも変動したのだろうか?いやいや、そんなことはないだろう。何が起きたのか分からなかったが、ふとインパネ警告灯を見ると、バッテリーのチャージランプが点灯しているではないか。ついでにパーキングブレーキランプも点灯している。

バッテリーは出発前にFULL充電しているし、ブレーキパッドの残量も充分に残っている(注;パッドが減ると液面低下でパーキングブレーキランプが点くことがある。念のため)。この時点では、不覚ながら 「さては、携帯ナビを使い続けたのでバッテリーが弱まったのか?」 と思ってしまった。なぜなら、知人から携帯ナビを借りたときに 「こいつ(ゴリラ)は見かけによらず消費電力が大きく、バッテリーの消耗が非常〜に激しいので、なるべく家庭用電源で使った方が良い。」 と何度も繰り返し言われたことを思い出したからであった。

レガシィにはテクトムのMDM−100を装着しているので、走行中の電圧をモニタ可能だ。実際にモニタしていたのだが、この変調が起こった直後、バッテリー電圧は約10.6Vにまで落ちていた。確かに弱っている。

【図2】 MDM で電圧をモニタ

MDM-100で電圧をモニタ

通常は、エンジン水温とバッテリー電圧を表示させている

ガソリン残量が少なかったこともあり、ちょうどここから実家に向かう途中にある、地元では有名な激安スタンドで給油する。年末年始はガソリンスタンドも営業していないことが多いので、今のうちに給油しておいた方が無難だからである。ところが給油を済ませて発進しようとすると、バッテリー電圧が9.7V弱まで降下しているではないか。「なにっ? 一体どうしたというのだ? つい先ほどまでは11V近くあったぞ? ・・・こ、これはマズイ!」

スタンドを出ると、あたかも寿命になった蛍光灯のごとく、ヘッドライト(HID)の片方がチカチカと点滅するようになってしまった。必要電圧に達していないために点かなくなったのは明白である。この状態で交通量の多い表通りを走るのは危険と判断、良く知った裏通りをスモールランプ点灯状態でゆっくりと走ることにする(汗)。もちろん、電源をOFFにすることが可能な電装品(ラジオはもちろん、暖房なども)のスイッチはすべてOFFにしてある。

昔、通っていた中学校の脇を通る。実家までもう少し。・・・と、今度は後付メーター:NSのDefi BFメータ(油圧計、油温計)がチカチカと消灯←→点灯を繰り返し始めた。「エンディングセレモニー」 ←→ 「オープニングセレモニー」 の繰り返しである。装着している人は分かると思うが、Defiシリーズは通常はイグニッションONで指針がいったんフルスケールまで振れてから指示値を表示し、イグニッションOFFでは目盛りや指針、ウォーニングランプなどが一度に消えず、時間差で順番に消灯していく、という儀式がある。

【図3】 NS Defi BFメータの儀式

NS Defi BFメータ

<Defi の儀式についての説明はこちら→ NSのサイト
 
◎オープニングセレモニーとエンディングセレモニー
  のデモムービーを見る → こちら Δ2

バッテリー電圧は±0.1V程度の幅ではあるが変動していたため、メータ表示が電圧不足で落ちたあとも、再び必要電圧の "しきい値(境界点)" をわずかに越えると、例の 「オープニングセレモニー」 が始まってしまう。が、その途中でまた電圧不足となり、再び表示が落ちて・・・の繰り返しとなるのだ。要するに、メータ表示のハンチング現象である。この時点で、MDMの表示電圧は約8.8V。バッテリーが異常ペースで消耗しているのは、紛れもない事実である。

かつては通学路として歩き慣れた道を、今は慎重にクルマを走らせる。が、電圧降下は加速的に進んでいき、ついに電圧計代わりのMDMまでも消灯してしまった。消灯直前の電圧指示値は約8.0Vにまで低下していた。同時に、レガシィのインパネ照明も、ディマースイッチが無いのにあたかも一番ディマーを効かせたかのごとく、光っているのが分からないくらいの "か弱い" 照明状態となってしまった。「頼む。エンジンよ、今ここで切れないでくれ!」・・・印加電圧約8.0Vでストールしないのが不思議なくらいの状況である。

実家までの距離はあと1kmほど。残りわずかだ。裏通りの交差点でゆっくりと一時停止し、前後左右の安全を確認、発進しようとアクセルを踏み込んだところで、ついにエンジンが停止。途絶えてしまった・・・。再始動しようにも、当然ながらセルはピクリとも反応しない。ライト類ももう点かない。スタンドを出てからエンジンストップするまでの時間は、わずか約4〜5分間の出来事であった。派手なバッテリー上がりだったが、走行中(車速が出ている間)にエンストしてブレーキやハンドルが効かなくなるとか、あるいは交差点のド真ん中で立ち往生しないで良かったと、切に思った。帰省先で事故でも起こしたらシャレにもならん。
 

3.救援の巻
 

すぐに実家に電話し、事情を説明して姉に救援に来てもらう。到着までの間、牽引ロープと念のためブースターケーブルも取り出して用意しておく。これらは工具と共に常設品になっている。同時に、(裏通りなので僅かではあるが)通行車輌が時折あるので、停車中の不動車輌がある旨のアピールと簡単な安全誘導をする。ほどなくして、救援車(姉のインプレッサ)が到着。実家まで牽引してもらうことにする。

実家までの距離はあと1kmほどであったが、姉にとって他車を牽引するのは初めてのことだったため、本人の希望により、少々遠回りになってしまうが道幅も広く明るい表通りを通ってもらうことになった。姉は先頭の牽引車(姉のインプレッサ)、私は後続の被牽引車(私のレガシィ)の運転席にそれぞれ着いた。その方が、お互いに乗り慣れたクルマなので良いだろう。同時に、牽引車の駆動力確保と被牽引車の軽量化のため、レガシィに乗っていた私の家族は全員インプレッサに乗り移ってもらった。そしてレガシィには私1人(+犬2匹)だけとなったところで、すみやかに牽引が開始された。

ところが姉は何を急ぐのか、雪道を猛烈なスピードでレガシィを牽引し始めた。「う、うぎゃ〜!速い!速すぎるよ ねーちゃん!」 私は非常に焦った。こちらはエンジン停止中でステアリングやブレーキのアシストも効かないし、何よりももっとスローダウンしてくれないと、停止時にちゃんと止まれず姉のインプレッサに追突するのも夢ではない(滝汗)。牽引ロープは伸縮タイプだが、路面状況(アイスバーンやミラーバーン)での制動距離を考えると、この牽引速度では最伸時でも 「牽引車〜被牽引車」 の車間距離が短すぎる。ステアリングアシスト無しの重ステには腕力で対応できるが、制動距離が車間距離以上となっては、いくらスーパーテクの持ち主でも危険極まりない。今すぐ急いで牽引車にスローダウンを指示する必要がある。

【図4】 急ぐ姉と焦るKAZ
予想外の牽引スピードに焦るKAZ

ところが前方の牽引車に合図を送ろうにも、こちらはバッテリー上がりのためパッシングは点かないし、ホーン(クラクション)も鳴らない。もちろんパワーウィンドウも開かない。まさか走行中にドアを開けるわけにもいかない。車内で手を大きく振ってみたが、こちらに気づく様子はまるで無い。このままでは本当に前車に追突してしまう。何とかしなければ。「・・・そうだ!携帯電話だ!」 牽引車には私の家族が乗り移ったから、私の家族あてに携帯電話を鳴らしてスローダウンを伝えれば良い。私はとっさにそう思いついた。

後方確認、およびステアリング&ブレーキ操作に注意しながら、私は何とか自分のPHSを取り出し、すぐ目の前を走っている牽引車の中の家族に向けて、電話をかけてみた。先方が着信音に気づいて応答してくれたらOKだ。(注;本来は運転中の携帯電話等の使用は法律で禁止されているが、今は非常時であり、事故を未然に防ぐためには止むを得ない手段であるから、そんなことは言っていられないのだ。)

と、ところが、私のPHSからの呼び出し音に呼応して、私のすぐ背後から着信音が聞こえてくるではないか・・・? な、な、何ということだ! つまり私の家族は、携帯電話をこのレガシィの後部座席に置いたまま、牽引車に乗り移っていたのであった。前車に電話するつもりが、自車の後部座席につながるだなんて・・・。これじゃ、不携帯電話だ。私は思いっきり落胆した。

実は姉も携帯電話を持っているはずなのだが、最近使いだした新機種なので、私はその電話番号をまだ知らなかった。このまま無力に牽引されて、最後にオカマを掘るしか無いのか?!・・・そうこうしている間にもクルマはどんどん進んでいく。幸いにも赤信号には引っかからず、2台は停止することもなく、そのまま表通りをタンデム走行していく。時刻は夜9時頃。ブレーキペダルには、空走(無効)距離を抑えるべく、そっと足を載せたままである。と、そこで次なる手段を思いついた。「そうだ、実家の母に電話をして、母から姉の携帯宛てに伝言してもらえば良いではないか。母ならば、姉の現在の携帯番号を知ってるだろう。」・・・もっとも、今ここで姉が携帯電話を本当に携帯しているかどうかの保証は無い。が、今はそれしか有効な連絡手段が見つからない。

今度は私のPHSから実家の母親(固定電話)に連絡を入れる。母はすぐに出た。「もしもし母さん、今この電話を切ったらすぐに折り返し姉の携帯に電話して、とにかく速度をゆっくり下げるように、伝えてくれ〜!!」 ・・・事情をろくに説明される間もなく、母は私から言われた通りに姉の携帯に電話してくれたようであった。ほどなくして、姉の運転する牽引車(インプレッサ)がスローダウンしたからであった。姉は携帯電話を持ってきていたのであった! 「ホッ。」 生き返った心地がした。

これでようやく雪道での牽引に見合う速度で走行できることになったが、その時にはもう実家まで残り400〜500mの地点まで来ていた。結局、結果として2台とも無事に実家に到着できた。バッテリーの上がったレガシィを敷地内の駐車スペースに置き、荷物と2匹の犬を降ろし、無事故で着いたことにホッと胸をなで下ろした。良かった良かった。・・・だがこれは、次なる波乱の幕開けに過ぎなかった。
 

4.バッテリー交換の巻
 

使用中のバッテリー(BOSCHのSRX)は購入から2年が経過しており、確かに、帰省前から若干弱っていたかも知れない。しかしながら、通常の使用状況下で安定した電圧を供給していたし、また今回の帰省に合わせて充電も済ませていたから、走行中にバッテリーが上がるとは夢にも想定していなかった。もちろん、過去に使ったことのあるバッテリーでもそういった経験は無い。Never did I dream of such a thing! である。

ここで、これまでの事態について自分なりに反省点を述べてみると、
 ◎バッテリーチャージランプが点いた時点で、実家に連絡を取っておく(第一報を入れておく)べきだったこと。
 ◎電圧降下が、思いのほか速かったことを予測できなかったこと。つまり、無理して走ることはなかったこと。
ではないだろうか。

さて現実問題としては、このバッテリー上がりに早めに対処しなければならない。大晦日のうちに、オートバックスやハローズなどのカー用品店の初売日を調べてみる。すると新年は元旦から営業(初売りセール)開始であることが分かったので、早速、明日・元旦にバッテリーを新調することにした。これまで使っていた古いバッテリーは、少々もったいない気もするが、一度上がってしまったのでそのまま購入店に引き取ってもらうことにする。

オートバックス、J'ms、ハローズなどを回り、結局ユアサCorp.のボルツ-SYに決めた。小型のハイパワーMFバッテリーで、従来 「ユミクロン」 と呼ばれていたシリーズのフルモデルチェンジ版だ。対抗馬としてパナソニックの細密電極バッテリーに心ひかれるものがあったが、総合判断でユアサとした。サイズはB24ではあるが、65B24相当までカバーすること(パナソニックは60B24相当まで)、また12V40AH(5HR)とパッケージに明記されていたこと(他メーカーには表示が無かった)、またユアサは表示価格からさらに5%引きとなることが決め手となった。それでも価格は17000円ほどするのだが・・・。ちなみに、BGレガシィ(MT)標準サイズは55D23Lであるが、B24サイズとした理由はすでに別ページで述べてある通りである(→ こちら)。

購入と同時にレジで新春スピードくじを引いたところ、何と2等賞が当たった! 店員によると、100本に2本しか出ないそうだ(1等は100本に1本)。ちなみに2等賞の景品は次の通りである。カー用品店のクジにしては、ファミリー向けのソフト路線賞品だ。もしも子供がいない独身男性が引き当てたとしても、果たして喜ばれる商品なのかどうか?・・・といったツッコミは考えず、ひとまず 「こいつは春から縁起がいいや!」 と思うことにする(もしかすると、このクジで今年1年分の良運を使ってしまったのかどうかは、定かではない)。

【図5】 購入したユアサ(ボルツ-SY)と、2等賞の賞品
ユアサ・ボルツ−SY ♪「くっくっクマのプーさん〜」
ボルツ-SY。他社製品と同様、3年間の保証付きだそうだ。 2等賞の「クマのプーさん」。抱き枕になっているようである。

翌1月2日(東京に戻る前日)に、バッテリーを新品に交換した。穏やかな昼間なので、札幌での気温は−4℃ほどであり、戸外での作業も簡単に進む。エンジンを始動してMDMの電圧表示値をチェックすると、11.8V。「あれ? 新品なのに少なめだな。」 次にインパネを見ると、何とバッテリーチャージランプとパーキングプレーキランプがまだ点灯したままではないか・・・。そこで初めて気が付いた。「もやし、いや、もしや、バッテリーではなくオルタネータ系にトラブルが発生したのではないか?!」 もっと早くに気が付くべきであった。

しかしながら、翌日(1月3日)の朝には苫小牧発のフェリーに乗り、東京に向かっていなければならない。つまり札幌を明日の早朝には出発している必要がある。とすると、こちらにいられるのはあと数時間しか無いことになる。ディーラーはもちろん正月休み中であり、一般の町工場も年始から営業しているところは無いので、事実上、修理は不可能である。

しばし考えた末、とりあえず予備のバッテリーを買い増しすることにした。明日のフェリーには何としてでも乗る必要がある。チケット予約の際、明日以降の便は(苫小牧航路に限らず)満室または欠航だったことをすでに確認済みであり、この日を逃すと、いつ東京に戻れるのか分からない状況だったからだ。ちなみに、今回かろうじて予約が取れた帰りの便は、「苫小牧(北海道)→八戸(青森県)」 という短距離航路である。往路と復路では、フェリー会社も異なることになる。

その後、急いでサンワドー(ホームセンター)に行き、標準と同じサイズのバッテリーを購入する。容量は75D23Lだ。再びB24サイズにしなかった理由は3つ。万が一の予備用なので、容量は大きな方が良いこと。また、もしも今回使わなかった場合は、家にあるインプレッサ用としても使うことができること。最後に、これは遠い将来のことになるが、もしもレガシィを下取りに出すことになった場合でも実装できること(つまり現在のバッテリーはB24にサイズダウンしているので、下取りの際はノーマルサイズに戻す必要があるのだ)。緊急時の予備用(本来は不要な買い物)であっても、このように先の先まで考えて購入したつもりである。

実家に戻り、昼間装着した新品の小型B24バッテリーを降ろし、代わりについ先ほど購入した標準D23バッテリーに再交換する。当面、札幌(実家)から苫小牧(フェリー乗り場)まで走ることが出来れば良いことになるが、オルタネータ無しでの走行可能距離が分からない以上、最初から容量の大きなものを積んでいた方が安心だからだ。今後発生するかも知れないトラブルにつながる ”芽” は、なるべく事前に摘んでおいた方が良いのだ。さらに、出発まであと数時間しか無いが、暗電流(バックグラウンドで流れる微少電流)による消耗さえをも嫌って、バッテリー再交換後も端子を電極から外しておいた。こんな状況では、カットオフターミナルが欲しいところである。気温−8℃ほどでの作業であった。

【図6】 買い増しの予備用バッテリーと、作業前後で降った雪
予備用に緊急購入したバッテリー 交換作業後に軽く雪が降る
新たに予備用バッテリーを買って備え置きすることに・・・。 交換作業終了後の様子。作業中も雪が軽く降っていた。

 

5.「恐怖の体験・その1」 の巻
 

「苫小牧(北海道)発 → 八戸(青森県)行き」 フェリーの出航時間は朝9時である。
ということは、乗船手続きなどもあるので、少なくとも朝8時前には苫小牧に到着しておきたい。苫小牧から札幌に来るときの往路所要時間は約2時間であったから、今回はさらに1時間(つまり5割増し)の余裕をみて、復路所要時間を約3時間に見積もった。とすると、明日の起床時間は朝4時、札幌出発は朝5時ということになる。ちなみに「札幌〜苫小牧」間の距離は、約70km弱しか無いのであるが・・・。

朝5時過ぎ、早朝というよりまだ深夜といった感じだが、札幌を予定通り出発。やはりバッテリーチャージランプの警告灯は点いたままである。電気負荷を可能な限り小さくする ”省エネモード” での運転に徹しながら、伏古ICから高速(道央自動車道)に乗る。あとは苫小牧まで、ほぼ一本道だ。そのまま走りさえすれば良い。この時点で、新品の75D23Lバッテリーの電圧は約11.4V。12.0Vを少々割っているが、まだ許容範囲内だ。

話が少々飛ぶのだが、私は高校生の頃、学校の文化祭でクラス対抗の 「張りぼて」 の御神輿(おみこし)を製作したことがあった。クラスごとにその出来映えを競い、また夕方になると御神輿を担いで校舎周辺をねり歩くのが、高校恒例の文化祭イベントであった。

<北高時代の文化祭 (行灯行列) の様子>
ハリボテは意外に巨大
 クラス対抗で出来映えが審査される

その 「張りぼて」 は内部に電飾が施され、夜間でも内側から光るように造られていた。イメージ的には、青森 ”ねぶた祭り” の御輿像のミニチュア版と考えていただくと良い。その電源として、実は自動車用バッテリーが使われていたのだが、これがけっこう長い時間、行進中ずっと点灯し続けていたことを思い出した。

そういった経験から推定すると、張りぼてと実車では電気負荷はまるで異なるものの、今回は新品の75D23Lを使うのだから、たぶん大丈夫だろう。フェリーに乗って本州に渡り、しばらくの間 東京に向けて南下し、東京に近づいた時点でいよいよバッテリー切れになったら、予備用に換えれば良いさ。その交換地点は、栃木か、はたまた仙台か・・・などと考えていた。

ところがその考えは無惨にも打ち砕かれた。
札幌を出発してすぐ、電圧降下がみるみるうちに始まったのである。

状況を観察すると、約10分間走行するたびごとに、約0.2Vずつ電圧が下がっていく。30分走ったところで約0.6V降下し、MDMの表示は10.8Vになった。この時点での主な電気負荷は、暖房(フロントガラスの曇り止め用)、後付メーター(電圧計代わりのMDM)、そしてヘッドライト&スモールである。消費電力の大きい(と言われた)携帯ナビは、もちろん荷室にお蔵入りである。

現在の時速は70km/h弱(雪のため、速度は80km/h以下に規制されている)。このままの速度を維持すれば、計算上、フェリーターミナルに着く頃には9.0Vを割ってしまう。「まずい。非常にまずい。何とかして消費電力を抑えなければ・・・。」 電圧計をモニタしながら考えた。「消費電力が一定なら、バッテリーの耐力は使用時間にほぼ反比例するハズだから、使用時間を減らせば良い。よって、次の2つの応急案が考えられる。」

(案1)・・・ここでペースアップして、目的地に早く到着し、ヘッドライトの総照射時間を減らすことで電圧
      降下を防ぐという案。ただし、その代わりにエンジン点火のための電気エネルギーは余分に
      喰われることになる。
(案2)・・・上記(1)の逆。つまり、ヘッドライトの総点灯時間は長い(消費電力は大の)ままであるが、
      このままのエンジン回転速度を維持することで点火エネルギーを最小限に抑え、トータルと
      してバッテリーの消耗を防ぐという対抗案。

つまり、スピードアップすると走行時間短縮によりヘッドライトの総消費電力は抑えられるが、逆にエンジンへ供給すべき点火エネルギー(単位時間当たりのスパーク回数)が増えてしまう。ヘッドライト点灯時間とエンジン点火プラグへの着火エネルギー、どちらがバッテリーにとって電気的に消耗するのだろうか?今ここで、早急に判断する必要がある。

ここでかつての記憶がよみがえる。

・・・昔、バッテリーが極端に弱ったバイクに乗ったことがあった。その時、アイドリングこそ異常なく安定していたが、いざアクセルを開けてエンジン回転速度を上げようとしても、まるで電気リミッターが効いたかのように、ある回転速度以上には上昇しなかった・・・という経験があったのだ。

<エンジンの調子はバッテリーに左右されることもある>
高回転時の電気負荷は意外なほどある 電圧が低いと高回転まで吹け上がらない

高回転域ではプラグがスパークせず、失火 (または間引き点火) するのが原因であった。このとき、エンジン高回転域では想像以上にバッテリー負荷が大きくなるということを実体験したのだった。

そして今・・・。果たしてこの状況では、どう判断するのがベストだろうか。結局、私は走行ペースを上げることにした。つまり、時間短縮という手段を選んだのだ。理由は簡単だ。照明灯が少ないこの道央自動車道では、ヘッドライト切れは死にもつながりかねない。雪道の高速道路を無灯火で走るのが危険なことは、誰でも容易に想像がつくだろう。また、制限速度いっぱいまでペースアップできるだけの速度的な余裕がまだ残っていたことも、そう決断した理由の一つであった。

私はエンジン回転速度を約2000rpmから約2600rpmへと上げて運転し始めた。この選択は凶と出るのか吉と出るのか? 自分を信じるしか無かった。苫小牧まで、あと約30km。バッテリー電圧はまだ10.2V。大丈夫、単位時間あたりの電圧降下具合は、ペースアップ以前とさほど変わらない。

しかし、落とし穴はあるものである。
最近のバッテリーは、最初のうちはなかなか電圧降下しない(徐々に消耗する)のだが、消耗がある程度まで進むと急激に電圧降下するのだ。かつてのバッテリーが次第に弱くなる特性を持っていたとすれば、最近のバッテリーは途中までは頑張るが突然死してしまう特性を持つのであった。

【図7】 電圧降下特性図 のイメージ
あくまでもイメージ図です

苫小牧東ICの料金所まであと2km程度の地点で、電圧はいよいよ約9.5Vにまで減っていた。ヤバイ。あとマイナスコンマ数ボルトでヘッドライトが消えてしまう。節電のため、ついには最弱設定だった暖房のスイッチも切ることに。見る見るうちにフロントウィンドウが曇っていく。こんな室内温度の低い状況では、曇り止め効果が謳い文句の 「香る、くもり止めクロス(ハイドロテクト技術で一躍名をあげたTOTOの、窓ガラスクロス Δ1)」 もまるで効果が無く、単なる窓拭きウエスと化していた。吐いた息がすぐに窓ガラスに氷結して視界をさえぎるのだが、それをただひたすら何度も繰り返しふき取るのみである。

その一方で同乗の家族は、と言うと、後部座席で両手を合わせてひたすら祈っていた。「神様、ホトケ様、お釈迦様、マリア様・・・。」 何もそこまでしなくても(苦笑)・・・と思いつつ、密かに祈りたい心境は私も同じであった。「札幌〜苫小牧」 間では、PA(パーキングエリア)はわずか2ヶ所しかなく、苫小牧手前の最後のPAは、もうすでに (バッテリーがまだ元気だったころに) 通り過ぎていたのだ。もはや走り続けるしかない。

そして何とか無事に苫小牧東ICの料金所に到着する。「やった!とりあえず高速道路での立ち往生だけは免れた・・・!」 料金支払いのため、運転席ドアを開けて対応する。パワーウィンドウは、仮に動くとしても (バッテリーにトドメを刺す恐れもあって) 使えないからだ。まぁ、雪国では寒さでウィンドウが凍り付いて動かなくなることもままあるから、ドアを開けてカードを差し出す私に、料金所の係員も別段驚いた様子を見せなかった。

ドアを閉め、料金所を出て加速した瞬間、ちょうどタイミング良く(?)ヘッドライトの片方が消えかかった。まるでヘッドライトそのものが、自ら消えるタイミングを推し測っていたかのようであった。もしあのとき、ペースアップせずに到着時間が今よりもう少しかかっていたら、どうなっていたか分からない。私の先ほどの選択は、とりあえずは 「吉」 という結果をもたらしたことになる。とは言え、全体として見ると、大きな 「凶」 という流れの中の小さな 「吉」 でしかないのだが・・・。料金所を出てから先は、単に高速出口までへの一般連絡道路になっている。やむなくヘッドライトを消灯し、スモールランプのみで、ゆっくりかつ慎重に進んでいった。

【図8】 連絡道路の地図
暗く狭い道路に思いがけず苦戦

ところがこの連絡道路、照明がほとんど無いのでホントに真っ暗だ。しかも出口までの距離が非常に長い(図8参照)。おまけに片側1車線のみで、停車できる待避所も幅寄せできる路肩もまったく無い(路肩は雪で覆われている)。さらには、まだ正月三が日のこんなに早い時間帯(1月3日の午前6時)だというのに、対向車も来る。対向車のドライバーにとっては、私の車輌は迷惑車輌だったに違いない。スモールランプのみの存在アピールでゴメンなさい。でも、この時の私は家族と犬2匹と借り物の携帯ナビ(>使えないけど)を乗せて、まさに必死の思いで走っていたのです。
 

6.「人事を尽くして天命を待て」 の巻
 

長く暗い連絡道路をやっとの思いで切り抜け、交差点を右折。ようやく国道36号線に出た。次に一番最初に視界に現れるコンビニが、緊急待避所になる予定だ。先ほどの祈りが通じたのか、コンビニはすぐに見つかった。滑り込むようにして駐車場にクルマを着ける。電圧は約8.8V。まさに綱渡り状態である。すぐに予備用のバッテリーに交換する。周囲はまだ薄暗く、気温は−13℃。冷凍庫並の温度であるが、交換作業自体はすぐに終了する。

停車ついでに犬の散歩を済ませ、辺りが明るくなるのをじっと待つ。ヘッドライトやスモールライトの点灯が不要になれば、そのぶん消費電力も抑えられるからだ。フェリー乗り場までは、あと約5〜6km。周囲の明るさ、出航までの時間的余裕、交通量が増える前のタイミング、の三者のバランスを見計らいながら、コンビニの駐車場を後にする。

しかし、載せ換えた新品バッテリーは小型のB24サイズということもあってか、こちらも電圧降下は想像以上の早いペースでやってきた。ヘッドライトはオフであるが、一定速度で淡々と走れば良かった高速道路とは違い、市街地では信号待ちによるゴー・ストップや右左折が多く、電気負荷が大きくなったと思われたからだ。MDMの表示を見ると、ブレーキを繰り返し踏むたびごとに、電圧が徐々に降下していくのが手に取るように分かる。リアルタイムでこういった現象をモニタしていると、ブレーキランプの点灯時間短縮を狙って思わず強めにペダルを踏んでしまいそうになるが、仮にそれを試みたところで、この苦しい状況を打破できるわけでもなく、また走行安全性にも欠けるのでそれは止め(やめ)にする。

それにしても、ブレーキランプの消費電力がこんなにも激しいとは新たな発見であった。今後は安全性向上(通電から点灯までの反応速度改善や、被視認性の向上)といった意味からも、ブレーキランプに小電力LEDを純正採用する車種は次第に増えてくるかも知れない。

さて、向かう先の 「苫小牧港」 は、往路で利用した 「苫小牧 港」 とは場所が全然異なり、高速のインター出口からは少々離れている。フェリー会社が異なるためだ。事前にフェリーターミナルの場所を地図で確認していたのだが、隣接した海岸通りまでたどり着きながら、実は貨物用の別ターミナルに向かってミスコースして引き返すことになってしまったのは、ここだけの秘密である(爆)。まったくこの非常時に、貴重な電力をムダに使ってしまった・・・。かつて、自動車川柳に 「(「五・七・五」調で) 自動車も ガソリン無ければ ただの鉄」 というものがあった。それを真似ると、今は 「我が愛車 電気無ければ ただの箱」 という心境である。

そうこうしているうちに、電圧は9.8V程度まで低下したものの、何とか正規のフェリー乗り場に無事到着。命がつながった。時間的には、出航の2時間前に余裕で到着する結果となったが、その内容は、まさに ”冷や汗モノ” の連続であった。

乗船手続き後、出航までまだ時間があるので、念のため電装系を再点検してみた。「オルタネータ〜ボディハーネス」 間のカプラに緩みや断線が無いかどうか。その他、周辺のヒューズを含めて異常は無いか。しかしながら、目視で分かるような不具合はどこにも無い。やはり原因はオルタネータ本体の故障だろう。・・・それにしても、乗船待ちのクルマの列の中でただ一人、早朝からボンネットを開けてオルタネータの純正部品番号を確認し、また外したパーツをエンジンルーム内に取り付ける作業にいそしんでいる私の姿は、奇異に映ったに違いない

ここでダメ元で、クルマの中からJAFに電話してみる。もちろんレッカー車を要請するためではない。オルタネータ関係のトラブルに関し、何か具体的な対処法が無いかどうか、参考情報を聞き出すためだ。このまま本州入りしても、すぐに電圧不足になるのは目に見えている。

私   : 「少々お尋ねしたいことがあるのですが・・・。」
JAF : 「はい、何でしょう?」
 
  私は、◎走行中にバッテリーチャージランプが点灯したこと
      ◎新品バッテリーに交換しても警告灯が消えないこと
      ◎オルタネータの駆動ベルトに滑りは無いこと
      ◎周辺ハーネスやカプラ類に異常はないと思われること

 
  などを告げ、このような症状に対し、何か他に点検すべき箇所(見落とした点)が
  無いかどうか、そして暫定対処法の有無を打診してみた。
 
JAF : 「運転手さんがそこまで確認されているのでしたら、まず間違いなく
      オルタネータの故障でしょう(爆)。ですから、オルタネータ本体を
      交換する以外に、有効な手は無いかと・・・。」
私   : 「やはりそうですか・・・。」
 
私   : 「ところでJAFさん、手持ちの交換用補修部品の中で、BGレガシィ
      向けのオルタネータなどをお持ちでしょうか(爆)?」
JAF : 「いや、そのようなものはありませんなぁ・・・。私どもにできることは、
      故障車を修理工場まで牽引するところまでであり、実際の修理に
      関しては、ディーラーや工場にお願いしていただくことになります。」
私   : 「了解しました。ありがとうございます。」

(注):上記の(爆)というのは、あくまでもその時のニュアンスを再現したものであり、
    決してJAFの担当者や私が投げやりに発言したというわけではありません。

やはりJAFでは、現場で復旧作業のできる項目は 「キー綴じ込み」 などの軽作業に限られているのであった。電話を終えてすぐに、私は車検証と共に保管していた 「メンテナンスノート」 を取り出した。青森県内のスバルディーラーを確認するためだ。メンテナンスノートの巻末には、スバルサービス網一覧が収録されており、全国のスバルディーラーの所在地と連絡先が記載されているのだ。それによると、フェリーの到着先である八戸市内には2軒のディーラーがあった。たった2軒と言うなかれ。今の私にとっては 「2軒も」 あるのだ。もし私が、旧車の外車 (例えばランチアなど) に乗っていたらどうなっていただろう。全国どこの外出先でも正規ディーラーの営業所があって修理を受けられるという安心感は、一部の外車ユーザーにはまことに失礼ながら、国産車の方に多少の分(ぶ)があるかも知れない。

すぐにフェリーターミナルの売店に引き返し、八戸市内の道路地図を買う。住所から所在地を調べてみると、おおぉ! 2軒のスバルディーラーは、どちらも八戸港から半径数kmほどの近距離にあるではないか! 「これならイケる。」 少しだけ不安が解消する。・・・だがまてよ? 車検証と共に保存してあった 「メンテナンスノート」 は、私がレガシィを購入したときに付いてきた冊子だ。つまり、そこに記載されている内容は6年前の情報・・・ということになる。中央スバルが東京スバルと合併して新生・東京スバルに生まれ変わったように、青森スバルでも、その6年間に店舗の移転や統廃合があるかも知れない。また、そういった最新情報は、このような道路地図にはなかなか反映されにくいものだ。今のうちにキチンと確認しておいた方が良い。

そこで念には念を入れ、フェリー乗り場(苫小牧)から八戸のディーラーに、記載されていた番号で電話をしてみた。すると、2軒ともちゃんと実在するスバルディーラーにつながった。もちろんつながったとは言っても、留守番テープによる音声案内が流れただけである。が、少なくともこれによって 「どちらのディーラーも、営業所名と電話番号には変更が無い」 ことが確認できたことになる。同時に、新年の営業開始は1月4日からであること、緊急の場合にはJAFを代わりに呼んで欲しいこと、などの情報もテープの案内から確認できた。確か東京スバルや札幌スバルでも1月4日から営業開始だったはずだから、今年はこの日が全国統一初売りフェアのようだ。

「う〜ん、それにしても、緊急の場合はJAFを呼ぶこと、か。JAFでは手に負えないから、こうして今ディーラーに電話しているんだけどな・・・。」 私は心の中でそうつぶやいた。今のオレも、交通事故の場合ほどではないにせよ、(これから先の行程を考慮すると) 緊急を要するトラブルと言っても良いだろう。

さて、八戸港を降りてから八戸スバルの営業所までの道順は事前確認できたものの、当面の問題はその営業開始日が1月4日であることだ。私たちの八戸港への予定到着日は、その前日の1月3日なのだ。つまり、ディーラーに入庫してオルタネータの修理を依頼する場合、八戸市内で一夜を明かし、営業開始まで待機しなければならないことになる。丸1日足止めを喰うのは痛いが、例年ならば営業開始はもっと遅い1月6日〜7日あたりからだったと思うので、むしろ今年は早めの初売りセール期間を設定してくれたスバル自動車販売に感謝すべきなのかも知れない。

そしていよいよ乗船時刻となった。家族は徒歩で乗船口から。運転手の私は犬2匹とともに、車輌搭乗口から乗船開始する。自主的に搭乗列の最後尾についた。が、私たちよりさらに遅れて到着してきた車両があり、レガシィのすぐ背後につけてきた。「あまりすぐ後ろに近づいてくれるなよ。搭乗スロープの途中でエンストして再始動不能になるかも知れないから・・・。」 などという懸念が一瞬だけ頭をよぎるが、エンジンの始動時間とアクセルワークを最小限に抑え、無事に乗船することができた。ここから八戸港までの所要時間は、約8時間半である。係員に誘導され、所定の位置にクルマを止めると、すぐさまボンネットフードを開け、バッテリー端子を外す男がひとり、車輌甲板にいたのは言うまでもない。

【図9】 車輌甲板にて

車輌甲板にて

乗船後もバッテリー端子を外す作業が待っていた。

こうして無事にデッキに乗り込んだあとも、のんきに落ち着いているヒマはない。やるべきことはたくさんある。次なる手配は、八戸到着後のホテルの宿泊予約だ。夏場で自分一人の場合には車中泊や野宿も可能だが、真冬のこの時期に家族連れでは、そうもいかない。果たして私たち ”飛び込み客” に、正月早々から都合良く空室を提供できるホテルはあるのだろうか?

先ほど買った地図上で、八戸市内のホテルの所在地をチェックする。もちろん、「八戸港(到着場所)〜スバル(ディーラー工場)」 とを結ぶ経路上にあるホテルが望ましい。万が一、宿泊翌日にホテルからスバルに向かう途中で自走できなくなった場合でも、ディーラー管理のレッカー車で牽引してもらいやすくするためだ。乗船前にフェリーターミナルの窓口でもらった宿泊ガイド (観光案内チラシ) も参照しながら、ホテルの候補を何件かに絞り込む。最近ではカタカナのホテル名も多いようだ。例えば駅前にも ○○キャッスル などというものがある。ということで、絞り込む過程で紛(まぎ)らわしかったことと言えば、有名なもの以外は、ホテルはその名前からだけでは、地元のビジネスホテルなのかラブホ(爆)なのか区別が付きにくかったこと・・・であろうか。

ホテルの候補が絞られると、今度は空室状況料金体系の確認も必要だ。順番に電話で確かめることにする。フェリーの沖合への進行とともに、携帯電話の感度もアンテナ圏外になってしまうため、今のうちに要領よく聞き出さなければならない。何件かに電話した結果、当初の希望通り、八戸フェリーターミナルからスバルディーラーに向かう途中にあるビジネスホテルを、飛び込み予約できた。これで、八戸に着くまでの間に船内で準備できることは、ほぼ手を尽くしたことになる。そしてしばらくすると、携帯電話のディスプレイからアンテナマークが次第に消えていった。

八戸港に着いてフェリーを降りた後、果たして無事にホテルまで自走できるであろうか? 札幌出発時に使った先発バッテリーはすでに電圧不足状態だし、今使っているバッテリーも、フェリー搭乗前にはすでに10Vを切るまでに低下している・・・。八戸港への到着時刻は夜間で、しかもフェリーを降りた直後から市街地走行になるので、電気負荷も当然大きくなるはずだ。せっかくホテルを予約しても、そこまで自力でたどり着けない恐れも出てきた。レッカー車で牽引されながらのホテル入りだけは、避けたいものである。「せめてバッテリー充電器が今ここにあれば、しっかりと充電できるのになぁ。でも、まさか帰省のたびごとに充電器を持参・携帯するヤツなんていないよなー。」 などと、自分で自分の発言にツッコミを入れてみる。

次にするべきことは、ペットの面倒を見ることだ。そのころ、ペットのプードルたちはというと・・・。そんなご主人たちの深刻な心配をよそに、別の意味でのツッコミを入れようとしていた。正月早々からサスケ(白色、オス、7歳)が、ヤマト(茶色、オス、1歳)相手に欲情していたのだ。何を血迷ったのか、同じオス犬相手に、後ろから怪しく激しい腰使い・・・そう、腰を前後に振るピストン運動を始めようとしているではないか。そのときの様子を激写したものが、以下の画像である。

【図10】 相手(茶色)も同じオス犬なのに、   
     怪しい腰使いを始めるサスケ(白色)

後ろから攻め立てる姿

一時の欲望に身を任せるサスケ

一時の欲望に身を任せるサスケ。なお右の画像がブレているのは、サスケの腰の動きが速いためである。

まったく時と場所も選ばずに、激しく 「行為」 に走ろうとするサスケ・オス7歳。人間で言うと、約50歳弱というころか。レガシィではトラブル続きであったが、フェリーに無事乗船できた今、犬なりに得ることのできた安心感が、サスケをそのような 「行為」 に至らしめたのかも知れない。まるで今までのウップンをはらすかのごとく、何度も何度も仔犬のヤマト相手に背後から覆い被さろうとする姿には、鬼気迫るものがある。その、相手の腰をつかんで自分の股間に押しつけようとする前足2本の力たるもの、人間でさえ容易に振り払うことが困難なほどであった。はた目から見ると体格的には勝るサスケなのだが、相手は幼犬でヒラリとかわしてしまう。そろそろ私もフェリーの部屋に戻らなければならないので、ここから先のことは、犬同士でお互いに問題解決してこの状況を打破してもらうことにする。果たしてその後、サスケが自己満足するに至ったのかどうかは定かではない。

ちなみに、ペットとして届け出をして誓約書を書けば、犬もペット専用室に預けて乗船できることになっている(航路によっては、船室には入れずに車内で待機させる場合もある)。なお、誓約書の内容とは、「航海中に万が一死亡した場合であっても、フェリー会社はその一切の責任を負わない。」 という主旨の条文への同意と押印である。
 

7.「恐怖の体験・その2」 の巻
 

フェリーは定刻通り八戸港に到着。1等客室から車輌甲板に降り立ち、バッテリー端子を元通りに接続する。周囲のクルマたちはみな車内でエアコンをかけて暖(だん)を取っているようであるが、こちらのレガシィには、暖機運転をするような電気的な余裕さえ無い。

船体ゲートが開くと、車輌甲板から出ていくクルマたちは、蜘蛛(くも)の子を散らすように夜の町へと消えていった。あたりはすでに暗く、交通量や人影はほとんど無い。かすかに雪も降っている。苫小牧港の沖合から電話予約をしておいた本日の宿 (地元のビジネスホテル) への道順は、すでにしっかりと頭の中にたたき込んである。距離は約4km。あとは運を天にまかせて、出発するのみである。

覚悟を決め、ヘッドライトをONにして走行する。まずフェリーターミナルを右に出て直進。交差点を過ぎ、次に高架の直前で脇にそれて信号を左折。片側2車線の県道19号線に出て、また直進。しばらく道なりに進む。津軽海峡によって隔てられた北海道とは寒さが異なり、外気温度は暖かめの2℃ほどである。路面は、シャーベット状に溶けた雪が、次第に氷膜へと姿を変えようとしている状態だ。この手の雪質は、ヘタな圧雪路よりも滑りやすいことがあるので要注意だ。

途中、つながりの悪い赤信号に何度も引っかかる。ブレーキングを繰り返すたびに、電圧が下降していく。現在、約9.5V。ヘッドライトはHIDに換装しているので、消費電力は約35W相当だ。通常のハイワッテージの高効率ハロゲンバルブ (例:消費電力55Wで80Wクラスの明るさ、などの表示がある) よりも消費電力は少なくて済んでいるハズだ。が、HIDの場合は電圧降下で次第に光が弱くなっていくのではなく、一気に消灯してしまうのは、すでに経験済み。油断はできない。ヘッドライトが電圧不足で消え入るのと、約2km先のビジネスホテルに到着するのと、どちらが先になるだろうか。

・・・などと思っているそばから、HIDが消灯してしまう。が、幸いなことに、この県道19号線は主幹道路のためか街灯が多く、また中古車店舗などの建物を映し出す照明も、道路沿いの歩道に点在していた。あたり一面が真っ暗だったフェリー到着ターミナルとは異なり、少なくとも対向車と後続車にとっては、このレガシィの存在がハッキリと認識され得るほどの明るい状況に周囲は転じていた。
 
バッテリー電圧を徐々に減らしながらも、レガシィはホテルを目指してそのまま直進していった。たった2kmほどの道のりが、こんなにも長く遠くに感じられることは、そう滅多には無い (・・・いや、正確には、つい数日前にも札幌で体験したばかりなのであるが・・・)。そして電圧はついに約9.0Vに。後席では、また無言の合掌と天への祈りが始まった。

八戸市内を流れる馬淵川を横断するため、立体交差点を左折する。そして橋へと続く交差道路との合流点に向かう。ここはゆるい上り坂になっており、また合流先の交通の流れが早いことから、今のうちから少しずつジワジワとアクセルを踏み増しして、加速体制を整えておかなければならない。ここで一気に加速するよりも、なるべく現状維持の運転方法を採りながら加速していった方が、電気的な平衡状態も保たれやすいのでは、と考えたからだ。今のレガシィは、持てるパワー(トルク)の数十分の一も発揮できない、悲しい280ps自主規制車である。

だが電圧降下はいかんとも防ぎがたく、橋の途中でついに8.8V前後にまでなった。Defi BF メータが作動していたら、表示ハンチングが起こる電圧である。限界電圧まであと少し。だが、目的地までもあと少しだ。・・・もしもこのまま無事に橋を渡り切ることができたなら、その先の交差点が最後の交差点だ。そこを右折しさえすれば、世を忍ぶ仮の宿 (ビジネスホテル) が左手方向に現れるハズである。だが、もしも橋を渡り切ることができなかった場合は? その時はその時ということで、今は考えないことにする。

運命の最後の交差点まで、あと100m・・・。そしてあと50m・・・。

いよいよあと30mほどに迫ったところで、目の前の交差点の信号が黄色から赤に変わった! すなわちそれは、減速が必要=ブレーキランプが点灯=電圧降下、を意味していた。減速して右折レーンにつけ、交差点で赤信号待ちをするレガシィ。これまでの経緯から判断すると、ブレーキランプを点灯させたあと、停止状態からの発進加速時に、電圧不足でエンジンが途絶える傾向があったと思う。果たして今回はどうであろうか? 無事に持ちこたえてくれるのだろうか? それとも・・・?

【図11】 最大のピンチ?

無事に切り抜けられるのか?

雪の中、前車のテールランプが余計に眩しく感じられてしまう。

信号が青に変わる。
周囲の様子を確認し、ギヤを1速に入れ、ゆっくりとクラッチペダルを戻し始める。

       ・
       ・
       ・

クルマはまだ動き出そうとしない。
クラッチペダルをさらに戻しながら、アクセルペダルを踏み込んでいく。

       ・
       ・
       ・

まだ動かない。
さらにゆっくりとアクセルペダルを踏み込んでいく。

       ・
       ・
       ・

レガシィは、ようやくじわりと動き出した (ようにも感じられる)。
実は、交差点は微妙な下り坂になっているのだ。
クラッチミートをしながら、さらにアクセルペダルを踏み増しする。すると・・・?!

 

すると、ようやくレガシィは動き出した。
ここでウィンカーレバーに手を伸ばす。
そしてレバーを倒し、右折の合図を開始する。

       ・
       ・
       ・

インパネ内の右折表示灯が、緑色の光を放ち、点滅しようとする。
同時に、バッテリー表示電圧が上下に振れ始めた。と、次の瞬間、途絶えた?!






次の瞬間、途絶えたのは対向車の列であった。

レガシィは何事も無かったかのように右折開始し、その交差点から50mほど進んだところで、ビジネスホテル (本日の目的地) を確認。その駐車場はホテルに隣接し、運良くこの道路沿いにあった。そのまま前進姿勢で駐車場内に入り、白線の枠内に駐車する。バッテリー電圧を読み取り、車輌にその他の異常が無いことを確認し、最後にエンジンを切る。やった。ついにやった。祈りはまた通じたのだ。・・・無事にビジネスホテルにたどり着いた瞬間だった。

再びバッテリーの端子を外し、チェックインの手続きも済ませ、最小限の荷物とともに部屋入りする。想像していたよりもキレイな部屋だった。同時に犬たちを散歩に連れていき、食事を与える。ようやく本日の、いや今回の帰省の、第2の山場を乗り切ったのだ。これで明日は、クルマをディーラーに搬入すれば良い。

安心したのは私たちだけではなく、犬たちも同様だったようだ。お互いにジャレあうサスケ(白色・オス・7歳)とヤマト(茶色・オス・1歳)。私はしばらくその光景に目をやっていたが、元気を取り戻したサスケは、何と自分の股間を再び相手の腰にコスりつけようと、躍起(やっき)になっていた。そうか、あのとき、フェリーの中でサスケは完全燃焼していなかったのだ。欲情に身を任せ、背後からヤマトに迫るサスケ。・・・最近は 「お茶犬」 やら 「癒し犬」 やら、「○○犬」 というのが世間で流行っているが、さしずめ今のサスケは 「絶倫犬」 というところか。ともにオス犬であることは、この際、関係ない。ついに2匹のオス犬は、馬乗りになって重なり合うことに。その時の様子を激写したものが、次の画像である。参考までに、「お茶犬」 の画像も載せておく。

【図12】 馬乗りになる2匹の犬(画像左と中央)。画像右は「お茶犬」。
相手をつかむ力は強烈だ。 もう誰にも止められない? お茶犬
犬なのに 「馬乗り」 とは、これ如何に。なんちて。こちらは 「絶倫犬」 とでも言うところか? キャラクタードッグの 「お茶犬」。口の中にお茶の”香り袋”を内蔵。

さて、落ち着いたところで明日1月4日の段取りを確認しておく。

まず、実際にディーラーに車輌を入庫させる前に、今回のトラブルに関しての概要と、こちらの要望とを事前に電話で説明しておいた方が良いだろう。そうしておかないと、万が一、ホテルを出てからディーラーの営業所に着くまでの間に立ち往生してしまった場合、すぐにレッカー車の対応ができない恐れがあるからだ。また、ディーラー到着後に初めて修理依頼を出していたのでは、実際にメカニックが対応できるまでに時間を要する恐れがある。トラブルの詳細については、実車を前にして現場で説明するとしても、最低限、「何のトラブルで」 「結局何を」 「どうしたいのか」 といった情報をあらかじめ伝えておいた方が、相手側の対処も素早くなると思ったからである。

新春初売りフェアは、たぶん、朝10時前後から開始されるだろう。ディーラー内部での新年の挨拶やミーティング (申し送り) が終わったころを見計らって、直接メカニック担当者に電話すれば良い。あとは、年明け早々、新品のオルタネータが手配できるかどうかになるだろう。

果たしてパーツセンターも、1月4日の全国統一初売りセールに合わせた営業体制になっているのだろうか?ディーラーに無事入庫できたとしても、実は部品欠品のため修理ができない・・・という事態も覚悟しておかなければならない。いや、そのときは、ディーラーの中古車センターから同年式のレガシィを探し出し、その中古車からオルタネータを剥ぎ取ってもらうよう、交渉するしかない。私たちは何としてでも東京方面に向かわなければならないのだ。
 

8.オルタネータ交換の巻
 

翌朝、予定通り、朝10時ころディーラーに電話する。

丁寧な対応の女性が出た。「レガシィの故障の件で相談させていただきたいことがありますので、技術的なお話しができるフロントの方をお願いします。」 と切り出し、すぐに担当者に取り次いでもらう。すると、また丁寧な口調のメカニックさんが対応してくれた。このメカニックさん、後ほど判明するのだが、実はディーラーの工場長さんであった。電話越しに今回のトラブルの概要を説明し、以下の内容を付け加えた。

  ◎故障原因がオルタネータにあると推定されること。
  ◎それを検証して欲しいこと。
  ◎ディーラーまで自走しきれなかった場合には、レッカー車で牽引して欲しいこと。
  ◎替えのオルタネータが無い場合には、「新品の代金+付随工賃」 を支払う決意がある
    ので、代わりに同型の中古車から互換性のあるオルタを調達し換装して欲しいこと。
    (その際は、後ほど新品のオルタが入荷した時点で、はぎ取った中古車に補てんして欲しいこと。)
  ◎その他、詳細な点については、実車の前で説明するつもりであること。
  ◎修理に取りかかっていただく間、予備のバッテリーも少々充電しておいて欲しいこと。
    (もちろんFULL充電が可能なほどの時間は取れないであろうが・・・。)
  ◎本日中に東京に向かって出発したいこと (←これは単にこちらの都合であるが)。

工場長さんはうなずいた。「分かりました。とりあえずこちらに来て下さい。何かありましたら、またお電話下さい。」 「ありがとうございます。到着は10時半ころを予定していますので、よろしくお願いします。」 と伝え、私は電話を切った。

準備が出来上がり、いよいよ八戸スバルの営業所に向けて出発する。バッテリー端子を接続し、エンジンを始動させる。緊張の一瞬だ。イグニッションキーを回してから実際にエンジンが始動するまで、一連の作動時間をつかんでおく。クランキング時間の長短で、バッテリーの衰弱具合を大雑把 (おおざっぱ) に推定できるからだ。「キーON → クランキング開始 → 初爆 → クランキング継続 → 完爆 → キーを戻す。」 今回はあくまでも体感時間で、であるが、約1.5〜1.6秒ほどで始動完了した。通常ならば、約0.8〜1.2秒ほどである。

一晩明けたあとのバッテリー電圧は、約9.0V。ヘッドライト (実際にはスモールランプのみになるが) の点灯も不要だ。これなら、ほぼ大丈夫だろう。ビジネスホテルの駐車場を出て、慎重にクルマを走らせる。今は 「クルマに乗る/乗り込む」 という感覚ではなく、「(ドライバーが自分の管理下に置いた) クルマを走らせる/運行させる」 ・・・という能動的な感じだ。昨夜とは異なり、今朝は交通の流れも順調だ。そしてレガシィは無事にディーラーにたどり着いた

新年早々、店舗は来客で賑(にぎ)わっていた。クルマを入口の脇に止め、直接フロントへ。「事前に電話連絡していた者ですが・・・。」 「あぁ、お待ちしておりました。」 簡単なやりとりのあと、実車の前に移動する。最初に、今回のトラブルの原因が、本当にオルタネータなのかどうかの確認をしてもらわなければならない。ディーラーでの初期検査方法は、拍子抜けするほど簡単だ。

  (1)まず、エンジンを始動させる。始動までに約3〜4秒ほどを要したが、何とかエンジンはかかった。
  (2)その状態で、バッテリー端子を外すのだ。
  (3)そこでエンジンが切れたら、発電無し状態でほぼオルタネータ故障に間違いないと判断される。

というものだった。もちろん、この判定方法は簡易版であって、正式には診断テスターを用いることになる。

  「こりゃ、ほぼ完全にオルタがダメになったと言えますね。」
  「やはりそうですか。で、替えのオルタはあるのですか?」
  「在庫の有無は、まだ部品センターに打診できないので何とも・・・。
   新品だと、確か7〜8万円くらいしますよ?」
 
  「(なにー?! はちまんえん?? ウソだろ? Yahoo!オークションでは、
   中古品なら開始値 3000円〜5000円 くらいから出品されているぞ。
   新古品なら 8000円〜12000円 からだ。しかも、誰も入札しないので、
   いつまでも回転寿司状態になったままのことが多いぞ・・・。
   そんなに高いのかどうか、あとでパーツリストで値段を調べてみよう。)」

・・・などとは決して口に出さず、「それでは中古品で在庫はないでしょうか?」 と打診してみる。

ついでに、同年式の中古車から剥ぎ取ってでも、すぐに直したいと思っていること、また新年早々のため出勤しているメカニックが限られ、もしも作業工数が不足しているのなら、部品さえ手に入れば私自身が (一般のお客様のジャマにならないように注意しながら) 今ここで実作業をする覚悟さえある、という旨を伝える。もちろん、ユーザー自身がディーラーの軒先を借りて作業することが迷惑なようなら、絶対に差し控える必要があるのだが、要するに、それくらいこちらは切羽詰まった状態だということをアピールしたかったのだ。何せ、ここ八戸から自宅の調布に戻るまでには、少なく見積もってもまだ600kmほどの距離がある。

「中古の在庫があれば、1時間ほどで修理完了となりますよ。確認してみましょう。」
工場長さんはサービスフロントの奥に引っ込んでいった。

30〜40分後、ディーラーの下請け業者と思われる電気屋さんが到着した。「SUBARU」 のネーム入りのつなぎを着用してはいるが、オルタネータなどクルマに使われる電気部品を専門にリビルト (オーバーホール) している、出入りの業者さんだ。もしかすると本当は営業日ではなかったところを、工場長さんからの依頼で特別に修理に来てくれたのかも知れない。私は 「よろしくお願いします。」 と頭を下げ、また同じようにトラブルの概要を説明した。業者さんは診断テスターを取り出し、その配線をオルタネータや車輌のカプラに接続し、現状の電気状態を把握していった。

【図13】 修理作業風景。専用のテスターを用いて診断する。
故障原因の確認 テスターの外観
トラブルの種類に応じて、処置すべき診断結果のランプがそれぞれ点灯する(例:赤く点灯→オルタ本体の交換、など)。

やはり、「 オルタネータ本体の故障 → 要交換」、と出た。修理業者さんは、私にこう問いかけた。

  「新品ではなく、中古のリビルト品になりますが、それでも良いですか?」
  「ええ、直るのでしたら、リビルト品でも全然構いません。」
  「残念ながら、今は日立製オルタネータの在庫がありません。
   リビルト品にすると、メーカーが異なってしまいますが、それでも良いですか?」
  「ええ、互換性があって適用可能なら、どこのメーカーでも構いません。」
  「もう一度聞きますが、本当に他メーカーのリビルト品になっても良いですか?」
  「ええ、構いません。今は直す(自走可能とする)ことを第一優先で、お願いします。」

たとえ交換部品が互換性を有するものであっても、現状の部品とは異なるものになる場合、実際の作業前に、必ずユーザーにその旨を説明することになっているような感じであった。どうやらそのような対応マニュアルがあり、きっと告知&確認が義務付けられているのだろう。ちなみにオルタネータの部品番号は、「交換前 : 23700AA211F(日立製) → 交換後 : 23700AA270(三菱製)」 である。

修理業者さんはかなり年輩の方であったが、その作業にはムダが無く、あざやかに作業を進めていく様子からベテランらしさが読み取れた。安心して作業をお任せし、私はここで改めて営業所内の様子を見渡してみた。広く明るい店内に、休憩 (または商談) 用のテーブルとイスが配置され、そこにはお菓子も配されている。また、今や営業所内には必須と思われる、子供用の遊び場エリアも入り口近くに確保されている。子供連れのファミリー層を取り込めないようでは、営業所としては生き残れないだろう。カウンターには販促グッズの他、この営業所独自の政策からと思われる、来客者用の無料配布みかんが山積みされていた。こう書くと大変失礼ではあるが、スバルにしては、なかなか良い雰囲気だという印象を持った。

数十分後、オルタネータの交換作業が終了。セルは調子よく回り、エンジンが息を吹き返す。インパネ警告灯のチャージバッテリーランプとパーキングブレーキランプも、無事に消灯している。しばらくの間、このままアイドリング状態をキープして様子を見ることになるが、このぶんだと、お昼過ぎには何とか東京に向けて出発できそうだ。壊れたオルタネータは業者さんが引き取っていったため、具体的な故障部位までは特定できなかったが、結局、今回の修理はオルタネータのオーバーホールという扱いとなり、工賃を含めた総費用は4万円弱となった。新品でなくても、結構費用がかかるものである。昨夜のビジネスホテル代といい今回の修理代といい、冒頭でも述べたように、あらかじめ旅費を余分に引き出しておいて正解であった。旅先ではどんなトラブルが待ち受けているか分からない。

【図14】 今回お世話になった営業所にて。
修理後に最終点検をしているところ

フロントにて代金を支払う際、多分明確な答えは返ってこないだろうと思いながらも、私は次のように聞いてみた。

  「今回のレガシィは、初年度登録から6年が経過した走行距離6万kmの車輌ですが、
   6万kmでオルタネータが故障する例は、私の知る限り聞いたことがありません。
   果たしてこのような走行距離でも、故障することがあるのでしょうか?」
  「う〜ん。確かに走行距離的には少ないですよね。ただ、こればかりは、おクルマの
   使用状態にもよりますので・・・何とも言えないですね。」

  「今後の再発防止のために、クルマの使用状況として、例えばどんなことに気をつけると
   良いでしょうか? 一概には言えないでしょうけど、もし何かありましたらお願いします。」
  「そうですねぇ。強いて言えば、オーディオに凝ったクルマ・・・ハイパワーアンプ積み〜の、
   サブウーハー積み〜の・・・といったクルマは電気負荷が大きいので好ましくないです。」
  「なるほど、ズンドコ系ですか。その他は特にこれといった傾向性は無いでしょうねぇ。」
  「ええ・・・。」
  「どうもありがとうございました。」

工場長さんは別件で出かけてしまっていたが、お礼を伝えていただくようフロントマンにお願いした。そして先ほどまでの修理の間、念のため・・・といった意味合いから少々の充電をお願いしておいた先発バッテリーを引き取り、八戸の営業所を後にしたのだった。その後は国道4号線から各地の 「道の駅」 で休憩を取り、クルマの様子に問題が無いことを確かめながら南下した。途中から東北自動車道に乗り、外環自動車道を経由して、当初の予定より丸1日遅れではあるが東京 (調布市) に到着した。「無事に戻って来られた・・・!」 もちろん、その間の車内は、適切な空調の元で快適な音楽、そして安心感に満ちあふれていたことは言うまでも無い。

「2002年・年末 → 2003年・正月」 の帰省旅行―――。今だからこそ笑い飛ばせるが、反省点のある、しかし貴重な体験をしたこの日々のことを、私たち家族は今後も忘れることは無いだろう。
 

9.あとがき
 

今回のレポートは思いのほか長文になってしまいましたが、そのぶん、当時の様子をなるべく忠実に再現しました。特に、私が取った行動のそれぞれには、その判断根拠となる推敲過程も描写してみました。ただし、まったくの第三者がこのレポートを見た場合、単純に 「な〜にやってんだか・・・。最初からムリして走らなくてもイイじゃん。」 という感想を持たれるかも知れません。極論してしまえば、まぁ確かにその通りなのですが、今回のレポートでは、

 ◎一見、何でもないようなトラブルも、その発生タイミングによっては対応に苦労すること。
 ◎トラブルの影響や対応策についての推測を誤ると、惨事にもつながりかねないこと。
 ◎限られた条件下であっても、熟考して最後まで手を尽くす努力を惜しまなければ、
   ピンチを切り抜けられる可能性も広がること。
 ◎普段からクルマの状態について把握し、また長距離ツーリングなどイベント時
   には、周辺事項も含めた事前準備も十分にしておくことが重要であること。
 ◎どんなときにも、なるべく落ち着いて冷静な判断で対処するよう心がけること。
 ◎「自分で出来ること」 と 「自分では出来ないこと」 の見極めをしっかりもつこと。

といったことを伝えたかったワケです。もちろん、私が取った行動の中にも反省すべき点が内包されているであろうことは、私なりに認識しているつもりです。今回はそれらをすべて含めた状態でレポートすることで、読者の方々にはそこから何かを感じ取っていただければ・・・と思うのです。そういった意味合いから、長文にも関わらず最後までこのレポートを読んでいただいた方々には、お礼申し上げます。また実際の修理にあたり、色々と対応して下さった八戸スバルの営業所の皆さんと業者さんにも、この場を借りて厚くお礼を申し上げる次第です。

そうそう、最後に2点だけ、付け加えることがありました。

◎その1 「オルタネータの新品価格は、一体いくらなのか?」

手持ちのパーツリストで調べてみたところ、BGレガシィ (後期GT-B) 用としては、’02年6月時点で、6万円という価格設定になっていました。8万円まではしないことが分かりましたが、やはり高価です。ところでパーツリストによると、レガシィ全体では、オルタネータの部品番号は頻繁に変わっています。装着に際しての機械的な取付互換性が保たれているとすれば、部番が新しい (後から適用された) ものほど、例えば発電容量が増えたとか軽量化されたとか、何らかの改良やコストダウンが内部に施されているものと考えられます。

古いクルマと違い、現在のクルマはTVやナビゲーションシステムなど、消費電力の大きな用品が純正採用される時代ですから、オルタネータもそれに対応すべく、きっと高容量化されているのでしょう。そういった意味では、互換性があるならより新しい型番の方が良いような印象を持ちます。ただし、実際には 「(低燃費化のための)オルタネータ発電制御」 など、古いクルマには無かった機能への適応が図られたオルタネータもあるようですから、やむなく流用する場合であっても、やはり標準装備品またはそれに近いタイプのものまでに抑えておいた方が、トータルでは余計な心配やムダが省けて良いのではないか、と思います。

◎その2 「サスケとヤマト (ともにプードル犬のオス) の、その後は?」

犬の寿命は、その種類にもよりますが、約12〜15年ほどだと言われています。また、2〜4歳頃には、もう自分の子供を作る (産む) ことができるようです。我が家のプードル2匹を人間にたとえると、サスケ(オス7歳)は もはや脂の乗り切った立派な中年であるのに対し、ヤマト(オス1歳)は まだ世間知らずのやんちゃ坊主、といった感じになるでしょうか。

今回の帰省旅行では、サスケのなすがままにされていた感のあるヤマトでしたが、自宅に戻ってきてからは、ヤマトもやられてばかりではありませんでした。いつの間に覚えたのか、今度はサスケを相手に、後ろから腰を前後に激しく動かすアクションを修得していました。・・・誰だい?! 「犬は飼い主に似る。」 な〜んて言っているのは! ちなみに、こう見えても、2匹とも由緒有る 「血統書付き」 なんですからね!
 

 
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