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2015.07.20. 掲載
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目次
はじめに
医師2年目から3年目までの診療250症例
この診療症例の意味
まとめ
私は1962年5月、医師免許を取得し、阪大第一外科へ学友7名と共に入局し、外科医師としてハードなトレーニングを受けた。
翌1963年6月から1965年6月まで、川崎病院林田分院外科へ2年間の出張勤務を命じられた。大学では受持医として専門的な医療の見習いが中心でであったが、ここでは一般外科を中心に、関連する他科も含め、第一線で主体的に医療に従事した。
大学へ帰局する3ヶ月くらい前から、ここで経験した症例の内、自分が記録として残しておきたいと思う250の症例を、約5000件の全カルテから選び出し、その要点を図1のような形式でまとめて転記した。
1.name 氏名 m,f 男,女 No. カルテ番号
2.duration 通院期間 ad. 入院期間
3.characteristic 特徴
4.diag. 診断
5.anamnesis 病歴
6.finding 所見
7.course 経過
1963年のカルテは2,920件、1964年は2,480件で合計5,400件だった。私の勤務した期間とは6ヶ月ずれるが、ほぼ5,000件であったと推定して良いだろう。入院手術は64年が317件、65年が272件で、合計589件となる、私の経験した症例も500件程度と考えても良いだろう。私が選んだ症例の大部分は入院手術と関係しているので、その内の約半数近くの症例を転記したことになる。
2年間の入院手術の内訳は、虫垂炎351、肛門55、ヘルニア52、泌尿器41、胃17、骨14、その他49で、合計579名であった。全手術症例の中で虫垂炎手術は351件61%を占めているが、転記した症例は、私にとって重要と思うものを選んだので、虫垂炎の手術は43件12%である。
この50年前の記録を、これまでほとんど目を通すことなく、書庫の片隅に保管してきた。これをまとめてウエブサイトに記録として残すことについてはかなりためらいがあった。1枚で収まる症例から数枚に及ぶものまで内容は多岐にわたる。それをまとめることは大変な作業だ。残り少ない生きている時間を費やすほどの意味があるのだろうか?
1週間ばかり思案したが、やはりまとめることにした。膨大な資料から要点を抜出し、それをまとめ、構築する作業は私がしたいことの一つである。だから、それだけでも意味があると思った。そのほかの意味は、まとめたあとで考えれば良い。
作業を始めると、いつもの通り非常に面白く楽しい。50年前の情景が思い浮かぶ症例もある。この結果からどのような意味づけができるのか、それにもまた興味が湧く。
1963年6月から1965年6月までの2年間に川崎病院林田分院外科で経験した約5000件の症例の内、私が重要と判断してカルテから要点を転記した250症例のまとめである。表計算ソフトEXCELで集計、Mifesで編集し、HTML文書を作成した。転帰欄の●は死亡を、⇒は転医を示している。
部位 病名 性 年齢 手術 麻酔 投薬注射 特殊検査 転帰 --------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- 1.頭部 脳挫傷 ♂ 41 髄液 ⇒ 脳震盪症 ♂ 51 頭蓋内腫瘤の疑い ♂ 54 髄液眼底CAG 頭部外傷後遺症 ♀ 17 CAG 頭蓋内出血 ♂ 39 髄液脳波CAG 頭部外傷 ♂ 40 脳波眼底CAG 頭部外傷 ♂ 22 髄液CAG 脳挫傷 ♂ 10 ● 頭部膿瘍 ♂ 14 ● 外傷性てんかんの疑い ♂ 57 脳波 ⇒ てんかんの疑い ♂ 19 髄液脳波眼底 後頭部粉瘤腫 ♀ 15 摘出術 局麻 眠剤中毒 ♂ 22 胃洗浄 眠剤中毒 ♂ 3 胃洗浄 2.顔面 三叉神経痛 ♂ 36 局麻 耳介腫瘤 ♂ 54 摘出術 局麻 耳介下部膿瘍 ♀ 57 摘出術 局麻 耳介下部嚢胞性腺腫 ♂ 54 摘出術 局麻 顔面膿瘍 ♀ 38 アイロゾン 口唇粘液嚢腫 ♂ 摘出術 局麻 顔面四肢第二期梅毒 ♂ 48 PC連日注 Wa-R 部位 病名 性 年齢 手術 麻酔 投薬注射 特殊検査 転帰 --------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- 3.頚部 甲状腺癌(乳頭状腺癌) ♀ 54 摘出術 局麻 嚢腫造影 正中頚瘻 ♀ 6 瘻孔摘出術 全麻openD 頚部リンパ節結核瘻孔形成 ♀ 43 瘻孔掻把術 局麻 INAH SM散布 頚部リンパ肉腫 ♂ 60 摘出術 局麻 病理組織検査 ⇒ 頚部リンパ節結核 ♀ 37 摘出術 局麻 三者併用 頚部結合組織結核 ♂ 27 摘出術 局麻 SM INAH 病理組織検査 頚部嚢腫 ♀ 31 摘出術 局麻 病理組織検査 4.胸部 多発性関節リウマチ 肺癌の疑い ♂ 63 ⇒ 右前胸部切刺創 血気胸 ♂ 21 肋膜縫合 局麻 5.乳腺 右乳房右上肢細網肉腫 ♀ 74 試験切除 局麻 病理組織検査 ⇒ 左乳腺粘液腫性繊維腫 ♀ 45 摘出術 局麻 病理組織検査 左乳腺繊維腫 ♀ 37 摘出術 局麻 病理組織検査 右乳房線維腺腫 ♀ 23 摘出術 局麻 病理組織検査 左乳がん ♀ 57 試験切除 局麻 病理組織検査 ⇒ 右乳腺腫瘤(乳腺炎) ♀ 31 試験切除 局麻 病理組織検査 6.背部 右背部帯状ヘルペス ♂ 54 軟膏鎮痛薬 脊椎カリエス 圧迫性脊髄炎 ♂ 37 第12胸椎第1腰椎圧迫骨折 ♂ 19 経過観察 第12胸椎 ♀ 42 経過観察 部位 病名 性 年齢 手術 麻酔 投薬注射 特殊検査 転帰 --------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- 7.上腹部 急性胃炎 ♂ 15 胃洗浄 虫垂切除後の腸管癒着 ♂ 23 腸管癒着除去 全麻挿管 胃部激痛担送入院 ♂ 46 ● 慢性胃炎 ♂ 44 胃切除術B2 全麻挿管i 病理組織検査 胃潰瘍 ♀ 44 胃切除術B2 全麻挿管 病理組織検査 胃潰瘍 ♂ 44 胃切除術B2 全麻挿管i 病理組織検査 胃潰瘍 ♂ 54 胃切除術B2 全麻挿管i 病理組織検査 胃潰瘍 ♂ 51 胃切除術B2 全麻挿管 病理組織検査 胃潰瘍 ♂ 47 胃切除術B2 全麻挿管i 病理組織検査 胃潰瘍 ♂ 40 胃切除術B2 全麻挿管i 病理組織検査 穿孔性幽門部潰瘍 ♂ 胃切除術B2 全麻挿管 病理組織検査 胃がん ♂ 50 胃切除術B2 全麻挿管 病理組織検査 胃がん ♂ 胃切除術B2 全麻挿管 病理組織検査 ● 胃がん ♂ 胃切除術B2 全麻挿管 病理組織検査 ● 胃がん 肝がん ♂ 62 ● 8.右季肋部 胆嚢炎 肝炎 ♂ 21 SM連日注 胆嚢造影 胆嚢症 ♀ 38 経過観察 胆嚢炎 肝炎 ♂ 57 SM連日注 胆嚢造影 ⇒ 総胆管結石 胆嚢炎 ♂ 18 胆嚢切除胆管切開術 胆嚢胆管造影 肝がん 幽門部通過障害 ♂ 59 胃腸吻合術 全麻挿管 ● 部位 病名 性 年齢 手術 麻酔 投薬注射 特殊検査 転帰 --------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- 9.中腹部 臍ヘルニア ♀ 5 ヘルニア根治手術 全麻openD 嵌頓臍ヘルニア ♀ 68 ヘルニア嵌頓整復術 局麻 腸管内針金2本(8cm 6cm) ♂ 15 自然排出 10.下腹部 急性汎発性腹膜炎 ♀ 30 下腹部正中切開術 腰麻 細菌培養感受性 骨盤腹膜炎 ♀ 41 下腹部正中切開術 腰麻 細菌培養感受性 下腹壁膿瘍 ♂ 膿瘍切開術 腰麻 細菌培養感受性 イレウス(S字状結腸捻転) ♀ 56 S字状結腸切除術 局麻 注腸透視 イレウス(子宮がん癒着) ♀ 57 回腸切除術 腰麻 イレウス(結核性腹膜炎) ♂ 壊死状肥厚大網切除 腰麻 三者併用 病理組織検査 イレウス(S字状結腸捻転) ♀ 58 S字状結腸切除術 腰麻 イレウス(虫垂切除後の小腸癒着) ♀ 61 癒着部剥離 腰麻 細菌培養感受性 急性穿孔性腹膜炎(虫垂穿孔) ♂ 12 虫垂切除術 腰麻 腸管癒着症(大網と癒着) ♀ 56 大網剥離切除術 腰麻 腸通過障害 ♂ 37 経過観察 膀胱結石 ♂ 35 膀胱切開結石摘出術 腰麻 膀胱鏡 膀胱がん ♂ 52 トヨマイシン注 膀胱鏡 ● 部位 病名 性 年齢 手術 麻酔 投薬注射 特殊検査 転帰 --------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- 11.右下腹部 急性虫垂炎 ♂ 14 虫垂切除術 腰麻 急性虫垂炎 ♀ 62 虫垂切除術 腰麻 急性虫垂炎 ♂ 34 虫垂切除術 腰麻 急性虫垂炎 ♀ 9 虫垂切除術 腰麻 急性虫垂炎 ♀ 16 虫垂切除術 腰麻 急性虫垂炎(クローン氏病の疑い) ♀ 25 虫垂切除術 腰麻 急性虫垂炎 肝機能障害 ♂ 44 虫垂切除術 腰麻 急性虫垂炎 右外鼠径ヘルニア ♂ 31 虫垂切除術 腰麻 急性虫垂炎(肺炎双球菌性腹膜炎) ♀ 13 虫垂切除術 腰麻 急性虫垂炎(伝染性軟属腫) ♂ 6 虫垂切除術 腰麻 急性虫垂炎(急性腹症の疑い) ♂ 虫垂切除術 腰麻 急性壊疽性虫垂炎 ♀ 26 虫垂切除術 腰麻 急性壊疽性虫垂炎(妊娠5ヶ月) ♀ 28 虫垂切除術 腰麻 プロルトン注 細菌培養感受性 急性壊疽性虫垂炎 ♂ 23 虫垂切除術 腰麻 急性壊疽性虫垂炎 ♂ 虫垂切除術 腰麻 急性壊疽性虫垂炎(妊娠7ヶ月) ♀ 虫垂切除術 腰麻 プロルトン注 急性壊疽性虫垂炎 ♂ 5 虫垂切除術 全麻openD 急性壊疽性虫垂炎 ♂ 10 虫垂切除術 腰麻 急性壊疽性虫垂炎 ♂ 19 虫垂切除術 腰麻 急性壊疽性虫垂炎(妊娠7ヶ月) ♀ 26 虫垂切除術 全麻openD プロルトン注 虫垂膿瘍 ♂ 15 膿瘍摘出術 腰麻 回腸末端炎 ♂ 35 胃透視、注腸透視 急性穿孔性腹膜炎 ♀ 59 虫垂切除術 排液 腰麻 急性穿孔性腹膜炎 ♀ 59 虫垂切除術 排液 腰麻 SM CM 急性穿孔性腹膜炎 ♂ 27 虫垂切除術 排液 腰麻 SM CM 急性穿孔性腹膜炎 ♀ 12 虫垂切除術 排液 腰麻 SM CM 急性穿孔性腹膜炎 ♀ 30 虫垂切除術 排液 腰麻 SM CM 急性穿孔性腹膜炎 ♀ 28 虫垂切除術 排液 腰麻 SM CM 急性穿孔性腹膜炎 ♂ 26 虫垂切除術 排液 腰麻 SM CM 急性穿孔性腹膜炎 ♂ 55 虫垂切除術 排液 腰麻 SM CM 急性穿孔性腹膜炎 ♂ 44 虫垂切除術 排液 腰麻 SM CM 急性穿孔性腹膜炎 ♂ 虫垂切除術 排液 腰麻 SM CM 急性穿孔性腹膜炎 ♂ 27 虫垂切除術 排液 腰麻 SM CM 急性穿孔性腹膜炎 ♂ 32 虫垂切除術 排液 腰麻 SM CM 急性穿孔性腹膜炎 ♂ 27 虫垂切除術 排液 腰麻 SM CM 急性穿孔性腹膜炎 ♂ 67 虫垂切除術 排液 腰麻 SM CM 急性穿孔性腹膜炎 ♂ 27 虫垂切除術 排液 腰麻 SM CM 急性穿孔性腹膜炎 ♀ 56 虫垂切除術 排液 腰麻 SM CM 急性穿孔性腹膜炎 ♂ 11 虫垂切除術 排液 腰麻 SM CM 急性穿孔性腹膜炎 ♀ 52 虫垂切除術 排液 腰麻 SM CM 急性穿孔性腹膜炎 ♂ 19 虫垂切除術 排液 腰麻 SM CM 急性穿孔性腹膜炎 ♀ 16 虫垂切除術 排液 腰麻 SM CM 急性穿孔性腹膜炎 ♂ 23 虫垂切除術 排液 腰麻 SM CM 急性穿孔性腹膜炎 ♂ 7 虫垂切除術 排液 腰麻 SM CM 右卵管炎 ♀ 74 排液 腰麻 右卵管腫瘤 ♀ 腫瘤摘出 排液 腰麻 右卵管水腫 ♀ 36 注腸透視 右卵巣嚢腫(卵巣出血) ♀ 35 虫垂切除 卵管切除 腰麻 右卵巣嚢腫(卵巣出血) ♀ 21 卵巣卵管摘除術 腰麻 左卵巣嚢腫 急性虫垂炎 ♀ 38 虫垂切除 左卵巣切除 腰麻 左卵巣出血 急性虫垂炎 ♀ 18 虫垂切除 左卵巣部分切除 腰麻 左卵巣出血 急性虫垂炎 ♀ 24 虫垂切除 左卵巣部分切除 腰麻 腹壁瘢痕ヘルニア(虫垂切除術後) ♀ 61 ヘルニア嚢切除術 腰麻 S字状結腸がん膀胱壁浸潤 ♂ 66 ● 部位 病名 性 年齢 手術 麻酔 投薬注射 特殊検査 転帰 --------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- 12.鼠径部 右内鼠径ヘルニア ♂ 37 ヘルニア根治手術 腰麻 左嵌頓外鼠径ヘルニア ♂ 1 ヘルニア整復 根治手術 全麻openD 右嵌頓外鼠径ヘルニア ♀ 71 ヘルニア整復 根治手術 腰麻 右嵌頓股ヘルニア ♂ 78 ヘルニア整復 根治手術 腰麻 左嵌頓股ヘルニア ♀ 70 ヘルニア整復 根治手術 腰麻 右嵌頓股ヘルニア ♀ 75 ヘルニア整復 根治手術 腰麻 左嵌頓股ヘルニア ♀ 66 ヘルニア整復 根治手術 腰麻 13.陰部 交通性陰嚢水腫 ♂ 15 水腫頚部結紮 腰麻 右陰嚢水腫 ♂ 3 穿刺 左ゼミノーム ♂ 37 左睾丸摘出術 腰麻 左結核性副睾丸炎 ♂ 34 副睾丸試験切除 腰麻 病理組織検査 陰茎がん ♂ 48 焼灼切除 腰麻 病理組織検査 不妊手術 ♂ 27 精管結紮術 局麻 尿道ポリープ ♀ 焼灼切除 局麻 病理組織検査 14.肛門部 直腸がん ♀ 53 ⇒ 直腸がん(脱肛) ♀ 51 ⇒ 肛門部膣部挫創(交通事故) ♀ 4 創処置 輸血輸液 肛門周囲膿瘍 ♂ 68 切開排膿 過酸化水素洗浄 細菌培養感受性 痔瘻 ♂ 35 切開排膿 直腸炎症性ポリープ 痔核 貧血 慢性肝炎 ♂ 39 ⇒ 外痔核 ♀ 22 摘出術 腰麻 裂肛 ♂ 11 キシロカインゼリー塗布摘便 部位 病名 性 年齢 手術 麻酔 投薬注射 特殊検査 転帰 --------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- 15.腰部 脊髄横断麻痺 ♂ 19 ⇒ 変形性脊椎症 ♂ 53 軟性コルセット 第四腰椎すべり症 ♂ 70 硬性コルセット 第三腰椎右横突起骨折 ♂ 37 経過観察 第一腰椎右横突起骨折 ♂ 19 経過観察 16.臀部 左仙腸関節結核 左臀部結核性瘻孔 ♀ 39 患部切開掻把骨移植 腰麻 病理組織検査 左臀部蜂窩織炎 ♀ 61 切開掻把 局麻 細菌培養感受性 左臀部瘻孔 ♂ 17 切開 細菌培養感受性 左臀部埋伏遺物 ♂ 46 切開 局麻 仙骨骨折 ♂ 34 経過観察 右坐骨骨折 ♀ 51 経過観察 部位 病名 性 年齢 手術 麻酔 投薬注射 特殊検査 転帰 --------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- 17.腎尿路 急性腎炎 急性虫垂炎 ♂ 24 虫垂切除術 腰麻 経過観察 右腎結核 ♂ 42 腎臓摘出術 全麻挿管 病理組織検査 ● 左腎結核 膀胱結核 ♀ 34 腎臓摘出術 全麻挿管 SM 病理組織検査 左腎盂乳頭状がん ♀ 67 腎臓摘出術 腰麻 トヨマイシン注 病理組織検査 特発性腎出血(右) ♀ 47 経過観察 膀胱鏡腎盂造影 特発性腎出血(右) ♀ 28 経過観察 膀胱鏡腎盂造影 左重複腎盂及び重複尿管 ♀ 63 腎盂造影 左腎結石 ♀ 19 腎切開 全麻挿管 腎盂造影 左腎結石及び尿管結石 ♀ 65 腎臓摘出術 全麻挿管 腎盂造影 左腎盂結石 ♂ 25 腎盂切開 全麻挿管 腎盂造影 左腎盂結石 ♂ 34 腎盂切開 腰麻 腎盂造影 左腎盂結石 続発性腎水腫 ♀ 24 腎盂切開 全麻挿管 腎盂造影 左尿管結石 ♂ 33 尿管切開 腰麻 腎盂造影 左尿管結石 ♀ 26 自然排出 腎盂造影 左尿管結石 ♀ 47 尿管切開 腰麻 腎盂造影 左尿管結石 ♂ 45 尿管切開 腰麻 腎盂造影 左尿管結石 ♂ 31 自然排出 腎盂造影 左尿管結石 ♂ 28 尿管切開 腰麻 腎盂造影 左尿管結石 兼 続発性腎水腫 ♂ 34 自然排出 腎盂造影 左尿管結石 兼 続発性腎水腫 ♂ 25 自然排出 腎盂造影 右腎盂結石 ♂ 40 腎盂切開 全麻挿管 腎盂造影 右腎盂結石 ♀ 75 腎盂切開 全麻挿管 腎盂造影 右腎盂結石 ♂ 56 腎盂切開 全麻挿管 腎盂造影 右尿管結石 ♂ 30 尿管切開 腰麻 腎盂造影 右尿管結石 ♂ 26 自然排出 右尿管結石 ♂ 57 自然排出 右尿管結石 ♀ 35 尿管切開 腰麻 腎盂造影 右尿管結石 ♂ 21 自然排出 右尿管結石 ♂ 27 自然排出 --------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- 部位 病名 性 年齢 手術 麻酔 投薬注射 特殊検査 転帰 18.鎖骨 左鎖骨骨折 ♂ 32 鋼線刺入銀線縫合 局麻 右鎖骨骨折 ♂ 28 鋼線刺入銀線縫合 局麻 右鎖骨骨折 ♂ 28 銀線縫合 局麻 左鎖骨骨折 左肩関節脱臼 ♂ 15 鋼線刺入銀線縫合 局麻 19.肩関節 右肩関節脱臼 ♀ 24 整復術 静脈麻酔 左肩関節脱臼 ♀ 83 整復術 全麻openD 20.上腕 右上腕神経炎 ♂ 63 握力右20左34 右上腕神経痛 ♂ 21 ⇒ 左上腕骨骨折 ♀ 66 ギプス固定 21.前腕 右前腕神経種 ♀ 36 摘出術 局麻 病理組織検査 両前腕多発神経炎 ♂ 43 右尺骨骨膜炎(膿瘍形成) ♂ 38 局麻TM投与 左尺骨上端骨折 ♀ 8 ギプス固定 両前腕火傷二度 ♀ 22 軟膏療法 22.手 左手腱筋断裂 ♂ 22 腱筋肉縫合局麻 右VW中手骨骨折 鋼線刺入局麻 ⇒ 右拇指炎症性上皮細胞肥厚症 ♀ 27 摘出術 局麻 病理組織検査 右示指第一第二指骨内軟骨症 ♂ 12 右腸骨櫛より骨移植 局麻 病理組織検査 右拇指挫滅創 ♂ 28 骨・腱・皮膚縫合 局麻 左環指まむし咬傷 ♂ 67 抗まむし毒血清 左小指第一指骨開放性骨折 ♂ 34 鋼線刺入 局麻 --------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- 部位 病名 性 年齢 手術 麻酔 投薬注射 特殊検査 転帰 23.下肢 左下肢静脈血栓症 ♂ 34 ワーファリン 静脈造影 左下肢静脈血栓症 ♀ 55 静脈造影 24.股関節 先天性股関節脱臼 ♀ 1 整復 ギプス固定 全麻openD 左股関節脱臼 ♂ 9 三者併用牽引 ⇒ 左股関節脱臼 ♂ 41 免荷用歩行器 25.大腿 右大腿骨頚部骨折 ♀ 77 絆創膏牽引 右大腿骨頚部骨折 ♀ 53 左大腿骨頚部骨折 ♀ 71 ギプス固定 右大腿骨頚部骨折 ♂ 51 牽引ギプス固定 左大腿骨頚部骨折 脳梗塞 ♀ 60 スミス・ピーターソン法 全麻挿管 ● 右大腿骨外骨腫 ♂ 43 経過観察 右大腿部挫創 ♂ 22 デブリッドマン縫合 破傷風血清注 左大腿丹毒 ♀ 62 切開排膿 細菌培養感受性 26.膝 右膝蓋骨骨折 ♂ 57 関節穿刺 副子固定 右膝蓋骨骨折 ♂ 41 骨縫合 局麻 右膝関節嚢腫 変形性膝関節症 ♂ 65 ⇒ 右脛骨上関節面骨折 ♂ 42 ギプス固定 右膝窩部切創 ♂ 41 ⇒ 右膝窩部ガングリオン ♀ 34 摘出術 腰麻 27.下腿 右下腿第三度火傷 ♀ 20 ○ ⇒ 右脛骨粗面外傷性血腫 ♂ 61 切開摘出 局麻 右腓腸筋皮下断裂(テニス脚) ♂ 36 副子固定 オスグッド・シュラッター氏病 ♂ 23 穿刺法 腰麻 右下腿骨骨膜骨髄炎 ♂ 51 経過観察 X単純 右脛骨外骨腫 ♀ 9 経過観察 X単純 右脛骨開放性骨折 ♂ 16 骨移植プレートギプス固定 腰麻 左下腿骨骨折 ♂ 22 骨釘固定 腰麻 左脛骨骨折 ♀ 6 ギプス固定 右下腿骨開放性骨折 ♂ 72 内副子固定 骨移植 腰麻 ソルコセリル注 右下腿骨骨折 ♀ 4 牽引 ギプス固定 右下腿骨折(偽関節形成) ♂ 37 骨移植プレートギプス固定 腰麻 28.アキレス腱 左アキレス腱断裂 ♂ 52 腱縫合 ギプス固定 腰麻 左アキレス腱断裂 ♂ 26 腱縫合 ギプス固定 腰麻 29.足 左踵骨スポルン ♂ 68 経過観察 X単純 右踵骨骨折 ♂ 59 ギプス固定 X単純 右足背胼胝腫 ♀ 54 摘出術 右足背切創 ♂ 50 腱縫合 副子固定 局麻
この診療症例の意味を考える前に、とりあえずまとめる作業を行い、そのあとで考えたことを以下に列挙する。
私は記録に残すのが好きな人間で、そのことに関しては「私にとっての記録」として公表している。その最初に当たるのが、この「医師2年目から3年目までの診療症例」であることを知った。これにはルーツを知った嬉しさがある。変な喜びだと人は思うかもしれないが、私は大まじめに喜んでいる。
その次の喜びは、記録して50年目という節目の年に公表できたことである。40歳から、節目を大切にするようになり、何か記念となるものを作り、残す習慣ができた。これはコツコツ努力を積み重ねることはできないが、短期集中的な努力はできるので、タイムリミットを守ることはできるという生き方の別の表現かも知れない。
川崎病院林田分院外科は院長と外科医長と私の3人の医師で診療を担当した。院長は院長業務もあり、主体はあとの二人となるが、250症例を含めて2年間で5000件以上の患者の診療に大過なく対処することができた。
医師1年目の大学でのハードトレーニングでは最先端医療の見習いであったが、この2年間では一般外科を中心に、より専門性の強い領域まで、主体的に診療に従事することができた。
1968年から始まった荒れ狂う大学紛争の際、心臓外科医として生きるのは難しいと感じて、開業医として生きる決断をしたが、それにはこの2年間の診療経験が大きく影響していたと思う。
1973年に大阪の周辺都市である交野市で開業をしたが、その診療に自信が持てた理由の一つがこの2年間の診療経験だったと思う。もちろん、ここ以外で学んだことも多々あるが、医師となって初めて主体的に診療を担当したことによって身に付いたものは多い。
この病院に勤務して、開業医として、人間として心得て置かなければいけない教訓を悟った。それは世の中の人の評価が正しいとは限らないということで、人の評価をあまり気にせず、できるだけ自分のしたいように生きてきた。
以上は、この診療症例の自分に対する意味を書いたが、社会的医学的意味もあるのではないかと考える。50年前の、日本の都会の普通の地域での、疾病状況やその治療を知ることに役立つところがあると思うからだ。
結核が幼児のカリエスを含め、色々の状態で残っていたこと、梅毒も珍しくなかったこと、急性虫垂炎の発生頻度が高く、重症化の頻度が今では想像もできないほど高かったこと、全身麻酔に、エーテルによるオープンドロップ吸入法が繁用されていたこと、輸液、抗菌剤、抗がん剤の使用が既に常用化されていたことなど、医療状況の移行期であったことを示している。
私の世代では、医師になるには医学部または医科大学を卒業し、1年間のインターンを終えて、医師国家試験を受験し、これに合格して初めて医師免許が与えられ、医師として認められた。
医師として認められれば、全ての診療科を診療することが許されるが、ほとんどの場合、大学病院の医局に入局し、教授を頂点とする医局体制の許で、その医局の方針に沿った医師の卒後研修を受ける。
当時からインターン制度はまったく無意味なものになっていて、廃止は正しかったと思う。そのほかの卒後研修についても多くの変更が行われてきたが、必ずしもそれが良かったとは言えまい。
私が受けた卒後研修はかなり良かったと思っている。これが最善とはもちろん思わないが、卒後研修について参考になるところがあるかもしれない。そこで、そのことを少し具体的に書いておくことにする。
医師になって阪大第一外科に入局し、1年間を最先端の医療を中心に、受持医として医療というものを見習い学んだ。その間の状況は還暦を迎えた旧友あい集うに詳述している。
医師になって2年目から2年間、医局の関連病院の一つである、神戸の川崎病院林田分院外科に出張勤務した。関連病院とは、医師の人事を大学の医局の医局員の派遣によって行う医療機関のことで、ドイツ語のsitz(座る)から「ジッツ」と呼ばれる。
川崎病院林田分院外科は阪大第一外科のジッツで、分院長緒方正来はS13年阪大卒、緒方洪庵の一族である。外科医長の中西熊蔵は東京医大卒の皮膚泌尿器科医で、緒方院長の許で外科の研修を続けてきた。産婦人科医長の香西正一は阪大S24年卒、小児科医長内村伸生は阪大S27年卒、そのほか内科、耳鼻科、眼科も阪大系列の出身者であった。
川崎病院本院も阪大第一外科のジッツで、院長北島好次は阪大S4年卒で武田義章教授の1年先輩である。外科部長千葉啓次郎は阪大S18年卒で、本院全体も阪大系列で占められていた。
川崎病院本院と林田分院は川崎重工系列の病院で、川崎重工の従業員でなくとも受診できる地域の基幹病院として住民に親しまれて来た。本院外科と分院外科は交流があり、患者の紹介転医や大きな手術では本院からの助勢があった。
分院外科の診療は緒方院長、中西先生と私の3人が分担したが、若い私に仕事の多くを任せてくださりありがたかった。
中西先生は元々皮膚泌尿器科医であるため、皮膚科と泌尿器科の疾患について診断や治療手術について実地に教えていただいた。このようなことは通常はあり得ないことで幸運だった。
下腹部の手術では、婦人科の疾病を合併していたり、婦人科疾患であることが時にある。そのような時に婦人科の香西医長に立ち会っていただいたり、術者を代わっていただいたりしたことが幾度かあった。逆に婦人科の手術の助手を頼まれたこともある。分院の医師が平常仲良くしていたことが、このように協調的に医療を行えたのだと思う。
内科の前田忠司先生は京都府立医大を卒業された方で、ハイマートロスの寂しさをよく口にされていた。ドイツ語で Heimatlos は「故郷喪失」を意味する。母校の関連病院ではなく、阪大系の病院では居心地が悪かったのかもしれない。この先生は神戸一中卒で、私はそれを継ぐ神戸高校の後輩であることから、ずいぶん可愛がっていただいた。
先生は当時始まったばかりの胃カメラをマスターされ、その実技を見せて下さり、実地指導をして下さった。私が開業当初から胃ファイバースコープ検査を行うことができたのは、この時の経験が大きく関係していると思う。
2年間の出張勤務を終えて帰局すると、武田教授は大阪厚生年金病院の院長に転出されていて、曲直部壽夫助教授(のち教授)の許で心臓外科を専攻、専門医への道を歩くことになった。医師となって、大学での1年間の研修、出張病院での2年間の研修は、外科医の基本をマスターするのに適したものであったと思っている。
川崎病院林田分院外科の後任は、2年後輩の門田康正先生が赴任してきた。彼は帰局後胸部外科に進み、徳島大学医学部第二外科教授に就任した。
1.50年前、出張勤務中の川崎病院林田分院の空き部屋へ、自分が勤務した期間のカルテを少しずつ持ち込
み、その中から自分の記録として残して置きたいカルテを選び、その要点を転記していった。
自分にとって大切なことを記録に残すという習癖の始まりは、この時からのようだ。カルテは約5000
件、その内の250件を自分の決めた項目に従ってまとめた。
2.この記録を50年間書庫に保管してきたが、その全部に目を通したのも、これをまとめたのも今回が最初
である。
3.医師になった最初の1年間は、余りにもハードな生活で、生きるのが精一杯という状況だったため、学
んだことを記録に残す余裕はなかった。しかし、医師として貴重な研修期間だった。
そのあとの2年間の出張勤務は、大学病院のような高度の専門的医療ではないが、一般病院が対応する
医療面で、医師として主体的に働くことができた。
以上3年間の経験によって医師の基本を体得することができた。
4.大学に帰り、心臓外科専門医として生きる道を選んだが、1968年から始まった荒れ狂う大学紛争の際、
心臓外科医として生きるのは難しいと感じて、開業医として生きる決断をした。その際に川崎病院林田
分院での診療経験が強く後押ししてくれたと覚えている。
5.50年間保管してきたこの記録を廃棄処分にすることも考えたができなかった。今、このようにまとめる
ことができたので、保管場所が無くなれば、原本はいつ廃棄しても良いという心境である。
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