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孫と祖父母との人間関係

2011.12.05. 掲載
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孫の3年間の成長を、出現順に14のカテゴリーに分け、それぞれを幾つかの特性に細分して記録してきた。その膨大なデータ全体をまとめるに先だって、私が関心を持つカテゴリーについて、エッセイの形で書くことにより、全体の記録の模索練習をした。これまでに幾つかを書いてきたが、これもまたその一つである。

人間が一人で生きていくことは難しく、他人との人間関係は、生きていく上で極めて重要である。私の孫の成長記録に「対人」というカテゴリーが出現したのは生後7ヶ月目であった。

「対人」カテゴリーの特性を、まず対象の面から細分し、「母親」「父親」「祖父」「祖母」「全般」「他人こども」「他人おとな」「いとこ」「3人仲良し」「擬人」の10特性に分けた。これも他のカテゴリー特性と同様、出現順に配列したものである。

孫の成長を観察するのは、ほとんどがお守りとしてであり、孫の両親と一緒になるのは、イベントとか旅行中に限られている。だから、孫と両親との関係について知ることは、祖父母と比べると少ないが、良好だったと感じている。


孫が祖父母と積極的に関わるようになったのは生後7ヶ月目で、祖父に抱かれて、2人だけで嫌がらずに約1kmを移動したり、祖母にからだを支えてもらって、飛び跳ね喜んだ。

生後1年を過ぎると、孫と祖父母の関係はより親密となり、旅行先で両親の部屋ではなく祖父母の部屋に入りたがり、祖父を「ボウボウ」と呼ぶことができるようになった。

1歳6ヶ月で、祖母を「グランマ」と呼べるようになり、それ以来「ボウボウ」「グランマ」のことばが絶えず発せられ、祖父母との関係はさらに密となり、祖父には「ふざけいたずら」をするまでになった。

1歳11ヶ月は孫の成長の重要な通過点である。ミュージカルのビデオに登場するタイガーを見て「タイガー、ナイテルネ、カワイソウダネ」と共感し、いとこが孫の祖父を押し倒すのを真似て、ためらいながら自分も祖父を押し倒した。また、「パパ、イラナイ」「ママ、イラナイ」と両親を拒み反抗し、歌でプライドを持ち、自我が急速に発達する時期であった。ほかの年上のこどもと積極的に遊ぼうとし始めた時期でもあった。


2歳1ヶ月は、孫の成長3年間で、いちばん精神的に不安定な時期だった。両親だけでなく祖父にまで逆らうようになった。そこで、祖父も負けずに孫に逆らってみたところ、孫はむきになって対抗してくる。その反応が面白くて、逆らいをくりかえし、時には祖父の逆らいが度を過ぎて孫を怒らせることもあった。

翌月の2歳2ヶ月、孫と大声で「ボウボウ」「はーい」を数回呼びかけあったら、孫は祖父に飛びつき、下腿にしがみついた。前月、祖父から見放されたと思って不安だったのだろう、しかし、祖父はやはり自分が大好きなのだと分かって嬉しかったようだ。最強の愛情表現はスキンシップであることを、このとき改めて学んだ。

このあと、孫の精神状態は以前に戻り、祖父が逆らわなければ、これまで通り祖父大好きの孫だったが、祖父の方が逆らう面白さを覚えてしまって、時々これを楽しむようになった。

このころから、孫は祖父と祖母との3人で仲良く何かをすることを強く求めるようになった。それは、祖父の逆らいに孫が反発しているときでも、こちらの方を絶対優先させるので、孫にとって大切なことなのだろう。


2歳4ヶ月から、祖父の逆らいに対して、抱かせないなどの「いけず」をして祖父を困らせることを覚えたが、まだ一時的だった。

ところが、2歳8ヶ月ころから「いけず」が復活し、祖父を困らせてそれを楽しむようになった。それからは、攻守ところを変え、祖父の逆らいやからかいに「いけず」で対抗してくる。孫の方が優勢となり、祖父はたじたじとなる。

祖父が逆らいを止めると孫も「いけず」をしないのだが、2歳最後の2歳11ヶ月のある朝、祖父が逆らいをまったくしないのに、孫が「いけず」を続けるので、祖父は本気で腹を立て、大人げないと祖母に呆れられたことがあった。

たまたまその時、孫は落ち葉拾いに行く幼稚園児たちを見つけ、それに加わりたくて追いかけた。それを見た祖父は、その様子を孫の記録に残したくて孫の後を追った。そういうわけで、祖父の立腹は孫に覚られずに済んだのである。

自分から仕掛けているときには「いけず」をされても腹は立たなかったのに、仕掛けていない時にやられると腹を立てるのだから、勝手なものである。最初のうちは祖父から仕掛けられる一方で、孫は必死で対応してきたが、その中で「いけずをする」と言う策を編み出したのかもしれない。

そう考えて、それからは、孫をからかいたいという誘惑をなるだけ抑えてきた。そうすると、孫は祖父をいじめる楽しさが無くなり、エネルギーをもて余しているように見えることがある。そこで、ときどき「逆らい」「いけず」合戦を勃発させては停戦することをくり返している。これは、言ってみれば、祖父と孫とだけの遊びに近い。


祖父に対しては、ふざけいたずらを繰り返し、いけずをする孫が、祖母に対しては、いたずらもいけずもまったくしない。その代わり、「指示する」のは、祖母に対してが圧倒的に多く、祖母は何でも受け容れてくれると分かっているようだ。また、祖父より弱いと思っているのか、祖母を祖父から守ろうとするところがある。

祖母と比べて祖父は、何でも受け容れてくれるわけではないことを孫は知っている。2歳になるまでは、祖父が抱っこをして、もう帰ろうと言えば、素直に応じていた。それが2歳1ヶ月から、祖父に抵抗するようになり、簡単に収まることではなくなった。

孫は、他のこどもが一緒にいてもあまり緊張しないできたが、他のおとなに対しては、2歳4ヶ月までかなり緊張していた。それ以後は、あまり緊張しなくなり、気に入ったタイプのおとなの女性とは、おしゃべりをしすぎるほどである。曾祖母が亡くなった時には、見知らぬ親戚の中年や老年の男性に抱かれることを嫌がらず、青年と遊んで、祖父母を驚かせた。

2歳3ヶ月から、お気に入りのぬいぐるみのリサとガスパールを、ままごとやごっこ遊びの中で、自分の弟、妹のように取り扱って楽しんでいる。


「対人」カテゴリーの特性を、行動の面からは、「スキンシップ」「好く」「指示する」「ほめる」「拒む」「怒る」「逆らう」「いけずをする」「順番待ちする」「調子に乗る」の10特性に細分した。

生まれてきたこどもにとって、人間関係の中で、まず大事なことは、身近な人に好かれ好きになることで、0歳11ヶ月に「スキンシップ」「好く」という行動が出現するのはよく分かる。その次に1歳1ヶ月で「指示する」という行動が現れるが、自分ではできないことだらけの孫にとって、して欲しいことを周囲の人間に代わってしてもらう必要があり、この指示するという行動も早い時期から現れることがよく理解できる。

先に、1歳11ヶ月は孫の成長の重要な通過点であると書いたが、この時期に、「ほめる」「拒む」という行動が現れたのは面白い。周りからほめられ続けてきたためか、孫は状況にぴったりのほめことばを発するのに驚く。ほめられて気を悪くするものはいないが、孫の瞬時の的確なほめことばには参ってしまう。「拒む」も自我が急速に発達し始めたこの時期を象徴する行動と理解できる。

自我の発達は周囲と摩擦を生む。「怒る」「逆らう」もその中で現れる行動であり、「いけずをする」「順番待ちする」は、現実に対応する知恵なのかもしれない。最後の「調子に乗る」は、もともとの気質かも分からないが、その場の雰囲気を良くしたいというサービス精神が生まれてきたとも考えられる。


孫と祖父母とが過ごした3年間で、孫が祖父母宅にいたときに、両親のところへ戻りたいと言ったことは一度もなかった。2歳代になってからは、毎週1回は8時間以上を祖父母宅で過ごしたが、それは変わらなかった。むしろ、両親宅へ戻りたくないと泣くことが、2歳代後半に増えてきた。

祖父母は孫とともに遊び、楽しみ、喜び、見守り、感動をもらい続けてきた。危険なことを除いては、決して教え込むことやしつけることをしなかったが、反対に、多くのことを学ぶことができた。

以上、孫の誕生以来の祖父母との人間関係を中心に、両親との人間関係もいくらかは記録することができた。これからは、孫は幼稚園から始まる集団生活に入る。周りからの好意に満ちた世界で生きてきた孫が、未知の新しい人間関係の中で、どのように成長していくのか興味津々であるが、その状況を身近で観察することはもうできない。


<2011.12.5.>

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