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医療情報の保存と廃棄

カルテとX線フィルムを中心に

2005.11.15. 掲載
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目次
 1.はじめに
 2.カルテの保存と廃棄
 3.X線フィルムの保存と廃棄
 4.その他の情報の保存と廃棄
 5.廃棄物の処理


1.はじめに

医療情報の整理について、以前に開業医というプロの整理法をこのサイトに掲載しました。これは開業以来私が行って来た方法を野村医院20年史に書いたものの転載です。この方法は、保存場所が許す限り、カルテやX線フィルムをできるだけ多く保存しておくことを前提として、診療に最も効率的で使いやすく整理するのが目的でした。そして、この方法は開業32年目の現在まで十分に有用で実用的でありました。

しかし、32年間に保存してきた医療情報の量は膨大となり、保存場所も限界となってきました。今年から息子に医院を引継ぎますが、このような膨大な情報はそれに関係した者には役立つ場合があるとしても、無関係な者には無用の長物に違いありません。

法律的にはカルテは5年間、その他の診療情報は3年間保存する義務があります。これはもちろん最低限の条件で守らなければなりません。しかし、6年より以前にも診療したカルテがある場合に、単純に5年以内のカルテだけを保存して6年以前のものを廃棄すれば、診療に有用な情報を失ってしまいます。

そこで、できるだけ多くの情報を廃棄するが、診療に役立つ重要な情報はできるだけ残すことを目標に保存と廃棄の選別作業を徹底的に行いました。


2.カルテの保存と廃棄

過去のカルテに含まれている診療に役立つ情報を、その重要度順に並べてみると、私の場合は、1)罹患疾病の名前と日時、2)アレルギ―や副作用による投薬禁忌、3)紹介した疾病と紹介先、4)所見症状と検査成績、になります。カルテ全部が残っていなくても、この1)〜3)くらいまでがあれば、その有用性は80%はあると思います。

開業して間もなくの頃から、診療回数が増えてカルテが分厚くなって2冊以上に分けた場合には、最新のカルテの表紙の次に3号用紙を挿入して、前回までの診療のサマリーを付けることを始めました。これについては「病名の履歴と略号」に詳しく書いてあります。

この3号挿入用紙を活用すれば、6年以前のカルテをすべて廃棄しても重要な情報の80%は残せることに気づきました。というのは、1)罹患疾病の名前と日時はすべてこの3号用紙に記載されている、2)アレルギ―や副作用による投薬禁忌は最新カルテを含めてすべてのカルテの表紙に書き込んであり、禁忌の薬剤が多い場合は、安全に使えた薬剤名も書き込んである、3)紹介した疾病と紹介先は紹介状とその返事をすべて別に保存してあるからです。

廃棄基準
1.原則として5年より古いカルテは廃棄する
   ただし、表紙または、表紙+挿入用紙は残す
       表紙に貼付の検査データなどは破棄する

2.以下のカルテは表紙も残さず全てを廃棄する
   1)明治大正生まれ、2)健診だけ、3)1日だけの受診、4)最終来院が昭和
   5)施設や学校に在籍中来院、今後の来院見込み少ない

3.ただし、資料として有用なカルテは廃棄せず残す

今回は平成17年であるため、具体的には下記の基準で廃棄を行いました。

 平成12年以後来院なし
  挿入用紙あり→表紙+挿入用紙
      なし→表紙のみ
 平成12年以後来院あり
  平成11年以前来院あり→ 平成11年までのカルテは廃棄
           なし→ 従来どおり保管

この廃棄作業を利用して、登録人数が多い「カルテ台帳カード」から廃棄カルテの登録を抹消して収容量を増やしました。具体的には、1)登録人数が多いカルテ台帳カードを予め選び出しておき、2)全てを廃棄したカルテの内、登録人数が多いカルテ台帳カードに登録されている患者ID番号の廃棄カルテの表紙だけを外して集めておき、3)該当する登録番号を抹消し、新しいカルテ台帳カードを作り直します。

例えば、「1121」グループのカルテ台帳の登録数が多かったので、廃棄した(112100、112105、112106、112118、112121、112126、112129、112132、112134、12141、112193)の11個の患者ID番号を抹消して空白にしました。32年間でおおよそ30000人の新患登録がありましたが、1枚に100名を登録できる現在のカルテ台帳カードで充分対応できました。これからも、廃棄処分したカルテの登録番号を抹消し、収容量を増やすことで、対応可能と考えられます。


3.X線フィルムの保存と廃棄

X線フィルムも全部保存して来ましたが、胸部X線フィルムは5年分、それ以外のフィルムは法律通りの3年保存に変更しました。その理由は、過去の胸部X線の情報は肺癌の診断に重要で、これには5年くらい前まであった方が役に立つと考えました。胸部X線以外では3年より古いフィルムの診断的価値は低いと考えました。

廃棄基準
1.原則として、胸部X線は5年より古いフィルムを廃棄する
2.原則として、胸部以外(胃など)は3年より古いフィルムを廃棄する
3.ただし、小児、会社検診、死亡、転居の胸部は3年より古いフィルムを廃棄する
4.ただし、資料として有用なものは古くても保存する


4.その他の情報の保存と廃棄

予防接種問診表、検査指示書、診断書などカルテ以外の医療情報は法律で義務付けられた期間を越えたものを廃棄しました。

廃棄基準
1.原則として3年より古いものは廃棄する
2.ただし、資料として有用なものは古くても保存する

以上の医療情報はアナログデータでしたが、レセコンやパソコン、あるいはCRのようなデジタルデータについては、収容場所が問題になることはなく、むしろデータの保全対策が重要になります。


5.廃棄物の処理

大量のカルテやX線フィルムの廃棄方法は、段ボール箱に詰め廃棄専門業者に渡します。カルテの場合は「機密書類等処理契約書」を業者と取り交わし、X線フィルムの場合は「産業廃棄物処理委託契約書」を交わします。

今回の廃棄は昨年11月、今年の1月と7月の3回に分けて行ないましたが、廃棄したカルテはダンボール箱63個分(約1.2トン)、フィルムはダンボール箱13個分となりました。その結果、保存カルテは廃棄作業前の約20%、保存X線フィルムは約30%にまで減量でき、保存場所に大幅な余裕ができました。


<2005.11.15.>

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