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野村医院二十年史(93年11月より)
2004.09.02 掲載
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目次
はじめに
1.患者ID番号の決め方
2.患者ID番号の利用
3.患者データの保管
4.薬剤管理
5.薬剤在庫管理
「私の(超々)整理法」は、あくまでも個人的な手抜き整理法であり、業務用のデータの整理となると、そういう訳にはいきません。ここでは、開業医というプロとしての整理法をご紹介します。
方針のところに書きましたが、開業に際して、患者さんのデータをいかに多く、活かせる形で保管するかということに腐心しました。結論として、将来のコンピュータ時代に適合できるように、患者さんのデータをID番号で統一することに決めました。このID番号の決め方について、いろいろありましたが、簡単で特別な道具を使わなくても良い方法を求めました。そして警視庁の指紋台帳方式に準じた、といわれる方法で行うことにしました。
姓と名前のそれぞれ前2字に、2桁の数字を当てて4桁とします。この4桁が同じ組合せの姓名の患者さんに対して、00から99までの100の数字をつけ加え、全部でID番号は6桁の数字にします。
文字と数字の対応のしかたは
ア行:1 カ行:2 サ行:3 タ行:4 ナ行:5 ハ行:6 マ行:7 ヤ行:8 ラワン行:9
これの細則を以下のように決めています。
ア行: アッ イッ ウッ エッ オッ カ行: カッ キッ クッ ケッ コッ ガッ ギッ グッ ゲッ ゴッ キャ キュ キョ サ行: サッ シッ スッ セッ ソッ ザッ ジッ ズッ ゼッ ゾッ シャ シュ ショ タ行: タッ チッ ツッ テッ トッ ダッ デッ ドッ ナ行: ナッ ニッ ヌッ ネッ ノッ ニャ ニュ ニョ ハ行: ハッ ヒッ フッ ヘッ ホッ バッ ビッ ブッ ベッ ボッ パッ ピッ プッ ペッ ポッ ヒャ ヒュ ヒョ マ行: マッ ミッ ムッ メッ モッ ミャ ミュ ミョ ヤ行: ヤッ ユッ ヨッ ラワン行: ラッ リッ ルッ レッ ロッ リャ リュ リョ ワッ
例えば交野 一太郎はカタノ イチタロウだから2414になり、その後に2桁の数字が付きます。この2桁の数字は「カルテ台帳カード」を使って決定します。カルテ台帳カードは厚手A4サイズの用紙で、裏表100個の小区画があります。この内の1枚を患者ID番号2414で始まるカードにします。
交野 一太郎がこのカードの最初の登録であれば、00の区画に記入し、その後には数字の若い方から順に例えば01に北川 悦子、02に片山 厚志と云うように取っていきます。これで交野 一太郎、北川 悦子、片山 厚志のID番号は241400、241401、241402と決定されます。
患者ID番号はカルテ番号に利用するのが本来的な目的ですが、その患者さんに関するデータにもできるだけ使います。特にX線検査、心電図検査、一般尿検査、腹部エコー検査には必ずID番号を入れています。
患者データの中で一番大切なのは元データだと考えます。電子カルテとかICカードなどが話題になることも多いようですが、全面的にそれらに移行するなどとは到底考えられません。元データ、特にカルテは最も貴重なデータであると常日頃考えて、自分なりに工夫したり整理をし、何かの場合最後に頼るのはこれだと考えています。
データを活用するには、それが使いやすい方法で整理して保管されていなければなりません。そのためには、一定のルールに従うことと、手間のかからないやり方であることが必要条件です。当院のルールは 1)ID番号順に並べる 2)時系列順に並べる 3)保管場所を決めることです。この3要素をすべてみたす必要が少ない場合は省略します。例えば死亡診断書の保管はは 2)3)だけです。
カルテ台帳カードは、受付の両袖付きのスチール製事務机の一番下の引出しに収納しています。
[受付の机の上]一次保管
コクヨのレターケースを8個積み上げ、ここに今月と先月来院の患者のカルテを収納しています。この整理ケースは10個の引出しがあるので全部で80個の引出しに分類していることになります。各引出しの見出しは、ダイモ・テープで色分けして見やすくしています。
[受付の壁際]二次保管)
先のと同じケースを40個積み上げ、ここに先々月から5年前までの来院患者の最新のカルテを収納しています。カルテはある程度分厚くなったり、病名記入欄が一杯になると作り変えていますので、最新カルテという言葉を使います。壁を利用すると最小の空間で最大の収納が出来ます。
カルテ室は、レントゲンフィルムの保管室と兼用し、ここに5年以上来院されなかった方のカルテと、最新カルテ以外のカルテをID番号順に保管しています。ここでは、コクヨレターケースではなく、180cm高のホームラック4個を使っています。
[カルテ室]四次保管
5年以上来院されなかった方のカルテの内、私が点検して保存する価値が少ないと判断したカルテは、表紙の上1/4を残し廃棄します。この1/4の表紙は箱にいれてカルテ室に保管しています。
[書庫]五次保管
死亡した人のカルテは、当院が死亡診断書を書いた患者と、それ以外に分け書庫に収納しています。転居が明らかな人の分もここに収納しています。
[フィルムロッカーの上2段]一次保管
フィルムロッカーの上2段の引出しを8区画に分割し、各区画内では手前より、1)4F単独、2)4F複数、3)4F胸部、4)大角複数、5)大角単独の順に小分けします。透視フィルムは除きます。
各小分けの中では、日付の新しいものが手前に来るように並べ、複数枚数のものは白い紙でまとめますが、その中では日付の新しいものが手前に来るように並べます。
[カルテ室]一次保管
透視フィルムを4Fの空き箱を利用してID番号順、時系列順に並べます。
[フィルムロッカーの最下段]一次保管
貸し出したことのあるフィルム(X線フィルム用の袋に入った)は、フィルムロッカーの最下段の引出しに、患者ID番号順に並べます。
[カルテ室]二次保管
2年前以前のフィルム(透視を除く)は、大角フィルムの空き箱を利用してID番号順、時系列順に並べます。
[倉庫]三次保管
一次二次保管の容量を越えたフィルムは、古いものから倉庫に移動させます。ただし胸部撮影だけは現在のところ二次保管で留めています。亡くなられた方、遠方へ転居された方のフィルムもこちらに移動させます。
心電図の保管
ロールペーパーを使っていた時代の心電図心音図は、レントゲン室の中のプラスチックケースの整理箱の中に、患者ID番号順、時系列順に収納してきました。89年に解析機能付きの心電計に替えてからは、結果が折り畳み用紙で得られるので、カルテに貼りつけて保管するように変えました。
エコー写真の保管
時系列順で保管しています。(現在はカルテに貼り付けています)
紹介状
年度別で、時系列順で、暗室の棚上に保管しています。
紹介状返信
年度別で、時系列順で、暗室の棚上に保管しています。
死亡診断書
時系列順で、暗室の棚上に保管しています。
X線透視記録
時系列順で、透視操作盤の前に保管しています。
疾病統計
レセコンを使ってプリントアウトしたものを年代順で、レントゲン室の本棚に保管しています。
レセプト要約
年代順で、レントゲン室の本棚に保管しています。
新患登録台帳
時系列順で書庫に保管しています。
診断書類
時系列順で書庫に保管しています。
経理関係書類
会計年度ごとに全資料を一つの段ボール箱にまとめX線室と倉庫に保管しています。
薬剤の管理方法も、開院直後からほとんど変わっていません。保管場所は大きく分けて 1)小出し用 2)1箱づつ収納する棚 3)それ以外の薬品庫の3箇所です。そのいずれの場所も10種類のカラーで分類されています。
このカラーコントロールは、カルテの項でも触れましたが、この薬剤管理の方がより本格的な使い方です。
1.精神脳神経疾患 神経系薬剤 黄●
2.外科的疾患 消炎鎮痛剤 緑●
3.皮膚科疾患 抗アレルギー剤 桃●
4.循環器系疾患 循環器薬剤 赤●
5.呼吸器疾患 呼吸器薬剤 青●
6.消化器疾患 消化器薬剤 茶●
7.内分泌代謝疾患 栄養剤 橙●
8.感染症 抗菌剤 黒●
9.その他 特殊薬 金●
10.外用薬 銀●
20.注射薬 水●
同時に番号もまたカラーに結びついてしまい、4=赤、6=茶、8=黒などが抵抗無くでてきます。結局、私の頭の中では疾病分類、薬剤分類、カラー、数字が固く連なっている状態です。
小出し用区画には、それぞれの薬剤グループのテリトリが決められていて、その境界線は少しは移動しますが、大きな位置は変わりません。それぞれの位置に、そのシンボルカラーのラベルとグループ名が貼られています。
例えば、循環器系薬剤のグループの所には、赤のラベルと並んで「循環器」の文字を印刷したラベルが貼られています。さらに、一つ一つの小出し区画には、赤いラベルと薬剤名の印刷したラベルが貼られています。
この薬剤名は、略名と兼用になっていて、例えばヘルベッサーは、略名をヘルベとしています。アルダクトンAは、アルAです。
略名については、5.カルテのの項でも触れましたが、本書の付録 5.野村医院カルテ用略語集 4)診療内容欄に記載する略語(薬剤)に、93年8月末の棚卸しをした全薬剤をグループ別、略名付きで載せています。
薬品収納棚、薬品庫にも、それぞれの位置に、そのシンボルカラーのラベルとグループ名が貼られています。
注射薬は全て処置室に保管してあり、小出しはライトピンを使っていますが、そこには全て薬剤名とカラーラベルが付けられています。
レセコンを使った薬剤の在庫管理を1982年から約3年間行いました。レセコンが出庫量を自動的に入力してくれるので、入庫量の方だけをこちらが入力すするだけでよく、いとも簡単な作業でした。
その結果、薬剤の現在の在庫量、1カ月使用量、納入価などが即座にディスプレイに表示できるのが便利でした。また下限在庫量を設定さえしておけば、発注すべき薬剤の数量を問屋毎に1錠単位でリストアップして打ち出してくるので、これと前月の出庫量を検討することで、非常に正確な在庫管理が可能でした。その上青色申告では棚卸しが必要ですが、その計算もこの在庫管理を利用すると簡単に行えます。
しかし、入庫量の入力や発注量をプリントアウトするのは簡単な操作ではありますが、興味が薄れてくると面倒臭くなります。しかも在庫管理をレセコンで行なっても実際上のメリットは余りありません。
また、なるほど在庫管理は完全に近く行えますが、その分だけ職員がコンピュータに頼ってしまい、自分で実際に薬剤を管理しようとしなくなることとも問題でした。そこでレセコンによる在庫管理は取りやめました。
それから暫くは特別な在庫管理をしないでいたのですが、3年前に簡単な方法を思いつき実行して見ましたら、これが非常に有用なので、ここに書いておきます。私はこれを「SML法」と呼んでいます。
SML法
薬剤の小出し用区画に、これまでのカラーラベルと薬剤名のほかに、1カ月間の使用量をつけることを考えました。これはレセコンを使って薬剤使用量をプリントアウトすればよいだけの簡単な作業です。
使用量は大雑把に、1カ月使用量が 1)100以下、2)100〜500、3)500〜1000、4)1000以上の4ランクに分けてそれぞれを S、M、L、LLグループと名付け、各薬剤の小出し区画にこの情報をつけることにしました。これまでのカラーラベル、名前(フルネームと略名)の他に使用量が加わったというわけです。
そして、これに対応する最低在庫量を決め、薬剤の在庫量がこの値より少なくなれば発注用の書きだしをすることに決めました。(S50、M100、L300、LL500)
この効果は2カ月後の期末棚卸しで明らかになり、これまでに比べて15%も在庫量が減りました。その上、職員が積極的に在庫を管理してくれるようになり、急配を依頼することが少なくなりました。
(93年11月28日、記)
補足説明
このSML法は1990年から2003年まで行ってきましたが、2004年よりこれを改良して、下限在庫量をSMLLLの4ランクから、30錠〜500錠の10ランクに増やしました。さらに、このランク間の変更(例えば、ある薬剤の下限在庫量100から300に変更すること)を職員に任せました。これにより、在庫量は更に10%程度減り、至急配送の依頼もより少なくなりました。
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