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 40年近く前まで山口の有馬川東側は船坂川にかけて、ほとんどが丘陵地帯であったことが1970年代の航空写真で確認できる。現在は丸山を除いてほとんどが住宅街に変貌している。
 上山口東の住宅街の一角に山口中央公園がある。グランドを中心に周囲を樹木で囲まれたスペースである。この地域の貴重な緑地と空間を形成している。北側には小川が流れ池があり、野草が生い茂っている。かつての丘陵地帯の一角の名残りなのだろうか。
 そんな環境の山口中央公園は、生き物たちの楽園でもある。小川や池を覗いてみるとオタマジャクシ、アメンボウ、イモリなどがいきいきと生息している。野草の茂みには幾種類もの昆虫たちが過ごしている。 
 有馬川に架かる天上橋のたもとに石材屋さんがある。金網で仕切られたゆったりした敷地の半分ほどが小川で区切られている。手前の歩道側の草むらにはこの辺りでは珍しい黒ヤギが飼育されている。金網には、飼主の手書きの看板が掛かっている。「名前:くろやぎのはっちゃん、生年月日:平成12年9月12日デス、出生地:三田市の青野ダム近くデス、好物:にんじん、さつまいも、だいこん。紙やナイロンはあげないで下さい。みんなでかわいがってね」
 近くの住民の格好の散歩コースの一角である。黒ヤギはっちゃんは、散策者たちの癒しの対象であり、散歩道のアイドルである。歩道側の金網近くで草を食んでいるはっちゃんに出合うと、つい近くの草を引き抜いて口元に持っていく。ときおり見つめるはっちゃんの眼差しは限りなく優しい。
 公智神社の境内から悲しげな猫の鳴き声が聞こえた。以前にも、境内に住み着いているらしい野良猫を見かけた。前足の一本が折れ曲がり3本足のように見える白猫だった。境内を覗き込むと背中を丸めてうずくまっていた猫が、気配に気づいて頭をもたげた。・・・と思うまもなく白猫が不自由な足で向ってきた。逃げることはあっても向ってくるとは・・・。意表突かれて思わず狼狽させられる。
 傷ついている野良猫の気持ちを想った。由緒ある公智神社社を訪れる人は少なくない。訪れる人は野良猫を見かけても、境内では乱暴狼藉には及ぶまい。障害を哀れんで何がしの餌を与えるかもしれない。彼は、この境内に住み着いてからの経験で、生き抜くための智恵を身につけたようだ。


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