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 ホタルとならんで山口の誇るべき生き物に「モリアオガエル」がある。特異な生態ゆえに生息地が限られ繁殖率も低く、土地開発に伴い絶滅が心配されているされる生き物でもある。そのモリアオガエルが山口で生息している。
 モリアオガエルの生態や山口での保護繁殖活動については、西宮市立総合教育センター発行の「西宮の自然ガイドC・北部の自然」という書籍で詳しい情報が得られる。以下は、この書籍をもとにした山口でのモリアオガエルの保護繁殖活動の物語である。 
■天延記念物指定の貴重な生き物
 モリアオガエルは、北海道以外の各地の山地に分布している。カエルの中では最も進化した種とされ、樹上生活や産卵習性などの特異な生態は、学術的にも重要視されている。ところがその特異な生態のため、生息地は限定され繁殖率も低く、加えて土地開発に伴い近い将来絶滅が心配されている。このため岩手県や福島県の生息地では天然記念物に指定され保護されている。
■モリアオガエルの産卵
 モリアオガエルのオスは約7cm、メスは約10cm位でメスのほうが平たくて大きい。 モリアオガエルは梅雨期の夜、池の上に突き出た樹上に産卵する。深夜、一匹のメスに数匹のオスが背中や横腹にしがみつき、メスが産む粘液に包まれた卵に精子をかけ後足で卵塊をこねる。やがて早朝に直径10cmほどの綿菓子のような乳白色の卵塊ができあがる。卵塊には約250〜400個の卵が含まれている。
■孵化後の生活
 卵は約1週間後に孵化し、オタマジャクシとなって池に落ちる。池の中には天敵であるイモリが口をあけて待ち受けている。多くはここで食われてしまうが、難を逃れたオタマジャクシは、水草や藻を食べて成長する。約3週間後に後足、前足と順にはえてきて、約6週間後には子ガエルとなる。子ガエルはすぐに木に登り樹上生活を始め、昆虫を餌として3年で大人のカエルになる。10年近い寿命をおくる。
■山口での発見
 
1968年6月、山口中学理科部のある生徒が帰宅途中の道端で見慣れないカエルのひからびた死体を見つけた。学校に持ち帰り、理科部顧問の教諭にみせたところ、珍しいモリアオガエルとわかった。理科部では部員たちがモリアオガエルの住んでいそうな山や池をさがし、ようやく2匹のモリアオガエルを見つけた。翌年の理科部員による調査では、樹上に産みつけられた卵塊を発見し、西宮市山口町での生息が初めて確認された。
■保護繁殖活動のスタート
 
池に落ちたオタマジャクシはイモリに食べられてしまうことがわかった。理科部員たちは総出でイモリ退治にのりだすが限りがある。そこで卵塊を採集し、学校で孵化させオタマジャクシにして池にかえすという保護繁殖活動にのりだすことになりました。この活動は1975年からは西宮市からの委託業務となり、現在も続いている。
 また1989年には山口町は、モリアオガエルを対象とした環境庁の「ふるさと生きものの里」に認定されている。
■保護繁殖の方法
【卵塊採集】例年、梅雨が近づく5月下旬から、前年に発見された地域とその周辺の卵塊採集調査が始まる。産卵場所は、水面から1〜2m上の樹木や枝や葉である。採集する卵塊の数は、保護繁殖用の施設規模に適した8〜10個である。採集されない卵塊は自然孵化されるが、天敵などによりほとんど成長は望めないようだ。
【孵化】採集した卵塊はスタンドに吊るし、その下にカルキ抜きをした水を入れたパッドを置く。卵塊を柔らかくして破れやすくするため1日2〜3回霧吹きで水をふきつける。1つの卵塊で200〜400匹のオタマジャクシが孵化する。
 孵化して2〜3日後から市販のベビーフードや裏ごしのホウレン草の餌を与える。パッドで成長したオタマジャクシは孵化後2週間くらい経過した頃、校内の飼育池に移し変える。
【放池】7月上旬から中旬にかけて3ヵ所の池に2,500〜3,000匹のオタマジャクシを放池する。その頃にはオタマジャクシは前足が出て尻尾も短くなり、黒っぽい色が緑色になってきている。


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