ヒ素 Arsenic
作成者  BON
更新日  2001/03/03

 各物質に関する情報をとりまとめたコーナーです。片っ端から集めた情報を載せる予定です。

水道への影響
 基準,毒性や障害,汚染源,対処法,検出法について。水道としての視点からとりまとめました。
特記事項
 当該物質に関連した情報について集めたものを掲載。

【参考】


水道への影響

1)水質基準項目

 【基準項目,健康に関連する項目】 0.01mg/L以下

2)毒性や障害

 一説には,人類がもっとも最初に毒として分離,使用した物質,という話もあります。生体には微量ながら含まれる物質です。日本では,森永砒素ミルク事件や毒物カレー事件など,幾度か大問題になってます。

 地質起源の砒素被害としては,バングラディシュにおける井戸の砒素汚染が有名です。これは,農業用に過剰に地下水をくみ上げたために地下水が枯渇し,火山性地質由来の砒素成分が含まれる深層地下水が上がってきたことが原因と言われています。

3)汚染原因

  1. 火山性温泉,地質起源
  2. 鉱山,精錬排水
  3. 染料,製革,塗料等の工場廃水
  4. 農薬起源

 地質起源,特に温泉起源が目立ちます。日本でも,農業用水に地下水をくみ上げている地方を中心に,原水のヒ素は比較的高い頻度で検出されます。ただ,大陸部のように深刻化している例については今のところ認識しておりません。このような事例は海外に散見されます。特記事項に詳細を示します

 ちなみに,ヒ素を使用した農薬は現在ではほとんど使用されていないものと見られます。犯罪を除いて...

4)処理方法

  1. (塩素酸化+)凝集沈殿(共沈)
  2. 石灰軟化
  3. 活性アルミナ
  4. イオン交換
  5. 逆浸透
  6. 電気浸透

 リン酸と同じ(リンとヒ素は同族元素)なので,リン酸と同じように共沈が可能です。通常の浄水処理で除去できるため,ある程度の濁度があれば,この共沈法が有効です。濁度がない場合は他の方法を検討することになりますが,いずれも高度な化学的知識を必要とする処理法です。

5)検出方法

 原子吸光光度法

【備考】
 水道水質ハンドブック上水試験法など。


特記事項

1)海外における井戸水源のヒ素汚染について

 2002年2月19日,国立公衆衛生院において,バングラディシュの砒素汚染の問題についての講演会が開催されました。些事により私は参加できせんでしたが,参加された方から状況を教えていただいたので,概要について掲載します。

 バングラディシュでは,UNICEFの援助で井戸を掘るったことにより生活環境が劇的に改善し,世界で最も成功を収めた例として知られていたそうです。しかし,次第に皮膚の黒化や肝臓の肥大などの症状が認識されるようになり,これがWHOなどの尽力により,主として過剰な揚水によるヒ素の汚染が原因であるとわかってきました。しかし政府の認識遅れなどもあって被害は拡大,現在では約3,000万人が50ppb=0.05mg/Lの基準を超えるヒ素汚染水源の環境下にあるとされています。

 ヒ素汚染はバングラディシュと同じスキームで,確実に他の地域にも広がっており,インド北部,最近では中国北部にもこのような被害地帯があるらしいことがわかってきた(NHK報道)ため,UNICEFやWHOが共同して対対策に乗り出す事態になってきています。

 バングラディシュには他にも毎年の洪水の問題などがあるのですが,先進国のように機材や資金を投入できないので対策が難しい状況であるとのことでした。なお,日本からは政府レベルの援助以外にも,東京都水道局から3年計画でヒ素濃度の測定の研修を主催しているとのことです。

【アジア砒素ネットワーク】
 ヒ素問題に取り組むNGOのサイト。

2)米国におけるヒ素基準見なおし

 米国では,ヒ素の基準の強化をめぐって水道や環境などさまざまな部局で調整が行われています。EPAは,ヒ素の基準として20μg/L,10μg/L,5μg/L(ちなみに日本の基準は10μg/Lです)の3案を提案しましたが,各団体による喧々囂々の応酬を経て,クリントン政権は1月,10μg/Lを公布する見とおしとなった,ということです(WATERWEEK抄録より)。

 ところが,これでまるく収まらないのが米国。各種業界団体や水道事業体などがお国の機関EPAに対して訴訟を展開しはじめ,その結論は今だでておりません。この辺はお国柄ですね。

【参考】
2001/03/08 海外ヒ素の基本的情報を掲載。(財)水道技術研究センター,水道技術ジャーナル(文献抄録委員会)参照。


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