用地選定 Site Picking
作成者  BON
更新日  2002/07/28

 構造物の実施設計を行う際の注意事項のうち,用地の選定に関するノウハウと注意事項についてとりまとめました。数ある秘密のなかでも最も重要なノウハウがこのページの内容ですが,用地の良し悪しは施設の性能に直接影響するほか,構造物の設計や施工に大きく影響しますので,あえて公開することにしました。

用地選定時のチェック事項
 用地を選定する際に気をつけること。

【参考】
 2001/03/04 鍵付きページより移行。


用地選定時のチェック事項

 用地や水源の選定にあたっては,さまざまに配慮すべき問題が生じます。必要面積や標高を確保すること,地盤や法面処理の目処がつくことなどは技術屋ならだれでも考えますが,その他にもさまざまにテクニックが存在しますのでここで一挙公開します。


(1)技術的条件

 候補用地が備えなければならない用件について簡単にまとめます。

1)用地面積

 施設が収まるための面積を確保することが必要になりますが,施工上の問題などから必要最小限の余裕が必要です。大規模施設では場内に最低6m道路の幅と転回スペースを,小規模施設では建て屋の壁面と敷地界まで最低1.5mの余裕と駐車場が必要です。

2)標高

 配水池などの施設では,標高が重要な施設能力の一つです。建替えが簡単にできない分,標高が高すぎればロスが大きく,低すぎれば将来水圧が不足したときに耐えられません。

 たとえば配水池の場合では配水区のなかのもっとも高い位置にある需要者から15m以上の標高が目安ですが,最低でも5mは絶対確保してください。

3)法面の処理

 水道施設は水をためるため,規模の割には非常に重いことが特徴ですので,盛土部に構造物を載せるのはなるべくやめます。となると,勢い切土が多くなります。このため,傾斜地に施設を設置する場合には法面の処理をよく考えて面積を確保しましょう。用地不足に陥る最大の原因は法面の軽視です。

4)地盤の問題

現場打ち杭(中堀工法)の施工風景

 水道施設は一般に中に水がたっぷり入っているわけですから,土木構造物としても比較的重い部類に入ります。また,地震などによっても壊れることが基本的には許されません。生活用水であることのほか,水道施設が壊れて水が流れ出したときに,その2次被害は結構なモノになるためです。このため,地盤がよくない場合などは杭によりしっかりと支持する工法をとることになります。

 このように,地盤の処理は,概算工事費と実際の工事費が乖離する最大の原因になります。地形などから或程度の類推ができる場合,地盤の状況を考慮して用地を選定できると理想的です。

【備考】


(2)現地視察

 用地の候補が決まれば必ず視察を行いましょう。設計上重要な情報が手に入りますし,地主の印象もよくなります。現地視察時の確認事項をリストアップします。

1)地名

 用地選定では地名に注意しましょう。猿=去る=土砂崩れの経験,など,事故の起こりやすい土地には地名にヒントがある場合が多くあります。古地図を探したり,顧客担当者及びその地の古老の話を聞くことができると理想です。

2)植生

 竹の生えているところでは地下に水道(みずみち)があります。このような場所ではすべりに注意し,排水工を十分行うことが必要です。このほか,植生などのヒントについては現場経験の豊富な人や地元の人と相談しましょう。

3)工事の痕跡

 整備された道路沿いのきれいな田地は,道路拡張時に補償工事として整備されている可能性があります。このような場合は,得てして道路拡張時に出た転石などが埋まっているもので,基礎工事に大きな影響を与えます。地質調査の際は常にこの可能性を考えることが必要です。

4)水の有無と排水対策

 水道のように水源に近い用地の場合,水替工の懸念は常に最重要課題です。しかし,水替工はなかなか現場経験がないと判断できないものです。現場経験の豊富な役所の人か,場合によっては工事業者に相談しなければならないと考えてください。また,水道は水を扱う施設であるので,施設が完成したあとも,相当量の排水がありうることに配慮しましょう。排水が間違いなくできるよう,クリークなどの位置を確認することが必要です。

5)周辺の事情

 周辺住居から近すぎないか(騒音関係),住宅地域内か外か(建築確認申請),地主や住民の合意が得られるか(補償),作業にかかれる時期は明らかか(工程管理),河川敷地など地籍上の問題はないか,などなど。

【備考】


(3)申請時の注意事項

 用地の目途がついたらこの用地を取得するための法的チェックや手続きを行います。手続きの一部についてメモ的にまとめます。

1)関連法及び申請

 用地の選定にあたっては,さまざま法規制に関係するかどうかについて確認することが必要です。とりあえずおもいつくままに。(まだまだあるはず。要工事)

項目 内容 備考
河川法 1級河川=建設大臣  
  2級河川=都道府県知事  
  準用河川=市町村長  
建築基準法 建築物,工作物  
森林法 保安林=農林大臣または都道府県知事  
砂防法 =都道府県知事  
航空法 =運輸大臣  
公園法 国立公園=厚生大臣  
  都市公園=公園管理者  
宅地造成等規制 =都道府県知事  
地滑り等防止法 =都道府県知事  

 このうち,特によく問題になるのは以下の2点です。

 また,民営など事業体主体での事業でない場合,水道施設(専用水道施設)の届け出窓口は保健所ですので忘れず事前協議を行いましょう。以下のページも参考にしてください。

法令検索
 関連法規はこちらで探してください。
申請・手続等
 水道に関連する申請や手続きに関する情報及び関連サイトを収集。

2)敷地面積と補助範囲

 敷地面積の情報は建築確認申請に必要なほか,浄水場の場合は水道台帳への記載が必要になります。用地が確定の場合は,速やかに測量図を入手しておくことが重要です。

 このほか,拡張施設用地が確保できるかどうかについては確認が必要です。特に補助事業では,用地の面積に補助範囲の条件があり,建設時に購入できないことが多いことに注意しましょう。簡易水道における敷地面積に対する補助範囲は以下のようになっています。

構造物平均面積(m2 用地利用率
300以上 25%以上
100以上300未満 20%以上
50以上100未満 17%以上
10以上50未満 13%以上
10未満 10%以上

3)交渉にあたって

 先祖伝来の土地は心情としてなかなか売れないもの。いざ用地を買う段になってもめることは結構あります。首長,水道推進委員など,水道の推進派の所有地であれば比較的スムーズに交渉が進む可能性がありますので考慮したほうがよい場合も。逆に,地主が地域外の在住の場合や,補償なれしている場合などは苦労するでしょう。

 また,所有者が売りやすいはぎれになった土地などはねらい目です。日当たりのよい土地など宅地化できる可能性のある場所では,たとえ過疎地の山中であっても交渉が難航する場合があります。

【備考】
 実地の経験や耳学が中心。補助制度については,新簡易水道Q&A水道事業実務必携など,簡易水道関係の資料を参考に作成。


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