いい写真伝導師の三脚ワンポイントアドバイス

その9

活躍した「スナップマンデラックス」
スリックは、フォトキナに、恒例どおり出展参加しました。
世界映像見本市、フォトキナは、ドイツ・ケルン市の見本市会場で、9月18日から23日まで 開かれ、ドイツを筆頭に世界中から来場者16万人強を集めました。
私も、商品説明を主な任務として、出かけて参りました。フォトキナは、日本の「カメラショー」 のように、消費者対象のショーという側面ももっていますが、商談をまとめるという別の側面が とても大きなウェイトを占めています。あらかじめ予約してみえるお客様は、皆取り引き相手で す。今回は、お越し下さるお客様 すべてを、写真に記録するという任務もひとつ加えました。そこで、展示説明用の三脚とは別に、 いつでも自由に私自身が使える三脚を、日本を出るときから携えてゆきました。

人数の多いお得意様で、数人ひと組です。写真機は35ミリ判、50ミリレンズ付1台を専用に用意 しました。撮影場所はブース内、自然な明暗描写で実際に肉眼に感じる雰囲気を出すため、ノー フラッシュ。セコニックで測ってみると、ISO400のフィルムで絞りf4 から5.6の間、1/30秒 から1/15秒と出ました。

お得意様と、ほんとうに面談している感じを出したくて、三脚は軽いけれども アイレベルのだせる「スナップマンデラックス」にしました。 たたんでトランクに納まります。小型の自由雲台は、たった1ヵ所の操作で、アングルの変更 ができます。

レバー式の脚もファインダーを覗きながら、長さのわずかな調節 をすることにより、アングルの微妙な調整に即座に対応できます。雲台と、脚との簡単な 操作でカメラをすぐ被写体に向けられ、撮影準備完了ですから、スナップショットに最適という わけです。ブース内の撮影ですから、一般のお客様も三脚をご覧になっています。撮影に手間 どることは禁物。そこで三脚へのカメラの着脱を瞬時に完了させられるよう、ハッセルのクイッ クシューを併用しました。スナップマンは伸ばしっぱなしで出番を待ちます。
商談が終わると、我社の担当を含めてブースにならんでもらいます。私はカメラを肩に、三脚を 通路に持ち出します。脚を広げ終わると同時に、カメラを雲台に、シューを介して実に素早く固 定します。絞りもシャッタースピードも、あらかじめ決めてありますから、レリーズの直前に、 巻上げるだけ。「スナップマンデラックス」という三脚にカメラを固定してはいますが、手持ち の要領でカメラをホールドします。左手がカメラボディを把み、右手人指しユビは、シャッター ボタン。ファインダーを通して被写体を見ながら、構図、ピント、光線の具合、通行人が前を 横切らないか、タイミングなどをみはからって、レリーズします。
「もう一枚!」と、すかさず2枚目を撮ります。これは、主に目つぶり対策ですが、こんな風に 最小でも一組ふたカットずつシャッターを切りました。

はじめから、そのつもりで記録専用のカメラを用意していても、フィルムを使い切ったその時に お越し下さる方もあって、あわてたりもしましたが、全部で80組ほど撮らせていただきました。 来訪者の表に撮影駒ナンバーを記入し、撮影済フィルムには番号をふり、「番記」とことわって 現像に出したにもかかわらず、どこのどなたか判断に 苦しむカットもありました。担当者のネクタイの模様が同じだからいつ、と断定したりしました。 会場の往復で目に触れた光景も、同じカメラに写しこんでおくと、整理するとき、大助かりするという こともありました。

今、プリントはアルバムの中に納まっています。お得意様はキャビネ、その他は手札です。 「どこの国の代理店の社長はこの方」と誰でもすぐに確認できます。 これは銀塩写真の良さと思います。フォトキナ'96のアルバムですが、私は秘かに「人別帳」 と名付けました。


「人別帳」からのワンカット。我ブースからの眺め。夜8時を廻ったので誰もいない。

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