「AS治療の最前線」 外科的治療
強直性脊椎炎においてどんな時に手術が必要となるのか
三井記念病院整形外科 三井 弘 講演録 1999/7/3(現在は 三井 弘 整形外科 リウマチクリニック)
強直性脊椎炎は、主に仙腸関節から起こりますが炎症がが強くなると股関節、背骨、膝、肩などの部位に炎症が起こり、時には手術が必要となることがあります。
最初に股関節に手術が必要となる例が多いのですが、股関節の可動域を改善しないと、その他の部位にも悪影響を及ぼすことが考えられます。
■ 股関節治療の重要性 ◎悪循環を起こす可能性 股関節の炎症が起こり、やがて関節が壊れてくることがあります。 ↓ また変形ににより関節の可動域が少なくなり、時には、股が開かなくなるというような変形が起こ ることがあります。 ↓ ASの炎症が膝に出ることがありますが、股関節が伸びないと膝も伸びないので更に負担が高くなります。 ↓ ASでは炎症により背骨が竹の節のように固まりますが、股関節の可動域が狭いと腰に対する負担も高まります。 ■ 人工股関節置換手術を考える時 ASの場合は、必ずしも痛みが強いからということだけで、手術を考えるべきではなく、逆に余り痛くないから手術しなくてもよい考え方が必ずしも適切であるとはいえません。 変形が強い場合 可動域が狭くなる → 階段が上り下りがつらい。 椅子に座ったり立ったりなど、またトイレなどで、不便を感じる ※ 痛みが少なくても可動域が狭く、不便を感じるならば手術を考える必要があります。 ■ 股関節置換手術の成績 股関節置換手術は歴史も長く、現在確立された手術であると考えられています。 長期成績も大変良く、特にASの患者さんに対しての耐久年数はリウマチの患者さんなどとくらべて長く、10年から20年くらいですが、既にそれ以上の年数が経過している患者さんもいらっしゃいます。 (昭和48年頃、三井DrがASの患者さんを対象に股関節手術を始めた当初は、手術後関節がもう一度固まってしまうのではないかという危惧もありましたが、これまでに経過から、そのような心配はあまりないことがわかってきました。) 多くの場合は、手術がうまくいっていれば可動域がかなり改善されるはずですので、そのことによって他の患部に対する負担も軽減される可能性があります。 ◎最新の手術方法「脊椎矯正骨切り術」とは ■ 脊椎矯正骨切り術 前傾姿勢に変形して固まった背骨を切り離して、徐々にカーブをつけて修正していく手術です。従来の脊椎矯正骨り切術では手術時間が数時間と大がかりでしたが、三井式手術(OPCD)は、大変手術時間が短く手術のリスクが大幅に軽減されています。 ◎適応 @座っていると問題ないが、長い間の直立がつらくなってきた。 A高いものを取るのが不便。 B長い間歩けなくなってきた。 C前屈みで遠くのものが見えにくくなってきた。 D前傾姿勢によりかなりの不便を感じる場合。 股関節手術と比べるとまだまだポピュラーな手術ではありませんので、 実際に骨切術の手術を受けられた患者さんの、ご意見を伺うことも手術が必要かどうかの判断基準の一つになるのではないでしょうか(どんなことが良かったのか?悪かった点など)。 ◎問題点 @術後、変形を矯正した所が戻ることがあります。 例えば背骨の角度40度矯正したとしても、術後10度位、元に戻ってしまうことがあります(場合によってはそれ以上、矯正角度がもどることがありましたが、この問題点は現在改善されつつあります) 。 A矯正した背骨以外のところが変形してくる(頸椎など)場合が考えられます。 このような手術後の変形を予防するためにも、生活習慣の改善や運動療法は不可欠であり手術をしても注意が必要です。 B背骨の変形を矯正したとしても、まっすぐ矯正して固定するだけで可動域が元に戻るわけではありません。 運動療法や薬物療法を取り入れて背骨の変形を予防するする事が大切です。 ■ 三井式手術OPCD(脊椎の手術器具)について 1981年に三井Drが考案 従来の方法に比べて手術の範囲が少なく手術時間も大幅に短縮されて大変安全性の高い手術です。17年間でリウマチなどで400症例の実績があります。 これまでに悪化例は1例もありません。 現在、ASにおいての脊椎矯正骨切り術にも応用されています(現在は三井スパイナルシステム)。 ◎AS患者の麻酔について |
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