手錠と汚い部屋









ちゃぽん


水音が乾いた部屋に響いた。


「ん・・・。」


千石は声を漏らして、


目を開けた。


「・・・・・あー、最悪。」


と、呟きながら半身を起こす。


ジャラ


体を起こすと、鉄の音がした。


「趣味ワル。」


千石は1つに束ねられ、手錠がかかっている。


そして、首には


「イヌかよ、俺は。」


ペットのように首輪がはめられている。


ただ、普通のものと少し違うのはそれが革ではなく鉄で


鎖が太いと言うことだろう。


鎖は千石が寝かされていた、ベットの上をやっと移動できるくらいの長さになっいて、壁にしっかりと


固定されている。


「くそっ!」


ガシャンッ


千石は力任せに、手錠を両側に引っ張ってみた。


が、外れることはなく、虚しさだけが残った。


「あ、起きたんだ。」


そう言って、千石が監禁されている部屋のドアを開けた。


「電気つけろ。」


少し凄みを利かせ言った。


「なんで?」


「お前の顔見るため。」


パチっ


「どう?理想通りの顔だった?」


「うーん、小さいね。背。」


にこぉっと笑って言った。


「うるさいよ、あんた。」


一番言われたくないことを言われたのだろう、越前はツカツカと千石の所へ歩いていった。


「ナニ?殴んの?」


「違う。」


ぐぃっ


越前は千石の胸倉を掴み自分の方に引き寄せた。


「んっ・・・」


そして、口付けた。


「んっ・・・んん・・・・・っ」


ガリ


「たっ」


急に唇に痛みが走ったので、千石を放した。


越前の唇からは真っ赤な血が滴ってきた。


「痛いんだけど。」


「当たり前ジャン、噛んだんだもん。思いっきりね。」


そう言いながら、唇に付いた越前の血を舌で舐めとった。


「おー、起きたんすか?千石さん。」


と、ドアの方で能天気な明るい声がした。


「ツンツン頭。」


「うわー、ツンツン頭はヒデェな。俺名前、桃城って言うんすよ。」


そう言って千石の方へ歩いてきた。


「ふーん、君の方が話しになりそうだね、オモシロくん。」


「モモシロっスよ。」


「・・・桃城・・・ってことは、そっちのおチビちゃんは越前くんかな?」


「そうだけど。」


ムスっとした様子の越前が言った。


「盗み屋か。」


「そーっスよ。暗殺屋の千石さん。」


にっと笑って桃城が言った。


「ねぇ、とりあえず、これ外してくんない?うざいし。」


ジャラ、と手錠の付いた手を持ち上げた。


「だめっスよ。」


「ナニ?これ君たちの趣味?こーいう(SM)趣味があるわけ?」


唇の片方を上げて言った。


「あー、どちらかと言えば、依頼人の趣味っスかね。」


と苦笑いして言った。


「あいつか。」


「知り合いなんすか?」


「白々しいね。」


「そうっスかね。」


「うん。・・・・で?どーいう契約なわけ?」


「それは、言えないっスよ。」


と、また苦笑いをした。


「いいじゃないっスか。」


と壁に寄りかかっていた越前が口を開いた。


「どうせ、逃げらんないんだし。」


「でもなぁ、越前。」


「へーきっスよ、桃先輩。」


「はぁ・・・・。」


越前は止める桃城を説得して、千石の方へ歩いてきた。


「教えてあげるよ。」


ニヤと笑って言う。


「あんたは明日の朝6時に依頼人とこに引き渡されるんだよ。」


「へぇ。6時ね・・・・・でも、やつらそぉとう、せっかちみたいよ?」


そう言って顎で窓を示した。


「見てみなよ。黒服のかっこいいお兄さんたちがいるでしょ?」


「まさか・・・・。」


桃城は焦って窓に走り寄った。


そこには黒塗りの車が3台、黒服の男が15人ほど。


「っ・・・。」


「君たちあんまり信用されてなかったみたいだね。話によると、君たち“シマツ”らしいよ?俺耳いいから。」


「うわ、最悪っスね。桃先輩。」


「あぁ、つかムカつくよな。」


「そーっスね。ムカつきますね。」


そう言いながら二人は、ドアへと向かう。


「あー、ねぇ。これ外してってよ。」


さっきと同じポーズをする。


「あんたも付き合ってくれるんスか?」


「外してくれたらね。」


「・・・・契約成立っスね。」


そう言って、ピンっと手錠と首輪の鍵を投げた。


パシ


「さんきゅ。」


「どういたしまして。」


そう言うと、桃城は部屋を出た。


越前は、桃城が千石に鍵を渡したのが気に入らないのか、むすっとした顔で後に続いた。


「さぁーて、お兄さんたちに質問タイムと行こうかな。」



















「さずが、プロっすね。」


足元に転がる死体を見て言った。


「あんま嬉しくないけどね。」


千石は慣れた手つきでブラストをガンホルダーに仕舞うと、顔に付いた返り血を手で擦った。


「さぁて、お兄さんいくつか質問いいかな?」


そう言って、まだ息のある黒服の男の髪の毛を掴んで、顔を上げさせた。


「う・・・・。」


呻き声を上げる男。


「質問その1、やつの狙いは俺オンリィ?」


「し・・らねぇ・・・よ。」


男ははぁはぁ、と苦しそうに息を吐きながら言った。


カチャ


千石はそんな男のコメカミにブラストを当てた。


「ファイナルアンサァ?」


明るい口調とは裏腹に千石の目は笑っていなかった。


凍ったように冷たい瞳。


男は背筋がぞくっとするのを感じた。


「も・・・ひ・・・・・と・・・・・・・・・・う゛・・・・・・。」


ガクっ


男は言い終わる前に、死んだ。


「あぁあ、死んじまったよ。」


桃城はあっけらかんと言った。


「もひと・・・・。」


千石はそんな桃城の言葉なんて耳に入っておらず、男が最後に言った言葉を繰りかえす。


「モウヒトリ・・・じゃないの?」


腕を組んでいた越前が言った。


「もう、1人・・・・まさか・・・。」


千石の顔が怒りと恐怖のいろに変わる。


「あの野郎っっ」


千石は乱暴に男の頭を放すと、暗闇の中へ走っていった。






「あー、逃がしちゃった。いいんスか?桃先輩。」


「いいんじゃねーの。」


そう言って、二人も闇に消えていった。







―南っ 頼むから、無事でいてよ―









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アトガキ


やっとこさ、出来ましたー!予想ではあと2回ほどでラストなんですけど、

それで終わるかどうかは・・・・

てか、最近、素材がイメージにあったのがなくて苦戦してますっっ

自分でも新しいデジカメ買ったんで作ってみようかなぁー

なんて、目論んでます!

ではでは、次にお会いしましょう!


2002.9.9            ユウリ