「シェフ。お客様がお会いになりたいと・・・」
と、見習らしい男が言った。
「ありゃ〜、また文句かねぇ。」
「あの・・・」
「うん、わかった。すぐ、行くよん。」
レストランと即効薬
「やぁ、久しぶり菊丸くん。」
レストランの入口あたりで言って、片手を上げた。
「千石!」
たったったったった
がばっ
「うわっ」
どすん
菊丸は厨房から走ってきて千石に抱きついた。
いや、飛びついた。
レストランの客が注目と期待の視線を向ける中
千石は勢い付いた菊丸の体重を支えられず、倒れてしまい
その上に菊丸が覆い被さる状態になっている。
世に言う、‘押し倒した’状態だ。
「菊丸君。重い・・・。」
押し倒された体制で、菊丸の下から言った。
「うわっごめん!」
ぱっと退くと、千石に手を差し出した。
「さんきゅ。」
千石はその手を取って立ち上がった。
「相変わらずだな、菊丸。」
「あ、南。いたんだねぇ〜。」
今気付いた!とでも言うとばかりに、さらっと棘がある言葉を吐いた。
千石がお気に入りの菊丸は、
いつも千石といっしょにいる南の存在が気に入らないらしい。
「うっ(地味か?!やっぱり地味なのか?!)
地味にショックを受ける南。(地味ぃー)
「菊丸くん、棘あるね。今の発言。」
「そうかにゃ?」
「うん。」
「まっ、取敢えずこんなとこじゃなんだから!ウエーター。」
菊丸が呼ぶとスーツの男が現れた。
「いつもんとこね。」
と指示をした。
いつもの所とは、二人のビップルームである。
二人は菊丸のレストランに来るといつもそこで食事をとるのだ。
「はい、かしこまりました。」
「おまたへ。」
そう言って、食前酒を持って菊丸が例の部屋にやってきた。
「何にする??」
とメニュー片手に菊丸が尋ねる。
「うーん。南は?」
「俺はお前といっしょでいいや。」
と、南。
「えー?それじゃつまんないじゃん!」
それを聞いた、千石はぶぅ、とぶうたれる。
「じゃあさ、二つとも違うコースで。」
「OK。菊丸スペシャルだね。」
Vっとピースしてみせる。
「うん。」
「では、少々お待ちください。」
そう言って部屋を後にしようとした
「菊丸くん。」
「なんだにゃ?」
「はい。」
ぴら
例の紙登場。
「ん?なんだにゃ?」
「ラヴレターv」
「うわーい、サンキュー千石。」
菊丸は紙を受け取って嬉しそうに去って行った。
バタン
「別にわざわざ手紙書かなくても言えばいいんじゃねぇか?」
「いいじゃん♪南のもあるよ。ほい!」
「‘大好き’ってお前・・・////はずい、やつ。」
そう言ってカードをポケットにしまった。
「ホントのことだもーん。」
その頃、厨房に戻った菊丸は
「えーっと、千石からの手紙は・・・」
カサッ
「えっと、南の料理には‘特別なアレ’頼むよ・・・・へへ〜、了解。」
「でさ、あれはやっぱり、俺の予想どうりで
コンコン
「お待たせしました〜!」
そう言ってオードブルを持って菊丸がやってきた。
「えっと、こっちが“エスカルゴのフリカッセ フィユテ仕立て”です。はい、千石。」
コト
「んで、はい。南。」
カシャン
「うわー、すげぇ、わかりやすいなぁ。菊丸くん。」
「にゃ?ナニが?」
「あはは」
「ごゆっくりどうぞ。」
バタン
「さて、喰うか、南。」
「そうだな。」
パク
「うわぁ、うまい!南のは?」
「美味いぜ。一口いるか?」
「ううん、いい。」
と首を横に振った。
その返答に南は少し不思議そうな顔をしたが、すぐに続きを食べ始めた。
「ねー、てかさ、南。」
「ん?なんだ?」
「俺らの借金っていくらくらいなの??」
「えーっと、ざっと、300万くらいだろうな。」
ガタンッ
「300!?」
それを聞いた千石はイスから立ち上がって驚いた。
「なんだよ、今さら。」
さらっと言う南。
「だって、300万だよ!?300万!なんで、俺ら仕事してんのにそんなにあるのさ?!」
かちゃ
南は持っていたナイフとフォークを皿に置いて言った。
「なんでだぁ?決まってんだろ?お前が行く先々で
仕事しながら民家壊したり、やれあれが食べたいだのなんだのってわがまま放題やるからだろ?!」
と一気に言った。
「あー、やっぱ、俺のせい?」
「あぁ(キッパリ)」
「メンゴ〜。」
パシっと手を顔の前で合わせて謝る千石。
「お前のそれは聞き飽きた。」
「ぶぅー。」
「謝るくらいなら、借金返すために仕事する!」
「はーい。」
手を上げて返事をした。
カシャン
いきなり、南がナイフとフォークを落とした。
「どうしたの?南。」
顔を覗き込む千石。
南は顔を片手で覆って言った。
「悪ぃ、なんか、急に頭が・・なんか、こう・・・ぼーっとする。」
「え?大丈夫??とりあえず、そこのソファんとこ座んなよ。」
千石は南を支えながら、ソファへと移動した。
「よいしょ。へーき?」
南をソファへ下ろすと、千石はかがんで聞いた。
「あー・・・なんか・・・眠ぃ・・・き・・・・が・・・・・・。」
言い終わらないうちに南はユメの中へと落ちていった。
「オヤスミ、南。」
ちゅ
そう言って、南のオデコにキスをした。
ガチャ
「千石ー!南寝たー?」
見計らったかのように、南に薬を持った張本人が現れた。
「しー、今寝たとこ。」
と人差し指を唇に当てていった。
「即効性だよーん。すごいでしょ??」
「うん、ありがと。菊丸くん。」
「でも、なんで南を寝かせたにゃ?」
「南がいると反対されそーだからさ。てか、もうされたんだけど。」
「依頼のこと?」
「うん、亜久津殺るの。」
そう言うと
「えー!?亜久津ぅ?!」
大きな目をさらに大きくして驚いた。
「うん、そこでさ。」
パチっとウインクしてみせた。
「俺の情報の出番ってわけにゃ!」
「ビンゴ☆現在地だけでいいんだけど。」
「お代は?」
「う〜んと、ツケって言うのは?」
「ダメー。」
「やっぱり?」
「“センゴク”でもいいよ?」
「それじゃあ、お言葉に甘えて。」
「はぁっ・・あぁ・・・いっっ・・・」
「うわぁ、千石慣れてるー。」
「はっ・・さらっと・・・すごいこと言うよね?・・あぁ・・」
「そうかにゃ?」
「あっ・・はぁ・・ちょ・・っと・・待って!」
「や−だね♪」
「うわっ・・・っ・・あぁあ・・あん・はぁ・・」
「おー。」
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・エージって・・・受け顔なのに鬼畜・・。」
「そうかにゃ?基本的には受けだけどね♪」
「はぁ・・はっ・・さて・・お代は払ったよ・・、君のチカラ貸して?」
「ほーい。」
そう言ってベットから軽い身のこなしで出ると奥の部屋へ入っていった。
15分後
「おまたへー!」
さっきの疲れが残っているのか、まだ、ベットに寝ている千石の元へ
菊丸が帰ってきた。
「はやいねぇ。」
「俺をナメちゃあいけませーん!」
へっえん、と胸を張って言う菊丸。
「それに、元気だねぇ。」
「千石おやじくさーい!」
「そりゃあ、あんだけやれば疲れるよ?」
「俺は足りないんだけどなー。」
にやにや、と笑っている菊丸。
「あー、もう勘弁。」
「あはは、さすがの俺もやんないよーん!」
「それは良かった。」
「あ、それよりこれね。」
ぺら
菊丸は一枚の紙を渡した。
「えーっと、ローワタウン ウェザー通り1-53・・・か。結構近いな」
「大変だったんだぜー?」
「感謝してますよ。」
「あははー、やっぱ千石おやじくさーい!」
「さて、そろそろ行くかな。」
ベットの回りに散らばっていた洋服を集めて羽織った。
「えー?もう??」
「うん、早く片付けなきゃいけないし。」
「気ぃ付けてね。」
さっきまでとは違う、真剣な顔で言った。
千石はその行動に少し驚いたが
「うん、また、菊丸くんの卵料理食べたいし。」
と、にっこり笑って返事をした。
「よしっ、準備おっけぃ。」
「また、ね?」
「うん、また。あ、そうだ、お願いがあるんだけど。」
「なにかにゃ?」
「南、この街のアジトに運んでくんないかな?」
「・・・うん、わかった。」
菊丸は一瞬顔を曇らせたが、頷いた。
「じゃあね。」
そう言って、レストラン「1000 stone」を後にした。
「行って来るね、南。」
3.5←BACK
NEXT→5
アトガキ
遅くなってごめんなさいですー。
はい、微妙にエロ入りました。
菊受けの方ごめんなさいねっっ
あー、しかも、レストランの名前あからさま過ぎたかなーなんて反省。
でも、そのままUPするんだな。えへへvv
2002.8.5 ユウリ