10  ドキュメンタリーの音楽 その1

 事実の持つ重みを、見ている人に提供するドキュメンタリーというジャンルも
TVを中心に数多く制作されています。
 医療、歴史、人物、政治、生活など多くのテーマを扱う「ドキュメンタリー」の
為の音楽の基本を考えてみましょう。

1 現在もレギュラーでは、万物創世記、地球発見や地球大紀行、NHKスペシャル
などがあり、特番の場合では平日深夜、日曜の昼間など、その他としては、ニュース
番組の中の1つのコーナーとして放送されています。

  実際に起きた事を再構築して物事の本質に迫って行く「ドキュメント」には作り
物には無い真実の重みがあります。
                     

2 今まで勉強してきたものは、ほとんどが創作された架空の物語を「本当らしく」
見せる為に、効果的に音楽を用いる題材でした。

  ドキュメンタリーでは逆に、真実又は真実に迫ろうとする表現・・・というもの
が重要なので、又違った心構えが必要です。

3 注意するべき点を挙げてみましょう。

   1)その場面の意図は何かを更に注意深く読み取る。

   2)監督やプロデューサーの意図や意気込みが、どこに向かっているかも充分
     にコミュニケーションをとる。

   3)基本的にあまり仰々しい音楽や、こけおどしは、画面が陳腐化することが
     多いので、特に注意する。
    (「ここぞ]というところでのショッキングなMは1〜2回ならO.K)

   4)音楽がナレーションやインタビューの邪魔にならないよう、特に注意する。

   5)感情移入し過ぎの音楽は、見ている方に「こう思え」ということを強制す
    るので、いやがるプロデューサーが多い。感情表現のレベルを慎重にする事。

以上を気をつけた上で更に、「有り物」ではない良さ(P.35の4)を出すよう
努力する。

4 と書いてくると、ひどく難しそうな気がしますが、TVのドキュメンタリー番組
を見て下さい。良くできているものは、非常に省エネの音楽が効果的に鳴っている事
が、わかると思います。

 例えば、薄い音で単純な音形やメロ、コードの繰り返しなど、「少ない音を慎重に
鳴らす」ということに注意してBGMを作るのが大事です。

5 しかし一転、テーマ音楽などは、映画のテーマ曲のように広く聴かれたり、印象
の残るものも少なくありません。

  番組のコンセプトを的確につかんだ「かっこいい」曲で、その映像の主題を見て
いる人の胸に奥深く印象づける、ということも、やりがいのあることでしょう。

6 さて、ドキュメンタリーも場面の変化が非常に多くあります。

 風景→インタビュー→資料映像→キャスターのしゃべり→風景→
インタビュー→etc.

といった具合です。

劇音楽と同じか、それ以上にいろいろなシーンが目まぐるしく出て来ます。

7 そこで、ある場面とある場面をつなぐ音楽の形をもう1度考えて見

  ましょう。

  (もちろん劇音楽にも、応用出来ることばかりです。)

入り方

1)次の場面に合うMを先にいれて、次の場面を予感させる。

2)前の場面に合うMを延ばす。又は、遅れて入れることで前の場面の気分を引っ張る。

3)場面の変化にMの変化をピッタリ合わせて、映像にメリハリをつける。

合わせ方

1)全てのアクション、カット割、気持ちの変化に音楽の変化も合わせる。
(やや古いタイプの映像音楽。ドキュメントよりは、アクション物などに向いて
いるかも。「スターウォーズ」、「トムとジェリー」など昔ながらの方法)

  →1つ間違うと陳腐になる。

2)大事なポイントだけ合わせ、他は音楽的な自然な流れにゆだねる。
(合わせ過ぎず、しかもシーンの変化を無視するわけではない。)

  →最近多い手法

3)シーン、ラップの変化とほとんど関係なく、自然に音楽を流す。
(トレンディードラマなどに増えている。もっとも、録音に大編成のオケを
使う為、作曲が間に合わないから・・・とも言われる。)

  →リバーブを深めにかける事が多く、画面から離れた客観的なMになる。

<課題> ドキュメントの冒頭の映像に実際に作曲してみよう(P.45〜)

 

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