一厘の仕組(地域編)

国有地囲い込み事件経過報告

森本 優(2003/02/12)

 


 戦争の足音が近くに聞こえ出し、それを準備するかのように国民の意識が「常識」によって統制されいく・・。正に当地はその縮図とも言える。

 この国有地囲い込み事件(参考資料)は、裁判で終局的に解決できる性質のものではないことは確かである。

 しかし、国有地としての泥揚げ部分の囲い込みにつき、利害関係人が自治会の多数派を握っている以上、囲い込みに異議を唱えても、まったく無視されるだけである。

 そこで私は、訴え却下になる可能性が高いことも充分承知した上で、主張の場を裁判所に持ち出すことにした。何らかの形で当地に波紋を引き起こし、当地の人達の良心に呼びかけたかったからである。

 ところで、大なり小なり権力というものの構造は、同じである。

 全体の力で黒を白とし、白を黒としてしまう恐ろしさは、体験した者でなければ分からない。この世界においては、憲法上の「人権」などは全く通用しない。更に、村社会においては、陰湿ないじめが加わってくる。

 地域レベルでは、権力者が育てた親衛隊が力を持って跋扈しているのと同じく、国家レベルでも、やがて軍隊にも正式に大きな権限が与えられ(勿論外形上はシビリアンコントロールの下にあるはずだが)、それがアメリカ国軍と共に暴走し出すことにもなりかねない。否、もう既にその兆しは現れている。

 憲法上の「人権」に守られていると思いこんでいた日本人が、そのような意識が全くの幻影であったと知る時がもうすぐ来ることになるだろう。私が当地で体験したものと同じ覚醒の時が・・。

 この暗黒の時代において、特に私達にとって必要なことは、「常識」に囚われず、嘘・偽りを見抜く曇のない目を持ち、悪いことは悪いと言える勇気を持ち続けることである。

 そして、「人権」の概念は、自らの存在証明として、その闇の深淵に向かって「否!」と叫ぶ時、初めて血が通ってくるのである。

 今、それぞれの立場から声を上げてゆかなければならないと思う。「常識」によって良心的な声が封殺されてしまう時代が、もう既に目の前にやって来ている・・。

平成15年2月10日

 


訴 状

 

××地方裁判所民事部 御中

平成14年12月18日

原告 森本 優

 

原告 森本 優

住所 ××

電話/Fax ××

 

被告 I

住所 ××

電話 ××

 

被告 K1

住所 ××

電話 ××

 

被告 K2

住所 ××

電話 ××

 

妨害排除・原状回復並びに損害賠償請求事件

訴訟物の価格 120万円

貼用の印紙額 10,000円

 

請求の趣旨

「被告Iは、別紙図面において赤色で特定した範囲の泥揚げ部分にかかる自動販売機及び工作物を撤去し、更に、高く塗り固められたコンクリートを、柵を越え河川に至るまでの特定した範囲約3平方メートル分除去して、元通りの通路に戻せ。」との判決を求める。

「被告Iは80万円を、同K1は10万円を、同K2は10万円を、それぞれ原告に対して支払え。」との判決を求める。

「訴訟費用は被告の負担とする。」との判決を求める。

 

 

請求の原因

被告Iは当該紛争地を購入したと主張しているが(甲9参照)、甲2の1でT2が証言しているとうり、被告は何ら正当な権原がないにもかかわらず、平成13年の春、原告等が代々利用してきた農業用取水口付近の泥揚げ部分(××1丁目840−2と実際の河川との間にある幅60cm前後の公共用地(甲1)で、道路に近い部分約5メートル程)に、河川ギリギリまでコンクリートを打ち、その上に自動販売機と屋根付き駐車場等を設置して完全に封鎖してしまい(甲4の1、2)、原告の農地に近い側の取水口付近の泥揚げ部分をまったく使えない状態にした。

 ところで、事実としての慣習も「法律と同一の効力を有」する(法例2条)。

 当地××でも、過去においては水稲・養蚕が、また現在においても水稲・トウモロコシ等が作られ、農作業上多量の水を必要としてきた。その為、河川の泥揚げ部分に立ち入り、その農作業に伴う付随的な作業が河川でなされてきた。そして、農作業そのものだけでなく、そのような付随的な作業にも、支障がないように配慮することが慣習上・条理上当たり前のこととされていて(甲2の1・甲7参照)、その恐れがある行為は、その都度農事組合で排除してきた事実がある。直近では、前の××農事組合長の時にも、河川の不法占拠者に対して工作物の撤去をさせている。

 従って、そのような××の慣習も「法律と同一の効力を有」する。

 であるならば、原告等が代々農業器具を洗い、また取水口に取水板を張るために、泥揚げ部分に立ち入りその部分を利用してきたことも、農作業に伴う付随的な作業に必要な行為であるといえ、××の慣習法(法例2条)によって保護されるべき利益であり権利であるといえる。

 次に、その農事上の慣習的権利は、対世効を有する物権的権利であると考える。

 すなわち、法例2条の慣習法は、民法175条(物権法定主義)が規定する「其他ノ法律」に該当しないとしても、物権法定主義の趣旨(1.「自由な所有権」の確立2.公示の必要性)に抵触しない限り、その権利の性質によっては、物権に準じた保護が認められるべきである。

 本件では、公共用地としてある泥揚げ部分の通行権・利用権が問題となっているため、地役権・入会権類似の性質を有しており、その権利の性質上、物権に準じた保護が必要である。

 また、物権法定主義の趣旨に関しても、1.当該紛争地は私人の所有地ではなく公共用地であって、入会地的要素(民法294条参照)が強いこと。2.取水口(甲4の1)から7〜8メートル離れた先に原告の畑や水田が広がっており(甲5の3・甲3の2)、水を使う為に当該泥揚げ部分に立ち入りその部分を利用する必要があることは一目瞭然である。

 また被告Iも、二十数年前に当該紛争地に隣接する土地を買って入ってきた時から、原告等が農業器具を洗い取水口に取水板を張るために、当該紛争地を利用していたことは当然知っていたのであるから(甲7参照)、公示も充分なされていたといえる。

 以上から、物権法定主義の趣旨にも抵触していない。

 従って、原告等の、当該紛争地である泥揚げ部分に立ち入り利用する権利は、法例2条に基づく農事上の慣習的権利であり、その権利の性質上、物権に準ずるものとして保護されるべきである。

 よって原告は、当該紛争地を不法占拠している被告Iに対して、妨害排除・原状回復を請求する。

 

被告Iは、本来公共用地である泥揚げ部分に堅固な工作物を設置し、そのため8年ほど前に市が設置し原告等が管理してきた柵の一部を消失せしめ、よって原告等の農事上の慣習的権利及び柵の管理権に基づく取水口付近の泥揚げ部分の利用権及び管理権を、事実上侵奪するに至った(甲10の1、2で故意を指摘)。当該行為は、原告の過去20年弱の米作り(甲6)とともに将来の米作りをも悪意によって否定する意味合いを持ち、そのことによって原告等は強い精神的損害を負った(甲5の1、2、3、4参照)。

 よって原告は、被告Iに対して、金80万円の損害賠償を請求する。

 

当時、××第三自治会長であった被告K2は、平成13年の1月11日頃、被告Iが取水口に張ってあった原告等の取水板を無断ではらったことに関して原告森本優と被告Iが小競り合いをしている現場にちょうど通りかかり、仲裁に入ったが、その際、原告森本が被告Iに対して公共用地である取水口付近の泥揚げ部分にコンクリートを打っていたので苦情を入れると、被告K2は、隣の地権者であるT2がブロック塀を岸ギリギリまで設置している通り(甲9参照)、被告Iも岸ギリギリまで工作物を設置してよい旨発言し、原告森本優及びその場に居合わせた原告の母森本春代の苦情に対しては、一切耳を貸さなかった。

 その後二ケ月ほどかけて被告Iは、取水口付近の泥揚げ部分に屋根付きの駐車場を作り、更に自動販売機を設置して、公共用地としての泥揚げ部分を完全に封鎖した。

 このように被告K2は、当該公共用地の利用権に関する自治会員同士の紛争の解決において、自治会長として構成員に対する平等な取り扱いが義務づけられているのに、原告森本等に対しては著しく不当な差別的取り扱いをなし、そのため原告等は強い精神的損害を負った。

 

同年6月30日の夜、原告森本優と森本春代が今回の件で話し合いによる解決をお願いするために被告K2自治会長宅に行った際、被告K2は、この件に関してこれ以上騒がないよう原告森本に伝え、一方的に被告Iの不法占拠の利益のみを擁護し、原告森本等の代々取水口付近の公共用地を利用してきた事実とその利益に対しては、まったく無視する姿勢を示した。更に、話の中で原告の人格を貶し、憲法上保障された正当な権利行使さえも阻もうとした(甲8)。そのような事実によって、原告等は強い精神的損害を負った。

 よって原告は、被告K2に対して、金10万円の損害賠償を請求する。

 

同年7月1日に、農事組合長立ち会いの下で原告森本・被告Iの両紛争当事者が話し合う機会を原告森本等が設定した際、××農事組合長である被告K1は、××町の水利に関する紛争を裁定する権限をを有しながら、当該農事組合にはそのような権限はないとして立ち会いを拒否し、農事組合員である原告森本等の苦情申し立てに対しては一切耳を貸そうとはしなかった。

 更に、6月28日に××市の道路河川管理課の役人が現地調査に来たが、その前日に被告K1は、原告森本が調査依頼した当該役人に対して、不法占拠の事実はないと説明し、農事上利用されていた当該公共用地の、被告Iによる一方的な不法占拠を積極的に正当化し擁護した。そのような働きかけを受けたためか、翌日現地調査に来た当該役人は、なんらの理由も示すことなく「問題なし」との判断を原告に告げている。

 以上のように被告K1は、農事組合長としての職責を全うせず積極的に農事組合員の権利を侵害することに加担し、そのような事実によって原告等は強い精神的損害を負った。

 よって原告は、被告K1に対して、金10万円の損害賠償を請求する。

 

 原告は以上の経緯を経験し、また過去においても同じ地区内において同じような事件が発生していることを知り、今後も当地において公共用地不法占拠事件が続発することを憂え、その歯止めとして、泣き寝入りすることなく敢えて、被告Iに対して妨害排除・原状回復を請求し、同時に被告Iに対しては80万円、同K1に対しては10万円、同K2に対しては10万円、それぞれ損害賠償を請求し、終局判決を求める次第である。

以上

 

証拠方法

甲1(S56年マイラー図面) 甲2の1、2(証言録取書・現公図原案) 甲3の1、2(公図・写真) 甲4の1、2(写真) 甲5の1〜4(請求書・領収書・写真) 甲6(稲作の記録) 甲7〜甲10の1、2(配布資料) 甲11の1〜13(その後の経過報告・写真・領収書) 甲12(検体) 甲13(鍵)

 

添付書類

1 訴状副本 3通

2 朱入り公図 3通

3 近隣土地の評価証明書 1通

4 甲1〜甲11の13 各3通

 


平成15年1月6日、訴状補充書添付書類として、「妨害排除・原状回復対象特定範囲詳細図1・2」各3通を提出。


 

平成14年(ワ)第××号 妨害排除・原状回復並びに損害賠償請求事件

 

原告 森本優

被告 I・K1・K2

 

準 備 書 面

 

平成15年2月5日

××地方裁判所民事部イ係 御中

原告 森本 優

 

 

 被告側の「請求の原因に対する答弁」(1月29日付け答弁書)に対して、以下の通りの反論を加え、「求釈明」に答える。

 

被告Iは、当該紛争地は自身が所有している旨の抗弁を出している。しかし、甲2の1にあるとうりT2は、被告Iに河川に沿って840−2の土地を売ったが、公共用地としてある泥揚げ部分まで売ったことはない、と原告に証言している。

 また、囲い込みがあった年(平成13年)の7月10日頃、県の建設部用地第二課にいた××氏(甲14の1)に相談しに行ったところ、適法に国有地が払い下げられた形跡もないとのこと。

 そして、当該紛争地を占拠してからまだ2年しか経っていないので、時効取得も考えられない。(因みに、甲7にあるとうり、母春代が十数年前から必要最小限度公共用地分は立入可能なスペースを残しておいて頂きたい旨お願いしていたのに、それを無視して、公用が廃止されてはいない取水口付近の泥揚げ部分を、強引に囲い込んでしまったのだから時効取得も何もあったものではない。)

 では、一体如何なる事由によって当該紛争地を所有するに至ったというのだろうか、納得できる説明を求める。

 ところで、平成13年の7月8日午後2時頃、知人から紛争を知ったということで、わざわざ現職の某国会議員が市の幹部職員2人を連れ、当該紛争地を視察しに来た。その時の某氏の説明では、現公図どうりであり問題なしとのことであった。そしてこれ以上騒ぎ立ててはいけない旨私に言い残していった。

 しかし、公図上の線引きと所有権が及ぶ範囲とは別問題であり、公図上の線引きのとうりに所有権が及んでいることにはならないはずである。某現職国会議員の言動には疑問な点が幾つか残った。

 

平成6年に、原告の姉の子供が当該紛争地である泥揚げ部分から川に転落したことから、母春代が当時の自治会を通して市に陳情し、金属製の柵を市の負担で取水口付近に設置して頂いた。そして、その当時農事上の必要からその泥揚げ部分に出入りして利用していた森本が、柵の管理を任され、その扉の鍵(甲13)を渡された。

 ところが、その2〜3年後から被告Iは、通路としてあった当該泥揚げ部分に物置やブロック等様々な障害物を置き出し、終には平成13年の春、自動販売機・屋根付き駐車場等を設置して完全に泥揚げ部分を封鎖した。

 その年の6月22日、甲2の1にあるとうり、T2に相談に行ったが、その際、原告森本が「柵の存在が泥揚げ部分の存在を証明している」旨の発言をしたところ、その一週間程後に、柵が3メートル程消失してしまった。(因に、翌日の23日に甲7の文書を自治会員宅約30戸に配布している。)

 消失前の正確な柵のサイズを市に問い合わせたところ、既に書類は廃棄済とのことだった(甲15)。しかし、甲4の2(写真)の左に写された柵の支柱の土台がブロックごと切り離されて置かれている点、また、中央及び右手にある駐車場支柱の手前部分が2ケ所不自然に新しいコンクリートで埋められている点から、検証は可能と考える。また、当然近所の人は、柵が一部撤去されたことは知っているはずである。

 

平成13年1月10日前後に雪が降り、その雪掻きをした雪を川に捨てたいということで、被告Iが柵の扉の鍵を原告宅に借りに来た。まる一日以上経っても返しに来ないので受け取りにいったところ、原告等が張って置いた取水板(10cm幅)二枚がそっくりそのまま外され取水口に投げ込まれてあった。被告Iが自らしたことだと認めたので口論となり、その際、被告Iの肩をつついたことは確かではある。しかし被告Iも原告の顔めがけて鉄拳を振り下ろしてきたことも確かである。

 その時母春代が割って入り、しばらくしてその場に被告K2が通りかかった。その際に被告K2は、隣の地権者であるT2がブロック塀を岸ギリギリまで設置している通り、被告Iも岸ギリギリまで工作物を設置してよい旨の発言をしており、それを原告森本は母春代と一緒に苦々しい思いで聞いている。

 

同年6月30日、母春代と一緒に被告K2自治会長宅に相談しに行った際、原告森本を変人呼ばわりして原告の人格を貶し、甲8(経過報告2)にあるとうり、××には××の「常識」があり、その「常識」によれば、たとえ公共用地としての泥揚げ部分を利用している人がいたとしても、自ら囲い込み堅固な工作物等を設置した方が勝つ。それが不法占拠であっても、占拠したという既成事実が尊重される、との説教を、母と一緒に苦々しい思いで聞いている。

 ところで、平成14年の11月上旬、第三自治会の新しい自治会長になられたM氏が、原告の提案(甲16、国有地払い下げと現公図の修正とを抱き合わせて問題を解決させる案)に対する回答を伝えるために、原告宅にやって来た。

 開口一番、自治会の主要役員(因に現在被告K2は自治会の顧問である)に諮ったところ、「何様のつもりだ」といった反発が強く、この案を進めることはできないとの発言。更には、甲8の最後にある「離任勧告」という表現に対して、勧告の使い方が間違っているといって被告K2が怒っているので素直に謝れとの要求があった。

 甲7から甲10までは、平成13年の6月から12月にかけて、約30軒の自治会員宅に配ったもので、当然被告K2の目にも入っているはずである。ところが、配布当時においては甲8の内容に対しては何ら反論することなく、じっと押し黙ったままであった被告が、1年と4ケ月経った後において、甲8の内容に対してではなく、単なる用語の誤りをとらえて激怒している。このことは、甲8で要約記載したものとほぼ同じ内容の発言が実際あったからにほかならない。

 

平成13年6月28日頃、原告の依頼で当該紛争地の状況を現地調査しに来た××市建設部道路管理課の××氏(甲14の2)は、原告に対して、前日部下数人とK1農事組合長宅に伺い、今回の件に関して話を聞いてきた旨述べ、被告K1から原告に「よろしく」とのメッセージを預かってきたと原告に伝えた。そして××氏は、現場を一瞥して「何ら問題なし」との判断を何らの説明もなく原告に告げた。

 その判断に納得いかなかった原告は、再度道路河川管理課に電話を入れ、説明を求めたが、まったく相手にされなかった。

 ところで、被告K1と同Iとは若い頃より仲が良く、今でも家族ぐるみでの付き合いをしていることは周知の事実である。そして更に、公共用地の囲い込みに関しても同じ利害関係に立つ者同士ということになれば、農事組合長としての公平な裁定を望むこと自体が愚かなことであったと言える。

 

求釈明の1について

 「慣習」の具体的内容に関しては、地域ごとに微妙に異なってくるので、ここで明確に定義付けすることは妥当ではない。証人尋問・鑑定等により審理の過程で当地の「慣習」を明らかしてゆくべき性質のものと考える。そのため原告は、まず××の長老に発言を求め、更に必要であれば、××地区・××南部の「慣習」がいかなるものか、鑑定を申し立てる所存である。

 

求釈明の2について

 原告が主張する農事上の慣習的権利は農業従事者にとっては死活問題ともなり得る重要な権利である。

 確かに資本主義社会の商品経済システム下では、取引の安全のため物権法定主義が採られてはいる。しかし、だからといって法定されていない物権的権利は取るに足りないものとして無視してよいということにはならないだろう。

 中世封建時代であれまた現代の金融資本主義の時代であれ、いかなる時代においても、農業従事者若しくは百姓として生きてゆく決意をした者にとっては、農地は投資や利殖のための商品ではあり得ず、農作業上必要となる農事上の慣習的権利は、生命を賭してでも守らねばならないものとなる。

 ところで現資本主義経済システムの中では、利潤や経済効率のみがもてはやされ、一般的に生産性が低いとされる農業に対しては蔑視さえする風潮があることも事実だ。特に、現経済システムに乗り、経済効率・生産性を追求してきたエリート農業従事者達に、そのような意識が重く沈み込んでいることには驚かされる。

 しかし、これからの農業は様々な形のものがあってよいと思う。これからの時代では、多様な価値観を吸収して豊かに育ててくれるものとして農業があり、実際そのような農業に従事する者が増えてきていることも確かだ。

 そうであれば、そのような者達が地域で誇りを持ち安心して農業に従事できるよう、地域の人達は、たとえ農業に従事していなくても、少なくとも最低限のマナーだけは身につけたいものである。

 

求釈明の3について

 当地では、地域ぐるみで河川の泥揚げ部分としての公共用地を囲い込もうとする密約と暗黙の了解があるらしく、その不正行為を隠蔽するために、首謀者・共犯者・利害関係人等々が根回しして、実質的に村の主要な役員を選任し(人選が誠に不透明である)、村の政治を意のままにしようとしている。更には、政治的なパイプを駆使して、市の役人・村内選出の市議会議員、そして現職国会議員にまで働きかけ、隠蔽工作にやっきになってい

る。

 以上の具体的な様相は、審理の過程で鮮明に浮かび上り、その全体像の中で、被告3名の行為の意味合いもより明確になると思うので、もうしばらくお付き合い願いたい。

 

以上

 


 

平成14年(ワ)第××号 妨害排除・原状回復並びに損害賠償請求事件

 

原告 森本優

被告 I・K1・K2

 

準 備 書 面

 

平成15年2月12日

××地方裁判所民事部イ係 御中

原告 森本 優

 

 平成14年12月18日付け原告訴状に以下の通り付記し、取水経路の図を添付する。

 

請求原因の1に関して

 当該紛争地(平成15年1月6日付け訴状補充書添付書類「妨害排除・原状回復対象特定範囲詳細図」の赤線内)に、代々、取水板の脱着の他、農業器具等を洗うために立ち入っていた。その使用状況は以下の通りである。

 養蚕が行われていた時期(20年程前まで)では、養蚕のための籠(約1メートル四方厚さ10センチ)、籠を掛ける台木(長さ約2メートル幅20センチ程)、竹棒(4〜5メートル)、等々を洗うため、必要に応じて使用。

 それ以降トウモロコシ等を栽培しているが、立入困難になるまでは(6〜7年程前)、冬期栽培用のトンネル用ビニール(長さ約10〜20メートル、幅1.5メートル程)、シート等の農業資材を洗うため、年に数回、数日間の間使用。

 また、稲作・畑作関係でも、除草器、ロータリー、器具等の金属部分の泥を落し洗うために、必要に応じて使用していた。

 

請求の原因の2に関して

 被告Iは、5〜6年前に離婚し家に戻ってきた娘のために駐車場を当該紛争地となっている泥揚げ部分に作りたいので、約束通り(甲9参照)泥揚げ部分を全部囲わせろ、との話を4〜5年前にT2に持っていったものと推測される。T2自身は自分の土地に接している泥揚げ部分を全部ギリギリまで囲い込んでいるのに、被告Iには森本のために泥揚げ部分を残しておけというのはおかしいとの主張だろう。

 その点について、平成13年6月22日にT2に話を聞きにいった際(甲2の1)に発せられた言葉から推測すれば、T2自身には農事上の慣習的権利の存在が頭にあったようだが、農業従事者ではない被告Iにはそのことの意味が良く分からず、被告Iは自身の土地に接する泥揚げ部分の全部の囲い込みを強く主張したようである。

 それは、甲2の1にあるとうり「村の慣習上、森本には本来農地に近い側の岸に立ち入る権利があるはずだから、Iが設置した自動販売機等を撤去させる権利がある」とのT2の発言があったすぐ後で、「これでIさんも農事上の慣習的権利があることがやっと分かるだろう」との言葉が出てきたからである。

 また、4〜5年前の同じ時期に、(森本の様子を探りに?)T2が久しぶりに母春代の所に来て世間話をしていった際、T2が「××(同じ岸の地権者で、よく問題を起こした人物)より、Iの方が人間が悪い」と口を滑らせたのを母春代が聞いている。その時のT2の様子から、母は直感的にT2が何かやましいことをしたと気づいたそうである。

 それは、甲9にあるとうり、地籍調査の時、同じ岸の地権者三者の利益(公共用地を私有地として囲い込むための正当化根拠)のために、対岸地権者(T1)の方に泥揚げ部分が全部引き受けられた形で公図の線引きをしたことであり、それと同時に、森本が利用してきた当該紛争地である泥揚げ部分全部を被告Iの私有地として囲い込めることを、被告Iに対して確約したことである。

 ところで、対岸地権者であるT1の話では、原公図を確認しながら市役所・公民館で調査票に署名・捺印する最終段階において、T1の場合には、市の役人が調査票のみをT1宅に持って来て署名・捺印を求めてきたので、T1は市を信用して盲判を押してしまったとのことである(甲10の2参照)。

 そのことが事実であれば、原公図が示されず、また役所・公民館で署名・捺印が求められなかった点につき、手続き上明らかな瑕疵があり、その同意は無効である。

 

 さて、被告Iが娘の駐車場のために当該紛争地の囲い込みを強く主張し、T2も、公共用地の囲い込みを持ちかけた手前、その主張を聞き入れざるを得ず、それ以降T2を中心に準備行為に入ったものと考えられる。

 役員の人事の掌握と利害関係人の結束、そして森本を孤立させるための芳しからぬ噂、等々によって外堀を埋めていった。

 一方被告Iは、当該紛争地である泥揚げ部分に様々な障害物を置いて、徐々にその幅を狭めていった。その作業は、毎年収穫後冬から春にかけて行われていた。

 ところで、T2が6月22日に原告に話した内容の一つに、農民が耕作地を徐々に広げていき隣の地権者の農地の一部を時効取得してしまうものがあったが、今回の囲い込みにおいてそのように徐々に進行していった様子は、その農地の一部の時効取得の話に共通している。また甲11にあるように、当該紛争地の手前に設置された柵を徐々に押し倒していって、原告等の反対岸への立ち入りさえも困難にしたやり方(甲11の1、6、8、9参照)にも共通している。更に、相手側の時効取得の抗弁(甲10の1参照)が相手側の手口そのものを証明している。

 以上のようにして、平成13年の春、人的のみならず物的にも「囲い込み」は完成したものといえるのである。

 以上の経緯の中で、公共用地の利用者がいるにもかかわらず、敢えてその全部の囲い込みを主張して実際囲い込み、更には、8年程前に市が設置し市及び当時の自治会の委託により原告等が管理してきた柵の一部を消失せしめた被告Iの行為は違法性が高く、当該行為は、原告の過去20年弱の米作り(甲6)とともに、将来の米作りをも悪意によって否定する意味合いを持つ。そのため原告等は強い精神的損害を負ったものである(甲5の1、2、3、4参照)。

 

以上

 

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