小麦・クローバー草生米作り

 

森本 優(00/9/23)


 10年以上も前から試行錯誤してきた完全無農薬米作りの技術を公開します。今後とも改良の余地はあると思いますが、それぞれの土地に合った作り方を工夫してみて下さい。ちなみに当地は甲府盆地にあります。

 今後稲作人口が急速に減少していくものと思われます。生産者米価が低落傾向にあり、更には、農薬使用が前提となっている慣行農法ではあまり創意・工夫がいらず、後継者にとっても魅力的とは言いがたいので、当然といえば当然なことなのかもしれません。さりとて、炎天下地に這いつくばって除草するのは大変なことです。

 しかし、ひとたび課題を持って主体的に取り組み、自らの創意と工夫によって雑草を抑え、稲そのものが持つ生命力の強さ・豊かさをを目の当たりにすることができるなら、人は表面的・職業的な農業にではなく、森羅万象につながり得る百姓に目覚めることになるはずです。そして、玄人の観点から物事を把握してしまっている「百姓」より、既成概念に囚われていないズブの素人であればこそ、生命の強い輝き・物事の本質をより敏感に受け取ることができるのではないでしょうか。

 一人でも多くの方々が素人の百姓に目覚めて頂けたらと思います。

 

 

7月下旬の草勢

1999年10月中旬頃

 米収穫後、除草の為ロータリー機で軽く攪拌する(上田10a、下田12a)。その後来年度の米作りの為の緑肥として、赤クローバーの種を500g/10a、小麦の種を10kg/10a程ばら蒔く。地を這うラジノ系クローバーではなく赤クローバーにしたのは、その後の管理が比較的に容易になる為。播種後、その上から稲ワラを切らずにそのまま振る。

 

2000年1月

 圃場の排水を良くする為回りの溝を切り直す。

 

5月15日

 上田・下田に、コシヒカリの種籾を5kg/10a程小麦と赤クローバーが生い茂っている上からばら蒔く。そして、籾が地面の上に落ちるように、ロータリー機で軽く攪拌する。この場合、できるだけ地面を掻き回さず、籾を地面に落とすようにだけ工夫する。これと同時に、繁茂している小麦とクローバーをロータリー機で倒しながら鎮圧していく。こうすることで地温が上り、発芽しやすくなる為。

 

5月16日

 上田・下田に走り水。

 

5月29日

 上田では一定量の籾が発芽してきた。しかし下田では細かい草が重なり合い布状になって、籾種が地面に落ちるのを妨げている。その為発芽しているものが極端に少ないので再度下田だけ蒔き直すことにする。時期が遅れていてその後の分ケツが充分とれないだろうことを考え、10kg/10aと多目に蒔く。倒伏の恐れに関しては、本肥を抑え、葉の色を見ながら追肥で調整することにする。蒔いた後からロータリー機を入れ、軽く土の表面と一緒に細かい草の布状の繊維を破り攪拌する。この場合、ロータリーの回転を変え、土と一緒に麦・クローバーを切り込むようにした。土を無闇に攪拌し露出させると、その部分に雑草が生い茂るようになる為。

 

5月30日

 下田に走り水。上田では、籾が発芽してきた中、麦とクローバーが立ち上がり繁茂してきたので、苗の生育を助ける為造林鎌で地面の上20cmぐらいの所から刈り払う。

 

6月1日

 上田に鶏糞を60kg/10a程入れる。上田は年々地力が高くなってきているので、コシヒカリの場合緑肥とは別に鶏糞を通常150〜180kg/10a入れるのだが、今回は60kgに抑える。

 

6月10日

 下田では、再度蒔き直した籾がそろって発芽してきている。前回蒔いた籾種が一緒に発芽している場合もあるようなので、合計して12〜13kg/10a程の籾が一斉に発芽した計算になる。

 

6月20日

 上田の籾は、地面に落ち発芽したとしても、露出している為ナメクジ等の食害を受け、生育はすこぶる悪かった。結局、本葉2枚前後になった苗は30cm四方に1本程度。麦・クローバーを地面20cm程の所から再度造林鎌で刈り払う。クローバー等を枯らせる為圃場に水を入れる準備をする。下田に鶏糞60kg/10a程入れる。

 

6月21日〜26日

 上田に常時湛水。水深3cm〜8cm程度か。4〜5日程度で赤クローバーは根腐れを起こしその後徐々に枯れていく。また、湛水前に刈り落としたクローバー等の葉・茎が3日目頃から水面・水中で腐り出してアクを放ち、発芽しかけた細かい雑草を枯死せしめるようになる。更に、藁と茎と腐りかけた葉で出来たマルチが地面を被い、新しく出てくるはずの雑草を抑えることになる。但し、籾と同じ生育過程をとったヒエ・アワ等の雑草は姿を現してくるので、その後注意して抜く必要がある。(2〜3年に一度畑作に転換して、ヒエ・アワ等の水田に生える雑草の種を断つようにローテーションを組めば、かなりの率で雑草の発生を抑えることができるはず。)

 

上田での湛水状態

 

6月26日〜30日

 下田の苗が本葉一枚半以上になっているので、クローバーを刈り払い水を入れて湛水状態にする。水深5〜10cm(苗の葉先が水面上に出る程度)。漏水しないように注意し、一日に2回程水を補給して一定の水位を保つようにする。丸4日で水の補給を停止。徐々に水位が下がるのを待つ。6日目で地面が露出し出す。その後一週間程かけて徐々にクローパーは黄色に変色していき、その下から本葉二枚程度の青い早苗が姿を見せるようになる。

 

 

下田での湛水状態

 

落水後一週間経った様子

 

7月上旬

 苗を水稲にする為に3〜4日おきに、更に日が経つにつれて2日おきに、水を入れる。同時に湛水状態から自然に水が引くのを待ち、地中に充分な酸素が入るよう注意する。(畑の根で育てる場合には、出穂・登熟期以外では、梅雨の時期の為ほとんど入水の必要がない。したがって、やり方次第では、かなりの節水栽培が可能になるものと思われる。)

 

7月6日

 下田に追肥として鶏糞を80kg/10a程入れる。

 

7月中旬

 上田・下田とも、徐々に水を入れる回数を多くする。3〜4日間湛水状態にし、その後1〜2日程地面を露出させるようにした。7月20日前後において、上田では苗の分ケツが20本前後にもなり全体で充分な穂数が確保できた。また下田では3〜4本にとどまっているが既に充分な穂数が確保されている。

 

7月下旬の上田

 

赤クローバーが紅一点

 

7月下旬の下田

 

8月中旬

 お盆過ぎから上田・下田とも稲の穂が出始める。

 

9月上旬の上田

 

9月上旬の下田

 

9月20日〜21日

 上田・下田の稲刈り。稲架かけ。例年より一週間以上も早い。記録的な猛暑のためと思われる。9月に入ってから第二週目頃、台風と秋雨前線の影響で全国的に豪雨となり、甲府盆地でも観測史上初めての記録的な集中豪雨となる。その影響で濁流に沿って上田の約半分が倒伏。しかし下田では一部のみの倒伏で済む。下田の稲は同じコシヒカリだったが、播種した時期が上田のものより二週間ほど遅く、そのため穂についた籾数が少なめであり、かつ草丈も上田のものより一回り低かった為。しかし全体の収量は籾換算で500kg/10a近くにはなるものと思われる。

 

以上

 

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