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 沢沿いの水辺に生えるネコノメソウ。ダイモンジソウと並び、マイナスイオンと清冽な飛沫を一杯に浴びて育つ超幸せな草花の一つ。
 「清冽な水」と言えば、山菜の代表格「ミズ」が定番。やっと食べられそうなくらいの若芽になっていた。
 アザミ・・・写真は沢沿いに生えていたサワアザミ。アザミ類の中では一番葉が柔らかく、最も美味しい。春の若芽や初夏の若茎は、どの種類のアザミも食べられるから安心だ。天ぷら、細かく刻んで汁の実、ゆでてゴマ味噌和え、おひたし。モリアザミの初夏の若茎は、ゆでて水にさらし、皮をむいてからマヨネーズで食べると美味い。
 まだ芽吹かないブナの林床には、春の光が一杯に降り注ぐ。土から様々な山野草や山菜たちが我先にと芽を出す。こうした時季は、一日経てば、驚くほどの変化を見せる。まさに千変万化の自然を実感できる。
 初日は、全くの灰色だったが、三日もたつと、ご覧のとおり淡い芽吹きが始まっていた。
 清冽な流れを彩るニリンソウ。初めてこの花を摘んで、おひたしにして試食してみたが、クセもなく、コリコリした歯ごたえがあった。アイコやシドケがない時は、この草花も山菜として採取するのも悪くはないだろう。ただし、猛毒のトリカブトと間違えないよう、花の咲いた茎を間引くように採取することを忘れずに。
 ブナやサワグルミの林間から差し込む春の陽光を一杯に浴び、斜面に萌え出たばかりの山菜を摘む。例え重い荷を背負っていても、荷の重さを忘れるほど楽しい。
 何とか食べられるくらいになったアイコの若芽。腐葉土が厚い所では、土中に入った茎の部分は以外に深い。できるだけ深い根元から採取するには、手前に折り返すように慎重に採取するのがコツ。
 ヒトリシズカ・・・ヒトリシズカという名前から孤独な草花のイメージを抱くが、写真のように1本ではなく、数本群れて咲いている。どこか、人間も山に入ると群れなければ生きられないところが似ていて、心惹かれる草花だ。
 ニリンソウ(右)とアイコ(左)・・・斜面を観察していると、一つの図鑑ができるほど種類も形も様々で、実に多様性に富んでいることに気づく。時間がいくらあっても足りないほどだ。
 シドケ(モミジガサ)・・・葉がモミジに似ているのですぐにわかる。茎の太いのを選んで採取する。大量に採取した時は、ゆでてから水にさらし、水を切って万能つゆ(味道楽の里など)に漬けると簡単で美味。この方法は、山菜全てにいいらしい。ぜひ試してみてはどうか。アイコとシドケで試食してみたが、酒のツマミにグーだった。ただし、万能つゆの濃度と水で薄める比率によって味が微妙に変化するので試行錯誤が必要だろう。
 シラネアオイ・・・ゼンマイ採りシーズンの5月下旬から6月上旬にかけて、よく見かける花だが、意外に早く顔を出していたのには驚いた。
 スミレサイシン・・・根茎は、ワサビを細くしたように、よく発達している。雪国では、昔からこの花の根をトロロにしてよく食べるという。
 エンレイソウ・・・葉が一際でかく、目立つ草花だ。白い花を咲かせる種類もあるそうだが、未だお目にかかったことがない。
 三日目で初めて晴天に恵まれた。山に三日もこもれば、体もすこぶる軽くなる。もっと山にいたい気持ちを抑えて、一歩一歩非日常の世界から日常の世界へ下る。
 手前のブナは芽が出たばかりで赤茶色に見えるが、奥右手の斜面は萌え出たばかりの新緑が沢から峰に駆け上がり、実に美しい光景だった。ちょっと写真がかすんでしまったのが残念。見た目どおりに撮る写真技術の難しさを感じる一枚。
 下るにつれて、ブナの新芽が萌え出していた。ここまで下ると、早く風呂に入りたい。ソフトクリームを食べたい。焼肉を食べたい・・・などと日常の誘惑が強くなる。日常の世界にどっぷり浸かっていると、非日常の世界が恋しくなり、非日常の世界に来ると、日常の世界が恋しくなる。これはいつも感じる不思議な感覚だ。二律背反がこの世の常だとすれば、陶淵明が「桃源郷」を創作するしかなかったように、山釣りの旅は、その夢の「桃源郷」を彷徨う束の間のひと時なのかもしれない。

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