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ブナの森・瑞々しい新緑の輝き
 ブナの森が最も輝く時期は、萌え出たばかりの新緑の季節。ブナの森は、半年間貯めたエネルギーを一気に発散させるかのように、驚くほど眩しい輝きを放つ。ブナも山野草も、生命の息吹を思いっきり発散させる時、源流の旅人は開放感に満たされる。左の写真は、ツツミ沢のブナ、右の写真はウズラ石沢のブナ。
 何度新緑を見上げ、何度カメラのシャッターを切ったことだろうか。新緑は、、眼にも心にも沁み込むほど優しい色をしている。人工では決して造り出せない色、それがブナの新緑。この季節、源流に一夜を過ごす心地よさは格別だ。
 新緑とスノーブリッジの谷をゆく。この時期、重い荷を背負って稜線をめざす旅は、歩きやすく展望も開け、最も充実した山釣りを満喫できる。こうした時季は、旅人の感性を最も刺激し、素晴らしい作品を生む原点にもなるだろう。
 早春の青空に映える新緑と白滝
 源流部に広がる残雪と新緑の美・・・ブナの林床には、猛烈な笹薮が繁っている。残雪で笹薮が押しつぶされている頃が、ブナの新緑を撮影するベストシーズンだ。ブナの森は、雪が解けると、背丈ほどの笹薮が邪魔をし、絵にならなくなる。それだけに、なかなかシャッターチャンスには恵まれない。
 清冽な流れに張り出したブナの若葉。
原始的な花・シラネアオイ
 ゼンマイ採りのシーズンによく見掛ける大型の花。1科1属1種の日本特産種。雪国のブナ林では、それほど珍しくもなく、ごく普通に見られる。それだけに親しみを覚える花だ。和名は、日光白根山にたくさんあり、花がタチアオイに似ていることから名づけられた。
 珍種シラネアオイの白花・・・普通は紫色だが、稀に突然変異の白花に出会うことがある。この白花は、和賀山塊の源流の険しい崖に生えていた。この時は、それほど貴重とは思っていなかったが、その後一度も出会ったことがない。それだけに貴重なものだと思う。奥に普通の紫色のシラネアオイが写っているのが分かるだろうか。
 正面に残雪の雪煙が舞う源流、滴る汗が一気に引いていくような冷気に身も引き締まる。右下にシラネアオイがひっそり咲いていた。源頭には、どんな花たちが迎えてくれるのだろうか。
白神の妖精・トガクシショウマ(絶滅危惧種1B類)
 源流の山旅で出会う山野草の中では、最も美しく大好きな花である。稀に玉川源流部などで見掛けることはあるが、まばらで美しさもはなはだ劣る。まるで盆栽のように大きな株となって咲く美しいトガクシショウマは、白神山地の源流でしか見たことがない。それだけに「白神の妖精」と勝手に命名している。1属1種の日本特産種。秋田県で絶滅危惧種1B類、環境省でも絶滅危惧種2類にランクしている希少種。
希少種・オオサクラソウ(絶滅危惧種1A類)
 秋田県のレッドデータブックでは絶滅危惧種1A類にランクされている希少種。盛夏にも適度な湿度を保つ沢筋の斜面に生えている。生育場所は、三脚がなければブレてしまうほど暗い。それだけに、何枚も撮影したうちの一枚だ。真っ直ぐ伸びた細い一本の茎の先端に濃い紅紫色の花を一杯に広げて咲く姿は、遡行者を釘付けにするほど美しい。この沢では、とりわけ群生の規模が大きく、狭い沢の両岸に生えている。ただし、大きな滝を高巻かないと簡単には見つけられない難所に咲いているので、人の手から逃れて生き残っているようにも思う。
 オオサクラソウと最初に出会った時は、やたら生えていたので、まさか希少種とは思っていなかった。その後、各地の沢旅を繰り返してきたが、他の沢ではたった一箇所だけでしか出会っていない。それも一株だけであった。
ショウキラン
 葉緑素を持たないランの仲間で腐生ランの一つ。暗い沢沿いに咲いているだけに、見つけると、ほのかに光っているように見える。暗いため、ついついフラッシュ撮影をしてしまうが、不自然な写真になることが多い。撮影するには、面倒くさがらず三脚をセットして撮影するのがベスト。
源流を彩るヤマザクラ
 6月、源流部に近いテン場で、ふと振り向くと、渓に見事に張り出して咲いていた。今でもその美しい光景が蘇ってくるような一枚。その後何度も、ヤマザクラを見ているが、こんなシャッターチャンスに巡り合ったことはない。
新緑に映える紅・ムラサキヤシオツツジ
 新緑の頃、沢を歩いていると、斜面を彩るブナの新緑に混じって、一際鮮やかな紅色が目に止まる。色彩といい、形といい雪国の春山を艶やかに彩る印象深い花である。
清冽、涼感を誘うネコノメソウと水辺の草花
 ネコノメソウ・・・清冽な沢沿いでよく見掛ける花。瑞々しさが涼感を誘う花である。世界に50種以上知られているが、そのうち日本では14種が知られており、ネコノメソウ王国と呼ばれているらしい。
 ネコノメソウのアップ・・・近付いてよく見ると、確かにネコの目に似ている。
 ブナの森の源流:水辺の草花
ヒトリシズカ
 白いブラシのような花穂を大切に包み込むように咲く。光沢のある二対の葉が十字に対生する。和名は、この花穂を静御前(シズカゴゼン)の舞い姿に見立てたもので、別名ヨシノシズカとも呼ばれている。
タニウツギ

 その名のとおり、谷筋でよく見掛ける花。この花は、雪の多い日本海側に限って分布する。一際色鮮やかに咲いているので、ついついシャッターを押してしまう花の一つ。右の写真は、白い滝の流れに張り出したタニウツギをスローシャッターで撮影したが、風に揺れてブレてしまった。失敗か成功かは、見る人次第だろう。
ギンリョウソウ、フジ
 ギンリョウソウ・・・薄暗いブナ林の下に自生している。写真は白神山地赤石川源流上二又付近のブナ林内で撮影したもの。和名は「銀竜草」と書き、白い竜の形に見立てたもの。  フジ・・・美しいフジの花房が垂れ下がっているのを見ると、野山の花たちも咲き競う頃だと実感させられる。日本人の好きな花の一つだ。

新緑から深緑へ
 ブナの深緑・・・初夏になると、沢をすっぽり包み込むように深い緑のトンネルに包まれる。森の頭上からエゾハルゼミの鳴き声がコエゾゼミに代わると、やがて盛夏を迎え、森はまさに波打つ深緑の樹海となる。この時期、ブナの巨人は、「母なる木」にふさわしい慈愛に満ちてくる。
サワアジサイ(ヤマアジサイ)
 沢沿いによく生える落葉低木。枝先に散房花序を出し、淡紫色又は白色の小さな両性花を多数つける。エゾアジサイと似ているが、葉が長楕円形で先は鋭く尾状にとがっている。
エゾアジサイ
 山中の樹陰に自生する落葉低木。装飾花はサワアジサイより大きく、鮮やかな白色又は青紫色の花をつける。

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