デジカメ・ブナの巨木編 黄葉編 ニコンCOOLPIX995

 2001年10月中旬、ブナの黄葉が見たくて、釣りでもないのに朝3時に目が覚めた。今回も、ニコンCOOLPIX995を片手に、2001年最後の輝きを放つ「白神・ブナの森」をのんびり歩いてみた。白神のシンボルが鎮座する巨木の森は、黄葉にはまだ早かったが、鬱蒼とした森は暗く重厚な迫力を感じた。その森を抜け、藤里駒ケ岳登山道に向かうと、全山炎が燃え上がるような紅と黄の競演が繰り広げられていた。

 上の写真は、苔生した岩と原始的なブナの森が神秘的に輝くシーンを逆光で撮影したもの。この写真から、「神が宿る森・白神」の空気感が伝わるだろうか。

 秋田県藤里町、標高600mのブナの森に着いたのは午前6時半。上の写真は、「白神のシンボル」として崇められている400年ブナ。残念ながら、向かって右側の大きな幹が折れていた。ブナの巨木は、苔と多くのシワ、コブがあるのがわかるだろうか。和賀山塊に鎮座する日本一のブナも多くのシワと大きなコブがたくさんある。これは長年風雪に耐え抜いた森の主の証でもある。

 朝早かったので、森の中には誰もおらず静寂そのものだった。深いブナの森は暗く、三脚がなければデジカメでは簡単にブレてしまうのは自明だった。デジカメの利点は、軽いことだが、反面シャッターブレを起こしやすい欠点を持っている。ファインダーではなく、慣れない液晶画面を見ながらシャッターを押せば、カメラ本体がブレてしまう。今回は、一眼レフで使っていたローアングルが可能な三脚とシャッターブレを防ぐために、3秒タイマーを多用した。この3秒タイマーは、レリーズ不用のスグレモノだった。三脚がなくても、この3秒タイマーを使えば、かなりシャッターブレを軽減できる。
 ブナの森の内側は、黄葉が始まったばかりだったが、外側斜面は黄葉真っ盛り。ブナが林立する奥に朝の光が斜めに射し込み、黄葉は艶やかな色に輝いた。朝早くでなければ撮れない輝きのシーンだ。ブナの森は、光の加減によって大きく変わる。写真は、光をどう撮るかで決まると言われる。しかし、私は、シャッターチャンスをじっと待ちながら、たった一枚の写真に全てを凝縮させる写真マニアではない。行き当たりバッタリ、数と足と動物的な感覚だけで撮っている。そうしたカメラマンに、デジカメはピッタリだ。要するに「サルでも美しい写真が撮れる」ということ。
 深い緑と薄っすらとした黄色が混在、ブナの根元は苔に覆われ、大量の落ち葉を敷き詰めた林床は、足に心地よい感触を伝える。平坦でしっとり濡れたような豊潤な空間、気軽に誰でも見ることができるブナの天国・岳岱風景林・・・老木は、至る所で幹が折れ、世代交代が進んでいる。森は、永遠に世代交代を繰り返す生き物なのだ。
 岩を抱くブナ・・・白神のブナ原生林を象徴するブナでもある。分厚い苔に覆われたブナの足が、まるでタコの足のように四方八方に根を張り巡らしている。下の写真も合わせて、全てローアングルで撮影したもの。こうした撮影には、クルクル回転するアングルフリーのデジカメが最適。構図を決めるにも時間と労力をほとんど要せず、誠に簡単極まりない。気に入ったところで、バシャバシャ撮れば、必ず一枚は気に入った写真が撮れた。
 ブナの巨木を見上げる。頭上の肌を接写する。自分で見上げる必要もなく、レンズを回転させるだけでOK。今やデジカメは、どれを選べば良いか悩むほど数が多い。私が選ぶなら、レンズがクルクル回転するアングルフリーのデジカメが第1条件だ。この第1条件をクリアするデジカメは、残念ながら極めて少ない。一眼レフには決して真似のできない機能だけに、メーカーはもっとこのアングルフリーの機能を尊重すべきだと思うのだが・・・。
 昨日、雨が降ったらしく、森全体がしっとり濡れた感じだった。ブナの森から湧き出す泉、風で時折、ブナの葉が落ちる音が静寂を破った。このシーンを逆光でと思ったが、頭上から降り注ぐ光が写真に映ってしまった。これはこれで満足なのだが・・・デジカメとはいってもレンズフードがほしいと思う瞬間だった。
 ここのブナの森の特徴は、ほとんど根元が苔に覆われている点だ。乾いた森ではなく、いかに湿った感じの森であるか、お分かりいただけるだろうか。
 森を歩いていると、わけもなく心が和む。森を歩くことは、単に足腰を鍛えるために歩いているわけではない。もちろん、私の大好きな「谷の精・イワナ」がいるわけでもないが、心も体も少年に回帰したように若々しくなるから不思議だ。同じ森を歩くとはいっても、白神の森は、格別だ。あれこれ思索しながら歩いていると、突然、暗いブナの森に朝陽が射し込むハッとする光景に出くわした。刻々と変化する光と影を眺めながら、オニギリを口にほおばった。美味い、美味い・・・。
 紅と黄の競演。 太い幹が折れたダケカンバ。
 見上げては、ブナの偉大さに平伏し、見下ろせば、岩にしっかり巻き付いたタコのような足に驚嘆した。「太古の息吹」・・・神木という言葉があるとおり、白神のブナの森は、やっぱり「神が宿る森」である。この森を抜け、藤里駒ケ岳登山道に向かうと、色鮮やかな黄葉真っ盛りであった。暗く神秘的な森から光輝く黄葉の世界へ・・・

デジカメ・ブナの巨木編 黄葉編 ニコンCOOLPIX995