2A3差動プッシュプル・7Wモノラルアンプ

初版 Aug.22,2008


2A3プッシュプル・モノラルアンプの変遷と到着点

 このページは、30年ほど前に作って寝かせていた2A3プッシュプル・モノラルアンプを久々に引っ張り出し、劣化した部品を交換するなどして現役復帰させたことをきっかけに。改良を重ねて最終的に7Wの差動プッシュプルとした記録です。

初版

 30年ほど前に作ったこのアンプは、生かじりの知識で雑誌の記事を勝手にアレンジして6SL7の片方で電圧増幅してCR結合を介してもう片方で位相反転して固定バイアスAB1の2A3をドライブするとんでもないしろもので明らかにドライブ不足の状態でした。しかしながら、スピーカーが高能率のパイオニアのPAX-20Fで大音量にしなければそこそこの音が出ていました。このアンプで使用したシャーシーとトランスとチョークは最終版まで受け継がれています。

第2版

 仕事の定年も間近になり、長年やっているコンピュータシステム屋もマンネリ気味で30年ぶりにアナログの世界に戻ってみようとの思いが沸いてきました。アナログの世界と言えばオーディオアンプの自作が私に合っているようなのでそこから再開することとしましたが、おりしも世間では真空管アンプがもてはやされていて、まことしやかな「お言葉」と一緒に超高価な真空管アンプやビンテージ部品がもてはやされ「ネット雀」のさえずりが賑やかな状況でありました。
 「テヤンデー!昔は俺も球のアンプを作っていたんだぞ」との思いで、唯一保存していた本アンプを引っ張り出して音を出してみて「おっ!まだ動くぞ、でも食わせている電力の割に出力が出ないし音もいまいちだな、おやおや!コンデンサーがリークしているんではないか?」と言うことで少しはまともにしてやろうと昔描いた回路図を基に検討を始めました。
 結論としては、これはアホな回路だと言うことで、電圧増幅と位相反転を直結し、6SN7のドライバーを追加した回路でA級8W出力で再出発させました。この回路は標準的なものなのでそれなりの音でしたので、ジャンク箱をひっくり返して急造した7189PPアンプを相棒として、しばらくは山水のAU-777と交互にヤマハのNS600を鳴らしておりました。
 この時、昔使っていてようやく見つけ出したハンドブックや資料、ネットで検索した有用なホームページなどを参考に錆びた頭に注油して新たな情報も仕入れました。
 この頃、AU-777の電源トランスの一次側が断線する故障でメインとなるアンプが無くなったこともあり、世間で騒がれているアンプはどんなものかと思い「ザ・キット屋」さんの2A3プッシュプル・ステレオアンプキットVP-2000を購入して組み立ててメインのアンプとして、また、評価用の基準として使い始めました。

第3版

 第2版で普通のアンプとなりVP-2000と比べても遜色がなかったのでそのままでも良かったのですが、2A3プッシュプルと言う素材をもう少し味わってみることとしました。6SN7のドライバはまだ余裕がありそうだったのでバイアスをAB1にして出力増強を図ってみました。この時ドライバーの回路を見直し、バイアス回路に定電圧放電管とN-MOS-FETによるバイアス回路を採用しノンクリップ10Wの出力を得ることが出来ました。第3版の回路図を見ると初段のバイアスが浅すぎることが解りますがこのタイプはこれで終了としました。この経験が一度は試してみたかったインターステージトランス方式2A3PP・15Wモノラルアンプにつながりました。また、これまで頑張ってきた「Chikara」ロゴの入った2A3の片方の劣化が目立ってきたため中国曙光電子の2A3Cを購入してVP-2000添付の2A3(中国製?)と交換し、これから出てきた球を使用しています。

第4版

 ここ3年ほどで6BM8や832A、6SN7などを用いて小物をあれこれ作り(製作記録参照のこと)、ジャンク箱の中身を減らしてきましたが何となく不完全燃焼であることが残尿感(60過ぎるとね〜)のように残っています。また、多くの方が師と仰ぐ「きむらてつ氏のホームページ」「情熱の真空管」中の「全段差動プッシュプル・アンプの庭」を繰り返し閲覧していると、差動方式6BL7プッシュプル・ステレオアンプのところでも触れた、私のあこがれの全段直結差動アンプへの思いが募ってきます。
 第4版は第3版を基にインターステージトランス方式2A3PP・15Wモノラルアンプを作ったことを機会に、このシャーシーで出来る最終型として2A3による全段差動プッシュプル・アンプに変身させることとしました。
 差動プッシュプル・アンプに関しては、とりあえず7189PPをネタに可能性を確かめ、6BL7でステレオ化を実現しました。これを基に第3版の改良を検討した結果、A級動作で7Wの出力で意外に簡単に実現できることが解り作製しました。作製した回路を第3版と見比べるとカソード周りに定電流ダイオードがシンプルに入っていてこのあたりに見られたバイパスコンデンサが無くなっていることが目立ちます。設計上では動作プレート電流を決めてしまえば全てが決まるタイプなのでとても楽です。
 2A3は直熱管であるため立ち上がり時に問題が生じるため全段直結は6080プッシュプル・モノラルアンプに譲りましたが、音的には素晴らしいものがあり、ついにVP-2000を差動方式に改造することを決心させることとなりました。最近、夏休みの宿題的な改造も終わり期待通りの結果となったので、ようやくその役目を終えることとなるかもしれません。永いことご苦労さんでした。


第4版の外観ですが初版とほとんど変わっていません


2A3プッシュプル・10Wアンプの回路図(第3版)


2A3差動プッシュプル・モノラルアンプの回路図


 フィラメントと2A3の蛍光が魅力的な夜景です(昔のパイロットランプは粋なダイアカットガラスでランプのを光を導きますが裏側は裸なのでシャーシーの無駄穴からも光が漏れます)

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