2004年6月30日上程
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雑感

差別対価

 有線ブロードネットワークスに対して,公正取引委員会緊急停止命令を裁判所に申し立てましたね

 緊急停止命令というのは,公取による行政措置がなされるまで違法行為が続いたのでは競争に回復不可能な悪影響を与えることから,裁判所が企業等に対し,違法の疑いのある行為を一時停止するよう命じることができるというものです。

 緊急停止命令が申し立てられるのは中部讀賣新聞に対するもの以来とか。新聞と放送という違いはありますが,またメディアか,という気がします。通常,立入検査を受ければ,独占禁止法違反の疑いありとされた行為は止めるんですが,メディア業界の方はやはり反骨精神にあふれているのですね。

 今回問題とされた行為は,独占禁止法上「差別対価」又は「差別取扱い」というのに当たるのですが,差別対価や差別取扱いって公取はあまり取り締まりたがらなかったように思います。今まで活動してきた地域と別の地域に新たに参入しようとする際に,それまで売っていた地域での販売価格よりも安く販売する戦略は,競争を活性化させるから望ましいことでもある,という考え方がまずあって,地域,販売先による価格差が存在することを直ちに問題にすることは安売り妨害の口実を与えかねないから避けようという態度を公取はとってきました。

 今回公取が事件として問題にしたのは,有線ブロードネットワークスが約81パーセントという極めて大きな市場占有率を有していた事業者であり,新規参入による競争活性化という効果は認められなかったからでしょう。また,有線音楽放送については,いったん加入すると他の業者への変更が面倒であること(マンション単位での加入だと,理事会や管理組合総会で決めなければなりません。),設備投資に多額の資金を要すること(線を敷設するための施設利用だって,今では無料では済みません。)から,新たな業者が入ってくることで競争が活性化する見込みが少ないこともあるでしょう。

 それにしても,2位のキャンシステムの市場占有率が約18パーセントということは,2社で市場の99パーセントを占めているのですね。大変な寡占業界です。ほとんど2社しかいない市場で,1位の事業者が2位の事業者を排除しようとする。競争がない世界というのは本当においしいのだろうな,と思います。そして我々消費者から見たら本当に恐ろしい世界だな,とも思います。

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