2000年3月5日上程
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雑感

関西空港の赤字を解消するために

 何週間前のことだったろうか。ニュースを見ていたら、関西空港が開業5年を経過した現在も、いまだ単年度黒字に転換できていないという報道がされていた。その原因としては、旅客数が思ったより伸び悩んだことが挙げられていた。

 思うのだが、関西空港が当初予想より収益が悪化したのは当然である。

 大体、関西空港を作るとき運輸省の担当者の人たちの頭にあったのは、伊丹空港の廃止である。伊丹空港は住宅地の密集した地帯の中にあり、騒音問題がひどいなど問題を抱える空港であるから、関西空港の開業とこれに伴う伊丹空港の廃止は運輸省にとって、24時間運用の空港の開設と長年の懸案(騒音問題)の解決という一挙両得の策だったはずだった。

 ところが伊丹空港は廃止されなかった。地元の反対の声に押されたためである。

 伊丹空港は、北摂地域の人々にとっては便利な位置にある。また、大阪の中心部からの距離も、関西空港に比べると短い。そこで、国内線については、多くの関西の民が伊丹空港を利用することになった。

 しかし、私はやはり伊丹空港は廃止すべきだったように思う。

 なぜなら、伊丹空港の廃止により、航空輸送のための人的・物的資源を関西空港に集中することができ、資源の有効利用につながるし、航空便が集中することによって関西空港の空港のしての魅力が高まることになるからだ。

 また、関西空港に航空便を集中させることによって、関西空港を日本における、いや、アジアにおける拠点空港(ハブ)と位置づけることができ、多数の航空便を集めて利用者の利便性を高めることができるのだ。

 正直のところ、人口三千万人を抱える首都圏にさえ空港が2つしかないのに、その半分強しか人口がなく、また、各府県の中心都市間の移動も容易な関西圏に2つも空港を設ける必要性はほとんど感じられない。何よりも、伊丹空港は市街地の真ん中に位置しており、騒音による公害がひどいことは周知の事実である。しかし、伊丹空港は関西空港に比べ大阪、京都、神戸の各市街から近いということで、国内線の旅客は関西空港でなく伊丹空港を利用することが多い。そうなると、伊丹空港の利用客、便数を関西空港に移すためには、伊丹空港をなくすしかないということになってくるのだ。

 このような考え方に対しては、利用者の利便性を考えないものだという批判があるだろう。たしかに利用者にとっては不便となる面もある。

 でも、それだからって伊丹空港を残していては騒音問題はいつまでも残るし、関西空港はいつまでたっても赤字であろう。関西空港をなくせばいいとも考えられるが、伊丹空港に国際線を復活させるのは、伊丹空港のキャパシティや騒音問題を考えた場合、非現実的な話だし、復活させるべきでもない。

 また、関西空港が海上空港であるために空港へのアクセスが途絶されることがしばしば考えられることから、予備のために伊丹空港を存続させておくべきという意見もある。

 しかし、空港への交通途絶は陸上の空港でもありうることなのであり、陸上の空港か海上の空港かによる違いは程度の差にすぎない。航空輸送を使う者は、空港へのアクセス、航空便の運行といった面で、予定どおり利用できないこととなるリスクが他の交通機関に比べて多く生じるということを覚悟すべきなのであって、そのような利用者のために2つも空港を残しておく必要はない。

 ただ、航空便をモーダルシフト(自動車輸送から他の輸送への振替えにより、交通渋滞や環境汚染を緩和しようとする施策)の1つの手段ととらえ、積極的にその利用を推進しようとする考え方からすれば、空港が出した赤字を補てんしてでも、積極的にその存続を進めていこうということになる。とすれば、赤字が出たからといって、それが予定の範囲内であれば補填してやれば済む話であって、その点は特に問題とする必要がないことになる。

 しかし、このように解しても、伊丹空港周辺の騒音公害は依然として残るわけであり、問題の根本的解決にはなっていない。やはり伊丹空港は廃止すべきである。

 ところで、現在、近畿圏では神戸空港の建設計画が進められている。住民投票の要求を無視して進められるこの開発であるが、これができると近畿圏都市部には3つの空港ができることになる(ちなみに但馬空港と南紀白浜空港を入れると5つ。)。これは多すぎるし、関西空港の赤字を更に増やすことになるという点でもばかげたプロジェクトである。

 それに、神戸空港については、現状では作ってもどれだけの利用者があるか疑問だという感がする。九州の話だが、福岡と大阪、東京を結ぶ路線については航空会社間の競争により航空運賃が大幅に割引となったため、佐賀や北九州さらには山口からも飛行機の利用のため福岡空港まで出向くという現象が起きているという。大阪と各都市を結ぶ路線についてはスカイマークエアラインが参入しているため価格破壊が起こっているものが多く見られる。だとすれば、神戸から伊丹空港までの所要時間はたいしたものではないことなども併せ考えると、乗客は伊丹空港に流れ、神戸空港は利用しないということは十分考えられる。また、航空会社としても、航空便を飛ばすとなると設備を設けたり人員を配置したりするという余計な費用がかかるわけで、ただでさえ経営の苦しい会社としては、新空港への発着は避けたいというのが本心のようだ。

 こんな状況下でなお神戸市が空港建設にこだわるのは、公共事業によって甘い汁を吸おうという土建屋やそれと結びついた政治家の意向を無視できないからだろう。ほんと、空港建設する金があったら被災者の生活支援に回せよ!このままでは財政再建団体に転落するのが必至だというのに・・。

 こんな神戸空港、運輸省も建設にはゴーサインを出すのをかなり渋った。ただ、運輸省も、伊丹空港が廃止になるなら神戸空港建設を認めてもいいかな、と考えていた節がある。やっぱり伊丹空港はネックだねえ、って、これは伊丹空港が悪いんじゃないが。

 ちなみに、神戸空港建設については、私は伊丹空港がなくなろうが存続しようが反対である。そもそも、関西空港ってそんなに遠くないぞ、関東各地から羽田空港、成田空港まで出る手間を考えたら。

 大体、なんばから関西空港まで南海の急行で42分(ラピートだと30分!)だが、東京駅から羽田空港まで25分(JR品川乗り換え、京浜急行利用、乗り換え時間別)。成田に至っては東京から成田エキスプレスで53分もかかる。これを遠いというのは、いくら大阪人でもせっかちすぎるのではないだろうか。関西空港をもっと見直しましょうよ。まあ、関西空港の人気がないおかげで東京までの航空券も安く買わせてもらっているので、強く文句は言いませんがね(苦笑)。

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