ボーイハント ★★★
(Where the Boys Are)

1960 US
監督:ヘンリー・レビン
出演:ドロレス・ハート、ジョージ・ハミルトン、ポーラ・プレンティスイベット・ミミュー


<一口プロット解説>
ドロレス・ハート、ポーラ・プレンティス、コニー・フランシス、イベット・ミミュー演ずる4人の女子大生が、寒風吹きすさぶ北東部を脱出してフロリダへボーイハントに出かけるが・・・。
<入間洋のコメント>
 「ボーイハント」は、青春映画というこの当時製作されることが多かったジャンルに属する作品であるが、実を言えば個人的にはあまりこのタイプの作品は好みではない。何故青春映画が一般的には好きでないかというと、ワンパターンに陥ることが多いからである。思うにこれまで製作されてきた青春映画は、次の4パターンのいずれかに落ち着くというのが個人的な見解である。第1は青春賛歌映画、第2はどこかのリゾートでひたすらサーフィンをするシーンが延々と描かれる映画、第3はカウンターカルチャーの影響を受けた青春アンニュイ映画、第4はドラッグ、バイオレンス、セックスという三種の神器を持ち出して青春の正体見たり枯尾花とシニカルなコメントを吐くのが目的であるような映画というようなところである。1960年代前半までは第1、第2のタイプが多く製作され、1960年代後半には第3、1970年代以降には第4のタイプが幅を効かせるようになる。しかしながら「ボーイハント」に関して言えば、個人的にも非常に気に入っていて数え切れない程の回数を既に見ているという個人的実績は別としても、ある年代以上の映画ファンならばこの映画に愛着を持つファンが少なからず存在することを十分承知しているはずである。勿論「ボーイハント」に前述した4つの要素が全くないと言うわけではないが、どの方向にも極端に走っていないところに1960年代初頭に製作されたこの映画のバランスの良さが感ぜられる。

 しかしながら、この作品は、原題の「Where the Boys Are」にしろ、邦題にしろ、タイトル自体に安直なところがあるのも確かであり、最初に見た時は全然期待もしていなかったし、一度見終わった後もあまり大した映画ではないと思っていた。けれども、2回3回と見直す内にこの考え方は改める必要があることに気付くようになった。何故かというと、月並みな言い方になるが各キャラクターが実に生き生きと描かれているからであり、4人の女の子が各々のパーソナリティをそれぞれの仕方で実に巧みに表現しているからである。この4人の女の子は少なくともその当時はスターと言える程有名にはなっていなかった女優達が演じているが、それぞれがそれぞれの持ち味を最大限に活かしていて、本書でも紹介する「男性の好きなスポーツ」(1964)という決定打があるポーラ・プレンティス以外は、「ボーイハント」が一番それぞれのパーソナリティにマッチした作品であるように思われる。特にドロレス・ハートは素晴らしく、彼女の目の輝きには特筆すべきものがあり、将来は大スターになれる器であったのではないかと個人的には考えている程である。ご存知のように、「剣と十字架」(1961)に出演して感化されたか、華やかな映画界から一転して傍目には最も地味な宗教の世界へと転進してしまったのが映画ファンとしては残念なところである。「男性の好きなスポーツ」でそのフルポテンシャルを余すところなく発揮しているポーラ・プレンティスも、彼女の独特な声とともに男勝りな彼女の魅力の一端を「ボーイハント」で既に惜し気もなく披露している。イベット・ミミューはドロレス・ハートやポーラ・プレンティスとは対照的に華奢なイメージが強い女優であり、この作品でも青春の過ちによって傷つけられる役を演じていて彼女が持つイメージとも見事に調和している。コニー・フランシスは歌手であるがコミックなキャラクターが似合っており、殊にニール・セダカの有名な主題歌を歌ってこの作品に大きな貢献をしている。

 また、個々のシーンを丹念に見ていると、実に楽しく快活で愉快なシーンが多いことに気が付くはずである。たとえばドロレス・ハートとコニー・フランシスがレストランにティーバックを持ち込みお湯だけを注文するシーンや、フランク・ゴルシン扮するド近眼のミュージシャンがレストランの巨大な水槽に落ちて文字通り目を丸くして漂っているシーンなどは殊に愉快である。このタイプの映画は、このような小さなエピソードの積み重ねが全体の印象を決定することがよく有り、その点でもこの作品は成功している。丁度この作品が製作された年に生まれた小生には当時の文化がいかなるものであったかは知るよしもないところだが、いずれにしてもこの作品を見ていると当時の青春に対する見方の1つのはっきりした輪郭が、生き生きとした描写を通して掛け値なしに伝わってくるところが素晴らしい。1つだけ誤解してならないのは、「ボーイハント」というとガールがボーイを積極的にハントするように聞こえるが、1960年代初頭はまだそういう時代ではなかったはずなので、ボーイがガールをハントするようにガールが仕向けるという言い方が妥当だろう。いずれにしても、1960年代初頭ののんびりした雰囲気が見事に伝わってくる作品であり、今でも多くのファンがいることには何の不思議もない。

※当レビューは、「ITエンジニアの目で見た映画文化史」として一旦書籍化された内容により再更新した為、他の多くのレビューとは異なり「だ、である」調で書かれています。

1999/04/10 by 雷小僧
(2008/10/15 revised by Hiroshi Iruma)
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