渇いた太陽 ★☆☆
(Sweet Bird of Youth)

1962 US
監督:リチャード・ブルックス
出演:ポール・ニューマン、ジェラルディン・ペイジシャーリー・ナイト、エド・ベグリー

左:ポール・ニューマン、右:ジェラルディン・ペイジ

まず第一に「渇いた太陽」という日本語タイトルを思い付いた人に拍手を贈りたいですね。実に見事なタイトルです。何しろ、原題をそのままカタカナ書きするのがカッコいいと思われているようなご時世なので、このような詩的イマジネーション溢れるタイトルを近年の作品から探そうとしても、まず徒労に終わるはずです。「渇いた太陽」は、テネシー・ウイリアムズの映画化で、原作:テネシー・ウイリアムズ+監督:リチャード・ブルックス+主演:ポール・ニューマンと云えば、「熱いトタン屋根の猫」(1958)を思い出す人も多いことでしょう。しかし、「渇いた太陽」は、「熱いトタン屋根の猫」のように感情を剥き出しにした強烈な会話の応酬が繰り広げられる一極集中的なドラマ作品とは異り、邦題が示すごとく遥かにドライで分散的なドラマです。主人公(ポール・ニューマン)が運転し、太陽がサンサンと降り注ぐ海辺のハイウエイを走る車の助手席で、いかにも疲れきった表情をした元女優(ジェラルディン・ペイジ)がウイスキーのボトルをラッパ飲みする冒頭のシーンを見ただけで、この作品がどのような作品であるか、およその見当がつきます。少なくともパラノイアックな会話に終始する「熱いトタン屋根の猫」のような作品ではないことがすぐに分かるはずです。かくのごとく始まるこの作品は、文字通り演技力がものを言う作品であり、その点に関しては実に素晴らしいメンバーが揃っています。主演のポール・ニューマンは、個人的な印象ではどちらかというと口数の少ない俳優さんであり、「熱いトタン屋根の猫」のような会話の勢いが勝負である作品よりも、「渇いた太陽」のようなドライな作品の方が合っているように思われます。この映画でアカデミー主演女優賞にノミネートされたジェラルディン・ペイジは、口数で勝負しようが、演技で勝負しようがどちらでも超一級の女優さんであり、「渇いた太陽」でも彼女の能力の高さを存分に見せてくれます。他にも、この作品でアカデミー助演男優賞を受賞するエド・ベグリー、アカデミー助演女優賞にノミネートされるシャーリー・ナイト、リップ・トーン、ミルドレッド・ダンノック、リチャード・ブルックス御用達のマデレーン・シャーウッド(火星人のように顔の小さい人、え!火星人なんていない?)などいかにも玄人受けしそうな役者さんが揃っています。実を云えば、リチャード・ブルックスの作品には彼独特の雰囲気があるので、合わない人には彼の作品は全く合わず、退屈に思える可能性が大であり、同様なことは原作者のテネシー・ウイリアムズに関しても当て嵌まります。しかしながら、スキゾフレニックですらある一味違ったテネシー・ウイリアムズを、あまたの堅実な俳優さん達の堅実なパフォーマンスによって見られる作品としては、「イグアナの夜」(1964)とともに「渇いた太陽」が挙げられるくらいなので、その意味でも少なくとも一度は見ておいても損はない作品であることに間違いはありません。


2001/07/01 by 雷小僧
(2008/10/18 revised by Hiroshi Iruma)
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