荒野を歩け ★☆☆
(Walk on the Wild Side)

1962 US
監督:エドワード・ドミトリク
出演:ローレンス・ハーベイ、キャプシーヌアン・バクスター、バーバラ・スタンウィック

左:キャプシーヌ、右:ローレンス・ハーベイ

高級娼館を舞台としたソープオペラとでも言うべき内容を持ち、あまり素晴らしい出来ばえではないとはいえ、キャスティングに見るべきものがあります。新旧4人の女優さん達の共演が見られるのが何とも捨て難いところで、その4人とはバーバラ・スタンウィック、アン・バクスター、キャプシーヌ、ジェーン・フォンダです。バーバラ・スタンウィックのフィルモグラフィーにおける最晩年の作品の1つであると共に、ジェーン・フォンダ及びキャプシーヌの最初期の作品の1つでもあります。バーバラ・スタンウィックは威圧的な娼館の経営者を、アン・バクスターは主人公(ローレンス・ハーベイ)が転がり込む安レストランのオーナーを、キャプシーヌは自分の素性が主人公にばれることを恐れる娼婦を、ジェーン・フォンダは平気で人のものを盗む浮浪者をそれぞれ演じており、各人のカラーがよく出ています。個人的なお気に入りは、密かに主人公のことを思いながらも彼とキャプシーヌ演ずる娼婦を取り持つアン・バクスターであり、また、圧力のかかった重たい声が相変わらず実に素晴らしいバーバラ・スタンウィックはやはり惚れ惚れとする貫禄があります。フランス出身且つパリファッション界出身のキャプシーヌは線が細く、バーバラ・スタンウィックと好対照をなしています。ジェーン・フォンダはやはりまだ嘴が黄色い印象がまず第一にあり、それだけに我がままで気ままな娘が似合っています。この4人と交錯するのが主演のローレンス・ハーベイです。彼の特異なパーソナリティはどんな作品に出演していても際立っており、「荒野を歩け」もその例外ではありません。感情を外に現さず一見冷徹に見えながら、実は内面的に脆く、感情的に一気に崩壊しそうな危うい雰囲気を醸し出すなどという芸当は、彼以外の誰にも真似できるものではなく、まさに稀有な俳優さんでした。この作品の焦点は、そのような彼と4人の女優さん達のインタラクションに置かれていますが、個々の俳優さんのパフォーマンス以上のレベルでは、残念ながらアベレージの出来であると評するのがせいぜいのところです。作品全体を通して流れるエルマー・バーンスタインの音楽が印象的であることを最後に付け加えておきます。


2004/03/13 by 雷小僧
(2008/10/19 revised by Hiroshi Iruma)
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