フクロウと子猫チャン ★★☆
(The Owl and the Pussycat)

1970 US
監督:ハーバート・ロス
出演:ジョージ・シーガル、バーブラ・ストライサンド、ロバート・クライン

左:バーブラ・ストライサンド、右:ジョージ・シーガル

「フクロウと子猫チャン」を見ていていやでも気付かされるのは、お歌を歌っていない時のバーブラ・ストライサンドがいかにやかましいかということです。バーブラ・ストライデント(strident)と改名した方が実態に即しているのではないかとすら思われるほどです。けれども、生命感の塊のようなバーブラ・ストライサンドとは対照的に、浮世の生活に疲れ果てた知的スノッブの作家を演じているジョージ・シーガルが、彼女の爆発的な破壊力が全てを台無しにしないよう、いわばストッパーの役割を果たしていて、「フクロウと子猫チャン」を見られる面白い作品にしているのです。この二人には、「なるほど、このようなコンビも可能なのか」と思わせる意外性があり、夜中の3時に、隣近所お構いなしに恐ろしくかん高い声でしゃべりまくるバーブラ・ストライサンドのパワーに振り回され続けるジョージ・シーガルの姿が実に滑稽です。バーブラ・ストライサンドのダイナマイト・ボディの傍で、がい骨衣装を着て棒立ちしているジョージ・シーガルの哀れな姿は(上掲画像参照)、両者の生命感の違いを見事に表わしていて笑えます。本来、彼は、たとえばドン・ノッツやウッディ・アレンのように、ニーチェが知ったならば必ずやビッツラこいてひっくり返るようなひ弱さをトレードマークとしたパーソナリティをウリにしているわけではありませんが、相手がバーブラ・ストライサンドではあまりにも旗色が悪かったということでしょう。内容的にはロマンティック・コメディが意図されているはずですが、バーブラ・ストライサンドが余りにもしゃべりまくるので、ほとんどスラップスティック・コメディに見えます。いずれにしても、ジョージ・シーガルがロマンティック・コメディにマッチする気配を見せ始めたのもこの作品あたりからであり、以後、70年代を代表するロマンティック・コメディであると個人的に考えている「ウイークエンド・ラブ」(1973)や「料理長殿、ご用心」(1978)に出演するようになります。かん高い声を張り上げ、マシンガンのように捲くし立てるバーブラ・ストライサンドのお喋りには我慢がならぬという向きは寿命が縮まないように敬遠した方が身のためですが、そうでない向きには、バーブラ・ストライサンド+ジョージ・シーガルという奇妙なコンビのロマコメは一見の価値があるのは確かです。というよりも、バーブラ・ストライサンドのお相手は、ジョージ・シーガルや「おかしなおかしな大追跡」(1972)のライアン・オニールのような、少しおっとりした役者さんでないと、とんでもない狂騒曲に陥ってしまうこと必定でしょう。


2002/04/27 by 雷小僧
(2008/11/13 revised by Hiroshi Iruma)
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