巨大生物の島 ★☆☆
(Mysterious Island)

1961 UK
監督:サイ・エンドフィールド
出演:マイケル・クレイグ、ジョーン・グリーンウッド、マイケル・カラン、ゲイリー・メリル


アルゴ探検隊の冒険」(1963)のレビューで紹介した、特殊効果の魔術師レイ・ハリーハウゼンが、巨大生物の動きなどのビジュアル効果を担当している作品の1つです。「巨大生物の島」という邦題が付けられているにも関わらず、巨大生物として実際に登場するのは蟹、鶏、蜂及びヤドカリの化け物くらいのもので拍子抜けするオーディエンスもいるかもしれません。とはいえ、原題は「Mysterious Island」であり、必ずしも巨大であるという点が強調されているわけではないようです。「巨大生物の島」を、同工異曲の作品と見なせないこともない最近の「ジュラシックパークIII」(2001)などと比べてみると、「怪獣」が登場する作品であるにも関わらず展開がのどかなことに驚かされるでしょう。そもそも、巨大化した生物達の姿が実にユーモラスなのです。殊に、巨大蟹がひっくり返されて脚をバタバタさせてもがいているシーンには笑えます。勿論、「巨大生物の島」が「SFコメディ」なる新たな混合ジャンルを創始したなどと主張するつもりは毛頭なく、大真面目なSF映画であるには違いないにも関わらず、ハンドリングが全くもってのどかなのです。次に誰が恐竜に食われるのだろうかなどと戦々恐々としてサディスティックに或はマゾヒスティックに画面に見入らざるを得ない「ジュラシックパーク」シリーズのような作品とは異なり、巨大化した鶏に誰も丸呑みにされたりしないだろうことがそもそも雰囲気から分かり、まさにその通りの結果になります。「巨大生物の島」で唯一島から生還できない登場人物は、世界の食料事情に貢献しようと、もともと島で生物を巨大化させる実験を行っていたネモ船長(ハーバート・ロム)のみであり、その彼ですら自らが創造した巨大生物に、因果応報これいかにとばかりパクリと食われるわけではなく、火山の噴火の為に飛来した岩石の下敷きになるにすぎません。因みに、生物を巨大化させればそれに比例して巨大な飼料が必要になるはずであり、本当にそれで世界の食料事情に貢献できるのかなどというつっ込みは入れないようにしましょう。ストーリーはシリアスであるけれど、ハンドリングがどこかのどかなところのあるこのようなSF作品には、いかにもレイ・ハリーハウゼンの特殊効果が合います。「ボーイハント」(1960)のレビューで述べたように、60年代初頭の他分野の作品にもこのようなのどかさが少なからず浸透していたことを考えると、「巨大生物の島」は当時を象徴する作品の1つであったとすら見なせるかもしれません。また、遠景が明瞭に描写されている無人島の風景が実に素晴らしく、それがこの作品の持つのどかな雰囲気とよくマッチしています。一寸先もわからぬジャングルの中でストーリーが展開される「ジュラシックパーク」シリーズとは、大きな違いです。そのような舞台設定の中にあって魔術師ハリーハウゼンの特殊効果は、少なくともこの作品に限れば、観客をあっと驚かせるよりも、独特のぎごちなさでユーモラスな色彩を加える効果があったように思われます。出演者に関してはイギリス作品であることもあり、イギリス出身の俳優さんが多く出演していますが、むしろ目立っているのはイギリス出身ではないゲイリー・メリルとハーバート・ロムの二人です。イギリスの俳優さんでは、個人的な好みもあって、ハスキー声が魅力的なジョーン・グリーンウッドに注目しました。


2001/12/15 by 雷小僧
(2008/10/15 revised by Hiroshi Iruma)
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