よろめき休暇 ★☆☆
(Kiss Them for Me)

1957 US
監督:スタンリー・ドーネン
出演:ケーリー・グラント、ジェーン・マンスフィールドスージー・パーカー、レイ・ウォルストン

左から:レイ・ウォルストン、ジェーン・マンスフィールド、ケーリー・グラント、
スージー・パーカー

今回は、50年代のロマンティックコメディの中で、どう考えてもメインキャストが不釣り合いであるように思われる作品を2本程取り挙げました(もう1本は「王子と踊子」(1957)です)。「よろめき休暇」は、ケーリー・グラントとジェーン・マンスフィールドが主演しており、組み合わせを考えただけでも、一体どのような作品なのか興味がムクムクと湧いてこざるを得ません。ところが、その期待に反して、この作品でケーリー・グラントの相手を主に務めているのは、実はジェーン・マンスフィールドではなく、当時売り出し中のスージー・パーカーであり、「やっぱり、有り得ない組み合わせだったか」と思わず頷くと同時に、少しがっかりしたというのが本音です。ソフィスティケートされた魅力で売るケーリー・グラントと、肉体派ジェーン・マンスフィールドのロマコメとは一体どのようなものか、是非見てみたかったと思う映画ファンは、大勢いるのではないでしょうか。作品自体に関して言えば、この手の作品を得意とするスタンリー・ドーネンが監督しているにも関わらず、全体に平板であり、残念ながらあまり面白くないという印象が濃厚にあります。スージー・パーカーは、このタイプの映画では完璧にミスキャストでしょう。クールビューティー仕様の彼女は、あまりにシリアス過ぎ、この作品のようなコメディ作品では、どうにも彼女だけが異質の存在に見えます。著名な写真家リチャード・アヴェドンお気に入りの元スーパーモデルで、デビュー作の「パリの恋人」(1957)では、経歴を活かしてセリフ無しで登場時間も短いながら、オーディエンスにそれなりのインパクトを与えることに成功していました。しかし、ここではいけません。ジェーン・マンスフィールドは、相変わらず得意の裏声も披露し、彼女ならではの印象がありますが、対するケーリー・グラントは、時々コメディであるにも関わらず、彼にしては珍しくシリアスに怒っているシーンがあり、「おや?」と思わせるところがあります。リーフ・エリクソンを殴るシーンもあり、彼が人を殴るシーンというのも、この頃はなかなか珍しかったのではないでしょうか。太平洋戦争中に4日間の休暇を貰った空母パイロット(ケーリー・グラント)達が、サンフランシスコでハメをはずすというストーリーが繰り広げられますが、実のところストーリーらしいストーリーはほとんど存在しないと言った方が正解でしょう。敢えて云えば、ケーリー・グラントとスージー・パーカーのロマコメがメインであると見なせるかもしれませんが、前述の通りどうにもスージー・パーカーが作品自体にフィットせず(上掲画像でも彼女がお澄まししている様子が若干ながら分かります)、それよりもむしろアメリカ映画によくある軍隊仲間の仲間意識(camaraderie)に焦点があると考えた方が、まだそれなりに見られるかもしれません。殊にラストシーンで、議員に選出されたはずの仲間の一人(レイ・ウォルストン)が、背広を着たまま水上機に乗って元の戦場に戻っていくところなどにそれが良く現れています。結論的に言うと、恐らく残念ながら50年代以後のケーリー・グラントの出演作の中では一番面白くない作品の1つであり、むしろキャストの意外さによってキワモノ的好奇心をそそる作品であるというのが妥当なところでしょう。要するに、ケーリー・グラント或いはジェーン・マンスフィールドの熱烈なファンのみの作品であるということです。


2004/02/14 by 雷小僧
(2008/10/10 revised by Hiroshi Iruma)
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