いとしの殿方 ★★☆
(My Man Godfrey)

1957 US
監督:ヘンリー・コスター
出演:デビッド・ニブン、ジューン・アリスン、マーサ・ハイヤー、ロバート・キース

左:ジューン・アリスン、中:マーサ・ハイヤー、右:デビッド・ニブン

この作品は、ウイリアム・パウエルとキャロル・ロンバードが出演し、数々の部門でオスカーにノミネートされた「襤褸と宝石」(1936)のリメイクであり、そちらと比較するとあちらでの評判はあまり芳しいとは言えないようです。オリジナルの方はまだ見たことがない為、残念ながら両者の比較こそ出来ないものの、リメイクバージョンもそれ程できの悪い作品であるとは個人的には思っていません。その大きな理由は、「恋に税金はかからない」(1959)のレビューでも述べましたが、個人的に1950年代60年代のシチュエーションコメディに滅法弱く、シチュエーションコメディとしての要件を見事に充たしているこの作品に魅惑されざるを得ないからです。当時ビッグスターであったデビッド・ニブンが出演しているのは勿論のこと、必ずしも彼のみに焦点が置かれているわけではなく、ジューン・アリスン、マーサ・ハイヤー、ロバート・キース、ジェシー・ロイス・ランディス、エバ・ガボールらもそれぞれ独自のキャラクターを活かして、シチュエーションコメディを盛り上げています。この手のシチュエーションコメディは、必ずしもストーリー展開の新鮮さ面白さが本来意図されているわけではないこともあり、金持ちの娘(ジューン・アリスン)が密入国者(デビッド・ニブン)を自分の執事として雇うことから始まるその後のコミックなロマンスを描くストーリーは実に他愛無いものです。しかし何と言っても見ものは、既に当時40才の大台に乗らんとしていたはずのジューン・アリスンが、まるで高校生のように振舞うところでしょう。何と彼女は、実年齢では遥かに若いはずのマーサ・ハイヤーの妹という設定になっています。正直言えば、アリスンとハイヤーのどちらが姉でどちらが妹であるかが、はっきりと言及されている箇所は作品中にはないように思われますが、態度から考えてアリスンが妹役であることは明白であり、また「Variety Movie Guide」にもハイヤーが「elder sister」であると書かれています。また、デビッド・ニブンがいつものように瀟洒なジェントルマンを演じていますが、この作品ではイギリス人ではなく何とオーストリア人という設定になっています。しかも、オーストリアとオーストラリアの区別がつかないアリスンは、彼をオーストラリア人だと思っているというおまけまで付いています。マーサ・ハイヤーがアリスンの意地悪な姉を演じており、心は意地悪でも外見はいつもながらのエレガントさを見せています。ついでながら、彼女はどんな役を演じていても、いつもお得意のかなり風変わりな髪型をしていますが、この作品もその例外ではありません(上記画像参照)。他にも個性派俳優のロバート・キース、ジェシー・ロイス・ランディス、エバ・ガボール等が脇を固めているので、全然面白くない映画には成りようがないわけです。最後に1つ付け加えておくと、フランク・スキナーの音楽が実に軽快で、この作品の雰囲気に見事にマッチしています。


2001/10/06 by 雷小僧
(2008/10/09 revised by Hiroshi Iruma)
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