カリフォルニア・スイート ★★☆
(California Suite)

1978 US
監督:ハーバート・ロス
出演:アラン・アルダ、マイケル・ケイン、ジェーン・フォンダマギー・スミス

左:ジェーン・フォンダ、右:アラン・アルダ

ニール・サイモン戯曲の映画化であり、互いに独立した4つのエピソードから構成され、各エピソードの共通性は舞台が同じホテルに置かれている点にのみあります。4つのエピソードには、それぞれアラン・アルダ+ジェーン・フォンダ、マイケル・ケイン+マギー・スミス、リチャード・プライアー+ビル・コスビー、ウォルター・マッソー+エレイン・メイによって演じられますが、各エピソードがさらに細切れにされた上でそれらが交互に配置される、他では滅多に見られない変わった構成が取られています。複数のエピソードから構成されるニール・サイモン戯曲の映画化といえば、他には「おかしなホテル」(1971)や「Last of the Red Hot Lovers」(1972)があるとはいえ、「カリフォルニア・スイート」のように各エピソードが細切れにされ、それらが交互に入り交じるように配置されるようなことはなく、通常のオムニバス映画同様エピソードは1つずつ順番に配置されています。また、「カリフォルニア・スイート」では、エピソード毎に全く異なる俳優さんが登場するのに対して、「おかしなホテル」ではウォルター・マッソーが、「Last of the Red Hot Lovers」ではアラン・アーキンが、全エピソードに主演することにより、一定の統一感が保たれています。個人的に、ニール・サイモンの映画化はどれもよく見る方であり、「カリフォルニア・スイート」も例外ではないとはいえ、この作品に関して特に気になることとして挙げられるのは、前述の構成の故にか、どうにも統一感の無さが感じられる点です。しかも、アラン・アルダ+ジェーン・フォンダのエピソードは極めてシリアスなドラマであるのに対し、リチャード・プライアー+ビル・コスビーのそれは完全なるスラップスティック・コメディであるという具合に、エピソード間の雰囲気が相当に異なる上、それがシーン毎に分割されて交互に配置されている為、分裂症的に見えざるを得ません。そのような欠点はありますが、しかしながら各エピソードは誠に愉快であり、リチャード・プライアー+ビル・コスビーが登場するエピソードでの、らしくないダサギャグスラップスティックを除けば、ニール・サイモン戯曲の映画化の持つ味わいを十分に堪能できます。マギー・スミスが夜中にホテルの中を徘徊してフライドチキンをつまみ食いするシーンや、ベッドに横たわっている美女の姿を奥さん(エレイン・メイ)の目から何とか隠そうと旦那(ウォルター・マッソー)が四苦八苦するシーンなど、まさにニール・サイモンの面目躍如たるものがあります。マギー・スミスは、作品中ではオスカーにノミネートされ見事に落選する女優さんを演じていますが、彼女自身は「カリフォルニア・スイート」で見事にアカデミー助演女優賞に輝きます。しかも、作品中で彼女がノミネートされる映画は馬鹿げたコメディであり、それについてオスカー批判とも取れるセリフを吐くシーンがあるにも関わらず、アカデミー賞に輝いたのは実力のなせる業なのでしょう。オスカーに落選する女優さんを演じて、オスカーを受賞するなどという快挙(怪挙?)を成し遂げた俳優さんは、後にも先にも彼女しかいないのではないでしょうか。尚、冒頭の劇中劇ならぬ映画中映画の中でジェームズ・コバーンがちらりと顔を見せています。


2003/10/04 by 雷小僧
(2008/12/03 revised by Hiroshi Iruma)
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