青ひげ ★★☆
(Bluebeard)

1972 US
監督:エドワード・ドミトリク
出演:リチャード・バートン、ジョーイ・ヘザートン、ナタリー・ドロン、ラクエル・ウエルチ

手前:ジョーイ・ヘザートン、後:リチャード・バートン

渋沢龍彦氏あたりが得意とする題材である殺人鬼ジル・ド・レエ公爵の物語を、現代(第二次世界大戦時)に移し換えたものと思われますが、どの程度額面通り捉えるかによって作品の評価がかなり分かれるのではないかと考えられます。因みに、海外での一般的な評価は、極めて悪いようです。監督がノーノンセンスなエドワード・ドミトリクであることを考え合わせて、直球勝負の額面通り受け取ると極めて趣味の悪い作品に見えること必至です。何しろ、自分の奥さんを奇矯な方法で次々に殺していく文字通りのモンスターが主人公であり、ビルナ・リージの首がギロチンで吹っ飛んだり、旦那が相手をしてくれないのでレズビアンと化したナタリー・ドロンの上からシャンデリアが落ちてきたり、ラクエル・ウエルチを棺桶に閉じ込めたりと、相当に趣味の悪いシーンが続々登場します。しかも、無教養であるという理由で美女達を次々に殺害していく様子は、まともに見るといかにも女性蔑視であるかに見えざるを得ず、少なくとも世のオーディエンスの半分は怒り心頭に発することでしょう。従って、「青ひげ」は、過剰さを相当割引いて見られるべきなのです。というのも、この作品は、ブラックユーモアが多分に含まれ、それに加えてアーティスティックな効果すら狙われていたのではないかと考えられるからです。そもそも、歴史上の怪物ジル・ド・レエ公爵の生涯自体に関しても、そのようなポジティブな傾向を見出さんとする評価すらあるのです。真っ赤な寝室などの過剰な室内インテリアが示すように、本物らしく見せかけながら同時に恐ろしくいかがわしいところが作品の全てを物語っています。いずれにせよ、「青ひげ」にはお楽しみがあり、それはナタリー・ドロン、ビルナ・リージ、ラクエル・ウエルチなどの美女達が次々登場することです。一番の注目は、リチャード・バートンと共に当作品の主人公を勤め、ダンスまで見せてくれるキュートなキュートなジョーイ・ヘザートンでしょう。彼女はテレビ出演が主であったようで、映画ではほとんど見かけることがなく、個人的には他に同じエドワード・ドミトリクが監督した「愛よいずこへ」(1964)でしか見たことがありません。ちょっと「サボテンの花」(1969)の頃のゴールディ・ホーンのような雰囲気があります。「愛よいずこへ」では、それ程長時間顔を見せておらず、それ以前の問題として現在日本では入手不可であるように思われ、従って彼女をゆっくりと拝めるのは、とりあえずこの作品くらいしかなく、その意味でも貴重です。


2001/11/04 by 雷小僧
(2008/11/18 revised by Hiroshi Iruma)
ホーム:http://www.asahi-net.or.jp/~hj7h-tkhs/jap_actress.htm
メール::hj7h-tkhs@asahi-net.or.jp