50年代にミュージカルへの出演実績が何本かあり(それに加えて歌手のヘレン・モーガンを演じた「追憶」(1957)も挙げておくべきでしょう)、子供の頃はオペラのソプラノ歌手を目指していたこともあるようです。ただし、成人してからの彼女の声は、典型的なカワイコちゃんタイプの顔には似合わずソプラノよりはかなり低いように思われます。50年代はそのような音楽劇に加えて、活劇映画への出演が多かったとはいえ、子役でオスカーの助演女優賞(「Mildred
Pierce」(1945))にノミネートされた実績を持っています。お嬢さま的な容貌からも推察されるように、活劇映画でヒーローのお相手をしている姿を見かけることが多く、同様にお嬢様タイプであり、同年代に属するジャネット・リーの50年代の役回りとかなり似ています。実際は、ジャネット・リーよりも年下であるらしいにも関わらず(女優さんの年齢は、モロに信用できないところがありますが)、アン・ブライスの方が一世代古い女優さんであるような印象を受けるのは、ジャネット・リーが60年代以後もスクリーンにしばしば顔を見せ、50年代の作品よりも「サイコ」(1960)のマリオン役で強烈な印象を残しているのに対し、彼女は、テレビ出演こそその後もあるとはいえ、「追憶」でさっさと銀幕からは引退してしまったことにその原因があるように思われます。「追憶」では(因みに、バーブラ・ストライサンド+ロバート・レッドフォードの有名な作品と邦題が全く同一ですが、勿論そちらとは何の関係もありません)、アル中演技などの、カワイコちゃんイメージを振り払わんとするかのようなパフォーマンスを見せてくれます。同作品では先頃亡くなったポール・ニューマンと共演していますが、同年代であるにも関わらず、ニューマンがまさにこれから大スターにならんとしていた時に、彼女は引退したわけであり、このあたりからも女優と男優の活躍期間の違いがよく分かります。 |
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