消え去りゆくミュージカル映画の最後の大スターの一人と言っても間違いがないはずです。極めてアメリカ的なジャンルであるミュージカルの最後の大スターがイギリス出身の彼女であったというのは、単なる偶然でしょうか。いずれにしても、二本の偉大なミュージカル、すなわち「メリー・ポピンズ」(1964)と「サウンド・オブ・ミュージック」(1965)に出演して勝負あったというところでしょう。しかも、もしオードリー・ヘップバーンという人気抜群の大女優がいなければ、本来ブロードウエイでアンドリュースが演じていた「マイ・フェア・レディ」(1964)のイライザ役は、彼女のものだったはずなので、そうなれば60年代の主なミュージカルのほとんど全てを彼女が独占していたことになるでしょう(ここで、「マイ・フェア・レディ」に出演した場合には、同年に公開された「メリー・ポピンズ」には恐らく出演できなかったはずだなどと言わないようにしましょう)。歌や声は勿論のこととして、優雅でしなやかな彼女の身のこなしが、踊りの要素も多分に含まれるミュージカルという分野に向いていた点が忘れられてはなりません。また、イギリス出身であるにもかかわらず、イギリスアクセントが目立たない点も、英国人ながらアメリカ映画で成功した要因であるのかもしれません。惜しむらくは、ミュージカルが凋落したこともあってか、二大ミュージカル出演以後の彼女は、日本サッカー同様に決定力不足であるところが目につくようになります。嬉しいことに彼女はいまだに現役であり、ファンに殴られるのを覚悟していえば、もともと美人タイプではなかっただけに、気品が備わった現在の彼女の方が、見栄えがするようにも見えます。21世紀になってから出演した「プリティ・プリンセス2」(2004)では、「I
made a lot of flyings in my day」などと言いながらマットレスに乗ってすべり台をすべり降りる離れ業を演じています。明らかにこれは「メリー・ポピンズ」のことを指しているはずであり、昔日の栄光が偲ばれます。また、彼女は、ジュリー・エドワーズという名前で童話も出版しています。あのブレーク・エドワーズと結婚しますが、彼女は、さすがに旦那の「ピンクパンサー」シリーズには出演していません。 |
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1964
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メリー・ポピンズ
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1974
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夕映え
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1965
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サウンド・オブ・ミュージック
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1979
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テン
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1966
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引き裂かれたカーテン
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1981
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S.O.B.
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1966
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ハワイ
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1982
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ビクター・ビクトリア
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1967
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モダン・ミリー
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1986
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That's Life!
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1968
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スター!
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1986
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デュエット・フォー・ワン
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