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 映画 日記              池田 博明 


これまでの映画日記で扱った作品データベース  映画日記 前月の分  



ドリフターズ 全員集合 映画版

 順序 作  品              感    想 ・ 梗  概   (池田博明)
第1作 なにはなくとも全員集合


1967年
松竹
83分

 松竹のドリフターズ主演「全員集合」シリーズ第一作。まだTBSのテレビ「8時だよ全員集合」は始まっていない。脚本は石松愛弘と渡邉祐介、監督は渡邉祐介。音楽は萩原哲晶、助監督に山根成之。単純でステレオタイプな話の上に、ドリフターズの面々がバラバラな役なのでギャグの炸裂もなく、破壊力も無い。
なにはなくとも全員集合  湯の町草津駅前の西武バス草津組営業所の中で社長(いかりや長介)が演説をしている。社長・長吉の妻役が若水ヤエ子、社員に荒井忠。草津高原鉄道とバス会社は客をとりあって反目しているのだ。本日、草津駅長として凄腕の人物が本社から配属になるというのでバス会社は警戒している。
 やがて汽車が到着するが、駅員(加藤茶、仲本工事)が待っている駅長は現れない。実は駅長(三木のり平)は着いていたのだが、貧相な外見が予想と違い、到着早々、便所に行ったため気付かれないでしまったのだ。割烹旅館での親バス派かつ反鉄道派の宴会を自分の歓迎会と勘違いする駅長。数日後、駅長の家族が引っ越してきた。妻(丹阿弥弥津子)と前夫の連れ子だった娘・エツ子(中尾ミエ)、息子・勇である。エツ子の気をひこうと駅員二人は必死。
 上下線が不通になったりする事故で混乱する鉄道会社。
 ある日、駅長の息子にバスのはねた石が当たってケガ、そのときバスを運転していた新川(古今亭志ん朝)はエツ子目当てに毎日、花を持って通ってくるようになり、やがてエツ子も心を許すようになる。バスの中でアツアツの二人を目撃したという情報で、父親は怒り、娘は鉄道員以外には嫁にやらぬと断言、娘はわからずやの父親に業を煮やして家から出て行く。
 エツ子は飲み屋「山妻」の女将みゆき(水谷良重)のもとへ身を寄せていた。みゆきには五年前に別れたやくざ・岩崎(名和宏)がいたが、刑務所を脱走して店へやって来る。彼は逃走資金を無心して五万円を手切れ金に帰って行った。
 一方、駅長は娘の行方が気になって仕方が無い。新川に問いただすと、長吉とも争いになる。駅のベンチの弁当箱の中の時計音で爆弾騒ぎが起こる。仕掛け人は長吉の妻だった。夫をゴリラと非難されて腹いせにやったと白状、弁当なら食って見せろと駅長がすごむと、長吉は時計を分解しながら食べる。この突出したギャグは全体からかなり浮いているし、食べる見せ方もごまかしなので迫力は無い。『黄金狂時代』の靴の食べ方に学ぶ必要があった。
 新川の恋を成功させるのは鉄道会社との戦いの一環だと、長吉は新川に駆け落ち策を進める。やまだ屋の番頭・高木ブーに頼んで車を用意させる。山妻に関係者が全員集まってしまうが、なんとかスキを見て脱出したエツ子と新川の乗った車に、岩崎が隠れていた。岩崎は拳銃を突きつけて逃走先を指示。運転する新川は暗闇にまぎらして元の駅前へ戻って来る。バイクで車を追跡していた仲本と加藤も戻って来た。怒った岩崎はエツ子を人質にとる。集まってくる警官。長吉は「全員集合!」の号令をかけ、エツ子奪還と犯人逮捕の作戦を授ける。
 作戦は、女装した加藤がエツ子と入れ替わる。怒る岩崎をバスに誘導、バスはぐるぐる回転運転をくりかえして犯人の目を回させるというもの。首尾は上々だった。
 駅から新婚旅行に出発する新川とエツ子。名言はすべてケネディが言ったことにしてしまう駅長が、「ケネディは言った、栄光は戦いの後にやってくる」とはなむけの言葉を送ると、長吉が「毛沢東じゃなかったか」と突っ込む。汽車は出て行く。加藤茶は、別れたら待ってるゾと声をかけるのだった。

   映画川柳 「《若水ヤエ子演ずる妻は》 長介を ゴリラと言われて 腹を立て」飛蜘

追記 2013年6月 NHK BSプレミアムで放映。DVD化は近い?
第2作 やればやれるぜ全員集合


1968年1月
松竹
 脚本は森崎東・渡辺祐介、監督は渡辺祐介。音楽は宮川泰。
 脚本に森崎さんらしさはまだ出ていない。
 日陰村。村の鼻つまみものの(ドリフの)五人は賽銭泥棒をしているが、収穫は300円そこそこ。五人はケチな泥棒はやめ、大志をいだいて東京へ出ることにする。 ヒデ(加藤茶)は小学校以来の先輩・長吉(いかりや長介)には頭が上がらない。
 一年後、港湾労務者として働く長吉とヒデの二人の姿があった。二人のマドンナは食堂で働くみっちゃん(松尾嘉代)とリカ(木の実ナナ)。ドリフの仲間と久し振りに会うと、他の仲間は大成功していると言っている。しかし、実際には売れっ子作曲家・仲本工事の正体はドサ回り歌手、料理長・太志(高木均)は焼き芋屋台、政治家・荒井忠はケチな組員。
  長吉はみつ子に惚れられていると誤解し、ヒデに提灯持ちを頼む。実際には花園レストランの社長(藤村有弘)が、しつこくみつ子に求婚していた。社長は死んだみつ子の父親の借金を方にしていたのだ。ヒデはみっちゃんに「白いヘルメットに札幌ラーメンの好きな」恋人がいると聞き、それは自分のことだと思い込む。みつ子の恋人はサブ(平尾昌晃)なのだが。
 一方、他の三人は金を巻き上げられた可哀想な田舎者を騙って、路上で詐欺芝居中だった。そこへヒデと長吉が現れて声をかけてしまい、詐欺の正体がバレて、みんなに袋叩きに合う。再出発を誓う五人はボロ長屋の一室でドンチャン騒ぎ。ヒデが空き缶に貯めておいた金も、いつのまにか紛れて使われてしまう。
 五人は船橋ヘルスセンターに住み込みで働くことにした。コマねずみのように働き、花園社長の土地を一部買うために百万円を貯めた。ところが土地の値段ははね上がって、百万円では売れなくなったという(田中邦衛が社長代理)。最初から売るつもりはなかったんだと憤る五人。
 五人は花園社長とみつ子の結婚式に忍び込み、社長を眠らせてアフリカ行きの船荷貨物で送る計画をする。睡眠薬を入れたつもりが下剤を入れてしまったり、失敗もするがなんとかうまく船を出港させる。しかし、百万円入りの背広を荷物に一緒に入れてしまう失敗をする。
 五人は解散して各地で働くが、アフリカ行きの船は座礁して社長は日本に帰ってくる。五人は警察(各地の警察官役はそれぞれクレージーキャッツの犬塚・安田・石橋、殿山泰司)に逮捕されてしまう。しかし、花園社長は実は麻薬王・珍大海であったことが判明し、一転して五人は英雄となる。
 みつ子(松尾)は晴れてサブ(平尾)との結婚を打ち明ける。トラックの荷台上の結婚式で「高砂やロック」を演奏するドリフの面々で幕。
第3作 いい湯だな全員集合


ドリフターズの全員集合の映画版で脚本・森崎東とクレジットされている作品は3本、『やればやれるぜ 全員集合』『いい湯だな 全員集合』『大事件だよ 全員集合』。この中で森崎さんが中心になって書いたのが『いい湯だな 全員集合』でしょう。メインが森崎さんで、副に監督の渡辺祐介が付いています。『やればやれるぜ』では、物語に森崎さんらしさはほとんど出ていませんでしたが、この第3作『いい湯だな』では全面展開、それだけにシリーズ最高傑作となっています。ウソだと思う人はぜひご覧下さい。
いい湯だな全員集合  冒頭、ある銀行が強盗に襲われます。五人組の強盗で銀行の隣のトルコ風呂から壁に穴をあけて侵入。お風呂好きで、「ある特徴」をもつ五人が捕縛されます。タイトルバックで次々に逮捕されるドリフの面々。
 留置所で身の上を心配する五人。ところが実際の犯人の目星が別について、誤認逮捕を公にしたくない警察(犬塚弘ら)は五人をわざと脱獄させます。留置所から下水に逃げ込んだ五人は、一度は元の生活に戻ろうとするものの、強盗の濡れ衣は晴れておらず、しばらくは下水道暮らし。全員みなし子というから、もう森崎世界に入っています。長吉(いかりや長介)は面倒を見てもらった「たたき(恐喝)」の親分(今はオデン屋の)三木のり平から「(俺のように)実の親を平然と殺せるのが、本当のハードボイルド」とか、「戦後の三大事件って知ってるか、帝銀事件、松川事件、八海事件。この真犯人が・・・。平沢にも吉岡にも気の毒なことしたな。他人には言うなよ。笑われるからな」と吹き込まれて、すっかりその気になってしまいます。長吉の指導でガンやアヤのつけかたや、にらみのきかせかたを練習する五人。「それじゃお前さん、なにかい」と始まるこの練習場面は口立てなので、まるでテキヤのタンカ売のような可笑しさがあります。同時期に『吹けば飛ぶよな男だが』や『男はつらいよ』も書かれていたことを思い出します。練習の成果を町の薬屋で披露するヒデ(加藤茶)でしたが、店の女主人に逆にすごまれて失敗。
 一方、北海道は洞爺湖温泉郷のとある高校。女子生徒たち(早瀬久美ら)が「ドリフのいい湯だな」を調子よく歌っています。この当りは無類に可笑しい。いままさに職員会議でもめているのは温泉郷で始まったばかりの高校生芸者をどう処罰するかの問題です。退学処分に反対するタカシとミヨ(生田悦子)。タカシの父親は芸者組合の組合長(上田吉ニ郎)で、ミヨの母親は高校生芸者の温泉旅館の女将(木暮実千代)。小さな温泉町で二大勢力の全面戦争となるか。田舎の巡査役は左ト全。
 高校生芸者にバカにされた芸者(春川ますみ)は千枚通しの鉄(左とん平)に加勢を頼みます。それならこっちもと、女将が東京から呼んだ「殺し屋」がドリフの五人。
 蒸気機関車の急行で、田舎町の駅に降り立った五人を出迎えたのは、千枚通しの鉄だった。五人は『木枯し紋次郎』ばりの出で立ちでBGMの音楽はマカロニ・ウェスタン調。実際には双方共にイキがっているだけで、ちっとも強くなどありません。
 勝負は決着しないまま、翌日に持ち越されます。ミヨはこの騒ぎを潮に、タカシと二人で東京に出ようと決心します。バック音楽は「ミヨちゃん(僕のかわいいミヨちゃんは・・)」。ミヨは五人に鉄は「ヘビやトカゲを食べていて」「弾に当っても死なない」人間だから、喧嘩を止めるように忠告します。湯の中でふるえて思案している五人のもとへ、潜水で近づいて来た者がありました。鉄です。鉄も五人についての噂を「生でヘビやトカゲを食べる面々」とミヨから聞かされて、和解交渉にやって来たのでした。鉄から女将は三億円の資産家と聞かされ、五人は標的を女将に変更することにします。
 一方、女将は番頭から五人が東京大空襲のときに生き別れた息子ではないかと聞かされます。それなら空襲の際の火傷の痕がスネにあるはず。風呂場でそっとのぞいてみると、確かに五人にはスネに火傷の痕があります。中村錦之介主演の東映映画『瞼の母』で母親役を演じていた木暮実千代に、ここでまた瞼の母を演じさせるとは・・・。親子の名乗りをすれば、財産狙いに決まっていると女将は五人に心を許しません。まるっきり、『瞼の母』です。
 朝になって、抜け駆けしようとヒデは「おっかさん、みたいな人」と、女将にお世辞を言います。しかし、他の四人に見つかってしまいます。喧嘩騒動は話がついたらしく、五人は解雇されてしまいます。
 仲間を裏切ったヒデは裏の畑に埋められる運命に。ヒデは「女将を抹殺する完全犯罪のための準備だった」と弁明して、許されます。女将は毎日30分間だけ電気按摩機に坐るのでした。これを利用して感電死させようというのです。
 準備万端整ったところへ、東京へ出発しようとするミヨが五人に別れを告げに来ました。そして五人が女将の息子であることが分かります。実の母親を殺すのか、実の親を殺せなくて何がハードボイルドか、と葛藤が始まります。電線を持ったまま、やっぱりできないと倒れた長吉の手で結線されてしまい、按摩機には6千ボルトの電気が通じます。実はその頃、警察から息子たちが捕えられたという連絡を聞いて、女将は警察に出かけていたのでした。
 女将を殺したと思い込んだ五人は、鉄から「旅館には実は三億円の借金がある」という話を聞き、絶望するとともに、「ハードボイルド」気取りで警察に自首して出ます。ところが実際に捕縛された五人はまったく別の男たちでした。なんとその五人にもそろってスネに火傷の痕がありました。こちらは、「ム所に女でも差し入れてくれや」と、本ものの悪人に成長してしまっていました。
 網走刑務所に保釈金五千万円を持参するという女将に、謝罪するドリフの五人。借金三億円は税務署対策のウソで、実際には資産は十五億円はあるという。娘のミヨは東京で自活して暮らすというので、網走に行くのを止めた女将は金の入ったカバンをドリフの五人に投げる。カバンを開いてみると中に入っているのは旅館のハッピだった。長吉は「これは女将さんのナゾかけだ、俺たちを経営者にしようというつもりだ」と主張して、めでたく五人は旅館のした働きに雇われることになる。
 最後の場面で実際に風呂場洗いをしているのはヒデだけ。後の四人はお湯の中で、調子よく歌を歌っている。いたぶられるヒデは最後に「みなさん、これでこの映画が終わると思っていてはいけません。これから身の毛もよだつようなことが・・・」と風呂に入った電線の先をショートさせてストップ・モーション。
 イキがる人間を笑いのめし、自分勝手な人間を情けようしゃなく点描して、悪意に満ちていますね、この映画は。ちなみに音楽もパロディの連続です。
 
第4作 ミヨちゃんのためなら全員集合

 脚本は渡邉祐介と田坂啓。映画評論家の高沢映一は『日本映画作品全集』(キネマ旬報1973年)で、全員集合シリーズのなかで、特に第二作『やればやれるぜ全員集合』、第四作『ミヨちゃんのためなら全員集合』、第五作『ズンドコズンドコ全員集合』が傑作だと評価していた。私見では『やればやれるぜ』『ミヨちゃんのためなら』は、途中から展開が悪く、傑作とは思えなかった。
ミヨちゃんのためなら全員集合  創業以来百年、漢方薬製造工場「いかり本舗」を経営する伊刈長吉(いかりや長介)は、女房のお菊に赤ん坊を置いて逃げられた。その上、高校のブラスバンド仲間だった従業員四人が揃ってやめると宣言した。忠次(荒井注)、風太(高木ブー)、工作(仲本工事)、ヒデことヒデオ(加藤茶)の四人は、長吉の後輩だが、給料は安いし、工場の異臭が、町の非難を浴びて肩身がせまい。結局、ヒデを残して、三人はやめた。ヒデは高校卒業のためにテスト問題を盗んでもらった恩があり、長吉に忠誠を誓わざるを得なかった。長吉はヒデに女房役を強要する。
 一方、工場の悪臭は町民の非難のまとだった。長吉に同情的なのは、高校時代の恩師花山大造(ハナ肇)だけだった。花山は警察の署長(三井弘次)と将棋仲間。花山の妹・美代(倍賞美津子)は、見合いをしたがその相手は、アジア観光御曹司・石田(左とん平)だった。石田は町のボス熊寅(上田吉次郎)と結託し悪事を企んでいた。長吉の工場周辺の土地を買い占め、バイパスとモーテルを建設、地価の値上りでひと儲けしようというのだ。
 工場存廃の町民投票に敗れ、問屋にもボイコットされた長吉は切腹自殺を図る。自殺に付き合わされようとしたヒデは石を井戸に投げこんで偽装し、逃げた。ヒデは女装して宴会に顔を出す。
 一方、石田らを探っていた美代は芸者ぽん太(松岡きつ子)の協力で、熊寅と石田の密談をテープにとり、漢方薬の問屋を集めて開かれていた宴会の席上、町民や問屋衆に公開した。石田らは検挙された。急に長吉が心配になり、工場へみんなで駆けつけると、斬れない包丁を研ぎ直しているうちに死ぬ気が失せた長吉、駆けつけたみんなの手前、死んだふりをしていた。死体を前に葬儀屋が先か坊主が先かで仲本と荒井忠の争いが始まる。花山はまず通夜だと言い出しさらに混乱。死を悲しむのが第一だということになって、みんなが泣き始めると長吉は生きていることを告白、ハナ肇は「アッと驚くタメゴロー」と一言。
 花山は女生徒に惜しまれながらも学校を去って行った。妹と一緒に町を去る花山、駅には誰も見送りの者がいない。と思ったところへ、ブラスバンドが響く。教え子のドリフの面々が蛍の光を演奏し、「ミヨちゃん」を歌って別れを惜しんでくれるのだった。 
 工場では逃げた三人も工場に帰り、長吉も反省して、悪臭除去装置を取りつけた。やがて、お菊も帰ってきた。

     映画川柳 「工場の スイングボーイは 母代わり」飛蜘  
第5作
ズンドコズンドコ全員集合


 脚本は渡邉祐介と田坂啓。高沢映一が当時、これまでの五作品の全員集合もののなかでいちばんの傑作と評価した一篇。リズムも勢いも絶好調の傑作であった。
ズンドコズンドコ全員集合  九州のある漁村、漁業組合に女の子たちが、「あいつらが帰って来た」と駆け込んでくる。村のはなつまみもの、ドリフの面々である。替え歌「ソーラン節」を歌いながら、フンドシひとつで、船で港に帰って来るものの、魚は一匹も取っていない。リーダーのいかり鮫吉(いかりや長介)は鯨を取ったが逃してやったとホラを吹く。組合長(田子の浦親方)は馬鹿は相手にしないという対応だが、娘の鮎子(中尾ミエ)は兄貴にいじめられている加藤イワシ(加藤茶)に同情的である。イワシは鮎子と駆け落ちするために、ちょうど村で興行していた“市川団九郎・あかね一座”の座長(佐山俊二)と、娘あかね(野川由美子)に弟子入りを申し出る。
 しかし、村での評判が悪い鮫吉が上京すると決心したことでグループは解散、イワシだけが鮫吉と一緒に上京することになる。イワシの母親が生前、鮫吉にイワシの面倒を見てくれと頼んでいたからであった。
 東京に行くトラックの冷凍庫に乗ってしまった二人は寒さに耐える。東京に着いた頃にはイワシの体は凍ってしまっていた。そして、ひと月がたった。
 東京から仲間に届いたハガキには鮫吉は順調に縄張りを広げていると書いてあった。実際には、二人は石焼きトウモロコシをつんだオンボロリヤカーを引っぱる生活。鮫吉はもっぱらマンガを読み、商売はイワシ任せだった。鮫吉は食堂の看板娘・久美ちゃん(小川ひろみ)に惚れていた。久美宛のラブレターを書いてイワシに託すが、イワシは勝手に動物園のゴリラの檻の前で待つという返事を作って渡す。翌日、鮫吉は約束の場所で待つ。一方、イワシは逃げ出そうとするものの、休みの久美が差し入れ持参でボロアパートに来てしまう。彼女と話している間に、変だと思った鮫吉が帰宅、イワシの企みを知ってしまい、フェイドアウト。
 殴られて顔じゅう包帯だらけのイワシ、屋台がボヤであわてているとき、兄貴分を頼って田舎から出てきた三人、シャケ(荒井注)、フグ(高木ブー)、多作(仲本工事)に再会する。
 三人はひとり当り千円の日雇いで土方仕事をしていたのに、手配師の黒木(左とん平)と喧嘩してクビになってしまう。大屋のかしまし娘から催促されるものの部屋代が払えず、このままでは全員出ていかざるを得ない。
 一方、黒木はひと殺しでムショに入っていた鬼熊(宍戸錠)が出所してくるというので、あわてていた。兄貴分の留守中に兄貴の女・早苗(沖山秀子)と関係し、シマを取っていたからだ。誰か身代わりを立てて責任をすべてそいつに押し付けてしまおうと考える。折よく腹を減らした加藤茶がやって来た。黒木ら二人はバー・ブラック(店のホステスは若水ヤエ子)など狸小路を任せてしまう。
 急に加藤は他の四人を使う身分となる。けれどもにわかバーテンのドリフのこと、大阪のやくざ(藤田まこと)からビール1本、28000円をせしめようとして逆にすごまれて失敗。馬鹿馬鹿しいと若水ヤエ子がやめてしまったので、駅で若い子をナンパして来ようという計画になる。
 さて、神原(名和宏)率いる暴力団は団九郎一座の興業を仕切っていた。150万の借金が返せなければ、あかね(野川由美子)の体を引き受けようと脅す。一座もパチンコ玉を拾って飢えをしのいでいたようないかりやをにわか団員に加えて興行をうつほどの困窮ぶり(ちなみに舞台は『瞼の母』で番場の忠太郎を野川、母親をいかりやが演ずる)、団九郎は拉致されてしまう。
 すっかり困ったあかねは東京タワーで鮎子(中尾ミエ)と再会。鮎子は変奏して暴力団に乗り込み、事情調査。イワシの身の上が危ないことを知る。電話で裏の事情を知ったイワシは、いかりやに身代わりを押し付ける作戦に切り替える。
 翌日、出所した鬼熊は手はず通り、果たし状をつきつけてきた。岩四は、鮫吉に芝居ごっこだとだまし、対峙させる。神崎たちも決闘を見物に来た。一同が決闘を見ている間に団九郎を救出するつもりだったが、神崎に捕縛されてしまう。あわやドラム缶でセメント詰めにされそうになったとき、事情を全部聞いた鬼熊が駆けつけ、神崎たちをやっつけてしまう。この辺はまるっきりご都合主義で小規模の素人チンピラが大人数の暴力団に勝てるわけはないはずなのだが・・・・。
 とにかくも神崎に慰謝料を150万円払わせ、それを返して劇団の借金はゼロになった。鮎子はすっかり女剣戟の道に惚れたという。
 最初の漁港、女たちがまた組合長のもとへ走りこんでくる。「やつらがやって来た」と。ドリフの面々のご登場である。最初に戻ったのだ。

   映画川柳 「やって来た 迷惑人間 ズンドコと」飛蜘
  
第6作 誰かさんと誰かさんが全員集合!

 松竹のドリフターズの全員集合シリーズ第6作目。脚本は渡辺祐介と田坂啓。監督は渡辺祐介。主題歌はドリフの「誰かさんと誰かさん」(イギリス民謡「故郷の空」の替え歌)で、BGMもこの曲を変奏して使われています。
 茨城県は水戸市にある「大日本無念塾」は、いかりや長吉(いかりや長介)が塾長をつとめる武道塾。「忍耐・服従・献身」が合言葉で毎朝の稽古に塾生が精を出しています。塾の手伝いをヒデ(加藤茶)とコースケ(仲本工事)が務め、上の妹(若水ヤエ子)を嫁がせた医師ヤブ注(荒井注)と下の妹(楠トシエ)を嫁がせた「ひばり保育園」園長フータ(高木ブー)がサポートしています。コースケは恋人マメコちゃんの工場での働き口を見つけて塾を出ます。ヒデもミヨちゃん(早瀬久美)の食堂で板前修業に入ろうとしますが、長吉はヒデの両親がダンプ事故で死んだときのヒデの口約束、「いったん男を預けます」を楯にヒデを離しません。女房に逃げられてから二人の男児をヒデに面倒をみさせて育てています。
 無念塾を経営させているのは新田重三(内田朝雄)です。長吉は毎月顔を出して小遣い銭をもらっているのですが、重三のほうは長吉を金儲けの為の捨て駒としか考えていません。悪徳不動産業者の川上(上田吉二郎)と組んで高速道路建設にからむ地上げを狙っています。
 ヒデは他の4人に相談して「みんなで逃げる」作戦を提案していますが、ちょうど新聞に「女子生徒に寝技を教える」エッチな塾長という記事が出てしまい、塾生が全員辞めます。川上の謀略でした。これ幸いと4人も辞めようとします。長吉は「ひとり10名ずつ塾生を集めてくること」と命令しますが、マジメに聞く者はいません。ヒデだけは残そうとします。けれど、そこへ突然、美人(岩下志麻)が訪れてきます。結城令子と名乗るこの女、なにか訳ありですがドリフの面々は即刻辞めるのを中止、長吉も押しかけ女房が来たと常連の呑み屋の女の子たちに喜んで自慢する始末です。
 結城令子は保育園で保母として働きながら、夜は料亭の芸者として働きます。突然登場する芸者仲間(倍賞美津子)と一緒に川上と交通公社の局長・佐川(名和宏)との密談を探ります。一方、4人は長吉の日記を盗んで読み、令子名義のニセ手紙を思いつきます。「4人はいい人、やさしくしてね」といった文句を挿入しながら太郎に駄賃をやって手紙をやりとり。その傍ら、自動車の部品を盗んで組み合わせて逃走用の車を一台作り上げます。結婚承諾までもらったと思い込んだ長吉は花嫁の名前を伏せて結婚披露宴を開催。席上、令子さんの名前を明かしたときに、令子さん本人は園児の引率で公園にいる始末。すっかり恥をかいた長吉は4人のイタズラに気が付き、暴力をふるって留置所にぶちこみます。留置所内で長吉に臓器移植を行ない、動物のパーツに入れ替えしてしまう夢をみる4人。そこへ新田に裏切られた長吉がしょげ返って登場、立ち退きを迫られています。荷造りの準備をしているところへ、令子が来てストップをかけます。その晩、令子は「土地の持ち主はわたし、檀家総代だった結城文三の孫娘だ」と正体を明かします。権利書を手に入れたい悪者たちは令子を拉致します。
 令子は毎朝新聞の記者・村山宏(森次浩司)に情報を流していました。令子救出をけしかける芸者(倍賞)とミヨちゃん(早瀬)、アリの入る隙間もない家ですが、長吉は偶然、新田の愛犬ベアトリーチェを連れて帰ります。新田から電話が入り、ベアトリーチェ第一の新田と交渉、犬と令子の人質交換の約束が整います。
 長吉はやつらがギャングを差し向けてくるはずだと予想、そこへ記者の村上が訪問、すわギャング到来と勘違いしたドリフにより殴られてしまいます。
 翌日、交渉に行ったドリフの面々、1、2の3で交換したところ、令子のニセモノ。物置に閉じ込められてしまったところへ、窓から令子が助けにやって来ます。見張りが花札に熱中している隙に逃げ出してきたとのこと。記者も助けに来て、縄を解いてくれます。記者の村上は令子のフィアンセ。様子を見に来た新田・川上・佐川の一味と大乱闘(長吉は後ろに回って見守る臆病ぶり)、村上が委嘱した警官がやって来ます。悪漢の首謀者たちは車で逃走。パトカーからも盗んだ部品があり、それで作った車に乗っていたドリフもその改造車で逃走、さらにそれを追う令子と村上、コマ落としの追跡劇。BGMは『天国と地獄』のカンカン。とうとうトンネルの中で衝突?爆発して全員負傷。
 負傷して包帯を巻いたドリフが、塾や病院、保育園や息子たちは妹に任せ、新しい場所に向ってポンコツ車で旅立ちます。見送る令子、村上、ガールフレンドや妹たち。ドリフは「ホントにホントに御苦労さん!」と歌っています。
 割合、破綻の少ないストーリーで、ドリフターズおなじみのギャグが仕込まれた一篇。

     映画川柳 「異種移植 成功すれば モンスター」飛蜘
第7作 ツンツン節だよ全員集合!
 全員集合第7作。ちなみに第6作は『誰かさんと誰かさんが全員集合!』。脚本は渡邉祐介・田坂啓、監督は渡邉祐介。1971年8月公開。同時上映は野村芳太郎脚本・監督の『コント55号とミーコの絶対絶命』。
 辺地県未開郡日蔭村にセントラル移動食品のトラックでいいかりや長吉(いかりや長介)がやって来た。この村は彼の出身県、東京に出た彼が置き去り弐した女房(根岸明美)は海女で、泥棒ばかりしている加藤ヒデオ(加藤茶)を潜水採集でしごいている。長吉は不審が続く貧乏会社の従業員を集めに来たのだが、海女たちに笑い飛ばされる。こうなったら半端者でも誰でもいい。折からヒデが助けを求めていた。スキを見てトラックに乗せて一目散に逃げる。村から出すなと後を追う女たり。山に一時避難した長吉はそこで世捨て人で生活していた三人、忠助・風太・工作と出会い、うまい話があるとホラを吹いて東京へ連れて来る。
ツンツン節だよ全員集合 セントラル移動食品会社の社長は新作(谷啓)で長吉とは小学校の同級生、二人だけの生徒で一、二番を争った仲である。会社の社員はゼン(谷村昌彦)とロク(佐藤蛾次郎)の二人。屋台の元締めだった。騙されたことに気付かない4人は自分で補強した座敷牢に閉じ込められてようやくおかしいと思い始める。村へ帰ると言うが新作の妹の美代(倍賞美津子)が現れると一同、帰村の気持は無くなってしまう。しかも美代は牢の鍵を外してくれた。
 屋台を連ねて出す一兆円ビジョンを掲げる新作だったが、美代やバー黒猫のママ(香山美子)など、まともに取り上げるものはいない。
 セントラル食品に立ち退き要求をしている不動産業もする日の丸金融の社長・熊虎(小松方正)は妻(若水ヤエ子)があるがバーのママの店に通っている。その息子・豹太(左とん平)は地上げの際のガードマンの訓練に余念が無く、美代に惚れていた。
 やる気の無い屋台で売上は伸びないが、ドリフの4人はゼンたちから経理係りの長吉は十ニ人分の給料の上前をハネているからマジメにやるもんじゃないと助言を受けている。横暴に耐え切れず、長吉の妻に迎えに助けを求める手紙を書くが、途中で長吉に見つかり、屋台に鎖でつながれる羽目になる。おでんの薀蓄を三遊亭円生が話すオマケがある。トイレに行けないヒデが清酒ビンにした小便を間違って飲まされそうになる場面があるが、さすがに円生師匠にそんな失礼なことはできなかった。
 長吉には夜ひとりでトイレに行けないという弱みがあった。毎晩ヒデを起こしてついていってもらうのだ。その時を利用してボロ宿舎から脱走を図る四人。首尾よく脱走したものの金も家も無い。ちょうどミサワホームのモデルハウスがあった。夜はそこで暮らすことにした。食事は食堂の残りものを集めてくる。
 ゼンとロクの母親(武智豊子ら)が田舎から出てきて、ひとり当たり十万円の借金の返済を社長に迫る。困った社長は長吉に三百万円の貯金から一部を貸してくれと頼むが、長吉の本当の預金は三千円、ママの前で見栄を張っただけだったので貸せるわけが無い。日の丸金融に行くと豹太が美代との見合いの段取りを条件に貸してくれた。
 十万円を渡すと母親は帰ったもののセンとロクも連れ去られて働き手がいなくなってしまった会社はいよいよ困窮する。昼間は寝てばかりの長吉も夜はバーで意気軒昂、相変わらずのホラ話が冴える。ママを誘って偶然入ったミサワホームでヒデを発見。連れ帰って逆さ釣りで責める。いったんバーに戻った長吉、雨が降ってきたのにヒデのことを忘れてしまったことに気付いて戻ると、とき既に遅くヒデは死んでいた。本当は仲間の演出。死んだふりをしているヒデを棺桶に入れて外へ出そうとする。トイレに立ったヒデと長吉が出会ってしまったが、お化けが怖い長吉は気絶。今度はみんなで長吉を死期の近い病人に仕立ててしまう。医者(伴淳三郎)はこの茶番に付き合えないと帰るが、医者のダメを長吉の死に結び付けてしまった新作は通帳の三百万で借金が支払えると考える。豹太に借金返済の目途はついた、美代は会うつもりがないと答えると、日の丸不動産の強制大執行が始まる。ユンボで会社のボロ家を壊す不動産屋。みんなは長吉の通帳の三百万を借りようとする。しかし、実際の金額を見てあきれる。
 長吉と新作を現場に残し、日の丸金融の事務所に乗り込む他の面々。ガードマンを阻止する魚河岸の連中。美代は魚河岸で働くケン(山本紀彦)に加勢を頼んだのだ。鉄球で打ち込まれても土にめりこむだけの長吉、クレーン車にはねとばされて事務所まで飛ぶ熊虎などナンセンス場面がある。
 見舞金で息をつく新作。バーのママとの関係も良くなったようだ。ママにふられて失意の長吉に村の女房が岩下志麻みたいな女と一緒かと思うと悔しいと嫉妬して上京してきた。しかし、ここで村に帰られたら自分たちへの借りが返せない。四人は奴隷時代に唱えさせられた男心の三ケ条(男になりたい、男になろう、男になった)を長吉に強要、女房には村で待っていてもらう。
 やがて半裸でセントラル食品のトラックに乗り、村へ向う陽気な一団があった。荷台には長吉を乗せていた。
 
   映画川柳 「地上げ屋は どん底会社よりも ワル」飛蜘 
第8作
春だドリフだ全員集合!
 ドリフターズの全員集合第8作。Amazonでは入手不能だったがHMVで販売して松竹には在庫があった。最終作『正義だ!味方だ!全員集合!』も購入できて全員集合映画版はほぼ全作を見ることができました。
 『春だドリフだ』は1971年12月29日公開で同時上映は11月20日から上映の『男はつらいよ・寅次郎恋歌』(マドンナは池内淳子)。1971年は山田洋次は男はつらいよを3本も公開している。松竹は翌1972年の1月21日からは欽ちゃんの『初笑いびっくり武士道』『生まれかわった為五郎』の2本立に変わった。 春だドリフだ全員集合
 脚本は渡邉祐介と田坂啓、監督は渡邉祐介。音楽は木下忠司。冒頭の舞台は伊賀上野、旅回りの一座の興行が行われている。のぼりの一つに「なまず家源五郎」の名前があり、中へ入ると、ちょうどその源五郎(いかりや長介)が一席演じているところ。演目は「品川心中」と字幕が出る。田舎の客は江戸前の話に興味は示さず、早くストリップを出せと言っている。舞台から楽屋へ戻ってきた長介は文化果つるところだ、客の質が悪い、小屋がションベン臭い、こんなところで話すような芸人じゃないんだと文句を並べる。冒頭から田舎の客やストリッパー、ドサ周りの一座を馬鹿にするセリフでこれに対する批判的な応答が無い(例えば「文化果つるの何が悪いんだい」とか「ションベンたれはあんたじゃないか」とか応酬が欲しかった)。見ている方はきわめて不愉快になるが、この感じは最後まで続いて、この作品、きわめて不愉快な点が多い。 
 さて、物語を見てみよう。事務所に興行をしきる黒幕、人斬りの竜とかまむしの竜といわれている竜三(石山健二郎)が来ていて、それを知った長介はもみ手をしながら挨拶をする。ちょうど、竜三が興行主に今をときめく「小柳ルミ子は呼べないか」と言うのを聞きつけた長介はルミ子ならTV局でよく会う知り合いですとホラを吹いてしまう。竜造は喜んで呼ぶための手付金20万円を長介に渡して話をつけるよう依頼する。その際に落としたハンカチからはつめた指が転がり出る。50万円をネコババしたものの指だそうである。長介はゾーッとして断ろうとするが今さら遅い。
 長介が東京へ戻る列車にタイトル。長介は困ってしまう。
 それから30日後、TV局のスタジオで小柳ルミ子が「私の城下町」つづいて「お祭りの夜」を歌う。一度に続けて二曲も歌ってしまい、彼女はこの後は登場しない。小柳ルミ子のスケジュールがきつかったのだろう。長介が会いに来るが本人からは嫌がられるし、マネージャーからは断られるしで、ちっとも交渉にならない。
 長介の師匠はなんとほんものの円生だ。まだ二つ目の長介に「湯屋番」をやってみろ、できない、それなら「浮世床」はどうだ、「道具屋」ばかりじゃダメだよと諭している。師匠はなまづ屋なんて名前が悪い、どうだい、いかり亭長楽と改名したらと提案し、長介もその名前が気に入る。弟弟子の円八(左とん平)の方が50も噺を覚えているし、同期の円喜は真打ちになっているし、目が出ていないのは長介だけだ。
 長介が焼き鳥屋でヤケ酒を飲んでいるといつのまにか自分の焼き鳥が取られているのに気付く。捕まえてみるとこれが集団就職で福島から上京したものの仕事の宛ての無い若者・加藤ヒデオ(加藤茶)だった。焼き鳥の恩をきせて一生師匠のために働きますという言質をとった長介は、ヒデオに「茶楽」という名を与えて弟子にしてしまう。
 長楽の部屋は今川焼き屋(春川ますみのテツ子、高木ブーの風太)の二階だが、部屋代を支払っていないので、隣りの遊び人・忠次(荒井注)の家から入り、二階に上がってから梯子で隣りの部屋へ移るのだ。忠次には二人の妹がいる。芸者・文代(長山藍子)とリエ子(新藤恵美)である。忠次は小さい頃、おしめを変えてやったという理由で妹の稼ぎに依存してパチンコ三昧の与太郎暮らし。荒井と高木は長介と遊び仲間でガキ大将の長介に頭が上がらない。
 長楽の部屋には余分の布団も無い。ヒデオは朝ご飯も満足に食わせてもらえず、「道具屋」を教えられるが殴られてばかりの待遇になんとか復讐を考える。
 突然、新しい間借り人が来る。学生の仲本(仲本工事)で、父親はあの竜三である。
 文代は実は円八こと五郎(左とん平)と幼馴染で恋仲である。五郎の「たぬき」の舞台を見に来ているが長楽はそれを自分のために来てくれたと勘違いする。
 ヒデオは、復讐で破いた勢いでミソや醤油を染ませた高座着を着せて長楽を舞台に出したところ、お客に笑われて大失態。しょうゆ入りのお茶を出してなおさら舞台は壊れ、客はおお笑い。ところが、円生師匠は演芸場の外までお客さんの声が聞えていた、「時そば」で客をあんなに笑わせるなんて、お前の真打ち昇進も近いだろうと話す。これも不愉快な展開だ。舞台を見ずに師匠がそれほど簡単に弟子を真打ちにするはずもないだろう。さらに後半で師匠は真打ち昇進の審査の席上、真打ち候補に上がっていなかった長楽をそろそろあいつを真打ちにと懇願し、長楽が部屋へ芸者姿で転がり込んでくると、真打ち提案は下ろす、責任を取って俺も落語協会を辞める等と発言する。いくらなんでも、こんないい加減な師匠はいないだろう。よくぞ円生がこんな役を引き受けたものだ。いや円生にこんな役を演じさせていいのか。落語家を軽んじるにもほどがある。噴飯ものである。ところで、物語にもどろう。
 長楽は有頂天となり、文代にも話す。そしておずおずと結婚するのならどんな人がいいかと聞くと、「噺家がいいわ、内気でマジメで長さんみたいな、貧乏だけど古典落語に取り組んでいる人」と答えるので、すっかり誤解してしまう。この文代のセリフで問題なのは「長さんのような人がいいわ」とはっきり言っていることだ。同様のセリフはこの後にも出てくる。ちゃんとした女がそんな誤解を与えるセリフを言っていいわけがないだろう。喜劇では男が誤解してしまうセリフというのはよく出てくるが、大抵女は別の男のことを聞かれたと思い込んでいるという設定になっている。決して面と向って相手にあなたがわたしの理想の夫などという発言はしないものだ。それではルール違反でしょう。
 二十三代のパトロンだった長谷川(永田靖)と大日本憂国同志会の曽根(天本英世)が密談している。国会議員の三隅に二億円の政治献金を画策、万一のときのスケープゴートとして仲本竜三を選ぶ。
 舞台変わってヤクザ映画撮影中の現場、監督(関敬六)がカットの声をかけ、よく撮れたというが、見物していた竜三はダメを出す。ホンモノの殺しではドスで刺した後にえぐるのだと助言する。そこへ箱根での三隅議員の新年会ご招待の通知が来て、竜三は喜ぶ。そして東京では息子の下宿に宿泊し、なまず屋を探し出して始末すると意気まく。
 ヒデオは逃げ出す前に自分の通帳を取り返すが既に全額長楽に引き出されていた。秘密の日記には真打ち披露の予定やら、「あの金」に手をつけた記載がある。貧乏は買ってでもしろと押し付けられて、長楽は踊りのお稽古へ。
 花柳流の日本舞踊の稽古の師匠(佐山俊二)は文枝を教えている。それを見るゴールデンハーフ(出演はここだけ)。忠次と仲本も見学。
 ヒデオは部屋で爆弾を作っている。彼の独り言は当時流行のギャグ、「コレでイイノカ、コレでイイノダ」。
 社長の長谷川は文枝に三隅の二号になれと説得している。
 夜、爆弾を長介の寝床に仕掛けたヒデオは他の住人をたたき起こして批難させる。しかし、長介は寝小便をしてしまい、導火線の火は消える。寝床から分けがわからず放り出された爆弾を受け取ってしまったヒデオがあわててさらに放ると、丁度接近してきたパトカーの天井に乗り、しばらくして爆発! その後の捜査もない。
 田舎から出てきた竜三が仲本の部屋にやって来る。長介は竜三から隠れる。ヤクザの大親分なのに組員を一人も連れずに下宿先へ顔を出すなんて不自然である。
 三隅(藤村有弘)の新年会は箱根で行われる。ここで文枝のいわば身売りが行われると知った五人は宴会場へ乗り込んでいく。宴会のアトラクションで芸者姿のドリフの「ツーレロ節」が歌われる。別室では円生や小さん等が集まって真打ち決めの寄り合いが開かれている。芸者の正体に気付いた悪人たちとの大乱闘。騒ぎのドタバタのなか、竜三は息子から三隅や曽根たちの陰謀を聞き、ドリフの味方の立場になる。乱闘のさなか、ヒデオの作ったもう1個の爆弾が炸裂して全員気絶。
 それから一年後、弟子の茶楽が真打ちとして「道具屋」を演じている。相変わらず二つ目の長楽は楽屋でメザシを焼いている。文枝は五郎と結婚し赤ん坊をおぶっている。客席にいるリエ子の隣りに仲本、舞台から仲本を叱責する茶楽、そこへショーケン(萩原健一)が登場してリエ子は彼との婚約を発表。メザシの焼き方を茶楽に批難され、焼き直すことになった長楽は、映画館の客に向って、「お客さん、あっしがこのままでひき下がるとお思いですか。半年先を見てて下さい。必ずやつらに煮え湯を飲ませてやりますよ」でエンド。やつらっていったい誰のことだ?

    映画川柳 「真打ちの 格も落ちたり 落誤界」飛蜘 
第9作 祭りだお化けだ全員集合!
 全員集合第9作。ちなみに、第8作は『春だドリフだ全員集合』。脚本は田坂啓・渡邉祐介、監督は渡邉祐介。1972年8月公開。同時上映は『男はつらいよ・柴又慕情』。
祭りだお化けだ全員集合  お祭りの神輿が通る。大衆割烹「川きん」の二階ではあるじの金造(三遊亭円右)と板前の松吉(犬塚弘)・長吉(いかりや長介)がふぐ鍋を囲んでいた。ドリフの「お祭りマンボ」でオープニング・タイトル。
 神輿をかついでいたヒデオ(加藤茶)・風太(高木ブー)・工作(仲本工事)に板前が死んだという知らせが入る。ヘドロの長吉が死んだと思った三人、おお喜びで店に戻るが、死んだのは松吉のほうだったのでガッカリ。葬儀がすむと長吉は自分から板前筆頭を宣言し、従業員を支配しようとするが、仲居さんたち女はみな他の店へ鞍替えしてしまう。三下の板前たちも去ろうとするが、それぞれ長吉に助けてもらった過去の恩義があり、去ることができなかった。バクチ好きで勘当された若旦那の忠(荒井忠)も板前修業をすることになる。
 久しぶりに師匠(柳屋小さん)が客に来た長吉の指導で三下が怨みをこめていろんなものを放り込んだ滅茶苦茶な吸い物が良いわけがない。娘の令子(林美智子)は困ってしまう。山口いづみは隣りの家のマドンナとして一曲「緑の季節」を歌うだけのゲスト出演。
 長吉は令子と結婚して店を継ぐ夢を見ているが、それには自分の足を引っ張る三下板前どもが邪魔。なんとか追い出そうとするが長吉の魂胆を知って三下は逆に出て行かない。
 20年前に金造が女中の千代に産ませた子を千代共に引き取って店を去った板前の平蔵(藤岡琢也)が懐かしい。川きんは留置所の仕出弁当でも失敗する。返された弁当を三下に無理やり食わせる長吉。
 令子と長吉が観音様へお参りに来たついでに寄った小料理屋「ふな木」の板前が平蔵だった。既に千代は亡くなっていて、娘の京子(仁科明子。本作では新スター)は町の薬屋でアルバイト中の大学生。平蔵に再会した令子は平蔵を川きんに迎えようと算段する。
 長吉ははずみで冷凍庫に閉じこめられて冷凍されてしまうが、奇跡的に復活、三下の罵詈雑言に腹をたて、ネズミを殺す農薬を入れた三平汁を三下たちに食わせる。きれいに全部を平らげてもみんなはなんともない。ひしゃくの底をなめただけで長吉には効く毒なのだが。「しまった。こいつら公害で胃袋に免疫ができちまった・・・」。
 突然、保健所らしき所員(桜井センリ、安田伸)が川きんの調理場を消毒。賭場をしきるヤクザの猪虎(谷村昌彦)の悪巧みだった。長吉は三下たちの仕業と誤解し、船に乗せて溺れさす計画を立てる。ちょうど長吉には金造からの休みも出た。無理やり、三下たちも同行させて海沿いでリゾート。
 海水浴場では、大学の水泳部の合宿で着ていた京子たちとも意気投合。沖合いで船からヒモで縛って三下たちを海へ放り込んだ。ところが、四人はお化けになって現れた。
 すっかり反省する長吉。ヤクザの親分も忠をだまして取ったバクチの金の抵当に店の権利書を得ていたが、これを返却。令子は洋食レストランの武(森次浩司)と交際中。
 再建される川きんで、慰留を問われた長吉は、令子のいない川きんじゃ仕方が無いとばかりに、中近東へ行って修業をと申し出る。そしてその際、三下たちを一緒に連れていきたいと申し出て許可される。
 川を下る船があった。長吉を後ろから出刃包丁で刺そうとする面々。

    映画川柳 「猛毒を 食べても食べても 効果なし」飛蜘

 この後、松竹のドリフターズ・シリーズは、第10作『舞妓はんだよ』、第11作『チョットだけよ』、第12作『大事件だよ』(荒井注最終作)、第13作『ザ・ドリフターズ 極楽はどこだ』(全員集合という言葉が無い)、第14作『超能力だよ』、第15作『カモだ!御用だ!』、第16作『正義だ!味方だ!』(瀬川昌治監督)と続く。東宝のドリフ映画はビデオが出ていない。
第10作 舞妓はんだよ全員集合!
 松竹のドリフターズの全員集合シリーズ第10作目。脚本は渡辺祐介と田坂啓。監督は渡辺祐介。主題歌はドリフの「ああ男ドリフ」と「新・祇園小唄」。
舞妓はんだよ全員集合  松田春翠が弁ずる無声の活動写真「新池田屋騒動」で始まる。この活動写真に出演している近藤勇以下、主役の何人かはドリフの面々だ。近藤はいかりや長介、桂小五郎が荒井注、西郷が高木ブー、月形半兵太が加藤茶、鞍馬天狗が仲本工事である。そして話題の本日の活劇は・・・「舞妓はんだよ全員集合!」。オープニングは絶好調。音楽は宮川泰。
 池田屋騒動から108年、京都の祇園、置き屋「いかり屋」の婿養子で、道楽に競馬の飲み屋をやり、新撰組近藤勇の末裔を名乗る近藤長介(いかりや長介)。女房の昌代(園佳也子)が愛想をつかして出て行くところでした。一緒に芸者(佐々木梨里、西岡慶子、市地洋子)も出て行ってしまったから、このままでは置き屋の看板を下ろさざるを得なくなってしまいます。向かいにある日本舞踊稽古場の注(荒井注)と競馬大学の学生(仲本工事、高木ブー)が家賃が払えず転がり込んできたものの、いま必要なのは女性。「スケ狩りだ!」などと意気込んではみても、成果はあがらず、バーで「嵐を呼ぶ女」を歌っていた“新幹線のお銀”(大信田礼子)に声をかけたところ、四条なわての橋の下に仲間から除名した女がいると聞いて早速アタック。飢え死にしかけているヒデ(加藤茶)に飯を食わせてみると、これがなんと男。仕方がないので、女装させてなんとか誤魔化すことにします。
 一方、浪花屋は吉良平(芦屋雁之助)に借りた借金の利息がふくらんで今や一千万円、返済できずに困っていました。息子の三吉(なべおさみ)には甲斐性がない。妹のひな子(吉沢京子)に言い寄る吉良平。ひな子は吉良平から逃げて家を出て行き場に困っているところを、長介たちに出会い、いかり屋でひな菊として芸者修行をすることになります。先輩芸者のヒデ丸は有頂天。ヒデを遠ざけたい長介はヒデを屋根裏部屋へ監禁してしまいますが、ヒデは天井の抜け穴から外に出ます。
 ひな菊がヒゲのある眉毛の太い絵描きさんが好みといえば、長介の虎鉄を売り払って(偽物なのでたった二百円)、変装してデートを楽しむヒデでした。すぐ長介にバレてしまいますが。
 観光バスのガイドで天地真理が「ふたりの日曜日」を歌って特別出演。ひな菊は幾松(光本幸子)から芸者のしつけを教わります。競馬場で百%的中と広告してノミ屋をやっているコースケとフータのところへ三吉(なべ)が翌日のレースで10万円を賭けたいと言って来ます。吉良平への借金で苦しむ三吉は、ランランとカンカンに賭けるといいますが、このレース、本命は全然別の馬。確実に勝ちを取ろうとヒデに命じて吹き矢を使い、馬に遅くなる薬を打ちますが、ヒデはどれが目的に馬か分からずデタラメに矢を打ってしまいます。その結果、ランランとカンカンが来て8000倍の大穴。一挙に800万円の借金ができてしまいます。
 吉良平はひな菊を見つけ、大親分の会長(伴淳三郎)への接待に出させようとしますが、幾松がひな菊を別の部屋へ誘導、ヒデが会長の相手をさせられますが、会長に女として扱われそうになったヒデは逃げ返ります。吉良平はいかり屋へ怒鳴り込み、会長にはヒデを、自分にはひな菊を身請けさせろ、それができれば借金を棒引きにしてもいいと言います。長介たちはヒデに性転換手術を施して女にしてしまおうと計画、専門の医者(石山健二郎)を呼びます。しばらくして、医者が手術を終えたと帰っていった後をのぞくと、女にされた医者がヒクヒクしていました。さっき帰っていった医者がヒデ?!
 翌日、宴会に出かける二人。会長はヒデを相手にご満悦、吉良平はひな菊を別の間に連れ出します。生贄にひな菊を差し出した行為を三吉らに批難され、ドリフの面々は全員芸者姿で宴会の席上に来て、会長から「グロテスクだが味がある」と評価されます。お座敷を祇園小唄を歌って場を盛り上げます。一方、吉良平はひな菊を手篭めにしようとします。そこへ救いに現れたのは幾松でした。加勢に駆けつけたのはお銀の一派。みんなを巻き込んでの大乱闘。
 芸者姿のまま、意気揚々と「男ドリフだ」を歌って引き揚げるドリフの面々。玄関を開くと、なかではひな菊や幾松、お銀たちが待ち構えていて祝賀会。そこへ女房の昌代が帰ってきます。置き屋は女手でやる、今度は夫が出ていく番だ、と。荷物をまとめて二条駅から去る長介を今度はきたえる役で他の4人が取り囲みます。長介が映画館のお客さんに向って一言、「半年後に元気なのはこの俺ですからね」
 芸者見習いの吉沢京子が愛くるしく、芸者姿のドリフの奇怪な姿が印象的な佳作。

    映画川柳 「《ひな子曰く》 初めから わかっていました 男だと」飛蜘
第11作 チョットだけよ全員集合!
 ドリフターズの全員集合シリーズ第11作目。脚本は渡辺祐介と田坂啓。監督は渡辺祐介。主題歌は「チョットだけヨ」。1973年8月公開、同時上映は浅丘ルリ子がマドンナの『男はつらいよ 寅次郎忘れな草』。
チョットだけよ全員集合 テレビの「こどもニュース」で下町のシュバィツァー博士の記事が流されます。藪井病院の医師が長介、助手が仲本、看護婦が高木で貧乏人からはお金をとらないものの、昼飯どきをねらって往診するという話題の病院が紹介されます。タイトル。
 さて、自転車の長介、酒屋のあやめ(小鹿ミキ)と衝突しそうになります。ホットパンツでキュートな姿に胸キュンの長介でした。あやめの兄ヒデオ(加藤茶)は交通事故に遭って包帯人間と化しています。実際にはまったくケガはしていません。店の手伝いもしないダメ息子に母親(都家かつ江)は愛想をつかしています。警官(加藤茶、二役)が事故の調書を取ろうとしますが、逃げ回ったヒデは藪井病院に回されてしまいます。結局ケガのないヒデはそのままそこで働くことになってしまいます。
 仁義なき戦いで逃げてきたという忠次(荒井注)が病院に来て、ひと騒動。組のお荷物になっていた忠次を引き受けて欲しいと黒木組の幹部・庄一(左とん平)に頼まれて忠次の面倒もみることになります。
 小学生に日本脳炎の予防接種が学校であります。天地真理が「恋する夏の日」を歌い、予防接種する医師役で特別出演。あやめは医師の五郎(寺尾聡)に恋しています。
 庄一(左)の父親・小原庄助(益田喜頓)が上京して出てきますが息子を勘当、具合が悪くなった庄助を介抱した後、ドリフの面々は治療と称して荒療治を仕掛け、有り金を支払わせます。院長の長介はその間、あやめにアタック、あやめが結婚相手は貧乏人を大事にするお医者さんと決めているというので長介はそれは自分のことだと勘違いしてしまいます。
 金を無くしてしまい、酒屋に寄った庄助にあやめは親切にします。文無しの老人を泊めてあげて朝食を提供するあやめ、庄助はすっかり感激して自分の故郷、会津若松へ付いてきて欲しいと頼みます。行ってみると小原庄助家は豪邸に住む億万長者、あやめを養女にしたいと申し出ます。婆や(花岡菊子)も賛成します。
 娘が億万長者の養女になると、兄貴もその親戚で金持ちになる、話を聞いたドリフの面々はヒデを若様と持ち上げます。イジメの意趣返しと目玉焼きにヘドロを入れられて下痢で大変な思いをしたことはすっかり忘れて、会津若松へみんなで付いていくのでした。
 一方、勘当された庄一は黒木会長(玉川良一)に相談、会長の女、紅子(桑原幸子)に頼んで庄助がお守り袋に入れて持っている実印を盗ませます。土地の権利書の相続手続きをしてしまおうと諮るのでした。
 黒木が小原家で権利書を示して帰った直後にドリフの面々が到着、庄助が一文なしになったことを聞いて、ヒデへの忠義立ての熱も一篇に冷めます。仲本のアイデアでまず旧黒木組の組員忠次が巫女(仲本)を連れて会長の体長不良を占わせます。巫女は「胃ガンで、あとひつ月の命、すぐに手術が必要、大先生がいる」、そこで長介が手術、途中で手術を中止すると脅して権利書を奪い返そうという作戦。舞台は会津若松がんセンター、医師たちや組員も見学するなか、ドリフの手術が始まります。腹を切るとサイコロが入っています。以前いかさまで使ったサイを飲み込んだのでした。途中、引っ掛けて落ちたテープレコーダーから音楽「タブー」が流れ、加藤茶がストリップ踊りを披露、当時の決めのギャグ「チョットだけよ、あんたも好きねェ」と言うシ-ンがあります。『誰かさんと誰かさんが全員集合!』にもあった手術台のギャグ、ウィンナ・ソーセージのつながった腸を取り出したあたりで脅すと、黒木はすぐに書類の返却を受けます。その言葉をテープレコーダーに録音してさて臓器を戻そうとしますがやりかたが分かりません。そこへあやめに連れてこられた学会に出席中の五郎、「あの人、外科の免許を持ってないんだ」。インチキ医師たちはそのまま逃走、続いての手術は五郎がやり直します。組員はドリフを追う。病院内を追いつ追われつコマ落とし。低温実験室に組員を誘い込んでなんとか逃げ切ります。庄一たち組員は冷凍されます。
 億万長者は無医村に病院を建設してくれるといいます。五郎と結婚する予定のあやめの養女話は消え、改心した庄一が後継ぎ候補に。そうすると、こんな無駄働きをしたもともとの原因は・・・ヒデは4名に追われます。必死に逃げるヒデと追う4人で、エンド。

    映画川柳 「神様の かたちは決まって 貧乏爺」飛蜘
第12作 大事件だよ全員集合!  脚本は渡邉祐介・田坂啓・森崎東の順なので、森崎さんの貢献度はそれほど大きくないのだろう。前半3分の1くらいは絶好調だった。
 戦争時の爆撃シーンや機銃掃射の場面に引き続いて自衛隊の実戦訓練。加藤茶「こわいヨ~脱走します」、部隊長の玉川良一「こらア!」と追っかけてくる。タイトルにドリフターズの歌う主題歌「燃ゆるドリフだ」が、かぶる。大事件だよ全員集合
 いかり探偵事務所に来たおばあさん(武智豊子)を「家出娘の捜索ね」と気の無い返事で受けているのは長吉(いかりや長介)。調査料500円を払わないというので、長吉はばあさんを「つんぼ!くそババア!」と追い返してしまう。事務員の直人(仲本工事)が「一ヶ月ぶりに来た客なのに」と残念がる。注文もしていないラーメン一杯の汁はお前にやると恩着せがましく約束する長吉。向かいのラーメン屋万来軒の店主(荒井注)とデブ(高木ブー)が付け9800円の回収にやって来るが、当然、金は無い。留守になった万来軒には乞食同然の加藤(加藤茶)が入って、調理中のチャーハンをかきこんでいた。
 長吉は実は自分はCIAの東京支部長だと告白し、スクラップ帳に貼っていた世界の大事件と関わっていた、もしお前たちが特命に反するならば裸にしてひき肉器械でミンチにしてしまうと脅す。巨大なひき肉器械にふんどし一丁の四人を入れ、ハンドルを回すと、ひき肉が出てくる(ただ器械から出てくる挽き肉のアップだが)、モンティ・パイソン風なグロテスクな場面がある。長吉は、外を通るチリ紙交換屋のトラックが言う「ボロくず」が「ボロきれ」に変わることが本部から殺しの指令が出た証拠だと解説してすっかり一同の信用を得てしまう。このチリ紙交換屋がドリフターズに加わる前の志村健。
 さっそく一同に調査の訓練を行う長吉、第一は「すれ違いざまに女の子のパンティの色を見分ける方法」や「食べるフリをしておいしい芝居をする」など、およそ奇妙な訓練ばかり。フランスの首相ド・ゴールを暗殺しようとしたジャッカルは自分のことだという時事ネタも入る。
 訓練を受けた四人は次に実践。荒井注と仲本は由利徹のバーへ、加藤茶と高木ブーは新婚さんの饅頭屋へ、素行調査の注文を取りに出向くが、ホステスの売春やら、夫の女遊びの調査を依頼されるわけがない。逆にネジこまれて立ち往生。
 芸者の桃太郎(中尾ミエ)から貢いでいた男に裏切られたと調査を依頼され、張り切る一同。相手は城北大学助教授地質学の黒木(藤村有弘)、学生に変装した一同はさっそく応援団に見抜かれて、構内からたたき出されそうになるが、危ういところを声をかけて救ってくれたのは、この大学の美人学生・坂本ミサヲ(松坂慶子)だった。
 アグネス・チャンが「小さな恋の物語」を歌う喫茶店で、黒木がミサヲを誘うが、彼女は郷里の高知から父親が出てくるからと断る。歌をきかずにうわの空のドリフに、アグネスは中国語で抗議する。長吉はCIAホンコン支局員との連絡だと誤魔化す。店を出た長吉は、スケの尾行は自分がやると引き受けてミサヲを尾行、黒木の尾行は四人に任せる。
 ミサヲは緑ヶ丘保育園から預かった園児を南風荘の自室に連れて行く。自室で待っていたのは、郷里の漁業組合長の父親(伴淳三郎)だった。園児は隣室の八代五郎(長谷川明男)の子供だった。新しい魚をぶら下げて帰宅した五郎には、なにか悪い仕事を依頼しようとする暴力団風のチンピラたち。
 チンピラと見えたのは、実は神埼サルベージ株式会社の社員だった。社長(山本麟一)は代議士の二宮と組んで足摺岬沖に石油コンビナートを建設する計画を進めていたのだ。組合長は二宮代議士にトイレットペーパー50巻を手土産に建設反対の陳情に来たのだった。代議士は陳情は聞いたものの、腹は既に決まっていた。コンビナート建設でもうけようというのだ。
 一方、水増しされた黒木の素行を聞いた桃太郎は、長吉が自分と心中を希望しているとドリフの面々に言われたので、お茶に青酸カリを入れて待っていた。なかなかお茶に口をつけない長吉だったが、とうとう飲ませることに成功、後を追ってお茶をあおる桃太郎。大変だ、医者だと大騒ぎになるなか、長吉はいち早く火葬場に運ばれてしまう。
 棺に納められ、火葬される長吉だったが、あわやのところで蘇生し、煙突から脱出する。
 やっと長吉の支配から脱出した四人は喜んでいるが、それも束の間、長吉が戻って来る。そこへ自衛隊の隊長が加藤を探しに来る。不名誉な脱走兵を出したことを秘密にしておいて、隊へ戻そうというのだ。ドリフの面々は、加藤が隠し持っていた手榴弾と実弾を目撃したり、隊長から国家の秘密という言葉を聞いたりして、加藤こそCIAの諜報員と錯覚してしまう。リーダーがいつのまにか、長吉から加藤へ移る。
 大学の研究室の川上助手(天地総子)に黒木は足摺岬に出かけたと聞いて、ミサヲ始め一同は足摺岬に乗り込む。黒木に色仕掛けで接近したミサヲは海底爆破計画書を盗み見て、神崎たちは海底にダイナマイトを仕掛けて爆破し、海底火山の爆発とみせかけて石油を採掘する計画、小さな漁港が沈んでも構わないという計画を進めている。その事実を父親に告げると漁民たちは一気に反発。ダイナマイトを仕掛けるために誘拐していた五郎の子供を取り返す。
 沖に出ていた船に乗り込んだドリフの面々は神崎たちの企みを阻止するのだった。
 面白いのはいかりや長介が生き返ってくるまで。その後、加藤茶がリーダーになった辺りから、かけ合いも少なくなり、リズムが悪くなって、急速に陳腐になってしまう。

    映画川柳 「世界じゅう 陰謀を成す 組織あり」飛蜘 
第13作 ザ・ドリフターズの極楽はどこだ

 1974年12月末の公開作だが、タイトルから全員集合の文字が消えた。脚本は渡邉祐介と下飯坂菊馬、監督は渡邉祐介、撮影が吉川憲一、音楽は木下忠司。同時上映は『男はつらいよ・寅次郎子守唄』。
極楽はどこだ 開巻早々、夜明けの東京、下町のボロ屋が集まっているなか、朝一番のラジオ放送が始まる。1軒の古い家の台所、ひとりの中年男が台所で野菜を切り、子供の弁当を作っている。女房に死なれて15年、男手ひとつで子供を育ててきたのだ。黒木長作(いかりや長介)である。こんな風に暗いムードで映画は始まる。この感じは通奏低音のように作品に流れ続ける。
 長作は城北花環製造会社の万年係長、息子は5回の大学受験に失敗した一作(加藤茶)と高校生の花子(沢田雅美)。会社には、なにわ節好きな社長(玉川良一)、大学出を鼻にかける部長(仲本工事)、万年平社員の丸太(高木ブー)、紅一点のせっちゃん等などがいる。
 一作は表向きは予備校生だが実際にはアマチュア・バンドのドラマー。結構、女子のファンもついているが父親はそのことを知らない。娘は図書館で勉強と称して放課後、私服に着替えて友達と遊び回っている。長作は、部長に連れられて行った開店したばかりの「スナック久美」のママ(篠ヒロ子)にひとめ惚れ。飲みたりないと、ルバング島での生き残り、戦友の赤垣源造こと源さん(佐野浅夫)の店に行く。
 一作はバンドの仕度金として百万円をお涙頂戴物語を作って、父親の退職金を前借する。一方,長作はスナックのママのために資金を用立てようとしていて、もくろみがふいになって怒る。ママは「二枚目の男はハートが無い」などと言っていると店の女の子(ホーン・ユキ)から聞いて、すっかり誤解してしまう長さんであった。
 戦中派の二人はしょっちゅう戦争を思い出して感慨にふけっている。二人はよく戦ったと回想しているが、実際には塹壕でふるえていたのだ。小野田少尉の話題が出てくるが小野田さんのインドネシアからの帰国は1974年3月だった。
 スナックのママにはやくざだった前夫がいるが、終盤近くにその夫がよりをもどしに来る。前夫とママの仲をとりもつのがママの弟・トオル(森田健作)である。
 源造は日本に帰って来たら妻は空襲で死亡、息子は生死不明だというが、後で実は息子はもう死んでいる、俺は息子のところへ行くと言って、睡眠薬をたくさん飲んで死んでしまう。彼は通帳と印鑑を長さんに遺していた。その貯金をママに届に行ったときに、もう要らなくなったこと、夫がいたことを聞き、愕然とする長さん。鉄道に寝たり、海岸で飛び降りたりするが自殺はできなかった。自分の家ではバンド、ザ・ドラゴンズ結成記念祝賀会が開かれており、戦中派にはどうにも行くところが無い。記念コンサートの切符を破り捨てたものの、息子の様子が気になり、会場をのぞいてブラック一作のドラムを聞く。会場を出ようとしたとき、娘と一緒になり二人で飲み明かす(あれれ?娘は高校生じゃなかったか・・・)。翌朝、冒頭と同じ朝いちばんのラジオ放送が始まる。台所で包丁の音、朝食のしたくをしているのは一作だった。起き出した長作、お前の味付けじゃダメだと小競り合い。そしてお互いをけなしあって、お互いの仕事をたいした仕事じゃない、俺にもできると長作は一作の着物を、一作は長作の着物を着て出かけようとするのだった。娘は二日酔いで、二人の様子にあきれている。
 バンドのリーダー・三郎として志村けんが出演しているが、あまり目立っていない。
 ゲストの挿入歌として、天地真理がスナックの開店祝いで「木枯らしの舗道」を歌い、長作と源造のイメージの中で南洋の歌手アン・ルイスが「フォーシーズン」を、最後のロックコンサートでキャンディーズが「なみだの季節」を歌う。

    映画川柳 「戦中派 つらい帰国の 小野田さん」飛蜘   

[参考文献]川本三郎 日本映画批評 キネマ旬報1974年1月より
 シミジミとさせる映画。時代おくれのオーバーを着込んだいかりや長介がくたびれきった中年男を演ずる。生きることも死ぬこともうまくいかず右往左往するいかりや。 
第14作 超能力だよ全員集合!  ドリフターズの全員集合シリーズ第14作目。脚本は渡辺祐介と田坂啓。監督は渡辺祐介。1974年8月公開、同時上映はマドンナが吉永小百合だった『男はつらいよ 寅次郎恋やつれ』でした。挿入歌はフィンガー5の「恋のアメリカン・フットボール」。荒井注が辞めた後なので志村けんが加わっていますが、テレビでの志村の過激なボケはまだ出ていません。ちなみに第12作が1973年12月公開の荒井注が最後の出演となった『大事件だよ全員集合!』です。
超能力だよ全員集合 東京は新宿の歌舞伎町で易者をやっている長さん(いかりや長介)、隣りの易者(玉川良一)は流行っているのに、お客はさっぱり。やっと、婆さん(武智豊子)が回されてきましたが、占いの口上を述べる長さんに「バカだね、公衆便所はどこ?」で、オープニング・タイトル。
 易者・長さんの前に現れた若者(加藤茶)は記憶喪失の自称詩人、その夢を書いたものだという詩を聞いた長さんは驚きます。自分の間借り先の焼き鳥屋夫婦(高木ブー、石井富子)のことや、向かいの仲本不動産(社長は仲本で社員が志村)のことが描写してあったからです。さてはこの男、超能力者! 部屋代を滞納して追い出されかかっている長さんはみんなの前で若者に予言させます。9時になると突然の雨で雷が鳴るというような予言、しばらくして9時になった瞬間に大雨です。停電でフライパンの上で何人かが転んでフライパンは曲がります。スプーン曲げならぬ曲がったフライパンと予言の的中に一同驚きますが、階下に降りたテツ(石井富子)に隣りの奥さんは「最近の天気予報はよく当たるわね」。住み着くことになった若者と
長さんの洗面器での殴り替えのギャグがあります。
 近所に大規模に易占室を営む雲山一斉(伴淳三郎)のビルがあります。
 さて、舞台は秋田市に変わり、病気で寝ている老人(沢村いき雄)と看病する老妻(原ひさ子)の傍で、お祈りを唱える新興宗教・めぐみ教の巫女(楠トシエ)、そしてマネージャー銀次(由利徹)。あきれ顔でいるのは娘しの(長山藍子)とその恋人・清(夏八木勲)です。この宗教一派はダルマ山の権利書をだまし取って転売して儲ける魂胆です。家族のひとりヒデオが行方不明だということが分かります。しのはヒデオは東京に行ったと推測します。
 記憶喪失のヒデオの身体にコードを付けて静電気利用の電気人間に仕立てた長さん、この仕掛けは大当たりで、宇宙人占い師はちょっと評判になります。客の要望で、明日の競馬の結果も予想させられます。久し振りに現金収入があった長さんはなじみの和風スナック・雪国へ行き、美人ママ・洋子(榊原るみ)に借金を払います。
 部屋代を支払わない長さんを無視して、新しい部屋の借り手となったのは冨山(南利明)と宮(ひろみどり)。けれども部屋があまりひどいので、話はツブレます。不動産屋の仲本が社員・志村を長さんのもとへ抗議に送ると、長さんは殴り返す。志村が双方にドツかれ殴られていったりきたりするギャグがあります。
 競馬の予想は大外れ、賭け金をふいにしたチンピラが長さんに仕返しに来ます。長さんは予言したヒデに当たり、二人はすっかりケガ人に。八百屋(谷村昌彦)で野菜を買ったヒデは「雪国」で働く洋子の妹で女子高生のサチコ(秋谷陽子)と会って、お金を都合してもらい、デートまでします。
 秋田ではしのがヒデを探しに上京する決断をしていました。大事な山の権利書と実印は持参して親友の洋子のもとへやって来ます。スナック・雪国に通っている長吉は、金満家の娘しのが探している弟の似顔絵を描いてみます。しかし、長吉の描いた絵は出来が悪く不採用、サチコの描いた絵をコピーしてあちらこちらに貼ることになります。絵はヒデそっくりなのに誰も気がつきません。肝心のしのはヒデとスレ違います。
 めぐみ教の教祖は雲山一斉。注文した焼き鳥を届けに来たヒデを見た銀次は、上京したしのが探しているヒデだと気が付きます。仲本不動産を買収してヒデの記憶が戻りそうになったら洗面器で殴る役目を言いつけます。しのは詩人志望だったヒデの立ち寄りそうなところを尋ね回ります。作詞家の安井かずみ、デイレクターの豊岡豊、作詞家なかにし礼など、本人出演。テレビのリハーサル室ではフィンガー5の「恋のアメリカン・フットボール」を収録中。
 尋ね人なら一斉がいいのではないかと洋子たちのアドバイス。一斉はしのの実家の様子や上京の目的を言い当てて、すっかり信用させます。ヒデには催眠術で一斉を父親と思わせ、弟が見つかったと自分が傘下の「キャバレー天国」へしのを招んで、権利書に印鑑を押させようとします。謝金を貰いに行ったのに殴られて追い出された仲本たちから真相を聞いたドリフやサチコは中国大奇術団に化けてキャバレーに出演。ヒデを実験台にノコギリ人体切断術のパフォーマンスも訳が分からないながらもこなします。しかし、正体がバレて大乱闘。上京してきた清も応援にかけつけます。そのさなか、頭に衝撃を受けたヒデは記憶を回復、同時に衝撃を受けた長さんは記憶を喪失します。
 騒ぎが一段落して、しのと清の秋田八幡神社での結婚式があり、インチキ宗教から解放された老夫婦あり、半端ものながら恋人ができたヒデの幸福あり、竿灯祭りありと、秋田は幸せムードですが、一方、東京の雪国では洋子が面倒を見ている長さんがスナックの掃除をしていました。出前に出た長さん、まだ記憶が戻っていません。観客に向って「誰か教えて下さい。わたしはいったい誰なんでしょう?」と問いかけて、おわり。

    映画川柳 「蘇る 記憶を封印 洗面器」飛蜘
第15作 ザ・ドリフターズのカモだ!!御用だ!!

 ドリフターズの全員集合第15作。監督は瀬川昌治。Amazonの中古ビデオもなく、未見でしたが、松竹ビデオで販売していました。2013年11月13日にやっと見ることができました。
 1975年8月2日公開、91分。脚本は加瀬高之・下飯坂菊馬・瀬川昌治、撮影:丸山恵司 美術:梅田千代夫、編集: 太田和夫、音楽:青山八郎。
 出演は倍賞美津子、キャンディーズ、伊東四朗、悠木千帆、園佳也子、ザ・ドリフターズ。宣材には、“今回は全14作を手がけてきた渡邊祐介監督から「旅行シリーズ」等の喜劇の鬼才瀬川昌治監督にバトンタッチされ、新たな全員集合シリーズが展開される。ウダツのあがらぬ長介刑事が五億円宝石強奪事件を追っていくうちに、チンピラヤクザ加藤茶が浮かびあがってきた。事件は狂いに狂って波乱の大騒動がもちあがる。”とあります。

 タイトル前からクレジット・タイトルにかけて、活躍する警官・長さんこと井狩長吉の姿が描かれるが、それはあくまでもテレビや映画の世界のこと。実際の姿はしがないヒラ刑事。警察では、妹・トミ子(悠木千帆)の夫、義弟の中西(仲本工事)の指示を受ける立場にある。後輩刑事に志村けん、課長に犬塚弘。刑事たちが張り込んで賭博に興じていた唐津(伊東四朗)たちを捕らえたものの、見張り役の加藤秀夫(加藤茶)を長さんは釈放してしまった。長さんが福島の炭鉱出身の秀夫の父親にそっくりだというのだ。
 義弟夫婦のスキヤキ・パーティからも追い出され、一杯飲み屋で飲む長さんは同じ戦災孤児出身でサーカス上がりの春代(園佳也子)に暴力団の取引の情報を聞く。
 ドリームランドでダイヤが受け渡されると聞いて張り込んだ警官たちだったが、気配を察知した神戸の脇村(橋本功)は、カバンを取り替えていた。カバンに取引になるようなものはなく、すっかり恥をかいてしまった警察だった。
 五億円相当のダイヤの入ったケースは運び屋の若い者が小用をたしているすきに秀夫にかっぱらわれてしまった。ダイヤの取引に困った秀夫は唐津のもとに話を持ち込む。唐津は宝石の買取ルートに昔、関係していた高井風太(高木ブー)を紹介、秀夫は警官・井狩を名乗って持ち込み先を聞き出す。
 秀夫が風太に接触したことを知った捜査課長は長さんを秀夫の観察につける。秀夫は田舎の姉・錦子が出てくると主張。いつもの嘘だと聞き流していた長さんは実際に錦子(倍賞美津子)が現れるのでどぎまぎする。一方、組織の郡司(人見きよし)や福山(豊岡豊)は宝石の鑑定士・関山(谷村昌彦)に訪れた唐津を拉致。秀夫の部屋を家捜ししたが、秀夫の腹巻に仕込んでいた宝石は無事。秀夫は組織に見張られることとなる。
 組織の監視に気づいた秀夫は長さんに自分を見張ってもらう。瀬川監督が話している落としたダイヤを拾うギャグはここの場面である。遂に、夜中にボートで脱出した秀夫だったが、やがて組織に囚われてしまった。結婚式場でもある大福会館で取引が始まろうと手はずが整えられていった。
 敵味方入り乱れて、コマ落としによるドタバタとケーキの投げ合いで大乱闘が引き起こされる。
 他にキャストはエミ(ビーバー)、早苗(マリヤ・エリザベス)、洋子(鶴間エリ)、ラストの大福会館での歌手(キャンディーズ)。

 瀬川昌治監督がインタビューに答えて、ドリフターズについて話しているウェブがある。
 “ドリフの方が、ドタをやりますよね。もっと跳ねるっていうか。クレージーはもっと上品っていうか。芝居そのものもね。長さんはあの後テレビでずうっとまともな役をやっていたけど、やっぱり素晴らしい役者でもあったんですよね。加藤茶もそうですね。加藤茶は、だけど、自分だけの主役っていうのはできないよね。いかりや長介さんの脇で突っ込みをやるとかね。『カモだ!!御用だ!!』のアパートのシーンで長さんと加藤茶が差し向かいで酒飲んで、こぼした水に混ざったダイヤを拾うっていうシーンがあるでしょう。あれはねえ、ぼくがそういう芝居をつけて、加藤茶がダイヤの入ってしまった長さんの水割りを密かに取って、彼のと変えようとするっていうところの間ね。あのふたり、さすがにねえ、凄い間ですよ。
 ─ドリフターズが全員で出られるシーンではいかりや氏が指示をだして行ったのですか。
 瀬川:ドリフが固まって何かやるっていうシーンは、長さんにだいたい任せてね。ほとんどそうです。あれはチームですからね。まあ、芝居はあんまりそうではないけれど、ギャグに関しては、自分で考えたやつをね。こっちも任せちゃってね。大概追っかけになるでしょう、これ。だから追っかけのところは、長さんいろいろ考えてよって言って。セットもそれに合わせてつくってもらって。
 『正義だ!味方だ!!全員集合!!』の後半で屋根を上がっては滑り落ちるって、あるでしょう。あれも長さんのアイデアで屋根のセットをつくって。あの映画でやっていることは、わりと彼らのやっているレパートリーの中にいろいろあるんですよ。
 ─それから、ドリフターズ第6の男、と云われた、すわ親治氏も両作に出演されていますね。
 瀬川:今は、劇団ザ・ニュースペーパーっていうのに入っているんですか〔すでに脱退〕。その前に俵山栄子っていう物真似をやる芸人がいるんですけど、これがぼくは好きなんで、結構俵山栄子の小さい舞台も観に行ったりして。その時に、彼女が奥さん役で、すわ親治くんがお父さん役で、結構面白い芝居をしているから、誰?って聞いたらすわ親治で、それで会っていろいろ話したら、ボーイの役で出てたっていうんでね。”
第16作 正義だ!味方だ!全員集合


  ドリフターズの全員集合第16作。これが映画版全員集合の最終作品。脚本は映画のタイトルでは加瀬高之・田波靖男・瀬川昌治、監督は全員集合シリーズでは、これと前作『カモだ!!御用だ!!』が、瀬川昌治。
正義だ!味方だ!全員集合! これで松竹の映画版の全員集合を全部見ました。この作品でも志村けんはヒデオ(加藤茶)の知り合いの派出所の巡査・志田という小さな役である。いちばんイキイキしているのは商店会の連合会長を演じているミヤコ蝶々で、そのほかにも加藤茶の母親役の園佳也子、『仁義なき戦い』の山守親分で笑いを取った金子信雄、ワルの狼こと大神役の伊東四朗といった人々が目立つ。

 横浜にほど近い港町・伊勢浜。この架空の町の港に降り立ったのはチンドン屋くずれの二人、いかり長太郎(いかりや長介)と中西(仲本工事)だった。二人は暴力団の大神組(潮健児ら)から立ち退きを要求されている高井印刷所の社長(高木ブー)を助ける。再開発に伴う立ち退きに反対する商店連合会の会長はミヤコ(ミヤコ蝶々)で、喫茶店で会合を開く連合会の面々の前で長太郎は新聞を作って暴力団の不当な仕打ちを暴いて世論を味方にしようと提案し、了承されたまではよかったが、勢いで編集長に推薦されてしまう。
 編集長になったものの、なんのアイデアも浮かばず困り果てているところで、出会ったのがヒデオ(加藤茶)だった。広島の母親・敏江に警察官になると言って上京していたものの、採用試験に落ち続け、合格したと母親にウソをついている青年。アパートの隣りのめぐみ(榊原るみ)の人形劇団を手伝っている。母親になんの成果もあげていないではないかと手紙で責められ、首吊り自殺を図ったところを長太郎たちに助けられた。半分もうろうとした状態で描いたゴリラ・キャラクターが活躍する劇画ゴリレンジャーは大評判となった。実は人形劇団が子供向けに上演している劇のストーリーを借りたものだった。不正を暴こうとした元新聞記者の小島(笑福亭鶴光)は大神により酔わされて海に放り込まれていた。
 第1号に続いて第2号といきたいところだが、正気に戻ったヒデには次のストーリーが出て来ない。洗面器で殴ってようやく話が少し進んだ。ゴリレンジャーを金儲けに使おうとする企みが許せないというヒデオ。しかし、週刊春秋の編集長・津川(財津一郎)から地上げと戦う町民と正義の味方というテーマで取り上げていきたいと申し出があり、劇画には一年間で一千万円の値がつく。
 広島からヒデオの母親(園佳也子)が出てくることになった。またまた自殺しかけたヒデオの苦境を救おうと知人・友人がヒデオのウソをサポートする。警官で妻が妊娠5ケ月、妻の父親は小学校の校長という設定。当初はうまくいっていたが、途中で週刊誌から派遣されたテレビ・スタッフが取材に来て、すべてが母親にバレてしまう。怒る母親に、あんたのプレッシャーがヒデオ君をおいつめたんだと反論する長太郎。
 別れ際に母親はヒデオに長太郎に意見されて人間に対する見方が広くなったと話し、死んだ気になったらなんでもできる、おまえの好きなように生きなさい、中途半端はいかんよと助言。中学の教頭までしているという女傑がいまさら人間認識が変わったというのも奇妙な設定だが、もっと変なのはこの後、聖人君子然としていたヒデオの性格が破綻して、長太郎と一緒に週刊誌からの契約前払い金を持ち逃げしようという計画に乗ってくることだ。取り分は七三にしろとまで要求する。そこまでヒデオの性格と行動を変えなくても話は成り立つと思うのだが。
 実はめぐみの父親は再開発予定地の地主でもある熊田商事の社長(金子信雄)。お手伝いさんの婆や(浦辺粂子)は社長の好物のカレーを作っていた。家出をしていためぐみが父親のもとへ帰ってきて開発中止を訴える。既にゴリレンジャーの物語のなかでも悪者の大グマを完全にワルにできなかっためぐみだった。
 一方、週間春秋から半年分500万円の小切手を受け取った三人、逃げようとすると商店会の連中がお礼に押し寄せて来ている。急に商店会に熊田のもとから土地を半永久的に貸してやろうという提案がなされたのだという。みんなが喜ぶお祝いの席上、ゴリレンジャーの話の続きを求められたヒデオは熊の和解工作に反発した狼がパンダを誘拐する話をする。不吉を感じた長太郎たちは逃げ出そうとする。タクシーで横浜駅に向う途中で、めぐみのアパートを見に行くと、大神たちにめぐみが拉致されたことが分かる。大神組は熊田社長とめぐみを拉致し、権利書を横取りしようとしていた。会の代表が倉庫に呼び出されて、権利書を奪われた後、簀巻きにされて海へ放り込まれようとしていた矢先、ゴリレンジャーに扮した三人が助けに現れる。衣装は取材のTV局が置いていったもの。ゴリレンジャー
 警官の志田も駆けつけてコマ落としの追跡劇が始まる。車で逃走しようとするので追跡に他のアベックの車を一部横取りしてツギハギして追いかけようとしたり、屋根伝いにめぐみを連れて逃げる大神たちを放水で滑らしたり。高圧電線に触れて電気人間になったゴリレンジャーに触れられて感電する大神たち。そのうち機動隊もやってきて倉庫の中でドタバタになり、とうとう犯人逮捕。前金として小切手で受け取ったの500万円はどうなったのかは触れられない。
 二十年後の正月、田舎の母親のもとへヒデオからの手紙。その後、金儲けに邁進、いまや教育事業で働いております、と。教育事業とは英語塾であった。事務長・長太郎の横暴に重役(仲本、加藤)や印刷会社社長(高木)、警官?(志村)は抗議している。アメリカ帰りの長男・長一郎に200万の月給は高すぎるという抗議に、事務長は塾が流行らないのは君たちの息子がいけないんだと主張。教室の様子をみると、加藤・仲本・志村の男児、高木・榊原の女児などの塾生に、先生の長一郎(長介)が教えている。TVの全員集合のコント「国語算数英語」のような展開だ。みんなで歌うのは「ドリフの英語塾」。

     映画川柳 「町民を ペンの力で 救えれば」飛蜘



東宝の「ドリフターズですよ」シリーズ


見た日と場所 作  品 
2009年4月7日



CS日本映画専門
ドリフターズですよ!前進・前進また前進




東宝・渡辺プロ
1967年
89分
 ビデオが発売されていない東宝のドリフターズ・シリーズが放映されました(1980年代にビデオが出たらしい)。2009年4月6日午前10時から放映。既に以前にも衛星放送で放映されたようです。脚本・松木ひろし、監督・和田嘉訓のシリーズ第一作。残念ながら、ギャグが不発で散漫な出来である。
 暴力団・黒汐組の解散式が行なわれている。代貸は小池朝雄。受付をしているのは組長の娘・里子(酒井和歌子)。ドリフターズの面々はアンテナ(いかりや長介)が兄貴分で他は下っ端。チョロ(加藤茶)は別に、解散の日に組に入れて欲しいと申し出てくるお調子もの。解散式場に乱入した茶を追い出そうとするドリフの面々と賄い場でのお握りの投げ合いなど子供だましの騒ぎがある。
 組が解散したのでドリフたちは色々な仕事につこうとする。映画のエキストラでは監督(なべおさみ)の指示に従わないし、靴磨きは神風組の銀(鈴木和夫)と鉄(広瀬正一)に因縁をつけられ、追い立てられてしまう。
 美女を社員に出張マッサージ業を営んでいるという赤スーツのチョロ(加藤茶)の口車に乗って、脚占い師(財津一郎)から5万円で借りた廃事務所を根城に「何でもコンサルタント業」を立ち上げてはみたものの、無節操な方針の会社に仕事の依頼はほとんど無い。チョロが取ってきた仕事、犬の散歩、子守り、借金取り撃退の泣き男なども金にならない。「俺を親分と呼べ」と威張っていたチョロも自分の事務所に警察の手が入って、無職になってしまう。そのうち、国会議員・大河内(藤田まこと)のフラッパー娘ミッコ(大原麗子)がまいこんで来て、自作自演で誘拐されたと偽り、父親から遊び金を取ろうと計画。否応なくつきあわされた形になったドリフの面々は考えもなく右往左往する。大河内は芸者との浮気を隠すために、アンテナを一時雇い、大河内の妻(浦島千賀子)・女中(武智豊子)にマージャンの集まりだと偽証させる。ミッコの狂言電話を盗み聞きした神風組の銀と鉄はミッコをさらってひともうけしようと企む。別に黒汐組のもと代貸・諸越(小池朝雄)は麻薬取引で金を受け取ると神風組の金(天本英世)を殺し、その死体入りのトランクをアンテナに押し付ける。ドリフの面々は神風組の事務所からミッコを救出する一方、死体の処理に困ってあれこれ誤魔化す方法を考えるものの、ことごとく失敗する。小荷物にして発送すると、あて先を間違えて戻って来る、山に埋めようとすると住民に勝手に穴を掘るなと怒鳴られる、建築途中のビルはスト決行中、駅のホームでは駅員に酔っ払いを置き去りにするなと注意される。病院の霊安室では火災訓練で出してしまう。ボートで領海を出て監視船に連れ戻される、道路工事を装うと水道管を破る。ようやく、やくざの喧嘩にからんで駆けつけた救急車に死体入りのトランクを押し込んでごまかす。
 チョロとヤッコ(松本めぐみ)は親元へ帰りたがらないミッコを袋詰めにして大河内に返す。アンテナも花屋に勤める里子に説得されて事情を説明に来るが、全員誘拐犯の容疑がかけられていて逮捕されそうになる。しかし、そこへ神風組の銀から身代金要求の電話が入り、嫌疑が晴れる。大河内は「何でもコンサルタント」事務所を改装開店、暴力団更正のPRに利用しようと計画する。開店祝いの席から、ドリフの五人は逃げ出すのだった。
 海辺の砂浜で「前進」音頭を歌う五人を追って女たちが来た。アンテナを囲むヤッコ、ミッコ、里子。狂喜するアンテナ、悔しがるチョロ、あきれるブー、チュー、コージ。これは夢かも。  タイガースがゴーゴー喫茶で「シーサイド・バウンド」「モナリザの微笑」を歌う。監禁所でのラジオからはタイガースの「僕のマリー」が流れてくる。
 この映画は、北杜夫原作『怪盗ジバコ』をメインに1967年10月に上映されて大ヒットした。

        映画川柳「赤スーツ 蝶ネクタイに  カンカン帽」飛蛛

 製作は渡辺晋・五明忠人、撮影・中井朝一、美術・竹中和雄、録音・吉沢昭一、照明・穏田紀一、整音・下永尚、音楽・山本直純、編集・藤井良平、製作担当者・島田武治、監督助手・小谷承靖。
ドリフターズですよ!盗って盗って盗りまくれ


東宝・渡辺プロ
1968年
 本作は松竹で『全員集合!シリーズ』を監督している渡邊祐介が監督と、脚本の一部を担当、そして本作はシリーズでは唯一、そして渡辺プロ映画では珍しい、傍系の東京映画が製作している。
 内容は、石川五右衛門の末裔・石川五六造(いかりや)の元に4名のコソ泥が現れ、五六造と共に立派な泥棒になるべく修行をし、後半では金塊強奪を図ろうとするものである。

 東京映画の『駅前シリーズ』のレギュラー・フランキー堺が助演、そしてドリフが「ザ・グレターズ」というグループ・サウンズ役で二役出演となる。
 原作:池田一朗
 脚本:渡邊祐介、東盛作 (森崎東のペンネームである)
 監督:渡邊祐介
 撮影:村井博
 音楽:宮川泰
 美術:加藤雅俊
 照明:今泉千仭
 録音:長岡憲治

石川五六造:いかりや長介
(ザ・ドリフターズ) マンホール:荒井注(同上)
ブウ太:高木ブー(同上)
メガネ:仲本工事(同上)
チョロ:加藤茶(同上)
ユキ:酒井和歌子
坂井:フランキー堺
孫五九:藤村有弘
林田:左とん平
サリー:木ノ実ナナ
メリー:小山ルミ
マリー:川村直樹
宋紅玉:水木梨恵
ピンク映画の監督:大屋満
ピンク映画の男優:須賀良
ピンク映画の女優:金子勝美
下着工場の婆さん:加藤欣子
狸山土左衛門:スマイリー小原
新婚の亭主:桜井センリ
新婚の妻:中原早苗
大牢の鍵役:佐々木久男
大牢の中座:松崎真
ザ・グレターズ:ザ・ドリフターズ(二役)
2009年4月8日




CS日本映画専門
ドリフターズですよ!冒険・冒険また冒険



東宝・渡辺プロ
1968年
84分
  2009年4月8日午前10時から放映。脚本・松木ひろし、監督・和田嘉訓。撮影など技術スタッフは『前進~』とは異なります。シリーズ第三作。撮影・内海正治、美術・育野重一、編集・岩下広一、照明・山口虎男など。1968年当時の時代風俗、大学紛争・街頭パフォーマンス・アングラ演劇・フーテンなどを盛り込んでいますが、表層的で、かなり皮肉な視点で取り上げられています。
 チョロ(加藤茶)は大学紛争を目撃、大学附属病院建設工事の現場から角材を盗んで、一本百円で学生に売り、さらに砂利を10個三百円で売るものの、機動隊との乱闘に巻き込まれ、学生と一緒に逮捕されてしまいます。工事現場で働いていた丸角(○□)組のチュー(荒井注)とブー(高木ブー)も砂利売りに荷担し逮捕、予備校生のコウジ(仲本工事)も工事現場の長アンテナ(いかりや長介)も、どさくさで逮捕されてしまいます。
 警察から釈放されるとアンテナは全学連の委員長に間違えられ、女子学生の出迎えを受けますが、他の四人は無職。チョロはみんなと相談して、金設けの算段にボディ・ペインティングのパフォーマンスを実施します。リズ(野川由美子)が裸OKと飛び入りしようとしますが、警察が来て逃走。次に、アングラ演劇でひと設けを企てます。女優募集のポスターを見る女性として酒井和歌子と内藤洋子が特別出演。女優に応募してきたのは真理アンヌと小山ルミ。これも、コント55号の飛び入りに見せ場をさらわれます。
 学生委員長を気取って演説していたアンテナも、暴力団に因縁をつけられた事件をきっかけにニセモノが露見して無為徒食に。アンテナはドリフの面々に風船旅行を提案します。八丁組の組長・宗月五郎(藤村有弘)のもとへ連れられる途中でリズが隠れ家へ合流。巨大気球の実験と風船作りに奔走するドリフ。海岸の波消しブロックに綱をかけたりするドリフと警備員(左とん平)のコマ落としのドタバタがあるが、無意味なアクションで、かなり無惨な印象がぬぐえません。よみうりランドの乗り物で飛行訓練をするドリフの面々。コーヒー・カップで飛行訓練というのもチープな感じです。ランニング・シャツの色は加藤茶は赤、注は白、工事は黄、ブーは青。長介はオレンジ色。
 リズから気球の話を聞いた宗月五郎は五億円の金の密輸をたくらみ、飛行計画にゴンドラを提供、底に砂金を仕込みます。一方、国会議員・大河内(藤田まこと)も売名でスポンサーを申し出ます。いよいよ出発の日、自衛隊の演習で爆撃が始まるなか、ゴンドラに大河内とリズとチョロを乗せて気球が飛び始めてしまいます。自動車で気球を追跡する八丁組とアンテナたち。組長は地雷に触れて爆発、瀕死で撃った銃弾がゴンドラと気球を繋ぐ綱を切り、ゴンドラは湖に落下します。  ラストは40年後。老人になったドリフたちは「冒険・冒険」と歌いながら、筏で湖の底をさらい続けて金を探しています。ちょうど半分をさらい終えたそうです。ラストの老人の歌は皮肉な響きがして、ここだけ怪作。

         映画川柳「若者の 純粋な夢 持ち上げる」飛蛛 
ドリフターズですよ!特訓特訓また特訓



東宝・渡辺プロ
1969年
 五人組は、ギャングの罪をかついで牢屋行き。一年後出所したが空気は冷たく、長吉は部下を道連れに自殺を決意し、断崖から自殺をこころみたが....。
 監督:渡辺祐介
 脚本:渡辺祐介、東盛作 (森崎東のペンネームである)
 音楽:森岡賢一郎

碇長吉:いかりや長介
加藤チョロ松:加藤茶
荒井忠助:荒井注
仲本空気:仲本工事
高木風太:高木ブー
碇テツ子:中原早苗
ママ:七重美也子
ピコ:菊田ゆか
螢子:山本陽子
しおり:川村真樹
あけみ:真湖道代
染子:原令子
乃木多介:有島一郎
三休:西村晃
山下三太郎:三木のり平
東郷:左とん平
熊沢:南利明
糞尿船の親父:内田裕也
裁判長:スマイリー小原
坂口先生:大坂志郎
2009年4月10日




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ドリフターズですよ!全員突撃





東宝・渡辺プロ
1969年
88分
 東宝のドリフターズ・シリーズ第五作にして最終作(1969年4月)。脚本・佐々木守によるナンセンス・アクション。和田嘉訓監督。
 冒頭から人魚の風子(梓みちよ)率いる赤黒のマントに身を包む女性ギャング団の銀行襲撃と、黒いスーツの自称ギャングのドリフターズ、血桜親分(スマイリー小原)率いる組(子分は左とん平・小松政夫)の取引き、三つ巴に追っかける警官集団。しかし、結局、ヤクはメリケン粉、紙幣はニセ金。騒ぎに便乗する孤児院出身の少女ピッピ(西崎緑)。なにかとつきまとって厄病神となるピッピをなんとか追い出そうとするサスケ(いかりや長介)ほかドリフの面々。風船をつけて飛ばしてしまおうなどというアイデアもあります。ゼロ戦(加藤茶)だけはピッピを守る役回り。コマ落としの追っかけは完全に無声喜劇映画のノリ。
 五人はピッピがハワイの富豪の孫娘で10万ドルの賞金がかかっていることが分かり、ピッピを連れてハワイへ飛ぶ。オバケ(荒井注)とフロク(高木ブー)は美女軍団に色仕掛けでだまされ、ピッピを横取りしようとする。

        映画川柳「ナンセンス ドリフターズの ミスセンス」飛蛛



シェイクスピア作品の映画化やその関連の映画は除く。
それらは別ファイルになっている。→ 『シェイクスピアの劇と映画


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