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 映画 日記    付録    池田 博明 


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鈴木清順 語る  1974年8月〜
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池田博明 作成  2010年2月28日
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 北海道文化放送UHBで、1974年8月3日を皮切りに、土曜日3時から、清順映画を特集。番組の最初に「映画とわたくし」と題する鈴木清順の話がある。

 (1)高峰三枝子 (8月3日 『俺たちの血が許さない』)

 私が映画界に入ったのは、終戦直後のことであります。撮影所に入って、一番ゆかいで心躍ったのは、もちろん女優さんたちをじかに見られることです。それも天下の美女です。当時、松竹には、高峰三枝子、宮城千賀子、木暮実千代、月丘夢路、津島恵子、岸恵子、芦川いづみさん等がおりました。私はよく先輩の助監督に言われました。君みたいな醜男が天下の美女と話せるのは撮影所に入ったおかげだぞ。私はとりたてて醜男でもなく、さりとて美男子でもありません。ちょうどいい位の顔をしています。高峰三枝子さんはよく言いました。今度も助監督さんは美男子はいないわねぇ、どうして助監督さんはこう醜男なんだろう。あこがれの高峰三枝子さんに言われると、私は一言もありません。ひたすら親をうらみ、申し訳ありませんと思うよりほか、ありませんでした。
 女優さんは、みんなたいしたものです。その頃の私の月給は二千円ぐらいで、平均賃金が6千円ぐらいでしたから、これでひと月がすごせるはずはありません。ところが、高峰さんと一緒に仕事をすると、その仕事が終ると、高峰さんは、私たちに酒代といって大体二千円位をくれました。お金をくれるから好きではありません。下世話のことばでいえば、惚れてましたから、高峰さんとはろくすっぽ口も聞けない位でした。
 私が日活に移って監督になった時、今度放映する『悪太郎』という映画に、高峰さんに出てもらいましたが、その時でさえ、どうにも恥ずかしく、こうしてくれああしてくれということも言えず、ただぼうっと高峰さんを見ておりました。

 (2)渡辺美佐子 (8月17日 『野獣の青春』)

 私は、私の映画が自分ひとりで出来上がったとは思っておりません。ひとつひとつの映画を考えてみても、キャメラマンや美術デザイナーなどのアイデアが寄り集まって出来上がったものと考えております。ですから、私たちスタッフも、よほどの事情がない限り、変わりません。キャメラマンでは永塚一栄、峰重義、美術では木村威夫といった人たちで、チームワークがうまくとれるのです。そういうところから、脇の俳優も大体同じ人が出て来ます。女優さんなら、渡辺美佐子さんや松尾嘉代、初井言栄さんといった連中です。こういうひとたちが、ひとつめのことを言えば十を知るといった連中なのです。
 『野獣の青春』で、渡辺美佐子さんが、ラストで川地民夫さんに顔をスダレのように刻まれるというシーンがありました。当時、売れっ子の渡辺さんは、このシーンをずいぶんいやがりましたが、私は強引に撮影してしまい、あとで渡辺さんに「恨みますよ」と言われ、気持が落ち着かなかったのですが、このシーンはあまりにも残酷ということで、映倫カットされてしまいました。ずっとあと、『木乃伊の恋』で渡辺さんと一緒に仕事をしたたとき、渡辺さんはその時でも、そのことを恨んでいましたから、映倫カットがなければ、こんなすばらしい女優さんが、テレビのこんな映画に出てくれないじゃないだろうかと、やれやれといった気持でした。

 (3)宮城千賀子 (8月31日 『悪太郎』)

 高峰さんは名の通り高嶺の花で、お酒を飲んだこともありませんが、一番多くお酒を飲んだのは宮城千賀子さんで、もなさんもご存知の様に、ざっくばらんな女で、しかもいい女。私は芝居なんかできないよ、芝居をさせたきゃ、新劇の女優さんを使えばいいんだ、と、ズケズケ言います。私も映画俳優は、芝居のうまいのを条件としません。スターはそのひとの持ち味、つまり雰囲気が出ればいいんです。その雰囲気が芝居以上の芝居をすることになるのです。
 石原裕次郎も高倉健も決して芝居はうまくありませんが、石原裕次郎や高倉健でなければならぬものがあります。それが彼らをスターにしているのです。
 さて、宮城千賀子さんの話に戻すと、この人では大笑いしたことがあります。というのは、『河内カルメン』では淫乱な女をやってもらいました。セックスの場面で、私がもっといい顔をしたらどうだと申しますと、あんた監督さんだろ、あんたやってみせて、そしたら私はそのとおりの顔をするからとゲラゲラ笑っていうのです。いくら監督でもそういう顔はできません。そういうことをあっけらかんにいう女優さんでした。
 
 (4) 以下略 [記録なし] (9月7日 『花と怒涛』)

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