映画 日記   (2001年3月28日から)     池田 博明 


2007年9月〜12月に見た 外 国 映 画 (洋画)
見た日と媒体 作  品        感  想     (池田博明)
2007年12月20日

DVD
刑事コロンボ
二枚のドガの絵

75分
 第6話の演出はTV界のベテラン、ハイ・アヴァーヴァック、結末のアイデアから書いた脚本はジャクソン・ギリスによるもの。美術評論家のデイル(ロス・マーティン)は叔父のマシューズを撃ち殺し、画家志望の娘(ロザンナ・ホフマン)を共犯にアリバイを偽装します。マシューズの絵画コレクションのうち、もっとも高価な二枚のドガの絵を持ち出させ、物盗りの仕業に見せかけて。捜査に来たコロンボは「(さほど評価の高くない)絵に最初に手をかけている犯人が急に価値のある絵に気付いたというのは奇妙だ」と指摘します。デイルがアリバイ作りのため、証人に時刻を刷り込ませようとしたことも不自然に響きます。離婚したものの絵画コレクションを相続するマシュ−ズ夫人にキム・ハンター。弁護士(ドン・アメチー)から「ピカソと看板の絵の区別もつかない女」と皮肉られています。
 犯人の指紋ではなく、コロンボの指紋が事件を解決する一篇。途中までムックで購入しましたが、二話ずつ全作揃いのDVDの方が圧倒的に格安でした。
   <推理と対決 刑事コロンボ研究>があります。
2007年12月14日

DVD
刑事コロンボ
ホリスター将軍のコレクション

75分
 第5話はジャック・スマイト監督作品。『動く標的』『殺しの接吻』など犯罪映画の演出で著名なスマイト監督のコロンボものはこれ1本。ホリスター将軍役はエディ・アルバート。ヨットの上からホリスター家の窓越しに銃撃を目撃するヘレン役にスザンヌ・プレシェット。彼女は33歳で離婚歴を持ち、各種のセラピーを試みている幸せ薄い女性。ホリスター将軍が彼女を食事に誘い、甘い言葉をかけると、あっけなく懐柔されてしまいます。スザンヌ・プレッシェットが自信なく生きている女性のかすかな喜怒哀楽を表情豊かに演じる。この作品の最大のみどころは彼女にあると言えます。最後に「どうして私が出会うのは悪い男ばかりなのかしら」と嘆く彼女にコロンボは「うちの姪は警官と再婚して6人の子持ちになった」と話して慰める。「刑事さんの姪なんて本当にいるの?」と彼女が切り返すと、コロンボは口ごもる。
 スザンヌ・プレシェットは2008年1月19日に心不全で逝去、享年70歳。
2007年11月23日

DVD
刑事コロンボ
指輪の爪あと

1971年
76分
 第4話はバーナード・L・コワルスキー監督作品、脚本レヴィンソン&リンク、脚本仕上げにスティーブン・ボチコも加わっています。コワルスキーはずっと後で数話を演出していますが、とても手堅く軽快な演出ぶりです。第1シーズンの第1話として『構想の死角』よりも前に撮影されていました。
 衝動的な殺人犯役のロバート・カルプが粋な探偵社社長を演じています。カルプは映画『殺人者にラブソングを』を監督しています。コロンボは、捜査協力を申し出た犯人にすべての手がかりを与えて、追い込んでいくやりかたをします。そして、最後には犯人相手に大胆な罠を仕掛けます。排気管にジャガイモをつっこんで自動車を故障させる方法や、コンタクト・レンズを使ったコロンボの罠。警官が犯人に罠を仕掛けるのは、過去も現在も禁じ手だろうと思いますが、無駄の無い一篇に仕上がっています。
2007年11月22日

DVD
刑事コロンボ
構想の死角

1971年
76分
 第3話はスピルバーグ監督作品、脚本スティーブン・ボチコ。NHK放送時は第7話でした。広角レンズを使い、カットを細かく割ってサスペンスを盛り上げます。音楽の入れ方・使い方も見事なもの。リンクやボチコなど、スタッフが最も高く評価したのがこのスピルバーグ演出作品。
 メルヴィル夫人ミステリの作家ケン(ジャック・キャシディ)はマネージャー役で一行も書いていませんでした。コンビ解消を提案されたケンは相棒のジム(マーティン・ミルナー)を殺すことにします。トリックは自分の別荘から相棒に電話させ、女房ジョアンナ(ローズマリー・フォーサイス)に事務所にいると信じさせた後で、撃ち殺し、殺人現場を偽装するもの。
 登場直後、コロンボはジョアンナのために卵を3個も割ってオムレツを作ろうとします。
 ケンは別荘の近所の食料店のリリー(バーバラ・コルビー)に、車に乗せたジムを目撃されてしまい、強請られます。仕方なくリリーを酔わせて殴り、溺死させます。第一の見事なトリックはジムの考案したもの、第二のお粗末な殺人があんたの考えた物語だとコロンボはケンに迫ります。ケン役のジャック・キャシディのニヤニヤした笑顔が、コロンボの些細な指摘(たとえばなぜ暗黒街の黒幕名簿を記した紙が折ってあるのか等)によって凍りつくのが印象的。スピルバーグの次作が出世作『激突!』でした。
2007年11月15日

DVD
刑事コロンボ
死者の身代金

1971年
 シリーズ化を前提に製作されたパイロット・フィルム。原案リチャード・レヴィンソンとウィリアム・リンク、脚本ディーン・ハーグローヴ、監督は『殺人処方箋』で定評を得たリチャード・アーヴィング。夫を殺害して遺棄した後で誘拐を偽装する妻レスリー(リー・グラント)。あまりにも冷静なレスリーにコロンボは疑惑を抱きます。チューリッヒの学校から娘マーガレット(パトリシア・マティック)が帰って来ました。娘は父を愛し、義母を憎んでいます。テレビで彼女が見ている映画はワイルダーの『深夜の告白』でした。保険金殺人を企む妻の映画です。
 コロンボは小さな疑問を発します。身代金を飛行機から落下させたのに空のバッグが発見されただけ、なぜ誘拐犯はそんなにも早く行動したのでしょうか、急いでいるはずの犯人が、バッグをわざわざ残したのはいったいなぜだろう、と。
 父親の死が判明した日のレスリーの態度から、マーガレットは父を殺した犯人に気づきます。しかし、証拠がありません。マーガレットは車のニセ・キーまで作って、レスリーを追い詰めようとしますが、コロンボにいさめられます。
 コロンボは考えた挙句、金が決め手になると判断し、マーガレットにひと芝居打ってもらいます。“良心が無い”レスリーは、誰もが自分と同じだと思い込み、隠した身代金の一部をマーガレットに年金として支払う要求を呑んでしまいます。
2007年11月4日

DVD
刑事コロンボ
殺人処方箋

1968年
 刑事コロンボの記念すべき第一作ですが、見ていませんでした。「バークにまかせろ」のジーン・バリーが医師を職業とする犯人役で出演。もとは舞台劇で、この時点ではまだシリーズ化は決定していなかったそうです。脚本リチャード・レヴィンソン、監督リチャード・アーヴィング。
 展開が意外にゆっくりです。絞殺したはずの妻が実は死んでおらず、病院で重態というところで、なにかひとつ波乱があっても良かったと思いますが、なにもありませんでした。共犯の女性へコロンボは正攻法で迫ります。先日全作揃いのDVDが通信販売されていましたが、10月下旬から隔月刊のムックで、旧シリーズ全45作品が発売されるようです。全作揃いのDVDの方が圧倒的に格安でした。
 解説本『刑事コロンボ レインコートの中のすべて』(角川書店、1999)を既に持っていましたが、すっかり忘れていました。 
2007年11月2日
22:10〜1:20
WOWOW
荊の城

2005年
BBC
3時間
 原作はサラ・ウォーターズ、監督エイスリング・ウォルシュ、脚本ピーター・ランスレイ、撮影サイモン・コソフ。原題のFingersmithはスリのこと。荊の城 本
 19世紀ヴィクトリア朝のロンドン。絞首台が見える貧民窟ラント街で育ったスウ(サリー・ホーキンス)はスーザン・スミスと名乗って、田舎の富豪の邸宅に娘モード(エレイン・キャシディ)のメイドとして務めることになる。それは貧民仲間のリヴァーズ(ルパート・エヴァンス)の遺産を奪う結婚詐欺の計画だった。前篇の最後にサプライズがある。スウの育ての親サクスビーにシェイクスピア劇の映画化で御馴染みの名脇役イメルダ・スタウントン。
 モードを秘書として育てる、「本に素手で触れてはならない」と叱責する叔父が異常な世界を予見させる。私が11月2日に放映・録画した本作を見たのは11月3日でした。見始めたら途中ではやめられず、一気に見てしまいました。ディケンズの世界を彷彿とさせるラント街の人々。
2007年10月9日

録画
ハリー・ポッターと炎のゴブレット

2005年
USA
 ハリー・ポッター第4作品。三大魔法学校の対抗試合が行われます。17歳未満の生徒は代表に選ばれないはずなのに、名前を登録する炎のゴブレットの中にはハリー・ポッターの名前が入っていました。4人めの挑戦者として14歳のハリーも選出されてしまいます。しかし、仲間はハリーが不正をして競技に参画したという疑問を持っています。ハリーは自分に仕掛けられた罠を解けないまま、競技に参加し、死力をつくして戦います。課題を通して次第に成長していくハリーら仲間の面々。
 ハリーが戦う目的がはっきりと理解できないため、共感を得にくい作品となってしまっていると思います。
2007年10月5日
DVD
昼下がりの情事

1957年
USA
 ビリー・ワイルダー監督が『麗しのサブリナ』の次にオードリーと組んだ作品で、名作の誉れが高いのですが、日本語タイトルの“情事”は語感が悪過ぎます。『昼下がりの恋』とか『恋のワルツ』にしておくほうが良かったのでは。
 フラナガン(ゲーリー・クーパー)は“ドン・ジョヴァンニ”でした。とすれば、恋に背伸びしているアドリアーヌ(オードリー)はジョヴァンニのカタログに載っている娘のひとり。彼女がチェロで練習している曲はハイドンの交響曲第88番とか。
 フラナガンを一途に恋するアドリアーヌの心情は不思議というしかありません。父親の事件簿を盗み読みして得た事例を、まるで自分自身の恋愛経験のように話すのも、恋を恋する女の特質だといえましょう。フラナガンがアドリアーヌと結婚してしまうというラストもそれまでの経緯からはなんだか納得がいかないし、ファンタジーとして見るべき作品のような気がします。 
2007年10月1日
DVD
ローマの休日

1953年
USA
118分
Roman Holiday DVD  『ローマの休日』製作50周年記念のデジタル・ニューマスターとして修復された映像です。1コマに400から500のホコリがついていたのを徹底的に除去してオリジナル映像を再現しています。『ローマの休日』は映画にとって役者やスタッフ(脚本ドルトン・トランボや衣装イーディス・ヘッド)がいかに大切かを教えてくれます。無名の新進女優だったオードリーのスタイルの新鮮さ、グレゴリー・ペックの真面目さ。製作・監督は20年ぶりのコメディとなったウィリアム・ワイラー。ヨーッロッパでロケーションすることは稀だった時代のローマでのロケ。白黒作品。
 「真実の口」の場面の手首を失う演技はグレゴリー・ペックのアイデアで、ワイラー監督と「オードリーの反応が楽しみだ」と言っていたという。本番ではオードリーは仰天してあの演技、1テイクだったと言う。
 王女の1日のアバンチュールを描いた作品。
2007年9月30日

DVD
天地創造


1966年
USA
175分
 コンピュータ・グラフィックによる特殊撮影ではなく、スペクタクル史劇を撮影していた時代がありました。そんな時代の超大作が『天地創造 The Bible in the Biggining』。黛敏郎が音楽監督に起用されたことも話題になりました。
 製作はイタリアのディノ・デ・ラウレンティス、監督はジョン・ヒューストン。
 エピソードは「天地創造」「アダムとイヴ」「カインとアベル」「ノアの箱舟」「バベルの塔」「ソドムとゴモラ」「アブラハムとイサクの試練」。当時の倫理観から全裸のアダムとイヴの場面が人体にほとんど照明を当てない撮影で暗い画面が多いのは仕方がないとしても、他の場面でも暗い画面が多くて、まるで何も映っていないように見えるのには驚きました。聖書を絵解きしているため、聖書に造詣が深ければ、映像の深読みも可能なのでしょうが、私には退屈な作品でした。
 この作品と一緒に『十戒』も購入したので、史劇に関心があると思われ、SUMIYAの店長さんから『グラディエーター』を薦められました。リドリー・スコット監督の『グラディエーター』は中古ビデオで持っていますがまだ見ていませんでした。なお、店長によりますと、発売されたばかりの『スリーハンドレッド』のDVDは一日に十枚を売り上げる勢いだそうです。
2007年9月16日

DVD
深夜復讐便

1949年
USA
94分
 ジュールス・ダッシン監督、原作・脚本はアルドリッチ監督『キッスで殺せ』のA.I.ベゼリデス。原題は Thieves' Highway。日本未公開作品。
 洋行から久しぶりに実家へ帰宅したニック(リチャード・コンテ)は父親が脚を失ったことを知り、愕然とします。婚約者のポリー(バーバラ・ローレンス)との再会も束の間、父親がトラックを売ったエド(ミラード・ミッチェル)と交渉、トラックを取り返そうとしますが、エドの言い分、リンゴで一儲けしてからを聞き入れます。リンゴ農家から仕入れたリンゴをトラック2台に積み込んで、サンフランシスコへ爆走。先に着いたニックは、父の仇、青果商フィグリア(リー・J・コッブ)にリンゴを売り込もうとします。フィゲリアはニックのトラックのタイヤを切り、店の前に留め置いて、ニックが娼婦の部屋にいる間に、リンゴを勝手にさばいてしまいます。深夜復讐便
 娼婦リカ(ヴァレンティナ・コルテーゼ)は50ドルでフィゲリアに雇われた身でしたが、ニックが事故でケガをしているのを知って、ニックの味方につきます。
 いったんはフィゲリアからリンゴの売上げ3900ドルを支払わせたニックでしたが、フィゲリアの雇った二人組の強盗に急襲され、財布を奪われてしまいます。
 一方、エドのトラックはシャフトが折れて横転し、炎上してしまいます。復讐を誓ったニックはエドのリンゴを拾いに出かけたフィゲリアを追います。
 20世紀フォックス、スタジオ・クラシックスのひとつ。イタリア系の出演者で作られた暴力が支配する“トラック野郎”の世界を描いた白黒の異色作品。
2007年9月15日

DVD
マイ・フェア・レディ

1964年
USA
173分
 原作はバーナード・ショーの戯曲『ピグマリオン』。脚本・作詞はアラン・J・ラーナー、作曲はフレデリック・ロウ。「運がよけりゃ」「踊りあかそう」などのヒット曲で有名なブロードウェイ・ミュージカル。舞台版のイライザはジュリー・アンドリュースだったが、製作のワーナーはジュリー・アンドリュースではアピール不足と、有名女優の起用を画策。最終的にオードリーに決定。
 花売り娘イライザ(オードリー・ヘップバーン)は、話し方例を収集していたヒギンズ教授(レックス・ハリソ)と出会います。品の無い訛りと話し方を替えて半年でレディにしてみせると豪語した教授のもとをイライザが訪れます。教授は母音の発音を直して話し方を教育する実験にとりかかります。教授はピカリング大佐と成否を賭けます。
 初めての社交の場アスコット競馬場では育ちの悪い言葉が出てしまいましたが、舞踏会では大成功。賭けに勝ったと自分そっちのけで喜ぶ教授に怒って、イライザは家を出ます。
 しかし、生まれ故郷の町では誰もレディになったイライザが分りません。飲んだくれの父親も俄か金満家になっていました。教授はイライザを探します。
 オードリーの吹替えはマーニ・ニクソン。特訓して臨んだオードリー自身の歌も2曲「Wouldn't it Be Lovely」「Show me」が残っています。
2007年9月11日

DVD
大アマゾンの半魚人

1954年
USA
79分
 ユニバーサル映画のモンスター・シリーズの第3弾としてウィリアム・アランドが製作。監督ジャック・アーノルド。白黒作品。
 アマゾンの奥地で水かきのついた手の化石が発見されます。 海洋生物研究所所長のマイア・ウィリアムズ博士(リチャード・デニング)と魚類学者のディヴィッド・リード博士(リチャード・カールソン)、所長助手のケイ・ローレンス(ジュリー・アダムス)が調査に向かいますが、キャンプの留守をあずかる現地人二人の無残な死体が発見されます。一行は黒い入江(ブラック・ラグーン、原題 Creature from Black Lagoon)を潜水調査します。半魚人の体が現われるのは映画開始24分後。映画批評家トム・ウィーバーの解説あり。 
 フロリダで撮影された水中シーンの役者はすべて代役。水着美人と評判になったジュリー・アダムズも代役で、水中では人魚ショーに出演していたジンジャーでした。着ぐるみで見事な泳ぎを見せる半魚人役は海兵隊上がりの大学生リコー・ブラウニングだそうです。 2013年ユニバーサル100周年記念ボックス・BDにも本作は収録されました。
2007年9月8日

DVD
ドリームガールズ

2006年
USA
ドリームワークス

130分
 日本公開は2007年。60年代・70年代風のR&Bやディスコサウンド満載のミュージカル。脚本・監督ビル・コンドン、音楽ヘンリー・クリーガー、歌詞トム・アイン。1981年12月20日に初演されたブロードウェイの演出・振付はマイケル・ベネット。ベネットはボブ・フォッシーと双璧だった。映画の振り付けはファティマ・ロビンソン、共同振付アーコモン・“AJ”・ジョーンズ、振付アシスタントはエボニ・ニコルズ、振付補ジョーイ・ビジー、各人のアイデアが生かされたという。初出演だったエフィ役のジェニファーにはジョーイが張り付いて振付の手ほどきをした。
 撮影監督トビアス・シュリッスラー。時代に忠実な舞台照明を使った照明デザイナーはペギー・アイゼンハワーとジュールス・フィッシャー。
 編集バージニア・カッツは、録音済みの音楽に合わせて、ショットをデジタル編集していった。
 物語はR&Bとソウルのモータウン・レーベルのダイアナ・ロスとスプリームスがモデル。
 デトロイト劇場との一ヶ月の契約を結ぶタレント・コンテストが開かれている。舞台裏では人気歌手ジミー(エディ・マーフィ)のバック・コーラスがコンテスト後の舞台での共演を拒否していた。ジミーがコーラスの女性に手を出したのが原因だった。一方、遅刻してコンテストの最後に出場したドリーメッツの3人はパワフルな歌唱で客一番の声援を受けた。自動車販売員だが、音楽事務所を持つカーティス(ジェイミー・フォックス)は「ドリーメッツを勝たせるな」と50ドルで審査員を買収、一位は別人へ。気落ちする3人にカーティスはジミーのバック・コーラスを薦める。舞台照明デザイナーのペギーは、当時の舞台コンテスト時の照明係は一人でパターン化されていたという。ブルースの演奏には青い照明、別グループには赤い照明とか。
 パンチのある歌声をもつエフィ(公募された新人ジェニファー・ハドソン。この役でアカデミー助演女優賞)はバック・コーラスなど添え物に過ぎないと断るが、カーティスが自分を信用しろと請合うので、話に乗ることになる。他の二人、ディーナ(歌って踊れる歌姫ビヨンセ・ノウルズ)とローレル(ブロードウェイで活躍中のアニカ・ノニ・ローズ)はチャンスに夢見心地。衣装デザインのシャレン・ディビスは観客の感情移入に衣装が重要で、音楽や登場人物の状況や内面の変化に合わせて衣装をデザインしたと証言している。例えば、ステージ・テスト時のドリーメッツは開放的な広がるスカートだが、ジミーのバック・コーラスでは次第に女性的な衣装へと替えていった等。
 ジミーはコーラス女に手をつける悪い癖があり、ローレルを誘惑する。エフィーの兄でドリーメッツの作曲家C.C.(キース・ロビンソン)の歌「キャデラック」が黒人局のR&Bチャートでヒットするも束の間、白人のグループがカバー・レコードを出す。カーティスは車で儲けた金で白人局のDJを買収し、ジミーの曲をかけさせて、「Steppin' to the bad side」などのヒットを作り出す。ジミーの永年のマネージャーだったマーティ(ダニー・グローヴァー)が去った後、カーティスはさらに路線を白人向けに変更する。
 しかし、マイアミでの舞台では、ジミーがソウルフルな歌唱で客をシラケさせてしまう。カーティスはジミーを首にして、三人の女性シンガーで売り出す。その際に、リード・ヴォーカルをエフィからディーナに変更する決定をする。TV映えはディーナが一番だし、エフィの声にはパワーがありすぎるのだった。「We are a family」と皆はエフィを説得、三人の曲は「Dream girls」(監督ビルがあるミュージカルにオマージュを捧げたいと星一杯のステージにした)がヒットし、リードのディーナがもっとも注目を浴びる。売れれば売れるほどエフィには不満が溜まっていった。とうとう「Heavy,Heavy」のテレビ収録でエフィは切れてしまい、途中で降板する。
 大晦日のショーのリハーサルの場にエフィは現われたが、既にカーティスはエフィの代役ミシェル(シャロン・リール)を雇っていた。絶望したエフィはカーティスへの愛を「And I am telling you I'm not going」を歌う。
 ドリームズは大成功、ディーナはカーティス夫人となり、カーティスは映画『クレオパトラ』を企画する。一方、エフィは職もなく、生まれた女の子を育てていた。時代はディスコ音楽全盛でソウルは行きづまり、路線変更に悩んだジミーはヘロイン中毒で死亡する。
 C.C.はカーティスと袂を分かち、エフィのために書いた曲「One night only」でエフィの再起を賭ける。「One night only」のエフィの衣装はアレサ・フランクリン風、ヘアバンドはバーブラ・ストライザンドのイメージ(衣装デザイナーのシャレンの証言)。カーティスは同じ曲をディスコ風に編曲してドリームズに歌わせ、エフィのレコードをつぶしにかかる。「One night only」のドリームズのディーナの髪形はダイアナ・ロス風(シャレンの証言)。
 カーティスはディーナが勝手に進めた映画の話を拒否、「声が個性的でなく深みがない」からリード・ヴォーカルに選んだ、「君は俺が作る」と断言。ディーナは「Listen」(映画のオリジナル曲)で貴方には私が分っていないと訴える。エフィのレコードを妨害した罪状だけでなく、裏工作の実態を突きつけてマーティやC.C.がカーティスを責める。裁判は双方に利点が無いため和解交渉に入り、以後エフィの妨害はしないことが約束される。カーティスの罪状の告発資料をエフィ側に提供したディーナはカーティスと別れ、ドリームズは解散コンサートを開く。
 解散コンサートの最後にディーナは「ドリームズは4人だった」とエフィを舞台で紹介し、「Dream girls」を歌う。客席に来ているエフィの子供にカーティスは気づく、自分の子供だと。 

 単なる印象批評ばかりが多いなかで、前田有一氏の「超映画批評」は有意義でした。
 引用しましょう。“モータウンとは、ブラックミュージックを中心としたレコード会社の名前。本作で描かれるように、デトロイトのいち零細企業として始まり、瞬く間に全米を風靡したことで知られる。とくに60〜70年代の彼らは、音楽史の中ではそれまでのメッセージ性の強い黒人音楽を、白人その他に広く受け入れられるようなポップなものへと変化させたと評価される。
 なぜここでそんな事を書くかというと、このバックグラウンドを理解していないと『ドリームガールズ』のストーリーを大きく誤解する可能性があるからだ。 たとえば何も予備知識がない人がこれを見ると、重要人物のエフィーについて、やたらとまわりに反発するワガママ放題のバカ女に見えてしまうかもしれない。カーティスが冷静で論理的な、すこぶる優秀なビジネスマンなのに対し、やりたい音楽がどうだのとくだらない事を主張して困らせるアーティストたち、という構図に見えてしまうに違いない。作曲家もディーナも全員がそう見えるはずだ。
 しかし、デトロイトが米国の中でも黒人の比率が多く(その原因も映画の中で実はチラと描かれている)、貧富の差も激しい都市という点を考慮すると、また違って見えてくる。ここで苦労しながら育ったドリームガールズやスタッフ、中でもエフィーにとって、カーティスのやり方は金持ちの白人たちに媚びているようにしか見えず、許しがたかったのだ。
 同時に、カーティスがなぜあんな卑怯な手段を使ってまで営業したのかも、この街から黒人未踏の道を切り開かねばならなかった彼の立場を想像すれば理解できるはず。
 残念なことに、映画『ドリームガールズ』はそうした点について説明不足で、英語の苦手な日本人にとってはよほどの想像力を働かせないとわかりにくい。米国では受けても、日本では受けにくいタイプの作品だ。ビヨンセやジェニファー・ハドソンの物凄い歌に圧倒され、大喜びする人も多かろうが、決してそれだけがこの映画の魅力というわけではない。・・・ まとめると『ドリームガールズ』はモータウンと当時の米国について多少の予備知識がある方向け(フローレンス・バラードの名を知っているとなお良し)、その中でもミュージカル映画に抵抗のない人がみれば、きっと楽しめる。これが舞台ミュージカルであればまた違ってくるが、日本人が見る外国映画として評価すると点数は60点というところか。”
 フローレンス・バラードはエフィのモデルになった歌手。
2007年9月8日

DVD
或る殺人

1959年
USA
160分
 製作・監督オットー・プレミンジャー、音楽デューク・エリントン、撮影サム・リーヴィットの白黒のコロンビア映画。タイトル・アニメはソール・バス。和田誠のアニメが似ていますね。或る殺人
 原題は「Anatomy of A Murder(殺人の解剖学)」。夜、釣りから帰宅した弁護士ポール・ビーグラー(ジェイムズ・スチュアート)のもとに依頼が一件入っていました。ローラ(リー・レミック)を暴行した男クウィルを夫マニオン(ベン・ギャザラ)が射殺してしまった事件の弁護です。アル中の友人パーネル(アーサー・オコンネル)はマニオン事件を引き受けるよう助言する。事務所の助手のメイダ(イヴ・アーデン)には給料が払えず、タイプライターを替える金も無い。
 妻と夫の双方から事情を聴取。妻は自分の肉体的魅力を誇示するタイプで、夫は嫉妬深く、何を考えているのかが分らないタイプ。暴行事件なので下着の名称や性的な用語が発言されます。後半は法廷劇。臨時の判事(ジョセフ・N・ウェルシュ)のもと、検事側、ミッチ検事とクロード・ダンサー(ジョージ・C・スコット)検事の二人と、弁護士の一進一退の攻防が続きます。パーネルの調査で、事件現場のホテルの支配人メアリー・ピラント(キャサリン・グラント)がクウィルの娘であることが分り、弁護士は証人要請しますが、父親がレイプ犯だったことの証明などに応じてくれるわけがありません。万事窮す・・・。“抗し難い衝動”による殺人が無罪を勝ち取れるかが焦点です。
 反骨の監督プレミンジャーの名作。  
2007年9月3日

DVD
カルメン

1954年
USA
105分
 ビゼーの歌劇『カルメン』をオスカー・ハマースタイン2世がミュージカル『カルメン・ジョーンズ』に翻案。オットー・プレミンジャー監督がオール黒人キャストで映画化したカラー作品。
 カルメン(ドロシー・ダンドリッジ)は奔放な女で、自分に関心を示さない伍長ジョー(ハリー・ベラフォンテ)を護送途中に誘惑する。
 囚人を逃走させた罪でジョーは服役。カルメンが忘れられない。カルメンはビリー・パスターの店に現われ、闘牛士の代わりはボクサーのハスキー・ミラー(ジョー・アダムズ)。ミラーはカルメンをシカゴに連れて来いとマネージャーに命じる。ミラーのマネージャーや友人フランキー(パール・ベイリー)等と歌う「シカゴへ行こう」(上の写真)。カルメンは「自分は恋愛中で行けない」と断る。そこへ、ジョーが刑期を終えてカルメンに会いに来る。飛行学校に行くというジョーをカルメンは一緒にシカゴに行こうと誘う。伍長ジョーを見下し、カルメンを誘う軍曹をジョーは殴り倒してしまい、二人は逃げる。
 電車が通ると揺れる部屋で貧乏生活の二人。カルメンはハスキーの誘惑を断ったのだが、嫉妬深いジョーはカルメンを疑う。鎖に繋がれるのを嫌うカルメンはジョーと別れる決心をする。
 MPがジョーを追う。カルメンは死神のカード、スペードの9で自分の運命を予見する。ハスキーがチャンピオンになった夜、ジョーは物置へカルメンを連れ込み、二人でやり直そうと懇願するのだった。しかし、カルメンは断る。思い余ってジョーはいとしいカルメンを絞殺。MPがやって来る。 
2007年9月1日

DVD
ローラ殺人事件

1944年
USA
109分
 日本公開は1947年。原作はヴェラ・キャスパリーの推理小説『ローラ』(1943年)。監督プレミンジャーが映画化を企画、20世紀フォックス社に売り込みますが、重役ダリル・F・ザナックはプレミンジャーと仲が悪く、監督しないという条件で映画の製作を承認しました。脚本ジェイ・ドラットラー、サミュエル・ホッフェンスタイン、ベティ・ラインハート。白黒作品。
 ザナックは撮影開始18日後にルーベン・マムーリアン監督を解雇、ジョセフ・ラシェルを撮影監督に起用してプレミンジャーに演出を担当させます。プレミンジャーは会話を多用、登場人物を引きの画面で丹念に描きました。照明に凝り、流れるようなカメラワークを要求し、テストも多く、役者は待ち時間が長くて不満だったそうです。しかし、映画は絶賛され、興行的にも成功。ディヴィッド・ラクシン作曲のローラの主題は“ミステリー仕立てのラブストーリー”という雰囲気を高め、大ヒット。プレミンジャー作品では本作品がフレンチ兄弟の『カルト映画』に選出されています。Laura
 コラムニストのウォルド(クリフトン・ウェッブ)の語りで物語の幕が開きます。散弾で顔を撃たれて殺害されたローラ殺人事件を担当するニューヨーク市警の敏腕警部補マーク(ダナ・アンドリュース)は、豪華な部屋で浴槽につかり、タイプライターをたたくウォルドと対面します。気位が高く冷笑的なウォルドはローラ(ジーン・ティアニー)とのなれ初めを語ります。ローラは最近、遊び人のシェルビー(ヴィンセント・プライス)との結婚を考えていました。ウォルドはシェルビーが金に困っていることを暴きます。シェルビーに理解を示すローラの叔母アン(ジュディス・アンダーソン、『レベッカ』に出演)もいるのですが。
 マークは容疑者たちを尋問しますが、偽証の為に捜査は混乱。動機を追うにつれて、マークは肖像画の彼女に恋するようになります。突然、ローラが自分の部屋に戻って来て、事件の展開が変わってきます。
 ジーン・ティアニーは実生活では、風疹のため知的障害のある娘を出産した後で、傷心の身の上でした。ふとした陰のある表情、凛々しく気丈な表情、いきいきした明るい表情と、色々な美しさを見せます。
 第17回アカデミー賞では監督賞、助演男優賞(ウェッブ)、脚色賞、白黒撮影賞、白黒室内装置賞の5部門にノミネートされ、撮影賞を受賞しました。
 20世紀フォックス・スタジオ・クラシックスのDVDには音楽のラクシンとウェズリアン大学映画学科長ジニーン・ベイシンガーによる音声解説と映画史研究家ルディ・ベルマーの音声解説が付されています。また特典として本作品の解説『異常な愛の物語』、『ジーン・ティアニー 砕け散った肖像』、『ヴィンセント・プライス 多彩な悪役』が見られます。

2007年9月〜12月に見た 日 本 映 画 (邦画)
見た日と媒体 作 品        感  想     (池田博明)
2007年12月8日

テレビ朝日
21:00〜23:21
半落ち

土曜ワイド劇場

120分
 横山秀夫原作で映画にもなった作品のテレビ化、脚色は佐伯俊道、演出は土方政人。土曜ワイド劇場30周年特別企画。
 現役の警官、それも警察学校の梶(渡瀬恒彦)がアルツハイマー病の妻(風吹ジュン)に懇願されて扼殺したと自首して来ます。しかし、妻を殺した後の空白の二日間について彼は何も話そうとしません。ポケット内のティッシュからは彼が歌舞伎町に行ったという疑念が生じますし、新幹線の上りホームで目撃されていました。記者たちは県警本部がなにか都合の悪いことを隠そうとしているのではないかと追求し始めます。嘱託殺人の翌日は自殺をしようと彷徨していたという梶の自白は県警の誘導による作為的なものだと検察官(高嶋政伸)は喝破します。尋問する志木(椎名桔平)は真実でない記録になった自白調書を破り捨て、解任されてしまいます。志木自身は自宅で認知症の元警官の父(竜雷太)を抱えていました。妻(森口搖子)が父を受け止めていました。葬儀の後で、志木は梶の妻の姉(銀粉蝶)から骨髄性白血病で亡くなった子供のために、夫婦そろって骨髄バンクにドナー登録していたという事実を聞きます。そして、梶には適合者が現われたことも。梶は「生き恥をさらしても後一年は生きないと」と言っていました。その理由が分ってきます。
 12月27日にTBSでは映画版が放映されます。 
2007年11月25日

録画
長い長い殺人

ドラマW

145分
 原作は宮部みゆき、脚本は友澤晃一、監督は麻生学。WOWOW製作のドラマWの一篇。11月4日(日)WOWOWで夜10時より放送。
 財布の持ち主の物語を財布が語る趣向のミステリー。財布が変わるごとに登場人物も変わるのですが、次第にそれらの人物に関係が出て来て予想外の展開を見せます。脚本もキャストも演出も巧みに出来ていて、引き込まれました。妻を亡くした探偵(仲村トオル)が登場する後半から複数の線がつながっていきます。人心を扱うのに長けた悪の人間像がよく描かれています。
2007年11月24日

WOWOW
0:10〜2:00
結婚詐欺師

ドラマW
110分
 原作は乃南アサ、監督は金子修介。WOWOWの製作するドラマWの一篇。
 200万円を振り込まされて姿を消した婚約者の行方を探して欲しいとホステス(鈴木蘭々)からの訴え。警察官の阿久津洋平(内村光良)は橋口雄一郎(加藤雅也)をマークし始めます。調査が進むにつれ、2年前に出所した男はコンピュータ・ゲーム会社の社長と名乗り、多くの女性に声をかけて、いわば甘い夢を売り、最後に友人の事故の補填などの名目で貯金を出させます。同時に被害にあっている女性は複数。代行秘書会社のオペレーター(満島ひかり)、アパレル関係の女性(星野真里)、小料理屋の女将(東ちづる)、日本舞踊の家元(夏樹陽子)、婚姻届を出した保育士(秋本奈緒美)。やがて、阿久津の学生時代の恋人・美和子(鶴田真由)も標的に。真相を知らされても女たちは被害届を出そうとしません。騙された自分を認めたくないのでした。
 ポジティヴな生き方の詐欺師とネガティヴな生き方でよれよれの中年警官が対比させられて、なんともやりきれない物語となっています。
2007年11月23日

日本テレビ・金曜ロードショー
佐賀のがばいばあちゃん

2006年

104分
 原作は島田洋七、脚本は山元清多・島田洋七、監督は倉内均。
 「がばい」とは佐賀弁で「とても・すごく」の意味。貧乏をちっとも苦にしないであずけられた孫を育てるばあちゃん(吉行和子)と明広少年(池田晃信<小学>、鈴木祐真<中学>)の物語。
 印象的なエピソードはあるものの、単調に描かれています。ばあちゃんの家の場面でも、ほとんど少年とばあちゃんの二人しか出て来ないので、映画としての背景が感じられず広がりがありません。森崎監督だったら、ワンシーンにもっと品物や人物をごちゃごちゃと詰め込んで、世界をふくらましてくれるだろうと思うことしきりでした。
 ばあちゃん語録として印象的な言葉はたくさんあります。
 「この世の中、拾うものはあっても、捨てるものはない」
 「世の中には暗い貧乏と明るい貧乏がある。うちは明るい貧乏だ。先祖代々貧乏だ」
 「いまのうちに貧乏しとけ、金持ちになったら大変よ、よかもん食べたり、旅行に行ったり、忙しか」
 「悲しい話は夜するな。どんなにつらい話も昼したらたいしたことない」。
2007年10月19日
フジテレビ

21:00〜23:25
交渉人 真下正義

東宝
2005年
128分
 交渉課はまだ準備課で正式な課ではなく、失敗すればつぶされてしまう。いやそれ以上に地下鉄の新型車両クモを無線走行させ、オシロスコープをつないだ爆弾でコンサート・ホールを吹っ飛ばそうという犯人の計画を、阻止する交渉人・真下(ユースケ・サンタマリア)の活躍がみものです。本広克行監督、君塚良一原案、十川誠志脚本。
 真下に挑戦する犯人の正体は最後まで明らかになりません。警察の介入を快く思わない地下鉄運行チーム、情報を分析する真下のスタッフ、勘をたよりに捜査する刑事仲間など、いろいろな人物像も描かれています。
 コンピュータが縦横無尽に使用される現代の捜査スタッフの動きが、けっこう新鮮でした。
2007年10月15日〜12月17日

フジテレビ
毎週月曜
21:00〜22:05(第1回・第10回)
21:00〜21:54

一部録画
ガリレオ

2007年

各50分
 東野圭吾『探偵ガリレオ』『予知夢』を原作にしたテレビドラマ・シリーズ。女刑事・内海薫に柴咲コウ(梶芽衣子を思わせる風貌とスタイル)、ガリレオ帝都大学物理学准教授・湯川学に福山雅治。全10回。脚本は原作どおりではなく、各回のゲストを想定して当て書きしているように思えます。大学は京都大学吉田山キャンパスでロケ、学生食堂は藤沢市の神奈川県立体育センターの食堂でロケしているそうです。体育センターの食堂で聞いたところ、食堂の外の花壇に咲く花もロケのスタッフが植えたものだそうです。
 新シリーズは2013年4月15日(月)から。

 第1回「燃える」(脚色・福田靖、演出・西谷弘)のゲストはレーザーを利用した発火現象を試みる金属加工工場の工員・唐沢寿明。
 推理力というよりも、一見すると超常現象に思える事件を物理学的に解く面白さで見せる物語ですが、女刑事・薫は原作には登場しません。結果的に薫の設定は大成功でした。ドラマを面白くするキャラクターになっています。
 10月15日:第1回では、朗読ボランティアで『車輪の下』を録音する唐沢の心の中に潜む悪の感情を、唐沢の踏む地団太や膝で机の下を叩く行為で現わしていました。
 無関心な男を魅きつける女の武器は「涙だ」と女性監察医・桜子(真矢みき)から教わった薫は、「真実を知りたい」とウソ泣きしながら、湯川に自分の子供時代の身の上話をします。ロサンゼルスのホテルに家族で泊まった夜、中国人の殺し屋に撃たれて両親と姉が殺されてしまった、ベッドの下に逃げ込んだ自分だけが生き残った、隣室が中国マフィアだったのだ、そのとき女刑事になることを決意した、と。ミエミエの作り話だが、湯川は信じて同情してしまいます。けれども、番組の最後の場面、助手(渡辺いっけい)が見ていたアメリカのテレビ・ドラマ「女刑事クラリス」が同じ話を放送していたのを見て・・・「(やられた)」と思います。

 10月22日:第2回は「離脱る」(福田靖=西谷弘)。マンションでやく殺された女性を訪ねた容疑者はアリバイを主張、赤い車を川べりに停めて寝ていたと言います。しかし、目撃者は現われません。容疑が固まるなか、カゼで寝込んでいた少年の絵にその赤い車が描かれていました。幽体離脱して車を見たと少年は証言するのですが、湯川は一種の蜃気楼が見えた事実を証拠固めしていいます。
 10月のテレビドラマ視聴率第1位になっていました。書店でも東野作品フェアが行われています。直木賞受賞以前から、すぐれたミステリーを何作も書いてきた作者の才能がようやく衆知されてきました。

 10月29日:第3回は「騒霊ぐ」(福田靖・古家和尚=成田岳)。湯川ゼミの学生の姉・神崎弥生(広末涼子)が夫が失踪したと訴えて来ます。老婦人・高野ヒデさんが心筋梗塞で亡くなった日に夫も行方不明になった、絶対にこの家が怪しいと断言する弥生にすっかり困惑する薫刑事。夜の8時になると外出する甥夫婦と怪しい男女。忍び込んだ薫たちはポルターガイスト現象に出会います。騒いでいるのはいったい誰の霊でしょうか。共振をキイワードに現象を解く湯川。しかし、最悪の真実が明らかにされます。夫の安否を心配する余り、押しが強くわがままに見える広末のキャラクターを生かしています。

 11月5日:第4回「壊死る」(福田靖=澤田鎌作)。豪邸の室内プールで泳ぐ娘・篠崎玲子(蒼井そら)を水中銃のようなもので撃つ物理学者・田上昇一(香取慎吾)。検死では心臓麻痺、しかし、薫は胸の皮膚の一部の壊死に不審を抱きます。湯川に相談しますが、湯川は興味を示しません。卒論を評価していた田上に学会で会い、話した湯川は田上が殺人兵器で外国に自分を高く売り込むという話に不快感を示すとともに、殺人者の匂いを感じます。研究室全員でネット検索し、殺人の新兵器を開発し既に実験したというスペイン語の売り込みサイトを発見します。考えた挙句に、湯川は超音波を利用した兵器を明らかにします。薫は田上に親切にしてもらってすっかり有頂天、もらった宿泊券でインター・コンチネンタル・ホテルに泊まりますが、そこへ田上が訪ねて来ます。危うし薫!事件と解明方法、登場人物名などの基本部分を除き、設定をすべて原作と変更。
 相変わらず視聴率トップをキープしつつあると言います。神奈川新聞(東京新聞系列)のテレビ欄に評価が載っていました。原作に無い薫の設定が効果的と。冷静な福山、熱血型の柴崎という、男女のコンビはドラマをふくらませました。このキャスティングは大成功。

 11月12日:第5回「絞殺る」(古家和尚=成田岳)。ホテルで絞殺された男性。保険金殺人と思われたものの、妻(水野美紀)には完全なアリバイが。ペンション経営者の男には喘息病みの娘(大後寿々花)がいました。ホテルの窓から火の玉が見えたという証言があり、湯川が謎解きに参加します。アーチェリーが伏線となって事件を解決します。実験協力は滝川洋二。
 大学では薫が湯川の彼女だと噂になっていると女子学生から聞いて、薫は一寸その気になります。殺人現場のホテルのベッドで横になって目を閉じている湯川に急接近する薫。突然目を開く湯川にハッと我に返る薫。二人の掛け合いは脚本家のオリジナル。伏線で学生結婚が是か非かを話題にしています。湯川は反対派で薫は賛成派。原作では被害者は町工場経営者で、娘も喘息病みではありません。

 11月19日:第6回「夢想る」(松本欧太郎=西谷弘)。森崎礼美(堀北真希)の部屋に坂木(新井浩文)という男が侵入した。物音に気づいた礼美の母・由美子(手塚理美)は、坂木に向かって猟銃を発砲。坂木は薫と小学校時代の同級生で、現在は占い師。坂木の店の名前は『モリサキレミの占いの館』。薫は、偶然店を訪れ、坂木と再会していた。捜査にあたった弓削(品川祐)は、坂木が客として自分の店にやってきた礼美のことを、ここひと月ほどストーキングしていた事実を薫に告げる。そんな折、薫の携帯電話に逃亡中の坂木から連絡が入る。そこで坂木は、自分を部屋に呼んだのは礼美の方だと薫に訴えた。坂木が占いに使っていた水甕に、「会いに来て」という礼美からのメッセージが浮かんだというのだ。坂木が小学校時代に書いた作文には、「僕の夢は、モリサキレミと結婚すること」と書かれており、文章の横には、礼美の部屋の飾り窓とそっくりな絵が添えられていた。過去に何があったのか?今回はオブラートに油性ペンで字を書くというシンプルなTVオリジナルのトリック。原作では坂木は占い師ではなく、呼び出し状もワープロで打たれた手紙。坂木に呼び出された薫が湯川と船室に閉じこめられてしまい、脱出に携帯電話を利用する設定はTVオリジナル。TVでは、坂木の小学生時代の“恋人”モリサキレミの正体は同級生のウツミカオルだったことが明らかになります。

 11月26日:第7回「予知る」(古家和尚=西坂瑞城)。湯川に話を持ち込んだのは助手の栗林(渡辺いっけい)でした。彼の友人・菅原(塚地武雅)は向かいのマンションの部屋で浮気相手の冬美(桜井千寿)が首を吊るのを目撃。一緒に部屋にいた後輩・峰村(佐藤重幸)が隣のマンションに駆けつけます。不思議なことに峰村は女の部屋に直行して細工をした後で管理人のところへ行きます。冒頭で犯人と冬実が狂言自殺のつもりだった様子も明らかになります。菅原は妻の静子(深田恭子)から莫大な慰謝料を取られて離婚されます。ところで、事件の一週間前に菅原は同じ部屋で自殺する女を見ているというのでした。その時は突然電気が消えたといいます。なぜ電気が消えたのか、そこに湯川はこだわります。・・・深田恭子のまるっきり芝居めいた不自然なセリフ回しに驚きました。深田版TV『富豪刑事』ではわざと芝居っ気たっぷりに演じていると思えたのですが、たぶん深田流のセリフ回しは、いつも同じなのでしょう。今回は電流を流すと固化するER流体を使ったトリックです。原作では予知者は隣室の少女ですし、容姿にコンプレックスを持つ塚田や、計画的に浮気相手に仕立てられる冬実、峰村の死や静子の悪女ぶりなどはTV化に当たっての脚色でした。

 12月3日:第8回「霊視る」(古家和尚=成田岳)。殺人事件は雑居ビルにある料理教室で、被害者は経営者のひとりでもある前田美鈴(引田博子)。共同経営者の金沢頼子(たくませいこ)が帰宅した後、残業をしていた美鈴が、侵入した小杉(飛田淳史)にメッタ刺しにされて死亡。小杉は不審な物音に気づいた警備員に発見され、逃亡しようとした際に窓から転落死していた。美鈴と小杉の間には接点がなかったが、美鈴が最寄りの警察にストーカー被害の相談に訪れていたことから、事件はストーカー殺人と見られた。美鈴の妹・千晶(釈由美子)は、美鈴の部屋で姉の帰りを待っていたとき、部屋の窓外から、美鈴が室内をのぞきこむようにしている姿を目撃したという。しかし、すでにそのとき、自宅から30キロも離れた料理教室で美鈴は死んでいた。テレポーテーションか。美鈴の料理教室に監察医・桜子が通っていたことがあり、彼女は致命傷の傷は二箇所で、残りの二百箇所以上の傷は死んだ後に付けられたものと診断する。小杉の部屋のステレオの音から湯川は女の存在を知る(この手がかりは原作通り)。開巻早々、湯川が実験室で料理をする場面があり、最後には薫が料理をしてチンジャオロースを作る場面がある。野菜の切り方云々の講釈をする湯川に自作のひどい切り方の料理を食べさせた薫が「おいしいと思ったでしょ」と会心の笑みを見せます。原作の犯人の設定や動機をかなり大きく変更しています。
 ところで、謎を解明するとき決まって、湯川は急にあたりの壁や窓に数式を書き始めて計算をしますが、今回のアリバイ・トリックのように計算など不要なトリックもあります。

 12月10日:第9回「爆ぜる 前篇」(古家和尚=西坂瑞城)。湖での突然の爆発事件。沼でのデスマスク発見事件。それらを巡る中心にもと帝都大学原子力工学教授・木島が関わっていました。湯川は過去に木島となにかトラブルがあったようです。デスマスクができた謎は雷による衝撃波によって解決しました。物語は原作の「転写る」がもとになっています。しかし、TV版では双方の事件の被害者は被爆していました。その謎はまだ解明されていません。
 今回の終わりに、帰国してきた木島と木島の家の前で湯川が出会う場面があります。木島の顔は最後に明かされます。久米宏が演じていました。

 12月17日:第10回「爆ぜる 後篇」(福田靖・古家和尚=澤田鎌作)。湯川は木島の会社の社員の殺人犯を木島と想定しますが、証拠がありません。木島の秘書(本上まなみ)が自分が犯人との遺書を遺して自殺。木島犯人説を棄てたとき、新たな真相が見えてきます。都心を破壊する時限爆破装置につながれた内海刑事、残る時間はあと3時間。クリスマスの夜だった。機械につながれ放しで動きを封じられた内海刑事など登場人物の動きが少ない回で、面白さはいまひとつ。

 【参考文献】 (2009年3月20日)
 別冊宝島1609『僕たちの好きな東野圭吾』(宝島社,2009年) 
2007年10月14日

NHK教育
22:00〜23:00
21世紀のドストエフスキー
2007年
60分
 ETV特集。副題「テロリズムの時代を読み解く」、ディレクターは馬場朝子、製作統括は塩田純。光文社文庫の亀山郁夫が訳した『カラマーゾフの兄弟』が40万部に迫る勢い。いま若い読者にこの作品が受け入れられているのはいったいなぜなのか。訳者である亀山氏が作家の金原ひとみ、加賀乙彦、映画監督の森達也らとの対談を通して作品に迫ります。映画『カラマーゾフの兄弟』や『罪と罰』で粗筋を紹介しながら、作品の「私の中の悪」「多声性」「善と悪のゆらぎ」「魂の救い」などをキイワードとして魅力を探っていきます。テレビという性格上、論理的な分析ではなく、バラエティ的、羅列的になっていました。テロリズムに関しては、ボリス・アクーニンによって『悪霊』が薦められていますが、この指摘は昔からあります。
 『カラマーゾフの兄弟』は家の父の書棚に筑摩書房の3段組の文学全集でありました。米川正夫訳でした。しかし、この版で読了することは私にはできませんでした。高校生時代に図書館から中央公論社の世界の文学2『カラマゾフの兄弟』(池田健太郎の新訳)を借りてきて数日かかって読み通しました。小林秀雄の『ドストエフスキイの生活』も読みました。けれども、カラマーゾフの世界を把握できたとはいえませんでした。就職してから最初に購入した全集は、新潮社のドストエフスキー全集。『カラマーゾフの兄弟』の訳は原卓也。しかし、この全集は書庫に置いたままです。光文社のカラマーゾフ人気で新潮文庫の原卓也訳本も書店で平積み。
 江川卓の『謎解き「カラマーゾフの兄弟」』(新潮選書)が面白かった記憶があります。亀山訳には関心があり、入手しましたが、いまのところ読み通す自信と時間がありません。
2007年10月14日

NHK総合
21:00〜21:50
ライスショック

2007年
50分
 NHKスペシャル。副題「あなたの主食は誰が作る」;第1回「世界がコメを作り始めた」。ディレクターは板垣淑子ほか。日本の食糧自給率は39%、先進国では最低です。主食のコメの消費は減り続けています。1960年には日本人一人当たりの年間消費量は120kgでしたが、2006年には60kgになっています。今年は23万トンのコメが余るという予想さえされています。
 コストダウンが図られるなかで、仕出し弁当屋が使うコメも中国産に切り替える動きがあります。価格が圧倒的に安いからです。それに加えて、外圧があります。「コシヒカリ」は生産に難点があり、外国では作付けされてきませんでした。ところが、アメリカ・カリフォルニアの農家ではコシヒカリやヒトメボレ、アキタコマチといった日本の銘柄米を作り始めました。価格は10kgで1500円、これは日本産コシヒカリの3分の1の値段です。
 中国でもコシヒカリと中国産のコメを交配して中国版コシヒカリを作っています。こちらの値段は3kgで730円、日本産が2kgで3700円と比べると超安価。WTOが日本へのコメを自由化すると、大変な事態になりそうです。すでにコメを自由化した台湾では世界各地のコシヒカリが販売されており、たち打ちできなくなったコメ農家は軒並み廃業してしまっています。
 アメリカで、コメビジネスを手がけるリン社長は新潟のコメ農家で農協を経由しない販売の玉木家と交渉、台湾の富裕層向けに玉木産コシヒカリを売り込みます。台湾のすし店では従来の6倍値段の玉木産コシヒカリを導入、客の反応はよいとか。しかし、台湾のスーパーで販売されている世界各地のコシヒカリの価格競争は玉木さんを不安にします。
 鈴木宣弘(東京大学)はナショナル・セキュリティとして自給率が70%を切ったら危機だと主張しますが、本間正義(東京大学)は自給率100%を維持するのはコストがかかるため、コメが自由化されて日本市場が台湾化してもやむを得ないと言います。その代わり工業製品を輸出することでプラスに転じるべきだろうと。内橋克人(評論家)は外貨を10〜30社で稼ぎ出している日本の現状からは、二次産業で必ずしも外貨を獲得できる保証は無いと判断していました。
2007年9月29日

フジテレビ
マッジク革命!セロ!

 マジシャン・セロのパフォーマンスを街頭で、外国で見せる番組。タイのチェンマイでHIVで親を亡くし、自らも母親から垂直感染している子供たちを集めたバーン・ロム・サイで子供たちに“夢と希望”のマジックを見せるセロが感動的。彼が最初に見せてもらったという新聞紙を使ったマジックが印象的です。丸めた新聞紙にハサミで切り込みを入れていく。これが木のタネ、木を育てるには水が必要です、水はツバで、中心にツバをつけて引っ張り上げると大きな木が育つ。
 バーン・ロム・サイの主宰者は名取美和さん。
2007年9月15日

DVD
名探偵ホームズ

1984年
東京ムービー新社
RAI
 アニメーションの犬版ホームズ物語。音楽は先日亡くなった羽田健太郎。
 第1話「彼がうわさの名探偵」(御厨恭輔監督、奥田誠治絵コンテ、早川啓二演出)の下敷きは『四つの署名』で、ワトソンとホームズが出会う。
 第2話「悪の天才モリアーティ教授」(御厨監督、早川絵コンテ・演出)で、モリアーティ教授が登場、ワトソンがベーカー街に同居、マザリンの宝冠が盗難に会う。
 第3話「小さなマーサの大事件!?」は宮崎駿監督・脚本・絵コンテ・演出でパイロット・フィルムとして作成された。ニセ金貨が出回り、プレス技師から娘のマーサに手紙が来る。困ったときには野良猫ホリーに頼めという奇妙な手紙だった。
 第4話「ミセス・ハドソン人質事件」は御厨恭輔監督、演出・絵コンテは宮崎駿、脚本・片渕須直。モリアーティ教授はハドソン夫人を誘拐。アジトで片づけ・清掃・料理にいそしむハドソン夫人。ほのぼのとする一篇。連絡に糸電話を使う教授は、「ジョコンダ夫人の肖像(モナリザ)」と引き換えに夫人を返すと言う。
 第5話「青い紅玉」は宮崎駿監督・絵コンテ・演出、脚本・片渕須直。ロンドン上空にプテラノドンが出現、銀行員が見とれている隙に教授は青いルビーを盗む。しかし、少女ポリーにスラれてしまう。教授はポリーを追う。
 第6話「緑の風船の謎を解け!」(御厨監督、荒木伸吾絵コンテ、所すみお演出)、密輸する教授一味を捕えようとする警部。ハドソン夫人の庭に落ちた風船に助けを求める手紙がつけられていた。架空のイルカ島からだった。
 第7話「大追跡!ちびっこ探偵団」(御厨監督、奥田誠治絵コンテ・演出)、黄金の天使像を盗むと予告した教授。気球を使って見事に盗んだ像は、子供たちが冒険の船を作っている船着場の廃船に隠されたらしい。
 第8話「まだらのひも」(御厨監督、早川啓二絵コンテ・演出)、エレンの財産目当てに教授は従弟ロイロットに化けた。ホームズとワトソンは雨の日にエレンの大邸宅へ立ち寄る。ホームズは女主人エレンに迫る危険を回避する。
 第9話「海底の財宝」(宮崎駿監督・絵コンテ・演出)、潜水夫ライサンダーは沈んだ船からナポレオンの財宝を発見。教授は海軍の潜航艇を盗んで財宝の横取りを画策する。
 第10話「ドーバー海峡の大空中戦」。(御厨監督、宮崎駿絵コンテ・演出)、ハドソン夫人の目前で郵便機が墜落、教授はロンドン・パリ間の郵便機を妨害して記念切手の値上がりを計画していた。ハドソン夫人は愛称マリー、結婚したジムが飛行機事故で死亡、それ以降姿を消していたが、飛行機仲間に再会。ホームズと協力して郵便機を守るために、飛行機や汽車より早く走る車を運転して大活躍する。大追跡のアクション感覚がアニメならでは。郵便機は分解しがちなセスナ機で、教授は「青い紅玉」の巻のプテラノドン型の鉄製飛行機。
 第11話「ねらわれた巨大貯金箱」(宮崎駿監督、富沢信雄絵コンテ・演出)、武器商ギルモアに呼ばれたホームズは、趣味の悪いギルモア黄金像の巨大貯金箱から金貨を盗んでいる犯人を発見してくれと依頼される。実はギルモアのひとり息子マイケルは貧乏な町の人々のために尽くしそうとしていた。一方、教授は仲間と床下まで堀り進め、貯金箱全部を奪う計画を進めていた。
 第12話「教授、嵐の大失敗!」(御厨監督、所すみお絵コンテ・演出)、警察車の連続爆破事件が起こる。銀行の頭取が大金を運ぶ馬車を教授が狙う。娘に護衛を依頼されたホームズたち。ひたすら追っかけアクション。 
2007年9月4日

DVD
俺っちのウエディング

1983年
松竹
104分
俺っちのウエディング 脚本の丸山昇一が映画化のあてもないときに書いた作品。日向映画祭でのゲスト・インタビューによれば、丸山が日大卒業後、広告会社にいたときに書いた「ロッキー・マウンテン・ブルース」が事実上の脚本第1作。師匠・猪俣勝人の好きな社会派の力作を2、3本書いた後に、力を抜いて書いた脚本「蜜月」が、後年「俺っちのウエディング」になった。
 主役の時任三郎と宮崎美子、そして美保純はもちろんのこと、出演者たちが楽しんで作っているのがよく分る。みんな明るい顔をしているのだ。細野辰興助監督によれば、“「セーラー服と機関銃」の次にこの作品をやるんですけどね、カチンコで。なんなんだろうと思ったぐらいこの2つの組(相米慎二監督と根岸吉太郎監督の組)は自由でしたね。「自由な発言、大胆な発想」かなんかいってましたよね、当時。若さだけでは説明できない自由さでしたね。”
 実はこの作品、セル・ビデオも持っていますが、DVDニューマスター版も品切れ間近のようなので購入しました。
 ちなみに、ミステリーとして謎解きを楽しむ映画ではありません。《演技こそ人生》とばかりに、他人の目を意識しつつ演技しながら生きる楽しさを前面に打ち出した映画です。ノリの映画と言ってもよいかもしれません。時任三郎は長崎出身の田舎者であることを隠して、東京で「UXワックス」の営業マンをしています。しかし、長崎の不良女子高校生・美保純に「あんたもカッペか?!」と軽くいなされてしまいます。婚約者の宮崎美子はプロレス・ファンらしく、“イノキ”“カンチョー”の仕草をやっていますし、実家の子供とはコブラツィストで遊びます。

 【2009年10月追記】 CS日本映画専門チャンネルで根岸吉太郎監督特集が行なわれました。『ヴィヨンの妻』の受賞記念で、作品ごとに根岸監督が解説します。根岸監督は助監督時代に丸山昇一の脚本「蜜月」を読んで、ユーモアあふれるオリジナル脚本をいいなあと感じ、ぜひ映画化したいと思っていた、スタッフは映画つくりで楽しく遊んでしまった、時任三郎の十頭身みたいな身体性を生かしたいと思った、長崎の市電のなかの宮崎美子を捉えられるかなどの挑戦も楽しかった、我ながら橋に興味があったんでしょうといった解説をしていました。
 また、『ヴィヨンの妻』で26年ぶりに根岸作品に出演した伊武雅刀が、『俺っちのウェディング』で7分間の長回しのシーンの撮影に一日かかって、天プラの匂いに倒れそうになったと話していました。
 私は、横浜映画祭のパンフレットに『永遠の1/2』にことよせて『俺っちのウェディング』評を書いています。また『Wの悲劇』とともに、論じたこともありました。参考まで。

シェイクスピア作品の映画化やその関連の映画は除く。
それらは別ファイルになっている。→ 『シェイクスピアの劇と映画


  BACK TO 私の名画座     映画日記データベース


 

 森崎東監督 全作品データ