ひとりゑっち。 |
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最近、忙しい日が続いていた。別に忙しいのは良いのだ。凌統だって忙しく動いている方が性に合うのだし。 ただ問題なのは、ここんとこずっと、ご無沙汰だという事だ。 何がご無沙汰って、そりゃご無沙汰といったらあっちがご無沙汰なのだと賢い諸姐にはご明察いただけるだろう。そう、やっと手懐けた、甘寧とのアッチである。 どんだけ忙しくたって、こればっかりは疎かにしたくないのだが、国境の偵察だとか領民の慰撫だとか徴兵の点検だとか、とにかく甘寧と別行動が多くて、建業に居つけなかったのだからしたくてもできなかったのだ。過去のいきさつの中で、凌統と甘寧にはもう自然と別行動のグループ分けができてしまっていて、それがいまだに続いている。もう仲良くなったからと声を大にしたら、今度は別の理由で別行動組にされてしまった。曰く「新婚旅行ではないのだぞ!」 今回は近隣の県城まで視察がてら書状を渡しに行っただけなので、五日程で帰って来れた。それでも五日だ。甘寧と五日も離れていたのだ。やっとこ建業に戻ってきたのはついさっきで、旅の垢を落とす間もなく、凌統は甘寧の屋敷に向かった。 「甘寧ー!」 甘寧の部屋の扉を開けると、そこには。 「!!!!!!!」 「お、凌統。いつ戻って来たんだ?」 「いつって今だよ。ってゆーかあんた、何やってんだよ!」 「何って、マス掻いてんだけど?」 そう。そこには腰巻きを解いて、ズボンの中から息子さんだけを取りだし、右手で上下にしごいてらっしゃる甘寧の姿があった。 「何でんな事してんだよ!」 「何でって、溜まってるから出してやろうかと思って」 甘寧は恥ずかしがる様子も隠す様子もなく、実に開けっぴろげに、いっそ清々しい程健康的に、己の自慰行為を見せつけた。更に「ほれ」としごいてみせる。 「あんた、俺が戻ってくるまで待てなかったのかよ!たった五日じゃねえか!っつーか俺が今日戻ってくんのは最初から分かってんのに、何で待ってらんねーんだっつーの!」 「何でお前の事待たなきゃなんねぇんだよ。第一、溜めとくのは体に悪いんだぜ?」 「そんなに溜まってんなら、今すぐやってやる!」 凌統は光速で服を脱ぎ捨てると、甘寧を押し倒して、目の前でぴるぴる震えている息子くんを口に含んだ。 「おいこらがっつくなっていつも言ってんだろ!」 「これががっつかずにいられるかっつーの!」 「がっついてっから、お前はいっつも独りよがりなんだよ!」 凌統の体がぴくりと止まる。 それは意味を返せば「ヘタクソ」と言われているのと同義である。 「なんであんたはそういう事言うんだよ! ヘタクソとか、それって一番言っちゃいけねー事じゃねーのかよ! あんたにはデリカシーってもんがねーのか!」 「ヘタクソまでは言ってねえだろ」 「同じ事だろ!」 「独りよがりは独りよがりじゃねーかよ。ただおっ勃たせて達かせりゃ良いってもんでもねぇんだぞ!」 「俺はそんな事してないっつの! いっつも丁寧にしてるじゃないか。なんだよ、気にくわないんならどうして欲しいのか言えよ!」 「……どうして欲しいのか言えって言われても……。口でいうの難しいしなぁ……」 そんな文字通りに受け止められても……。 凌統の心の中のつっこみなどどこ吹く風、甘寧は少しの間考え込んでいたが、いきなりひょいと起きあがると逆に凌統をどさりと押し倒した。 「……甘寧?」 「ん? いや、口で説明するよりこっちが早いかと思って」 そういうと、やにわに甘寧は凌統の息子くんをくわえこんだ。 「うっ!」 凌統は狼狽えた。 巧い。 巧すぎる!! 「あんたどこの誰でこんな事練習したんだ!」 「は? んな事してねぇぞ?」 甘寧は少しだけ顔を上げた。涎が糸になって繋がっている様が、何とも言えずにいやらしい。 「でもあんた、くわえた事あんだろ!?」 「ねぇよ。誰のくわえろってんだよ」 「初めてでこんなに巧いのか!?」 凌統も今まで相当の数の女と情事を重ねてきたが、こんなに巧いのは初めてだった。本当に初めてだというのなら、甘寧は一体どんな舌をしているというのだ。 「だって、お前自分のして欲しい事を教えろって言ったじゃねぇか。だから今までされた奴の中で、好きな事を色々やってみせてるだけだけど……何か変か?」 「誰にこんな事されたんだよ!!!」 「たいていは妓楼のお姐さんだな。まぁ、錦帆賊のお頭に抱いて欲しいのよって女も結構いたけど、俺あんま素人女には手出さないようにしてたから」 しゃあしゃあと言ってのける甘寧に、凌統はむかつくような、ちょっと尊敬するような、そんな複雑な気分になった。自分なら、絶対にされた通りになんかできない。 いや待て。できないなんて言ってられない。このままでは俺は甘寧より「ヘタクソ」という事になるではないか! 「こうか!」 凌統は起きあがって、あぐらを掻いている甘寧の股間に顔を埋め、今された通りに試してみる。 「お、そこそこ……あ、でもちょっと……」 「違うのかよ」 「えっと…だからこうだろ?」 今度は甘寧が凌統の股間を目指すが、なんだか面倒くさくなってきた。甘寧は凌統を押し倒すなり凌統の顔の上に跨って、そのまま凌統の息子くんを口にくわえた。いわゆる69の形である。 こ…これは……! 凌統はその光景にクラクラとした。甘寧のアレもコレも目の前にぶら下がっているのである。これで興奮するなという方が嘘だろう。 「ほら、ここをこんな風にされると、俺結構クるんだよ」 「こうか…?」 「あぁ…イイぜ、凌統……ん…」 お互いがお互いを口に含んでいると思うと、そのシチュエーションだけで凌統は充分爆発しそうだった。心なしかさっきより感じている気が…… 「っておい!」 「あ?」 「ひょっとしてあんたが巧いんじゃなくて、俺があんたに惚れてるからイイだけなんじゃないのかい?」 「知るかよ。それよりほら、続けろよ」 目の前のしりを振られてそんな事言われたら、そりゃ続けるさ、あぁ続けるとも! 凌統は下からしゃぶり上げ、丁寧に口の中で転がした。首を起こしているのが結構きついが、かといってここで体勢を変えてしまうのも惜しい。時々甘寧がくぐもった呻き声を上げている。「良いのか?」と訊いてみたいけれど、その間に口を離すのももどかしかった。プライドに賭けて、甘寧より先に達くわけにはいかないのだ。ここは何としても粘らねば!!! とにかく少しでも長引かせるため、凌統は頭の中で蜀の武将をフルネームで、しかも肩書き付きで勘定してみることにした。うむ。これは萎える。まず関羽が……漢の寿亭侯で蜀の前将軍で……それで張飛は右将軍……あぁくそやっぱ甘寧巧え! 早く達ってくれ……!! 五虎大将をやっと数え終わった辺りで、甘寧の舌の動きが止まった。 「つ…凌統、もっ、出る……!」 腰を上げて凌統の口から息子くんを引き出そうとするのを、凌統は許さずに腰を抱え込んだ。 「あ!? よせバカ……んん!」 短い叫び声と共に、口の中に独特の刺激のあるねばねばが広がった。甘寧のだと思うと、そのねばねばは妙に旨かった。 「ごちそーさん」 「……ッサイテー」 「何でだよ。あぁ、別にあんたにも飲んでくれとは言わないから安心しな。でもさ、続けてはくれるんだろ?」 甘寧は少しだけ荒くなった息を整えると、「おう」と短く返事をして、また凌統を口に含んだ。 「あんた、ホントに巧いな」 「ほうは? ふぇふにほんなうまふもないらろ?」 「……口に入れながら喋んなくて良いから!」 不意に色んなとこがぶつかったり噛まれたり吸われたりして、それは思いもかけない程良かった。次回はこれを俺も取り入れてみよう……。 「うっ、…あぁ興覇、すげぇ良い…。も…俺も、達きそうだ……」 じゃあと口から出そうとした甘寧は、少しだけタイミングが遅く、思いっきり凌統のねばねばを顔にかぶった。 「……」 「あ、悪い…」 いわゆる、顔射である。甘寧は文字通り真っ白くなった顔にそおっと手をあてがい、そのねばねばを手に取った。ねっぱーと糸を引いている。 「…って、濃! おめえの濃すぎ!! どんだけ溜めてやがったんだよ!」 「だからあんたに会えなかった間、ずっと溜めてたんだよ! 濃いって言うな―――!!!」 凌統は赤くなって叫んだ。そんなに言われる程濃いとも思わないが、何となく傷ついた。っていうか、普通どの程度のモンなのよ。濃度とか? 色とか、味とかニオイとか? 知るかんなモン!! 「しかもなんか口ん中いがいがする。口ん中に出した訳でもねぇのに、何でこんないがいがすんだよ!」 「先走りって奴だろ。お前のだっていがいがするぜ?」 「うわ〜俺もう二度とこんな事しねぇ! まっず―――!!」 「まっず―――とか言うな! いちいち腹立つな―――!! あんたがしなくても俺はするっつーの!」 その辺の布で顔をごしごし擦りながら、甘寧はイヤそうに凌統を見ると、鼻のつけ根に皺を寄せた。 「…あんなまずいモンを飲んじまいやがって、お前ってひょっとして変態?」 「うるさいっての! あんたのだと思えば旨いもんだぜ?」 「うわ…俺絶対ダメだ……」 「愛が足りないんだろ、あんたの場合はさ」 言って、自分で傷ついた。そうか、愛が足りないのか。……知ってるよ。知ってたけど、傷つくなぁ……(怒) 「腹立ったから犯す!」 「んぎゃ―――!!」 凌統はがばっと甘寧を押し倒した。だからお前は独りよがりなんだという台詞が頭をちらりと掠めたが、知るかそんなもん、こっちは言葉の暴力でダメージ138倍だ! 「覚悟しろよ、甘寧! 今日の俺はいつもよりすごいぞ!」 「すごくなくて良いから! やめろこのねばねば野郎!!」 「うるさいな甘寧! 本気味わうか!?」 「いやいらないから―――――!!!」 甘寧の叫びが、夜の静寂に空しくこだました。 翌朝。起きたら顔がかぴかぴになっていた。結局昨日は凌統の本気とやらを見せられて、甘寧は顔を洗って寝る事すらできなかったのだ。むかついたので、両のほっぺたを掴んで、むに〜んと伸ばせるとこまで伸ばしてみた。 「あ…おはよう、興覇。もう起きてたのか…?」 「おう」 そそくさと臥牀から出て行こうとする甘寧を、凌統がまだ良いだろうと抱え直す。 「放せよおい。顔洗いてえんだって。誰かさんのせいで顔が突っぱってるんですけどねぇ?」 「あぁ…じゃあこれに懲りたらもう一人えっちなんてしない事だ……」 しっかりと甘寧を抱えて、凌統が満足そうに、それでもまだ半分眠った声で囁く。その顔があんまり幸せそうだったので、甘寧は仕方なく溜息をついた。 「へいへい、分ーかーりーまーしーた」 「うん」 それから凌統はもう一度目を閉じて小さな寝息を立て始めた。 「何だよ、二度寝かよ、おい。……ったく」 甘寧は抱きしめられて身動きが取れない中から何とか右腕だけを抜いて、凌統のほっぺたを、今度はぎゅっと抓った。 「おい、俺顔洗ってきたいんだって……。まぁいっか……」 諦めて、甘寧は何度も何度も凌統の頬を抓り、それからもう一度寝る事にした。 ずいぶん面倒くせえ相手に捕まっちゃったな、俺。 腹いせに今度は鼻を抓んでやると、寝惚けた凌統はその右手を握りしめてきた。嬉しそうに目元が笑っている。甘寧は小さく下唇を突き出した。 それでも、そんな凌統が結局イヤじゃないんだから、終わってんのは俺か……。あ〜あぁ。 「趣味悪いの、俺」 声に出していって見ると、それは少しだけ幸せな色をしていた。 実は周泰×甘寧小説の「報告書」と同じテーマで書かれてたりします。ずばり。「どうして欲しいのか言え」 いやんvv っていうか、自分いつも甘寧にどうしたいのかばっかり考えてます…。ちなみに、このページの保存名は「musuko」……。イヤ、最後まで本当にこの小説のタイトル[むすこくん」にしようかと悩みましたが、あまりにもお下品なので却下しました……。
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