西洋スーツ語録その1

男たちの好日で、気になってしょうがないキャラクターがいる。
本名はまだ公表していないので、『西洋スーツ』としておこう。
原作では、
「三年前、イギリスの商会が、かじめ焼きの作業場をつぶしにかかったが、
漁民たちの多くは涙金をもらって、
いったん閉鎖しておきながら、

今度は妻や弟の名義で再開する
というゲリラ戦法をくり返し、
結局、商会側に音を上げさせた

と、いうあまりにも哀れなイギリス商会ですが、漫画版ではそれなりの強敵になります。
その鍵となるのが『西洋スーツ』と呼ばれるイギリス商会の代理人である。

そして、ここに彼の語録を掲載する。

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第二話:嵐の前


双眼鏡で覗いていた所を、玲睦に「海女さんを見に来た」と勘違いされる。
が、任務達成に燃える西洋スーツはそのような誘惑に負けることはない。
そして、一件一件と『かじめ焼き』をやめることを条件に、涙金を渡すという交渉を地道に行なった…。

宮ノ下家にて
「聞いたところご主人が大ケガをなさって
生活にお困りだとか…。
よろしかったらこれをお使い下さい」

「遠慮はいりません。上田さんも吉沢さん達もそうなさいました。
ただし…、私共もビジネスですから条件があります
その条件とは…

「今やっておられるかじめ焼きを
即刻やめてもらいたい!!」

のシーンが、この西洋スーツ一世一代の見せ場と言っても過言ではありません。

雷とあいまっての「ピカッ」という擬音がたまりません。



第3話:西洋スーツの男


西洋スーツの交渉は順調に進んだ。何せ、外房は貧しい家庭ばかりで、
網元の息子は苦労知らずで、
自分達は貧しいまま
という状況だったからである。


そして、唯一の抵抗勢力ともいうべき網元の息子は、かじめ焼きをやめた人達から反発ばかりされる有様。
そんな状況の中で、我らが西洋スーツ様は追い打ちをかけるべく、浜辺に登場。


「まさしくその通り!
今あなたたちに必要なのはお金だ
食うや食わずのこの貧しい浜の人達を
救うのはお金しかない!」

この西洋スーツ様の言葉を、抵抗勢力である網元の息子はペテン師とばかりに無視して殴ろうとする。
しかし、百戦錬磨の西洋スーツ様は貫禄の違いからか、

「なめるな小僧」
と札ビラ満載のバッグをドン!と下に置いて開封し、

「ぺてん師かどうかじっくり見るがいい」
とばかりに実弾投入!!

「迷う事はない、拾いなさい!
かじめ焼きさえやめればあなたたちのものだ!!」

と(金払いの良くないボンボンの小僧と違い)気前の良い所をアピール!!
あくまでも、抵抗勢力の小僧は「そんなもの拾ったらこの村は終わりじゃ」というが

「何もやましい金じゃない。
今までかじめ焼きを続けてきた
功労金だと思え!!」

とトドメを刺し、村人からの信用を勝ちとる。

「わかったか小僧。
ぺてん師は口で勝負するもの
資本家というのは金で勝負するものだ」

と高らかに勝利宣言!! これには、小僧は「終わりじゃ母ちゃん。この村は…もう終わりじゃ」と敗北宣言。



第4話:海の向こうから…


前回圧勝した西洋スーツ様。外房の公民館で毎日接待を受ける身分に。

ゼネをくれたことに感謝する村人達に、
「ビジネスですから、
みなさんも安い賃金と辛い作業から解放されてなによりです」
と答えながら、

「ところで、網元の息子
玲睦さんとやらが村から姿を消したとか…?」
「気の毒しましたね。
なんだか私が村から追い出したみたいで…」

と敗者にも気遣う西洋スーツ様。しかし、村人は心配することはないという。

「そうだといいんですが…」と余裕を感じさせます。


そして勝浦へ向かおうとする西洋スーツ様。
「この村も一件落着したからね。
今から北上して勝浦へ…」

と言ったとたん、消したはずのかじめの煙に気がつく。

「あの煙は何だ?」
と思わず顔をしかめる西洋スーツ様。



そこには、山下のばあさんがかじめを焼く光景があった。

「何をつっ立ってる。そこをどけ!!」
呆然とする村人達を払いのけて山下のばあさんに交渉を挑む。


なぁ、ばあさん。何をやってるんだ?
この村じゃ、もうかじめ焼きはやめたはずだぞ」

しかし、強情なばあさんは「誰がそんなこと決めたんじゃ」と意に介さない模様。

「なるほど。そういう魂胆か…
なぁ、ばあさん。
金額が不足ならもう少し出してやってもいい。
それで手をうたんか?」

ゼネが足りないと思った西洋スーツ様。しかし、「わしは銭などいらん」とにべもない返答。

「こ…このばばあ〜っ」
思わずキレかける西洋スーツ様。


このばあさん、死んだ息子のために線香がわりにかじめの煙を上げているのである。
「線香がわり!?」と西洋スーツ様は困惑気味

しかし、抵抗勢力の小僧の母親の恩義は一生忘れんと言ったために、

とイキのいい蹴りをかじめ焼きを阻止!!

「くだらない寝言をきいてる暇はない。
今すぐ、このばあさんを浜から連れ出せ!!
おれは一つでも取りこぼしがあったら…
気分が悪くなるんだ」
と荒れに荒れたため、村人の気持ちは引いてしまいそうになる…。


そんな状況の中で、抵抗勢力の小僧が戻ってきた。

「姿をくらまして…
一体どこへお出掛けでしたかな?」

と汗をかきながらも、なんとか余裕を見せようとする西洋スーツ様。
が、小僧が行った場所が三浦半島で、そこではまだかじめ焼きをやっているという話を
村人の前でされたため、西洋スーツ様大ピンチ!!



第5話:まっしぐらじゃ!


西洋スーツ様は、抵抗勢力の小僧よりも先に房総を掌握しようとどんどん先に進んで地固めをする。
そのため、小僧がいくら他の網元と交渉しても物別れに終わる…。

一方で、西洋スーツ様は房総を完全に掌握するため、勝浦の実力者である岩源の元へ何度も通う。
岩源の家の中に入ろうという段階で、
小僧に「だめだ!その男を中に入れちゃだめだ!! その男は房総に毒を垂れ流す外国の手先だ!!」と妨害されるも、

「あの小僧を蹴散らせ!」と岩源の子分に命令し、
小僧はボコられることに。


「今日はさらに十束…
そろそろ金額に不足ないと思いますが。
総元締めのあなたが号令一下、
かじめ焼きをやめさせれば、
この大金はすべてさしあげます」


そう言って、岩源と交渉をする西洋スーツ様。しかし、岩源も容易ならざる相手で、「あと十束増えねぇかな…」と言うだけである。



第6話:対決!!


前回の続きで、岩源の屋敷で交渉する西洋スーツ様。

「岩源さん、もうここら辺で手を打ちませんか。
本社で用意した予算もこれが限界です」

というと、「出し惜しみしやがって…」と返す岩源。さすがに簡単にはいかないようである。

「そ…そんなつもりは」
「さぁ、それは…」
と逃げの一手をいうものの、岩源もヨードの独占がもたらす利益のことはしっかり知っている。
まだまだ出せることぐらいは容易に想像がつくのである。

「し、しかし、私の一存では」
というと、さすがに岩源も「今日も話はまとまらんな」とばかりに寝ようとする。

足元を見られまくりの西洋スーツ様は、

「ちょ…ちょっと待って下さい
もう少しだけお話を…」

と、なんとか岩源の興味を惹きつけることに成功する。


「承知しました。
あなたのおっしゃる理屈もごもっとも…
では明日、残りの十束お持ちします」
「これでやっと契約書に判を押していただけますね」

と言うと、岩源も「明日は明日で…また十束用意しろと言ったらどうする?」と言ってくるので、

「ご冗談を…
私にも我慢の限界があります」と牽制する。


「それでは、また明日」
と、話がまとまり帰ろうとする所に、小僧が血だらけで出現!!

第7話:血だらけの決着

血だらけになりながら、現われた抵抗勢力の小僧。
三浦で作られた「ドーヨ」をもって、国産沃度の外房での生産を岩源に訴える。
しかし、西洋スーツ様からすれば、邪魔以外の何物でもないので、

「こんなもの!!」と「ドーヨ」を前蹴りで蹴飛ばし、

「どこまでつけ上る小僧だ。
ガキの戯言がこんな所で通用すると思っているのか」
と声を荒げる。

しかし小僧も一歩も引かず「三浦ではイギリス商会が入りこむ余地がない」と主張。


「勘違いするなよ小僧。
三浦には杉井市兵衛という大資本家がいる。
ヨードにいち早く着目し…
潤沢な資金をバックに『杉井製薬所』を設立した。

イギリス商会とて、そんな大きな相手に勝負は挑まん。

三浦は三浦、外房は外房だ!

市場原理にのっとって動くのがビジネスだ。
立ちゆかぬ外房の小さなかじめ業者など
イギリス商会が関わらなくとも、
いつか大きな波に呑まれる。

それよりも、うちで出すお金で大きな舟を買い、

漁に専念した方が得策だと思いますがね、岩源さん」


と恐るべき長いセリフで反論する西洋スーツ様。

「茶番はこれで終わりだ!
それでは岩源さんまた明日…。
何もわからん小僧が出過ぎた真似を!」

と、完膚なきまでにヘコませようとする西洋スーツ様。
だが、小僧は大宇宙からの怪電波を受けたのか、急に立ちあがって「海の中に何十万、何百万の金が咲いていた」と言い出した。

「こ…こいつ。とうとう頭がいかれたか」
普通の反応をする西洋スーツ様。
しかし、小僧は「茎から札ビラが生えとる海藻なんじゃ…」と一歩も引かない。

「ばかな、こいつ正気か!?」
と驚くも、まだまだ話は続くらしい。
さらに、「海一面に咲いとるんじゃ…数え切れない札ビラが…その時持ち帰った一枚がこれです」とかじめを差し出す。


「こいつはお笑い草だ!!
お前は浦島太郎か!
ついでに竜宮城でも見てきたって
言うんじゃないだろうな!」

と笑った途端、岩源の部下が「笑うな!笑うんじゃねぇ!!」と掴みかかる。

「な…なんだ!?
い…岩源さんこいつを何とかしてくれ」
と言うものの、岩源も同意見だったため、西洋スーツ様大ピンチ!


「岩源さん、私の言い方がまずかったならあやまる。
あと二十、いや二十五束出す!
それで許してもらえまいか」
と最後のお願いをするも、岩源のハートは完全に抵抗勢力の小僧に掴まれてしまった模様である。


そして、西洋スーツ様は死んだ金か…と呟き、外房から去っていったのである。



これで、誰もが男たちの好日からも姿を消したと思った。
たとえどれだけ復活希望の声を出しても届かないだろうと、そう思っていた。
だが、だがしかし、
我らがながい先生は我々の期待に答え、我々の予想を良い意味で裏切った!!

西洋スーツ語録第2弾へ続く

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