Club ARISTO
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 アリストV300VEに乗るNO.2007のSOARISTOさんが、APLINA風デコラインを自作されたので、紹介してくださいました。なお、このオリジナルデコラインはフレンドディーラーであるネッツトヨタ東京ハブポート若林にて取扱いしており、装着することが可能となっております。


VOL.200 ALPINA風デコライン製作記  <更新:'01年1月24日>
【はじめに】

 ARISTOの購入にあたっては、BMWも視野に入れて検討されたクラブマンさんも多いのではないでしょうか。私の場合も、他の日本車にARISTOに匹敵するライバルが見当たらなかったため、最後まで5シリーズが気になっていました。
BMW528iとARISTOとの間でかなり迷ったのですが、先進的なデザインが気に入っていたこと、引き続きツインターボエンジンに乗りたかったこと(前車は現行のSOARER2.5 GT-T Limited)、また、なによりも大のTOYOTA党であることから、最終的にARISTOV300 VertexEditionに決定しました。

 ARISTOのフォルムは、「エアロ・エリプスシェイプ」と謳う通り、日本車の中ではかなり独創的なシルエットで、たいへん気に入っているのですが、全高を高めて室内の居住性を向上させた分、全体としてのフォルムを見ると、ボディーとサイドウィンドーとの間の縦方向のバランスが、少し間延びしてしまっているように感じました。
 SOARERでは、純正でピンストライプが入っていたのですが、このラインが有るか無いかによって、ボディーラインから受ける印象が、がらりと変わりました。そこで、ARISTOでも、その筋肉質なボディーラインをいっそう引き立てるため、デコラインを入れることにしました。

 BMWのチューナーと言えば、昔から「AC SCHNITZER」や「HARTGE」、「APLINA」、最近では「BREYTON」や「RACING DYNAMICS」が代表的なところですが、なんと言っても、最もBMW社と親密で、かつ古くから優れたスポーティーサルーンを創出し続けている「APLINA」が、BMWのジャーマンチューナーの代表格ではないでしょうか。
 ALPINAでチューニングされた車は、その証しとして、すでに同社のアイデンティティーとなっている、芸術的とも言える繊細なデコラインの装飾が施されています。もともと、ジャーマンチューナーを意識したドレスアップを図っていることもあり、
 『もしも、APLINAがARISTOをチューンナップしたら』
というコンセプトのもとに、ALPINAをモチーフにしたデコラインとすることにしました。

 当然、ARISTO用のALPINAのデコラインは存在しない訳ですから、一から作り上げる必要があります。オーナーからの要望によって、デコラインの作成を請け負っているショップさんもあるようですが、ARISTOのドレスアップにあたっては、「自分でできるところは、自分でする」をモットーとしているため、今回は、デコラインのデザインと、ボディーへの施工は、全て自分で行うことにしました。(カッティングシートの切り出しは、専門の業者さんにお任せしました)
 完成するまでは、いくつかの困難なハードルがありましたが、自分で納得がいくまで何度もやり直し、細部にまで拘ることにより、とても満足できる、レベルの高い仕上がりとすることができました。また、単なるイミテーションに陥ることが無いよう、ちょっとした味付けを加えてみました。クラブマンさんの参考にしていただければと思い、自分で蓄積したノウハウを、それぞれ、デザイン編・カッティング編・施工編に分けて紹介します。

〈フロント全景〉
〈リヤ全景〉

【デザイン編】

 まず、昨年の東京モーターショーに出展されていた実車(APLINAB10 3.3/V8)や外車情報誌などを参考に、APLINAのデコラインの特徴とも言える、絶妙なバランスで交差・分岐するラインの、ホイールアーチやサイドウィンドーに対する比率を解析します。
 つぎに、「ハイパーレブ」のARISTO特集の表表紙に載っている側面図を拡大コピーし、ARISTOに合わせて、デコラインの配分を大まかに決めます。さらに、【施工編:手順2】で、ARISTOの実際のボディーラインに合わせて型取った型紙をもとに、細かなデザインやサイズを調整します。

 デザインは、Macintosh用のIllustratorを使用しました。ボディーサイドは、フロントフェンダー・フロントドア・リヤドア・リヤフェンダーの4分割式、フロントリップは3分割式、リヤガーニッシュは4分割式になっており、全部で12ピース構成になっています。それぞれのピースは、施工時に位置決めが簡単にできるよう、両端にマーカーを設けています。
(写真では、上からそれぞれ、ボディー左側4ピース、右側4ピース、リヤ1ピース、フロント3ピースです。フロントは、リップの形状に合わせて微妙にラウンドさせています)

 なお、オリジナルでは「ALPINA」のロゴが入る部分に、今回は「LEXUS」のロゴを入れてみました。この「LEXUS」のロゴは、昨年のモーターショーで、トヨタさんのブースで配っていた英語版のパンフレットをもとに、ロゴを拡大コピーして、ポイントを拾いました。
(写真では分かりづらいのですが、再現性は完璧です)

【カッティング編】

 カッティングシートの切り出しは、専門の業者さんにお任せしました。本来は、デコラインの作成から施工まで、すべてお任せすることができるのですが、今回は、カッティングだけをお願いすることにしました。

 カッティングシートの材質は、「住友3M」さんの「スコッチカルメタリックシリーズ」(色名:チャコールメタリック)を使っています。屋外耐候性:8年なので、耐久性については問題ないと思います。

 また、カッティングシートをボディーに転写する際に、台紙となる転写シート(アプリケーションシート)は、和紙とクリアシートを選ぶことができます。今回は、「水貼り」をするため、クリアシートを選択しました。
(写真では、一部和紙ですが...)

 ちなみに、ALPINAのデコラインセットを、正規代理店で購入すると\65,000(デコセット:\48,700、フロントスポイラー用デコセット:\16,300)、並行輸入で購入しても\40,000〜\50,000はすると思います。

【施工編】

 まずはじめに、施工中にカッティングシートの接着面やボディー表面へのゴミ・ほこり等の付着を避けるため、風の無い日を選びます。また、直射日光を避けるられる日差しがあるところ、できれば屋内で貼り付けた方が良いです。
(スモークフィルムの貼り付けと同じです)
 さらに、気温が低いとカッティングシートの接着力が低下するため、気温が10℃以下の日は避け、できれば15℃以上の日を選びます。
(どうしても施工したい場合には、カッティングシートおよびボディーをドライヤーで暖めながら貼り付けます)

【準備するもの】
  • カッターおよびカッティングマット
  • 直線定規(できるだけ長いものと短いもの)
  • 裁縫用の糸(ボディーに対して目立つ色)
  • マスキングテープ(固定・位置決め用)
  • 霧吹き器(洗剤の空き容器で代用可能)
  • スキージ(ゴムへら)大小
  • 割り箸(?)(使い方は後述)
  • 疲れた時のC1000タ○ダ。ではありません、脱脂用のアルコールおよびエナメル溶剤

[上手に仕上げるためのポイント] (スプレー液の作り方)
 カッティングシートの貼り付け方法には、乾式と湿式(いわゆる「水貼り」)があります。はじめて施工される場合には、貼り付け途中で位置を微調整できる「水貼り」がお薦めです。
(その昔に作った、プラモデルにデカールを濡らして貼り付けるのと同じです)
 この「水貼り」は、その名の通り、カッティングシートとボディーとの間に水を吹き付け、カッティングシートを浮かし気味にしながら適切な位置に合わせ、位置が決まったところで間に残った水をスキージで押し出し、ボディー表面に接着させます。
 「水貼り」では、吹き付ける水に少しだけ洗剤(中性洗剤)を入れ、界面活性の力を利用することで、スムーズに位置が修正できるようになるのですが、この洗剤の濃度が重要なカギとなります。よく、「スプレー容器に対して2〜3滴」と書かれていますが、これですと少しだけ薄くなってしまうため、つぎのようにして調整します。

  1. スプレー容器に水を8分目ぐらいまで入れ、さらに洗剤を4〜5滴ほど入れます。
  2. よく撹拌し、ボディー表面に何回か吹き付けます。ここで、ボディーに付いた水の状態を見てみます。
    • 細かな泡ができてしまっている場合には、濃いので少し薄めます。
    • 水滴状になって弾いている場合には、薄いので数滴ほど洗剤を加えます。
    • ボディーにペチャっと薄く水が広がったら、その濃さがベストです。(界面活性が起きている状態です)
【手順1:下地作り】
 カッティングシートを貼り付ける前に、ボディー表面をきれいに洗浄し、脱脂します。

[上手に仕上げるためのポイント] (ボディー表面の処理)
 カッティングシートの密着性を高めるためには、ボディー表面の汚れを完全に取り除くことが必要です。今回は、納車後2ヶ月程度であったため、シャンプー掛け以外には特に処理をしませんでしたが、ボディー表面の状態によっては、トラップねんどや鉄粉除去剤などで処理した方が良いでしょう。
 さらに、ワックス等の油分を取り除くために、アルコール等で脱脂します。今回は、工業用アルコールを蒸留水で10%に希釈したものを脱脂綿に含ませ、貼り付ける部分を洗浄しました。さらに、「タミヤ模型」の「エナメル塗料溶剤」で、軽く拭き取りました。
(このタミヤの溶剤は、塗装面を犯さないので、いろいろ便利に使えます)

【手順2:型取り】
 カッティングシートの型を起こします。
  1. 裁縫用の糸を、テールランプのターンシグナルの上端、フロント・リヤのドアノブの中央、ヘッドランプの中央を目安に、順次ボディーサイドに這わせていきます。この糸を、適切な張力で引っ張ることにより、ラインを出します。
  2. ラインが出せたら、糸をマスキングテープで固定していきます。
  3. 帯状にカッティングしたケント紙を、糸に合わせて貼り込み、マスキングテープで固定していきます。
  4. この紙に、フェンダーやドアパネルの形状を写し取り、【デザイン編】で使用する型紙とします。

[上手に仕上げるためのポイント] (完璧なラインの出し方)
 一にも二にも、完璧な直線を出すことが重要です。ここでの精度が、最終的な仕上がりを決定すると言っても過言ではありません。ここで失敗すると、真横から見た時に、ラインが「うねうね」状態となり、せっかくのデコラインが台無しとなってしまいます。焦らず慎重に作業します。
 直線が出たかどうかを見極めるためには、前後それぞれ、ボディーの側面すれすれの位置から眺めてみることで分かります。

【手順3:位置決め】
 カッティングシートを貼り付ける位置を決めます。
【手順2】で張った糸を元に、カッティングシートの上端となる位置を、マスキングテープでトレースしていきます。(糸だけでは、この後の貼り込みの途中で、位置がずれてしまう可能性があるため)

[上手に仕上げるためのポイント]
 手順2と同様に、とにかく完璧な直線を出すように、慎重に作業します。

【手順4:貼り込み】
 【手順3】でトレースしたマスキングテープを元に、カッティングシートを貼り込んでいきます。
  1. カッティングシートの上端を、糸およびマスキングテープでトレースした位置に合わせ、順次、上端だけをマスキングテープで固定していきます。(まだこの段階では、カッティングシートの裏紙(バックシート)は剥がしません)
  2. カッティングシートを上に持ち上げながら、ボディーに貼り付いてしまわないよう慎重に、端からバックシートを剥がします。
  3. カッティングシートを持ち上げた状態で、【準備するもの】で配合したスプレーを、カッティングシートの接着面およびボディー表面に、十分に吹き付けます。
  4. カッティングシートを、ゆっくりボディー表面に戻します。(水が間に入っているので、「ピチャ」という感じで貼り付くはずです)
  5. スキージを使って、カッティングシートの中央から、上から下の方向に、はじめは力を入れずに、ゆっくり水を押し出します。
  6. 徐々に力を入れながら、間に残った水を完全に押し出し、カッティングシートをボディーに密着させます。

[上手に仕上げるためのポイント] (エッジ部の処理)
 カッティングシートは、各部分で何枚かのピースに分かれています。各ピースの両端のエッジ部は、位置決めがしやすいように、マーカーが付いており、各エッジ部は、ボディーの裏側に回り込んで処理でるように、6〜8mm程度のマージンを残してあります。
 エッジ部の処理は、ドア部分は簡単にできますが、リヤフェンダー部やリヤガーニッシュ部は、施工前にテールランプを取り外しておきます。また、施工後は、エッジ部から剥がれてきやすいため、ドライヤーで暖めながら接着力を高め、完全にボディーに密着させます。

 ドア部分は、デザイン上、ラインがドアノブ上を通過するのですが、ここは施工する前に、カッティングシートがドアノブに当たる部分を、ドアノブの大きさより少し小さめに切り取っておきます。ここで「割り箸」の登場です。
 まず、割り箸の先端を平らに鋭く削っておきます。つぎに、ドア部分にカッティングシートを貼り付けた後、ラインがドアノブに掛かる部分のマージンが、2mm程度残るようにカッターで切り取ります。そこで、この割り箸を使って、ドアとドアノブの境の硬質ゴムの間に、ラインのマージンを潜り込ませ、密着させます。

 なお、フロントスポイラー部ですが、微妙にラウンドしているため、ドライヤーで暖めて少し伸ばしながら、少しずつ形状に合わて、引っ張るような感じで貼り付けました。ただし、あまり暖めすぎると、ラインにシワがよったり、最悪の場合、切れてしまったりするので、高い集中力とテクニックが必要です。(ここが今回の最大の難関でした。自分でも、もう二度とうまくできないと思います)

【手順5:アプリケーションシート除去】
 カッティングシートがボディー表面に密着したら、いよいよアプリケーションシートを剥がします。剥がした後は、カッティングシートがボディーに馴染むまでにしばらく時間が掛かるため、一日以上安静にしておきます。

[上手に仕上げるためのポイント] (アプリケーションシートの剥がし方)
 カッティングシートがボディーに貼れたからといって、焦ってアプリケーションシートを剥がしてはいけません。ここで失敗してしまうと、いままでの苦労が台無しになってしまいます。まずは、【手順4】で完全に水を押し出し、密着させておくことが必要です。
 つぎに、片側から徐々にアプリケーションシートを剥がしていきます。ここで、アプリケーションシートを手で持ち、180゜の方向にゆっくり引っ張っていきます。(絶対に、真上に引っ張ってはいけません。簡単にラインの方が剥がれます)
 途中で、ラインが浮き気味になってしまった場合には、焦らずにアプリケーションシートをゆっくり戻し、スキージでしごいて密着させます。(それでもラインが浮いてきてしまう場合は、スプレー液の洗剤の濃度が濃かったのです。ドライヤーで暖めて接着力を増すとともに、水分が抜けるのをしばらく待ちます)

【施工後】

〈フロント正面〉 〈リヤ正面〉
〈フロント拡大〉 〈リヤ拡大〉

 デコラインの素材は、十分に耐候性のある、良質なものを使用したため、簡単に剥がれてくるようなことはありません。ただし、あまりにも細く繊細なラインのため、ワックス掛けの時は、少しだけ注意が必要です。(それも楽しみの一つではあるのですが...)

【おわりに】

 オリジナルを忠実に再現したチャコールメタリックのデコラインが、シルバーメタリック(1C0)のボディーに映えて、なかなかいい感じに仕上がりました。
当初の思惑通り、ARISTOの筋肉質のボディーラインがよりいっそう引き締まり、精悍なイメージになったように思えます。

 ただし、ここまで仕上げるためには、細部にまで拘り、完璧なまでの完成度を追求したため、2〜3回作り直し・貼り直しを行いました。
 また途中、施工のための条件が悪い冬を挟んでしまったため、最終的な完成を迎えるまでに、ほぼ4ヶ月も掛かってしまいました。(その間に、マフラーがbarreになり、ホイールがSuper-RS18からLM19になってしまいました...。(笑))

 多くのの時間を要しましたが、個人レベルとはいえ、かなりレベルの高い仕上がりにすることができました。クラブマンさんの中で、エクステリアの大胆なイメージチェンジを図りたい方は、一度試されてはいかがでしょうか。

【お知らせ】

 このオリジナルデコラインはフレンドディーラーであるネッツトヨタ東京ハブポート若林さんにてフレンドディーラーS会員サービスとしてお取扱いしております。また同店の試乗用アリストにも装着されていますので直接確認することも可能となっております。

<参考>

 ワタルさんのARISTOにも装着していただきました。フロントのロゴは「Club ARISTO」、リヤのロゴは「www.club-aristo.net」のオリジナルバージョンです。18インチのZEITver.SSと相まって、精悍なイメージとなりました。

クラブアリストisland
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