NOGI ARCHITECT OFFICE
禾設計事務所
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つくばトーヨー住器(株)本社ビル

設計期間1991年6月〜1992年12月
施工期間1993年3月〜1993年9月

ファサード(外観)

コンクリート打放し仕上をパロディーにしたポストモダン。コンクリート打放し仕上は、(現代においても時々見られるが)ル・コルビュジェ等に見られるように、近代建築様式を代表するファサードのテクスチャーであった。ポストモダンの時代、近代以前の歴史様式のデザインを借りてきてパロディー化したが、近代建築様式を過去のものとして、つまり歴史様式として認識していなかったように思う。しかし今、それをパネルにし、張り付けることで表現できるようになった。何と言うパロディーであろうか。近代建築様式のファサードを鉄骨造の建物で得る事ができる。建築の工業化が進み、近代建築様式を歴史様式としてパロディー化することが可能となる。現代の状況に対するアイロニーとして。

過ぎた表現は、美を損なうトーチカのようなコンクリートのマッスの表現が、バランスを崩さぬよう、軽やかさとガラスの帯を、そして、コンクリートのマッスとマッスの間は、全面ガラスとした。街を映す鏡コンクリートの壁に挟まれた硝子は、熱線反射硝子を使い、これから街がどのように移り変わって行くのかを映し出す鏡をイメージした。カガミはこれから何を映し出していくだろうか。

オブジェ「大地の怒り」−環境と人間の対時−

微妙に色の違う真っ赤な2本の円柱は、「人間のつくる構築物」を代弁させている。微妙に色の違う真っ赤な2本の円柱の足元は、大自然をイメージしている。しかし、相反する、対極にある自然である。一方は、みずみずしい、生命にあふれた、緑一杯の野原や熱帯雨林。一方は、溶岩地帯。(例えば、鬼押し出しをイメージしてほしい。)この2つは、対極にあっても、自然であることには変わりはない。人間はこのような世界のどちらにも「物を打ち建て、築く」と言う行為をしてきた。人間は自らの生活を豊かにしようと、また大自然と調和を求めてきた。それは、人間にとって必然の事であったと言える。

一方の赤は、目も覚めるようなビビッドな赤。
        生ある環境では赤も生々しく激しい。
一方の赤は、どんよりとくすんだ、どす黒い赤。
        死のせまった、まるで「賽の河原」を思わせる環境では、
        赤も、どろどろと黒く沈んでいく。

「環境からデザインヘデザインから環境へ」。我々人間が「物を打ち建て、築く」行為、その行為が繰り返されて行く過程を見ると、常に、環境があり、それに影響を受けた「デザインされた物」が加わり、違った状況(環境)が生まれ、又その違った状況(環境)に影響を受けた「デザインされた物」が加わるという、「生命の進化」もしくは「輪廻転生」のような過程を見せると思うのである。そう思うと、生を死へ、死を生へ導く物は、大きな意味で、その行為する者の「デザインする心」にかかっている。それを、もう一度、深く心にとどめよう。


インテリア

近代建築は装飾を排したが、ポストモダンの時代になり復活した。それは、近代以前の歴史様式のデザインを借りてきてパロディー化するという形でであった。この建物の内部空間を支配する「うねる鉄の橋」は外部のパロディー化とは逆に、鉄という素材の持つ特性を装飾デザインに生かそうと真正面から取り組んでいる。それは、自由な曲線・自由な面・自由な色。線の細さである。(これには、なにか数寄屋に通じるものを感じる。)これが私の考える「ポストポストモダン」の時代の装飾デザイン、しかしそれは鉄骨職人・塗装職人の技術に支えられているのだ。


まとめ デザインと技術は表裏一体

デザインと技術は表裏一体のものだ、どちらが欠けても実現できない、そしてそれは創造力によって培わる。消費されるデザインが横行する時代となり、職人の技術が工業化にとって変わられるとすると、無味乾燥で単調な都市が出現するだろう。それに警鐘を鳴らしたい。